ローソンがデリバリーサービス強化、プラットフォーム活用しつつ、アプリへの在庫有無の自動反映、商品数拡大

2024.05.02

ローソンが日本のコンビニで初めて「Uber Eats」のサービスを開始し、デリバリーサービスに参入したのが2019年8月。この間、導入店舗数は増加し続け、20年に1000店突破、21年に2000店突破、22年には3000店を突破し、そして23年8月には47都道府県4000店への導入に至った。さらに4月4日には5000店舗を突破するなど、急速に導入店舗数を増加させている。

「19年はコロナ前であるが、デリバリーに参入した。最初は4店舗だった。始めるに当たって社内では、『デリバリーでわざわざコンビニの商品を買うのか』といった非常に懐疑的な意見もあったが、私の見立てではローソン、コンビニエンスストアに置いてある商品を『すぐに欲しい』というデリバリーのニーズは非常にマッチするであろうということでスタートした」(吉田泰治・ローソン執⾏役員インキュベーションカンパニープレジデント)

吉田泰治・ローソン執⾏役員インキュベーションカンパニープレジデント

その後の急拡大に当たっては新型コロナウイルスによる巣ごもりの影響も大きかった。

Uber Eatsでは、「からあげクン」などの店内調理のフライドフーズ、牛乳などの生活必需品、酒類の販売が好調の他、一部店舗では一般用医薬品の取り扱いや「ゴーストレストラン」のサービスも実施している。

一般用医薬品の販売は21年2月から開始。現状、24都道府県、118店で展開中。

ゴーストレストランは22年1月から実証実験を開始。ローソンは「まちかど厨房」として店内厨房設備を持つ店舗が約1万点あることから、このインフラを活用することで店内製造の出来たて商品を提供するゴーストレストランのビジネスを始めた。

現状、東京都、神奈川県、千葉県、埼⽟件80店で9ブランド、75品目をゴーストレストラン専用ブランドとして展開している。「われわれはもともと小売りだが、ゴーストレストランによって外食のニーズをしっかり、デリバリーの世界では取っていけるということで、ローソンの名前を表にあまり出さずに、商品のコンテンツ力で勝負している」(吉田プレジデント)。

ただし、ゴーストレストランについては、外食に近いということでメニュー、調理法、さらに注文を受けて調理するといったオペレーションなどの面で、これまでの小売りのノウハウと異なる部分もあるため、実験段階にとどまるという。

現状、Uber Eatsの売れ筋商品の上位はファストフーズ、ソフトドリンク、デザートなどが挙がるが、特に大容量サイズが人気だという。また、酒の需要も高い傾向にある他、食事系の商品は深夜の需要も高い。外食が閉店した後の需要もあると見ている。

時間帯別には夕夜間、20時以降の需要が高く、24時間営業の店舗では深夜の需要もある。曜日別では週末の需要が高い傾向にあるという。これはリアル店舗の需要の山と異なることから、「うまく組み合わせれば、お店のオペレーション的にも、一定の注文が入り続けるような形に持っていけると思っている」(吉田プレジデント)

デリバリーの売上げについては、1日10万円を売上げる店舗も少なくないという。売上比率では2割ほどをデリバリーで上げていることになる。新型コロナウイルスの影響が少なくなる中にあっても需要は引き続き高い状態にあることが分かる。

また、現在はUber Eatsの他、デリバリーサービスとして「Wolt」「menu」「出前館」も導入しており、デリバリーサービス導入店舗は4月4日時点で5671店に上る(複数サービス導入店もある)。「デリバリーのユーザーの取りこぼしがないように、複数のプラットフォームで展開している」(吉田プレジデント)

21年4月から導入を開始した「Wolt」については、5月2日にナチュラルローソン17店を含む1087店にまで導入が進み、Wolt Japanと提携するブランドの中でもローソンが最大の店舗数となった。

店舗拡大に伴って、取扱商品数も約700品目から約1000品目に拡大している。

拡大に際し、店頭在庫の自動連携機能を付加

Uber Eatsに関しては、4月10日からお客の「Uber Eats」アプリと店頭在庫有無の自動連携機能を持つ「ローソンデリバリーシステム」が稼働開始。リアルタイムではないが、ある程度頻度の高いバッチ処理のため、在庫の連動性は格段に高まった。さらに5月には取扱商品数を現在の700品目から3000品目へ、店舗の取扱商品の多くが対象となるように順次拡大する。

店頭在庫有無の自動連携機能については、これまでローソンの場合、店舗従業員が商品の在庫有無を確認してお客のアプリへの反映を行っていた。手作業で行っていたこともあって反映遅れや漏れなどが発生し、注文どおりに商品が用意できない事象が発生していたという。

自動連携機能によって店舗の在庫有無が自動的にお客のアプリに反映されるようになり、精度向上と店舗での在庫確認の作業時間の9割軽減につながるなど、効果が期待される。

ローソンのデリバリーサービスの位置付けは、『「好きな場所」に「欲しい商品」が「すぐに届く」というさらなる便利を追求』すること。これまでの『「コンビニに行けば、24時間好きな商品が買える」という便利については実現したことから、それに続くものとして位置付けた。

それによって、「お客様の大切な時間がもっと豊かになる為に、今後もリアル店舗とデリバリーの両軸で進化を続けて」いくという。

Woltについても、店舗の在庫を自動的に反映する仕組みを導入。注文時に店頭に在庫のない商品についてはWoltアプリ上に表示しないようにする、アプリと店頭在庫有無の自動連携機能を2月末から始めている。

「いままで19年からサービスを開始して、ほぼシステムの投資というところはやってこなかった。理由としては、システムを連携させると拡大に向けてのスピードが上がってこないため、最初の段階ではシステムとしては切り離しをして展開をしてきた。ただ、一気に拡大する上では非常に良かったが、いま5000店舗を超え、お店がだいぶ増えてきたこともあって、店舗の在庫の連携を一部していくことにした。システム上切り離されていたので、課題があったのがいわゆる欠品と言われている事象。注文したが、思ったとおりの商品が届かないという事象があったので、そこのお客さまにとっては不の改善をまずやりたいということで連携がスタートした」(吉田プレジデント)

自前主義のセブンに対し、ローソンはどうする?

吉田プレジデントは、「われわれのやろうとしていることは、お店を在庫の拠点化するという考え方。つまり、在庫拠点から実際に届けるお客さまとの物理的な距離が短いので、最短15分での配送を実現できる。およそ1kmから1.5kmの間であれば、注文いただいてから15分でお届けするということは物理的には可能。そのようなエリア展開、店舗のメッシュの置き方をしていきたい。お客さまが必要とするカテゴリーをローソンの中ではしっかり網羅できていると思うので、クイックEコマースとして加速させていきたいと思っている」と語る。

全国に張り巡らした店舗をクイックEコマースの拠点として活用する戦略は、デリバリーサービスの7NOWを強化中のセブン-イレブン・ジャパンの戦略とも重なるものだ。その点、セブン-イレブンは自前の仕組みで展開しているが、ローソンはあくまで外部のプラットフォームに出店する形を採っている。

その点について吉田プレジデントは、「最初から自社で仕組みを作って、さらにマーケティングコストもかけてお客さまを囲い込んで、ということになるとやはり時間がかかる。システム投資もかかる。お店のオペレーションのスケジュールも考える必要がある。だからまずは、デリバリーのニーズがどれだけあるか。まずは、すでにお客さまがいらっしゃるプラットフォームに出店する展開を中心として、基本的には『外食』の新しいお客さまを増やしたいという思いでスタートした」と語る。

その上で、「この先についてはいろいろなやり方があると思っているので、そこは幅広に検討していく。いまの段階でそれを『やらない』『やる』ということは申し上げにくい」と含みを持たせた。

5桁チェーンという店舗数があるということは、その分、多くの在庫拠点を持っていることを意味する。店舗網を生かし、オンライン、オフラインを組み合わせた新たなビジネスがクイックEコマースとして誕生する中、コンビニはその店舗数において圧倒的に有利な状況にあるといえる。

現状はプラットフォーム活用のローソン、自前主義のセブン-イレブンという対照的な戦略を進める2社の動きはもちろん、その他企業の動向と併せ、クイックEコマースの競争が一際、激しくなってきた。

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