スマートファクトリーとは?市場規模や日本企業の事例等を交えて解説

2021.07.27

生産性の向上や業務の効率化、人手不足解消などを目的にIT技術が多くの業種で取り入れられている。IT技術とも相性がよく、人手不足に悩む製造業で注目されている取り組みが「スマートファクトリー」だ。スマートファクトリーは大手メーカーだけでなく、中小メーカーでも導入が検討されるようになった。これからスマートファクトリー導入を目指したい人のために、スマートファクトリーの定義やメリット、デメリット、大手メーカーでの導入事例を解説する。

スマートファクトリーとは

まずはスマートファクトリーの定義や概要、歴史背景や導入する目的を解説する。

スマートファクトリーの概要

スマートファクトリーとは、製造業におけるIT技術を取り入れた取り組みを指す。工場で使用している機器や設備をインターネットに接続することで、作業や生産の可視化や最適化が可能となる。

IT技術を導入した「スマート」と名の付く機器や仕組みなどは、日常生活のなかでも多く存在している。さらに製造業は産業ロボットや自動化装置などをすでに導入するなど、IT技術との親和性が高い業種だ。

スマートファクトリーの取り組みを進めるメーカー企業も少しずつ増えている。スマートファクトリーの代表的な機能や設備には、以下のものがある。

  • 産業ロボット
  • 人の声や温度を感知するAIセンサー
  • 作業手順や生産状況をリアルタイムで共有できる小型軽量化デバイス
  • 手書きマニュアルや装置などと重ねられるAR
  • 工場の稼働状況をすべて可視化できる自律的システム など

スマートファクトリーの歴史

スマートファクトリーとは、ドイツ政府の提唱する「インダストリー4.0(第四次産業革命)」で登場した言葉だ。インダストリー4.0とは、ドイツ国内の製造業の効率化および高品質化を実現、国内における生産競争を推進するための国家プロジェクトを指す。インダストリー4.0を実現するための工場として、スマートファクトリーが定義された。

日本でも、インダストリー4.0にならい経済産業省によって「コネクテッド・インダストリーズ」が提唱されている。これに伴い、IT技術を導入し効率化をはかるためのスマートファクトリーの導入を、日本の製造業界でも目指すことになった。

すでに日本では「ファクトリー・オートメーション(FA、工場の全自動化)」の取り組みは導入済みだ。FAは、スマートファクトリーの一歩手前の姿ともいえるだろう。

スマートファクトリーの目的

スマートファクトリーを導入する目的として「省力化」「作業効率化」「高品質化」がある。たとえばロボットやAI、無線インターネットを導入すれば、作業の自動化、可視化、予知保全、マニュアルの共有と更新などが可能だ。少子化と超高齢化社会による人手不足に悩む日本の製造業界で、スマートファクトリーは注目されている。

スマートファクトリーの市場規模

大手調査会社Reportocean.comが2021年2月に出した、「スマートファクトリー市場調査レポート」によると、世界のスマートファクトリー市場は2019年に約1,537億米ドルに到達し、2020年から2027年の期間における成長率は9.76%超で健全な成長を続けるとしており、今後も着実な成長が見込める分野と言える。

参考:スマートファクトリー市場は2027年まで9.76%のCAGRで成長すると予想されます

スマートファクトリーのメリット

スマートファクトリーを導入するメリットを解説する。

不足している人手を補える

産業ロボットや人の声や温度を感知するAIセンサーなどを取り入れることで、人の手による作業量が減らせる。生産管理や在庫管理など人力における分野もIT技術が取って代われるようになるため、人手不足でも生産性の高い工場として稼働できるのがメリットだ。

省力と省人によるコストカット

スマートファクトリーにより人の担当していた分野をIT技術が行うことで、人件費のカットができる。また、スマートファクトリーは「FEMS(Factory Energy Management System:工場エネルギー管理システム)」を導入するケースが多い。工場操業時のエネルギーの効率化にもつながり、省力によるエネルギーコストのカットも可能だ。

生産性アップによる利益の向上

スマートファクトリーによって生産性がアップすれば、純粋に工場出荷数も増加する。今までと同じ操業時間で売上が増え、企業の利益にもつなげられるだろう。

改善点の可視化による品質の向上

スマートファクトリーのIoTによって工場機器の稼働状況を把握し、つねに可視化できるようになる。稼働や生産状況をリアルタイムで共有できる以外にも、改善点も可視化できる。今まで気が付かなかった改善を図り、製品の品質向上にもつなげられるのもメリットだ。

ヒューマンエラーや事故の防止や保全

スマートファクトリーにより、人への危険がともなう、または負担の大きい重作業も産業ロボットや機器などが行うようになる。製造過程におけるヒューマンエラーや産業事故などが防止できるのも、スマートファクトリーのメリットだ。危険を予知し未然に防ぐ、保全面でもスマートファクトリーの恩恵は大きいといるだろう。

スマートファクトリーのデメリットと対策

スマートファクトリーは先進的な企業は積極的に導入を進めている一方、導入に意欲的ではない企業との二極化ができている。その背景にあるのがスマートファクトリーのデメリットだ。導入前にはスマートファクトリーのデメリットとともに、対策方法を知っておこう。

初期コストが高い

スマートファクトリーの導入には、多額の初期費用がかかる。機器の導入や従業員への教育費などの費用だ。ドイツでは国家プロジェクトのため国がサポートする体制が整っているが、日本では直接的な国のサポートはない。初期コストをふまえ、導入する機器やシステムなどを検討するのが重要だ。

期待する成果が得られない場合がある

スマートファクトリーの導入の妨げとなっているのが、「期待する成果がでるかどうか分からない」ということだ。まず、あらかじめどのような目的でスマートファクトリー化を進めるかを明確にしておこう。たとえば、スマートファクトリーによってデータの収集や蓄積をしても、活用できるシステムがなければ成果は出せない。データを活用できる仕組みづくりも一緒に行っておくのが重要だ。

セキュリティ面でのリスクがある

スマートファクトリーは、サイバー面でのセキュリティリスクがある。防犯対策はしっかり行われている工場は多いものの、サイバー面でのセキュリティはまだ手薄な工場が多い。おもな被害としては、蓄積されたデータの盗用や破壊などの可能性がある。スマートファクトリー導入の際には、セキュリティ面での強化も必須だ。

企業のスマートファクトリー導入事例

スマートファクトリーを導入した企業の事例をふたつ紹介する。

コマツの「スマートコンストラクション」

建設機器メーカー大手の「コマツ」が、建設現場の最適化のために行っている事例が「スマートコンストラクション」だ。建築現場における労働力不足解消のために、生産性を上げるプロジェクトとして開始された。

すでにコマツ製建機の稼働状況の見える化を実現する「KOMTRAX」を開始済みだ。これに加えてスマートコンストラクションでは、コマツ製建機の関わらない測量やダンプトラックの土の運搬などの、すべての建築プロセスを可視化できるようになっている。

土木建築業に関わる企業は、従業員10名程度の中小企業が大半を占めている。自社では人材不足などの解決が難しい中小企業のサポートを目的に、スマートコンストラクションが立ち上げられた。

豊田自動織機の「スマートファクトリープロジェクト」

トヨタ自動車のグループ企業である豊田自動織機とマイクロソフトの連携によるプロジェクトが「スマートファクトリープロジェクト」だ。今まで別々だった日本と欧米支社のシステム基盤を、パブリッククラウドプラットフォームに統一することで、データや情報の共有が可能になった。

ほかにも、フォークリフトをIoT化してクラウドに接続することで、稼働データの収集と分析、人員の最適な配置、予備保全などを実現している。将来的には過去のメンテナンス履歴と連動し、クライアントへのメンテナンス業務にも活用することが計画されている。

日本の未来のものづくりを支えるスマートファクトリー

スマートファクトリーの概要とメリット、デメリットの解説とともに、実際にスマートファクトリーを導入した企業の事例を紹介した。人手不足が顕著な製造業の生産性を上げるためには、ITの力を活用するのが有効だ。生産性を上げられるだけでなく、事故などの防止や製品の品質向上、コストダウン、データの蓄積などの多くのメリットも得られる。自社にスマートファクトリーを取り入れるなら、目的を明確にする、かつ収集したデータを活用できるシステムを同時に作るなどの対策をするのが重要だ。

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