NFTアートとは?仕組みや注目される理由、作り方や販売方法などを解説

2022.09.26

偽造・改ざんが困難なブロックチェーン技術を活用し、唯一性を証明できるNFT。デジタル資産として、数々のメディアでも取り上げられているNFTは、新たな売買形態を形成し、着々と市場規模を拡大している。

そのNFT技術を活用しているのが、NFTアートだ。本記事では、NFTアートの概要から注目される理由、仕組み、メリット、販売・購入方法、取り組み事例まで解説していく。

NFTアートとは?

出所:PR TIMES

NFTアートを知る上で、理解しておきたいのがNFT。NFTとは、Non Fungible Tokenの略称で、直訳では非代替性トークンを意味する。

改ざんが困難なブロックチェーン上で発行および取引されるデジタルデータの一種であり、鑑定書や所有証明書付きであるのが大きな特徴。固有のデジタルデータを作成でき、資産価値を付与することが可能となっている。

例えば、100円玉など硬貨は誰が使用しても価値は同じであり、代替は可能。しかし、有名な画家が描いた絵は一点ものの価値があり、代替は不可能と言える。

このNFT技術を活用しているデジタルアート作品が、NFTアートだ。デジタルアートとは、パソコンやタブレットといったデジタルデバイスを利用して作成するアート作品で、デジタルイラストレーション・デジタル絵画・プロジェクションマッピングなどジャンルは多岐に渡る。

従来、デジタルデータの複製は簡単に行えたため、一点ものとして証明することが困難だった。その一方、NFTアートであれば、替えの効かないデジタルアートを作成可能。現物の作品と同様の資産価値を付与できるようになった。

NFTアートが注目される理由

近年、数多くのNFTマーケットプレイスが展開されており、NFT取引も活発化している。ここでは、NFTアートが注目される理由を見ていこう。

所有者を明確化できる

パソコンやタブレットの普及に伴い、デジタルアートは広く認知されるようになったが、簡単に作品を複製できたため、所有者の証明が困難と言われていた。しかし、デジタルアートに紐づくNFTを発行することで、所有者の明確化が可能に。

資産価値を生み出せる特性により、NFTアートは多くのクリエイターから注目を集めるようになった。

二次流通時に収益が一部還元される

NFTアートには、プログラマビリティという仕組みが存在し、二次流通時に収益の一部を受け取ることができる。

現物品の場合、転売時に利益を得られるのは売却者と再度転売を行える買取者のみ。NFTに関しても二次流通の概念は存在し、NFT購入者はマーケットプレイスなどのプラットフォームを利用することで、NFTの転売を行える。

二次流通を想定して、NFT発行者はロイヤリティを設定可能。購入代金の一部をロイヤリティとして受け取れるルールを設定しておけば、NFTアート作品の販売後も、長期的な収益の確保を期待できるだろう。

著作権は譲渡されない

NFTアートは購入されても、著作権自体は制作者に帰属するという特徴がある。作品の買い手の中には、全ての権利を取得できると誤解する人もいるが、あくまで購入するのはデータのみ。

二次的著作物を作成する場合は、制作者の許諾を得ることが必須であるため、作品を保護できる観点からもNFTアートの注目度は高まっている。ただし、NFTコンテンツに関する権利は整備段階にあるので、著作権を理解していない購入者とトラブルに陥る可能性もある点に注意したい。

NFT市場規模の拡大

NFTは暗号資産や芸術分野だけでなく、ゲーム・メタバース・不動産・ファッション・スポーツ・チケットなど、さまざまな業界で活用され始めている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが公表した資料によると、2020年における世界全体でのNFT取引金額は8,250万ドルであったのに対し、2021年には176.9億ドルまで伸長。NFTアートの取引も活発化しており、作品の流通数も増えると予想される。

NFTアートの仕組みとは?

ここでは、NFTアートの唯一性証明の仕組みや改ざんできない仕組み、取引の仕組みなどを解説していく。

NFTアートの唯一性を証明する仕組み

ブロックチェーン上でデジタルアートのNFT化を行うことで、トークンIDが付与される。このトークンIDは識別可能な固有コードであるため、デジタルアートの唯一性を証明可能。

また、トークンIDには作成者・所有者・権利者・取引履歴といった情報も同時に記録。NFTアートが誰の手で作成され、どのような取引を経て、現在の所有者に渡ったのかも確認できる。

NFTアートを改ざんできない仕組み

NFTアートは前述の通り、ブロックチェーンの技術を採用している。そもそもブロックチェーンとは、取引履歴データをハッシュ値と一緒にブロックへ格納し、それぞれを連結させて保管するのが基本的な仕組み。

データを変更するには、膨大な量のハッシュ値を変更する必要があり、事実上困難とされている。また、取引履歴データはネットワーク参加者で共有して合意形成を図るため、仮に1人がデータを改ざんしても容易に不正を検出可能。

その他にも、スマートコントラクトといった多様な技術が採用されており、高いセキュリティレベルを実現している。

NFTアートを販売する仕組み

デジタルアートの制作者は、作品データをマーケットプレイスにアップロードし、名称や作品詳細など必要事項を入力してNFTを発行する。その後、固定価格・オークションといった販売方法を選択し、NFTを出品。

購入者が確定してマーケットプレイス事業者に代金が支払われると、ブロックチェーン上にNFTの取引履歴が記録される。そして、NFTが移転し、取引は完了となる。

NFTアートのメリット

ここでは、NFTアートを利用することによるメリットを解説していく。

誰でもNFTアートの取引に参加できる

一般的に、現物の美術品を扱うアートオークションは高額商品が出品されるケースも多く、参加の敷居が高いと認識されやすい。しかし、NFTアートの売買プラットフォームには気軽に参加できるのが魅力。

例えば、世界最大のNFTマーケットプレイスで、NFTアートの出品も多いOpenSeaでは、誰でもNFTの作成・出品・購入が可能であるためおすすめだ。

NFTアート投資が可能

NFTアートは投資商品としても注目を集めている。パソコン・タブレットを扱う若いクリエイターを中心に、デジタルアートの制作は活気付いているが、容易にコピーが可能なため投資には向いていない側面があった。

しかし、一点ものとしての価値を証明できるデジタルアートは、近年投資対象に。今は価値が低い商品であっても、将来的に価値が上がる可能性を秘めている。

例えば、デジタルアーティストのBeepleが、アメリカ大統領選挙に関連して制作した「Crossroads(クロスロード)」というビデオクリップ作品。一次流通時は67,000ドルで販売されたが、二次流通時は6,600,000ドルと約100倍の価格で転売された。

また、NFTアートは経年劣化を引き起こさず、価値も下がりにくいため、投資商品に向いていると言えるだろう。

NFTアートの作り方・販売方法

ここでは、NFTアートを作成し、販売する方法を解説していく。

仮想通貨取引所で口座を開設する

NFTアートを販売する際、必ず必要になるのが暗号資産のイーサ(ETH)だ。暗号資産や仮想通貨と聞くと、難しく感じる人も多いかもしれないが、暗号資産の売買・交換を行うのではなく、NFTマーケットプレイスの手数料にイーサを利用する。

イーサはGMOコイン・ビットフライヤー・ビットバンク・コインチェックなど、仮想通貨取引所で口座を開設した上で購入可能。仮想通貨取引所によって手数料や取扱銘柄などは異なるので、自身に適したサービスを選択しよう。

仮想通貨ウォレットを作成する

通貨を保管する上では、財布の役割を担う仮想通貨ウォレットの作成が必要となる。仮想通貨ウォレットにはさまざまな種類が存在するが、イーサリアム系で初心者でも扱いやすいのがMetaMask(メタマスク)だ。

MetaMaskと連携して決済・管理を行うNFTマーケットプレイスも多いので、NFTアートを扱う上ではMetaMaskが必須と言える。なお、パソコンではWebブラウザの拡張機能、スマホではアプリをインストールしてMetaMaskを利用できる。

OpenSeaのアカウントを作成する

NFTアートを取引できるOpenSeaで、アカウントの作成を行う。大まかな作成の流れとしては、下記の通り。

  • MetaMaskと連携
  • アカウント情報の登録
  • メール認証

数分で完了する作業なので、口座開設の審査待ち期間を利用し、事前に実施しておくことをおすすめする。

ここでは、世界最大級のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaで紹介したが、デジタルアートのコンテンツを取り扱っていれば、他のプラットフォームでも問題ない。OpenSea以外のプラットフォームを利用する場合は、取り扱いコンテンツや利用可能な仮想通貨の銘柄、手数料などもチェックしておこう。

イーサを購入・送金する

口座の開設が完了すれば、仮想通貨取引所でイーサを購入する。購入方法は仮想通貨取引所によって異なるので、詳細な手順は公式サイトをチェックしてみよう。

その後、仮想通貨取引所でMetaMaskのアドレス・金額を指定し、イーサの送金を完了させる。

デジタルアート作品をアップロードする

最後に、作成したデジタルアート作品をOpenSeaでアップロードする。対応フォーマットとしては、下記の通り。

イラストJPG,PNG,GIF,SVG
動画MP4,WEBM
音楽MP3,WAV,OGG
3DモデルGLB,GLTF

なお、ファイルの最大サイズは100MBであるため、注意が必要だ。

OpenSeaにファイルのアップロードが完了すれば、NFTアートは完成。実際にNFTアートの販売も可能となるが、その際イーサリアムブロックチェーンの利用手数料であるガス代が発生する。

ガス代は常に一定ではなく、仮想通貨の価格やトランザクション量に応じて変動する仕組み。イーサリアムのガス代のリアルタイムな価格をチェックしたい場合は、「Ethereum Gas Price Chart」などのサイトを利用するのもおすすめだ。

また、OpenSeaでは出品手数料はかからないものの、商品を売るたびに2.5%の販売手数料が発生する。MetaMaskに送金したイーサで、手数料の支払いを行おう。

NFTアートの購入方法

NFTアートの購入方法としては、下記の通りNFTアートを販売する流れと概ね同様である。

  • 仮想通貨取引所で口座を開設
  • 仮想通貨ウォレット(MetaMask)を作成する
  • NFTマーケットプレイスでアカウントを作成する
  • イーサを購入して仮想通貨ウォレット(MetaMask)に送金する
  • NFTマーケットプレイスでNFTアートを購入する

取引には通貨のイーサを利用するので、それに係る口座開設・ウォレット作成・送金が必須となる。

NFTマーケットプレイスを選択する際は、デジタルアートの取り扱いがあるかチェックしよう。ほとんどのNFTマーケットプレイスでデジタルアートは取り扱われているが、音楽・ゲーム・ファッションなど、得意分野はプラットフォームによって異なる。

基本的にはアカウントを作成せずとも、NFTマーケットプレイスで出品されているNFT作品を確認可能なので、事前にサイトを閲覧してみて欲しい。

NFTアートの取り組み事例

NFTアートへの注目度の高まりを受けて、さまざまな企業がNFTアートの作成に乗り出している。次に、NFTアートの取り組み事例を紹介していく。

東映アニメーション

出所:PR TIMES

東映アニメーションは、9歳の日本人少年・Zombie Zoo Keeper(ゾンビ・ズー・キーパー)によるNFTアートコレクション「Zombie Zoo」を原案に、NFTのアニメ化を日本で初めて実施した。

Zombie Zooは夏休みの自由研究を機に始められたNFTアートプロジェクトで、2022年4月末時点で累計250点以上のピクセルアートをiPadで作成。NFTマーケットプレイスのOpenSeaに出品された作品は、これまで全て完売しており、大きな反響を呼んでいる。

出所:PR TIMES

数多くの子ども向けアニメを手掛けてきた同社であるが、本プロジェクトの主役となるクリエイターは子ども自身。子どものクリエイティビティ・テクノロジー&インターネット・コンテンツ製作の3つの要素で、相乗効果を図りながら子どものクリエイティビティをサポートしていく。

なお、キャラクターデザインの設定画は、2022年4月29日~5月5日の期間において、メタバース空間の「NFT FESTA 2022SPRING」で展示。仮想空間でNFT作品を閲覧することもできた。

手塚プロダクション

出所:PR TIMES

手塚プロダクションは、初の公式NFTプロジェクト「From the Fragments of Tezuka Osamu(手塚治虫のかけらたちより)」として、手塚治虫の漫画原稿を使用したデジタルアートNFTを作成した。

本プロジェクトのシリーズ第1弾である鉄腕アトムでは、4,000枚以上の白黒マンガ原稿を40,000点以上の断片にカットし、世界に1つ限りのモザイクアートを作成。オークション形式で出品され、最終的には日本発NFTの最高額となる120ETH(約5,600万円)で落札された。

また、鉄腕アトムのジェネレーティブアートNFTも、1,000個をそれぞれ0.08ETHで販売したが、わずか1時間で完売するという人気ぶりを見せた。日本アニメーションの金字塔である鉄腕アトムの原画を、NFTの技術で色褪せることなく、デジタルデータで保管できるのも魅力と言えるだろう。

コナミ

出所:PR TIMES

コナミは人気アクションゲーム「悪魔城ドラキュラ」シリーズを題材に、14種のアート作品を「KONAMI MEMORIAL NFT」として、OpenSeaのプラットフォーム上でオークション販売した。

過去の人気作から選ばれたゲームシーンや新規描き下ろしビジュアルなどイラストだけでなく、ダイジェストムービー・BGMといったデジタルコンテンツも出品。合計約1,830万円で落札された。

ゲームシーンなどをNFTアートで作成して販売することで、ファンの元に末長く残しておこうという意図がKONAMI MEMORIAL NFTにはある。なお、NFTアートの転売が行われた場合は、最大10%のロイヤリティをコナミは受け取れるようルール付けした。

CyberZ

CyberZは、ももいろクローバーZの写真をベースとしたNFTアート1,000種類以上を用意し、MMCLZMNNFNFT!(ETH版)とLINE NFT(LINE版)の2ヶ所のプラットフォームで販売した。

TwitterやLINEなどのSNSアイコンにNFTアートは設定でき、LINE版は世界で20個、ETH版で1個だけの限定作品となっている。オリジナルデザインのアイコンで、特別感を得たいファンから注目を集めたNFTアート販売であった。

GMOアダム

出所:PR TIMES

GMOフィナンシャルホールディングスの連結子会社であるGMOアダムは、東急プラザ渋谷のポップアップスペースに期間限定で、NFTアートギャラリー「Adam byGMO NFT Art Gallery」を開催した。

渋谷の街にまつわるクリエイターSETA氏のNFT作品や、渋谷ハチ公物語のキャラクターNFTなど、渋谷ゆかりのNFTアート作品約50点を週替わりで展示。来場者は気に入ったNFTアート作品があれば、「Adam byGMO」へ登録することで、その場で購入できた。

デジタルアートやNFTに興味がある人だけでなく、渋谷の街が好きな人にも好評なイベントとなった。

日本テレビ放送網株式会社

出所:PR TIMES

日本テレビ放送網株式会社は、NFTマーケットプレイス「ユニマ」において、NFTオークション番組「デジセリ」と連動したNFTオークションを開催した。

世界で活躍する一流アーティストと有名タレントがコラボで、オリジナルのNFTアートを作成して出品。例えば、世界的有名ブランドのプロモーションイメージを手掛けるアニメーター・シシヤマザキが、筋肉芸人・なかやまきんに君のアニメーションを作成したり、自身のNFTが約1,300万円で落札された一流VRアーティスト・せきぐちあいみが、芸人・さらば青春の光の脳内を描いてVRアートを作成したりと、リアルタイムNFTオークションで放送は盛り上がりを見せた。

NFTアートのまとめ

NFTアートは、デジタル作品の大きな欠点であった複製を防止する革新的な技術である。所有者を明確化でき、作品の唯一性の価値を証明できる点は大きなメリット。多くのクリエイターから支持されているだけでなく、コレクション・資産として購入する人も増加している。

NFTアートの売買には暗号資産を利用するため、口座の開設や仮想通貨ウォレットの作成など準備が必要となるが、投資のように難しい運用は必要ない。NFT取引が初めてという人も、この機会にNFTアートの売買を行ってみてはいかがだろうか。

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