ロットとは?種類による意味の違いやロットを業務に用いるメリット、注意点を解説
2022.09.29
製造や物流、不動産など幅広い業種の製品単位として使われる言葉に「ロット」がある。業種間や使用するシーンによって、さまざまな種類があり意味も異なる。また、品質管理や製品管理においてロットが使用されるケースも多い。この記事では、ロットの概要や目的、ロットの種類ごとの意味、ロットを管理に用いるメリットや注意点を解説する。
ロットとは
ロットとは、製品などの最小単位のかたまりを表す言葉。「まとまった数量、一組」という意味の英語”lot”から由来している。おもに製造業において製品を製造するときの最小単位として用いられているが、他の業種でも使われるようになった。
ロットと同じくかたまりを表す単位に「ダース」があるが、ダースは「1ダース=12」とかたまりの数が固定となっている。一方ロットは「1ロット=10本」の場合もあれば、「1ロット=200個」「1ロット=1,000枚」と、かたまりの数が対象製品や業種によって変化するのが特徴だ。また、同じ業種の同じ製品でも、企業や工場によって1ロットの数が異なることも多い。
ロットの目的
ロットが用いられる目的を解説する。
利益やコストのコントロール
ロットは、製品の生産管理のために用いられている。たとえば製造業では利益の少ない製品を大量生産することで多くの利益を出す「薄利多売」タイプの生産管理を行うことがあるが、大量生産をすると在庫余剰となるリスクがある。
そこであらかじめ製品製造を受注する最低単位としてロットを設けることで、利益と在庫のバランスを調整できる。ロットの数は必要に応じて変動できるため、顧客のニーズや市場状況、在庫状況に応じて利益やコストをコントロールできるだろう。
業務の効率化
工場で製品を製造する際、異なる製品の製造を行うときには材料の入れ直しやラインの組み直しなどの、「切り替え(段取り)」という作業が発生する。切り替えは手間も時間もかかり、その分製品を製造できる時間が減ってしまうため、できれば同じ製品を連続して製造した方が効率が良い。
とはいえ、顧客側の「〇個だけ作ってほしい」という少ない数量での製造ニーズもある。そこで製品製造の効率とニーズとのバランスを取るために、ロットを決める。
製品や商品の管理
ロットは製造工程だけでなく、製品および商品の管理の面でも用いられる。製品や商品のロットごとにロット番号(ロットナンバー)を振り分け、番号で管理することで品質や在庫の適正化も可能だ。不良が発生した場合にも、ロット番号から工程や同ロットの製品の状態の確認ができる。
ロット番号による製品および商品の管理は「ロット管理」と呼ばれる。
業種ごとのロットの種類ごとの意味や特徴
ロットはおもに製造業で利用される最小単位だったが、現在ではさまざまな業種で活用されるようになった。業種ごとに使われるおもなロットの種類の意味や特徴を解説する。
製造業におけるロット
製造業におけるロットには「製造ロット」「購入ロット」「最小ロット」がある。
製造ロットとは、一定の決められた製造量の最低単位のことだ。製造ロットは、顧客からの受注数や在庫状況により変動する。製造ロットを決めることで、在庫や人件費を含めたコストのコントロールができるようになる。製造業においては、製造ロットに基づいて生産工程や従業員のシフトが調整される。
購入ロットとは、製品を取引先へ販売する際の最低単位のことだ。受注ロットまたは注文ロットとも呼ばれる。購入ロットや在庫が少ない場合は、ロット数を下げるか販売価格を上げる、購入ロットが多いまたは在庫が過剰気味のときはロット数を上げたり販売価格を下げたりすることなどで、利益と在庫のコントロールができる。
購入ロットは製品の数量だけでなく販売価格にも影響するため、製造業側だけでなく、購入する側の取引を決める材料としても重要な項目と言えるだろう。
最小ロットは、ロットの最小単位を指す。「最低でもこの数以上を販売しないと利益が出ない」数が設定される。顧客側が最小ロットよりも少ない数での製造や販売を希望した場合には、ロット数を少なくする代わりに価格を上げるなどで利益をコントロールできるのが特徴だ。
物流におけるロット
物流業界では、「輸送ロット」「配送ロット」「保管ロット」が用いられている。
輸送ロットとは、輸送する品物をまとめた数量の単位だ。配送ロットは、輸送ロットと同じく配送物をある数量でまとめた単位のことを指す。
保管ロットは同一条件で保管される品物を、ある数量ごとにロットでまとめておくこと。物流業界では、物流業務のフェーズごとにロットで管理されることで、業務の効率化につなげている。
建設・建築におけるロット
建設や建築業界においては、全体の工程を細分化した際のひとつの作業が1ロットと呼ばれる。たとえば外装で1ロット、基礎で1ロットなどだ。
また、建設業界においても「運搬ロット」「検査ロット」など全体の工程を細分化し、仕事や作業のフェーズごとの呼び方としてロットが使われることもある。
金融におけるロット
金融業界では、取引における最小単位をロットと呼ぶ。たとえば、「取引は1ロットから」などで使用される。不動産投資や取引では、少ないロットで取引ができる物件を「小ロット物件」と呼ぶ。
ロットを業務に用いるメリット
ロットを製造や品質管理、保管などの業務に用いることで得られるメリットを解説する。
工程が管理しやすくなる
ロット管理を取り入れあらかじめ製品にロット番号を振り分けておくと、工場での製造から在庫管理、出荷後の輸送、店舗での販売とサプライチェーン内での工程を一元管理できる。製品の出荷の流れや実際に入荷された店舗なども、ロット番号によって後追いも可能だ。
近年ではロット管理の技術も向上したことで、ある一定のひとかたまりにしか付けられなかったロット番号が、製品ひとつひとつに付けられるようになった。物流倉庫に入庫後各店舗へ配送など、製造が同ロットでも出荷先が異なる場合でも、容易に管理できる。
不良品が特定しやすい
出荷前に不良品に気が付かず、そのまま出荷してしまった場合でもロット番号によって不良品を特定しやすいのもメリットのひとつだ。ロット番号から製造工場や製造年月日を照らし合わせ、不良品に該当する製品が特定できる。さらに現在どの工程にあるかも把握できるため、回収もスピーディにできるだろう。
同じ日や場所での製品すべてが不良品である可能性がある場合も、同ロットやロット番号の近い製品をすぐに特定できるため、不良品の有無の確認もできる。万が一大規模なリコールが発生してしまった場合でも、不良品の発生範囲を特定できるため、被害を最小限に食い止められるだろう。
在庫や陳列で適正な品質管理ができる
一般的に、ロット番号は製造年月日順に付けられることが多い。ロット番号が古い製品を前に、新しい製品を後ろにすることでおのずと古い製品を先に使う「先入れ先出し」ができる。生鮮食品をはじめ、経年によって品質の変化や劣化がある製品や商品を取り扱う場合にも、古いものを先に販売したり、消費したりできる。消費期限切れの在庫を抱えてしまうリスクが少なくなり、在庫や陳列の適正化につながるだろう。
利益の向上とコスト削減
製品をひとつではなくロットというかたまりで販売することで、ひとつずつ販売するよりも多くの利益が得られる。製造の段階である一定の数量を決めて製造することで、余剰在庫や余分な人的コストの発生も抑えられるだろう。
ロットを用いるときの注意点と対策方法
ロット管理を行うことで利益や業務上で多くのメリットが得られる一方、注意点もある。ロット管理において覚えておくべき注意点と対策方法を解説する。
注文数量を間違えないようにする
ロットを受発注や注文で用いるときに、よくあるミスが注文数量を間違えてしまうことだ。たとえば1ロットの数量が20個の製品を、20ロット受けたとする。実際の製造数量は400個だが、20個と間違えてしまうケースがある。
ロット数を入力すると注文数量が自動変換される、最低ロットの数量に満たない場合にはエラーが出るなど、ロット数と数量を紐づけできる受注システムなどを導入し、ミスを防ぐのが重要だ。
ロットでの数量を都度確認するようにする
取引先やニーズに合わせて、ロットの数は変動することがある。ロットの数が変動しているのにもかかわらず、前回の取引のままのロット数にしてしまって製品が足りない、逆に多く作ってしまった、といったミスが出ることがある。
季節商品などで切り替えがある商品や、パッケージデザイン変更などの終売間近の商品などは、「いつもは1ロット200だが、今回だけ1ロット50」などイレギュラーによってロットの数量が変動することもある。ロットの数量は都度確認するようにして、ミスを防ごう。
顧客の小ロットニーズへの対応力を身に付ける
製造側にとっては、ロットの数を大きくしてまとめて作った方が作業の効率も良く、利益にもつながる。一方、近年消費者ニーズの多様化により「今より少ない数量で作ってほしい」という小ロットのニーズも拡大している。
製造側の都合のみを優先したロット製造や管理では、消費者ニーズに合わせた生産活動ができない企業として競合との競争に負けてしまう可能性がある。企業としての優位性を持ち続けるためには、業務を効率化する、材料や物流のコストを下げるなど小ロットニーズに対応できる仕組みを構築していくのも重要だ。
ロットを適切に管理することで利益の最大化や業務効率化につながる
ロットの概要や目的、業種別のロットの種類、ロットのメリット、デメリットを解説した。ロットは製造工程だけでなく、流通や出荷、在庫管理などの面でも多くのメリットがあるため、幅広い工程や業種にて活用されるようになった。ロット番号を付け、さらに追跡などができるシステムを導入すれば、よりロットを活用した管理業務の効率化や利益の最大化につながるだろう。