イオンリテールが「スマートな買物体験」を実現するAIシステム「AIカメラ」「AIカカク」を導入、順次拡大へ
2022.04.21
2021.05.13
イオンリテールは5月オープン予定のイオンスタイル川口(埼玉県川口市)に「AI(人工知能)カメラ」を約150台導入すると発表した。映像を分析することで接客や判断業務、より良い売場レイアウトの実現につなげる。以後、同様のAIカメラを約80店に順次、導入していくとしている
他、7月までにほぼ全店となる約350店に商品の販売実績や天候、客数などの環境条件を分析し、割引時に適切な価格を提示する「AIカカク」を順次導入する。
AIカメラは店内映像を分析し接客や売場改善に生かす。衣料品や住居余暇売場において、店内のカメラの映像を通じてお客の行動を分析、学習することで接客が必要かどうかをAIが判断する仕組み。例えばベビーカーやランドセル売場などで購入を検討するなど接客を必要とするお客を感知、従業員へ通知したりすることで、従業員は離れた売場や壁越しで作業していても把握ができ、スムーズな接客対応が可能になるといった活用法を想定する。
また、AIカメラで撮影した映像データについては、分析を加えることでお客の立ち寄り時間の長い売場や動線、手を伸ばす頻度が高い商品棚などを可視化、売場レイアウトの変更や店舗ごとに異なる売れ筋商品の充実につなげる。
また、AIカメラではAIによる年齢推定も可能。レジ前に設置したカメラの映像をもとにAIがお客の年齢を分析、未成年者と推定した場合は自動アラートでレジ従業員に通知する。AIによる高精度の推定が可能となり、偏見での判別がなくなることでお客の安心感も高まるとみる。また、レジ従業員にとっては年齢確認の判断業務から解放されることも大きい。レジ従業員の負担を軽減する効果も見込む。
さらに、お客の店内動線や売場への立ち寄り時間、手を伸ばした商品棚など売場での行動の情報を自動的に集積し、「ヒートマップ」(注目度や利用率の高い箇所を赤色、低い箇所を青色とし、注目度や利用率の高い箇所から低い箇所までをグラデーションで色分けした映像)で可視化する。
これを活用することで、店内レイアウトや商品の品揃え改善ができるほか、通路変更を行った場合のシミュレーション分析も可能になるなど、より買物のしやすい売場づくりにつなげることができる。
一方、AIカカクは、販売実績や天候、客数などの環境条件をAIが学習し、それに基づいて時間帯ごとに各商品の陳列量に応じて適切な割引率を提示、商品の価格をより適切なものとすることで食品ロスの削減につなげるといった効果を狙う。
昨年11月から先行導入を実施した店ではコロッケや天ぷらなどの惣菜について、平均で割引率が2割強改善する結果をもたらしたという。導入店ではいずれも同程度の改善を達成していることから、以降の導入店舗でも対象商品において同程度の効果を見込んでいる。5月13日現在、関東、東海の約140店に導入済みで、7月までに東北を除く本州、四国の約350店に導入する予定だ。
このAIカカクの大きなポイントに、売場での操作を「商品バーコードのスキャン」と「陳列数の入力」のみに限定していることが挙げられる。シンプルなシステム設計と見やすい画面設計にした。
例えば、惣菜売場の商品のバーコードを読み取り、陳列数を入力するだけで携行のシール発行機からAIが提示した割引率のシールが自動印刷され、該当商品にシールを添付すると作業が完了する。5月13日現在、惣菜売場の約40%の商品に適用済みで、今後システム拡張によって適用する商品カテゴリーを順次、拡大予定だ。
これまで人の判断に頼っていた値下げなどがデータに裏付けされたものとなり、食品ロス削減の取り組みにもつながるだけでなく、値下げや売り切り業務にかかわる教育時間の軽減にもつながるとみる。