10Xと薬王堂が「ドラッグストアDX推進プロジェクト」開始、店舗受け取りの「P!ck and」アプリ展開へ

2021.03.16

2021.03.17

チェーンストアEC(電子商取引)の垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer」を展開する10Xと、東北地方を地盤に322店(3月15日現在)のドラッグストア(Dg.S)を展開する薬王堂は3月15日、共同で「ドラッグストアDX推進プロジェクト」を開始したと発表した。

第1段階として、薬王堂の商品をスマートフォンから注文し、店頭または店舗駐車場で車に乗ったまま受け取る(ドライブスルー受け取り)ことができるアプリ「P!ck and(ピックアンド)」(ダウンロードURL:https://link-yakuodo.stailer.jp/pz4z5nu、薬王堂P!ck and 紹介サイトhttps://www.yakuodo.co.jp/pick-and/)の提供を同日より開始した。

本社を置く岩手県紫波郡矢巾町を中心とした4店での3月15日のサービス開始を皮切りに、年内に全店舗での導入を目指す。今後22年の開始を目指し、第2段階としてネット注文からのラストワンマイル配送となる宅配にもチャレンジしていくとしている。

3年程度かけて1店当たり1日6~8人程度の利用、将来的には売上げ3%程度が見込めるサービスとしていきたい意向だ。

薬王堂の西郷泰広・営業本部 DX推進室マネージャは薬王堂が展開するビジネスモデル、フォーマットを「小商圏バラエティ型コンビニエンスドラッグストア」と説明する。人口密度の低いルーラル(田舎)を支える小商圏型のフォーマットとして、商圏人口を7000人と捉えたフォーマットを出店している。さらに将来的には来店頻度を高めることでさらなる小商圏化を図り商圏人口5000人を目指すという。

広大な駐車場を構え、売場では広い通路で医薬品に限らず、食品など生活に必要な商品を幅広くそろえたあらゆる層をターゲットとする店だ。そのため、売上げに占める食品の構成比は40%以上に及ぶ。

ルーラルの小商圏での高シェアを目指すために品揃えの総合化を図っているわけだが、その場合、必然的にローコストオペレーションが鍵となってくる。「小商圏で収益を安定して継続的に上げるためにはローコストオペレーションの追求が必須。その一端として、シンプルな売場の徹底、ESLP(エブリデーセイムロープライス、同社では激得)、手動発注を大幅に削減する自動発注システムの導入に注力している。現在、店舗全体の平均の自動発注率は88~89%という高い水準で維持している」(西郷マネージャ)

薬王堂のビジネスを説明する西郷マネージャ

薬王堂として初めてのECの立ち上げ、およびネットでの商品注文のサービス

「東北地方は人口減少率、高齢化の進行がトップクラス。人口密度が低いと商圏が成り立たず、スーパー、コンビニ等が今後撤退していく可能性もある。買物弱者、買物難民と呼ばれる方が発生していくリスクが高い。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響も深刻で、高齢者層のリスクの高さによる外出しづらい状況、都心と比べて医療アクセスが不便という状況、さらに親戚、ヘルパーなどからの支援が届かない状況が現在進行形で続いている」(西郷マネージャ)

こうした背景によって、普通の生活が成り立たない人が増えていくことが懸念される。そこで今回、10Xをパートナーとして、人口減少・高齢化エリアにおける生活基盤確保に向けたDX推進プロジェクトとして「ドラッグストアDX推進プロジェクト」を立ち上げた。

その第1段階となるのが、ピックアンドというわけだ。店舗に滞在する時間を最小限にし、新しい生活様式に対応した非接触、非滞在型のサービスが実現可能となるとしている。

お客は「P!ck and」アプリで商品を注文し、「車上受取」か「レジ受取」を選択後、店舗に来店すると用意された商品をすぐ受け取ることができる。「車上受取」を選択した場合、店舗の駐車場に駐車後、従業員が車まで商品を届ける。

サービス料は注文につき総額で220円。受け取りは最短2時間後からで、当日16時までの注文で21時まで受け取りが可能。

今回のピックアンドは、薬王堂として初めてのECの立ち上げ、およびネットでの商品注文のサービスとなる。今回、約半年間、契約の締結からは4カ月で実現にこぎ着けた。西郷マネージャは、「デジタルに強みがある10Xさまがいたからこそ、ネット注文アプリのリリースだけではなく、店舗オペレーションの確立も含めて約半年間という非常に短い期間で実現が可能になった。自社での開発も検討したが、半年というスピードではできなかった」と語る。

取扱アイテムについては基本的に店舗と同じ。酒とたばこはサービス開始当初は取り扱えないが、順次取り扱いを開始していく。また、生鮮食品については当初スタートの4店にはわずかしかないが、対象店舗の拡大によって本格的な取り扱いになっていく見込み。

また、医薬品は店内受け渡しのみだが、数カ月以内にはネット販売の許可を取り、ドライブスルーなどでの受け渡しに対応する他、第2段階では宅配でも販売していく意向。

東北地方を世界に誇れる「課題解決」先進地域に

今回、10XのStailerとしてDg.Sには初めて導入となったが、薬王堂の場合、スーパーマーケットと同じように食品を軸にしたワンストップショッピングの使われ方が非常に多いこともあって、適していると考えられたという。

また、車の保有率も高く、駐車場も広いルーラルという点に加え、新型コロナウイルスの影響による非接触が望まれる環境下で、10Xとして初めてのドライブスルー受け取りの導入となったことも大きなトピックとなる。

Stailerにとって4つの「初」の取り組みとなった

また、今回薬王堂はStailerに新たに追加された店舗従業員向けアプリを初導入している。スマートフォンで注文が入った商品のピッキング、パッキング、お客の来店管理、商品の受け渡し、在庫・商品情報の即時管理を行うことができるもので、店舗で使用されているスマートフォン端末で利用できるため、従業員としても普段から使い慣れていることから迅速、安価にオペレーション態勢を構築することができるという。

店舗従業員向けアプリ

矢本真丈10XCEOは、「薬王堂さまには『未来の地方小売』に必要な条件がすべて詰まっている。1つ目が顧客体験を追求する素晴らしい企業文化があること。2つ目が小商圏でも利益が出て、お客さまにとって価値を絶えず提供できるインフラを創るというのが非常にユニークで、なおかつ世の中に求められていくものと思っている点。3つ目はオペレーションを研磨するという部分で、薬王堂さまがずっと投資されてきた部分」と今回、薬王堂との取り組みとなった背景を説明する。

なお、今回は第1段階として店頭やドライブスルーでの受け取りにとどまり、宅配は第2段階になった背景として、西郷マネージャは次のように説明した。「地域性の問題で、人口密度が低い東北地方でいきなり自宅配送まで行うのは、収益を上げるまでかなり難しいと考えている。そのため、まず第1段階で、店頭受け取り型のサービスを提供して、まとまった注文をいただくような環境、お客さまに支持していただくようなサービスの実現を目指して、まとまった注文が入ると判断できた段階で、ラストワンマイル配送も手掛けられればと考えている」

いずれにしても、今回の取り組みは、少子高齢化、人口減少が進む日本における大きな試みになる。

西郷マネージャは、「東北地方はときに課題先進地域といわれるが、10Xさまと共にこのプロジェクトを進めることで、東北地方が世界に誇れる『課題解決』先進地域といわれるように挑戦を続けていく」と力を込めた。

矢本CEOも、「課題先進地域の東北で、人口密度の低い商圏でも運営可能な小売りのDXの事例をつくれると、日本中の買物難民リスクにさらされているようなエリアに将来的に展開可能と思っている」と語った。

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