キャッシュレス決済を店舗に導入するメリットとは?導入方法やデメリットと併せて解説
2024.06.04
キャッシュレス決済とは、現金を使用せず、支払いが完了できる決済方法である。政府の推進する取り組みや、新型コロナウィルス感染症をきっかけに、近年キャッシュレス決済を導入する店舗は増加傾向にある。では、店舗に導入することで具体的にはどのような効果が見込めるのだろうか。
今回は、キャッシュレス決済の基礎知識から導入おけるメリットデメリット、導入方法まで解説する。併せて、決済サービスの選び方や導入時のポイントについても取り上げる。
目次
キャッシュレス決済とは

キャッシュレス決済とは、現金以外の方法で決済を完了させることを指す。キャッシュレス決済の代表として挙げられるのはクレジットカードであるが、近年では電子マネーやQRコード決済などさまざまなサービスが誕生している。
日本でも、新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけとして、キャッシュレス決済を導入する店舗が増えている。
また、消費者側でもキャッシュレス決済の利用は年々拡大している。2020年に消費者庁が行った「キャッシュレス決済に関する意識調査」によると、支払手続が簡単・迅速にできる、ポイントや割引などの特典が得られる、現金を持ち運ぶ必要がなくなるなどの理由から、キャッシュレス決済を好んで使う人が増加傾向にあることがわかっている。
今後キャッシュレス決済はますます需要拡大すると見込まれている。ここからは、キャッシュレス決済の基本知識や、店舗に導入した場合のメリットデメリット、具体的な導入方法などについて解説していく。
キャッシュレス決済の支払い方式
キャッシュレス決済には、前払い、後払い、随時払いの大きく3つの支払い方法がある。それぞれの支払い方法の特徴について詳しくみていこう。
前払い方式
前払い方式とは、消費者が事前に一定の金額をチャージし、その残高の範囲において決済を行う方法を指す。広く電子マネーと呼ばれるもので、スマホ決済や非接触ICカード、プリペイドカードなどが該当する。
現金チャージの方法はさまざまで、カード購入時にチャージするものや、ATMや紐付けた銀行口座から入金するものがある。チャージした金額の範囲内でしか決済ができないというデメリットがある反面、使いすぎを抑制できるというメリットもある。
後払い方式
後払い方式とは、決済を行った翌月や翌々月など、決められた期日に使った金額がまとめて銀行口座から引き落とされたり、請求されたりする決済方法を指す。ポストペイ型とも呼ばれ、クレジットカードに代表される決済方法である
支払い期日までに利用した金額が口座にあればよいため、決済時点で口座残高が不足していても利用できるメリットがある。しかし、決済時に現金の支払いや口座から引き落としがあるわけではないため、金銭を支払った感覚が薄く、使いすぎてしまうケースがある点は注意が必要である。
即時払い方式
即時払いとは、決済と同時に紐付けた銀行口座から代金が引き落とされる決済方法を指す。ジャストペイ型とも呼ばれ、デビットカードに代表される決済方法である。
口座残高がそのまま支払い上限となるため、使いすぎや予定外の買い物をするリスクを抑えられる点がメリットである。銀行口座があればカード作成ができるため、クレジットカードに抵抗があるという人には特に向いている決済方法であるといえる。ただし、口座に残高がないと決済が行えない点は注意してほしい。
キャッシュレス決済の種類

昨今さまざまなサービスが広がっているキャッシュレス決済であるが、具体的にはどのような種類があるのだろうか。キャッシュレス決済を代表する、クレジットカード決済、電子マネー決済、QRコード・バーコード決済について、特徴やメリットデメリットを確認していく。
クレジットカード決済
クレジットカード決済は、決済時にクレジットカード会社が代金を立て替え、後日、利用した代金が口座などから引き落とされるものである。日本人にも馴染みが深いため、キャッシュレス決済と聞いて最初にクレジットカードを思い浮かべる人も多いだろう。決済時に現金の持ち合わせがなくても支払いが可能なことから、消費者は高額な買い物がしやすく、店舗にとっては、顧客単価のアップも期待できる。
VisaやJCB、MastercardやAmerican Expressなど、さまざまなブランドがあるが、どのブランドを導入しても基本的には、決済端末にカードを差し込むことで支払いが完了する。近年では、決済端末にかざすだけで素早く決済できる、タッチ決済に対応したカードも登場しており、利便性はますます高まっている。
電子マネー決済
電子マネー決済とは、電子データをやりとりすることで、現金を使用する場合と同じように決済を完了させる方法である。Suica・PASMOなどの交通系、WAON・nanacoなどの流通系、iD・QUICPayなどのクレジットカード系など、さまざまなサービスが揃っているのが特徴だ。
事前にチャージした金額が支払い上限となるため、クレジットカードのように使い過ぎを防げるのもメリットといえる。利用シーンは幅広く、手軽に使えるため、特にカフェやランチ、低額の買い物などで利用されることが多い。
近年では、クレジットカードや銀行口座と連動し、残高が設定金額を下回ると、自動でチャージされる「オートチャージ機能」が付帯したサービスも登場している。都度のチャージの手間が省け、残高不足を気にすることなく支払いできるため、利用者も増えている。
電子マネー決済は、基本的にスマートフォンや専用カードを決済端末にかざせば決済が完了する。スムーズに決済が完了するため、会計時間の短縮が期待できるのは店舗にとって大きな魅力といえるだろう。
QRコード決済・バーコード決済
QRコード・バーコード決済は、QRコードやバーコードを利用した決済方法を指す。消費者があらかじめインストールした決済アプリに表示されたQRコードやバーコードを店舗側が読み取ることで、決済が完了する仕組み(ストアスキャン方式)である。サービスによっては、消費者が店舗に設置されたQRコードを読み取り、金額を入力することで決済が完了する(ユーザースキャン方式)仕組みのものもある。
中国でいち早く普及が進んだ決済方法であるが、近年ではさまざまな企業が参入し、日本でも徐々に利用者が増え始めている。具体的なサービスとしては挙げられるのは、PayPayやLINE Pay、au PAYや楽天ペイなど。ライフスタイルや機能、支払い方法などによって、消費者が利用サービスを柔軟に選択できるのがポイントである。
キャッシュレス決済を店舗に導入するメリット

さまざまな種類のあるキャッシュレス決済であるが、導入することでどのような効果が見込めるのだろうか。ここからはキャッシュレス決済導入のメリットについて解説していく。
販売チャンスを逃さない
キャッシュレス決済の大きな特徴は、手元に現金がなくても、商品購入やサービス提供が受けられる点である。消費者はとっては、より気軽にショッピングを楽しめる点は大きなメリットといえる。そのため、キャッシュレス決済に対応していないと、せっかく来店した消費者の購入意欲を潰してしまう、他店舗へ消費者が流れてしまうなど、さまざまなリスクに繋がる可能性がある。
キャッシュレス決済を導入し、支払い方法の選択肢を増やすことは、販売チャンスを逃さないことはもちろん、消費者が店舗に訪れるきっかけの一つとなり得る。特に外国人客の多いエリアの場合は、早急にキャッシュレス決済の導入を検討することをすすめたい。
客単価アップが期待できる
現金決済と比較すると、キャッシュレス決済の方が購買に関する心理的ハードルが低くなる傾向がある。手元に現金がなくても支払いができるため、高額商品の購入や、来店時のついで買いも期待できる。キャッシュレス決済により、消費者の購買意欲が向上するため、客単価のアップが見込める点は魅力といえる。
サービスの質や生産性向上につながる
キャッシュレス決済を導入することで、レジでの会計処理の効率化が図れる。現金の受け渡しなどの煩雑な業務を省けるため、スムーズな会計が可能となり、釣り銭ミスや現金管理などの手間も軽減できる。来店した客をレジ前で待たせる時間も減るため、顧客満足度の向上につながるのも大きなメリットといえるだろう。
防犯対策にも効果的
キャッシュレス決済を導入すれば、店舗に多額の現金を置く必要がなくなる。強盗や盗難、従業員による横領などのリスクを最小限に抑えられるので、防犯対策としても効果的である。
衛生面での不安軽減
新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、不特定多数の人間を媒介している現金に触れたくないと考える消費者や従業員も増えているだろう。キャッシュレス決済は、非接触で決済が完了するため、衛生面の不安は大幅に軽減できる。消費者が安心して店舗を利用できるのはもちろん、従業員も安心して業務にあたれる点はメリットである。
キャッシュレス決済を店舗に導入するデメリット

導入することで多大なメリットが期待できるキャッシュレス決済。では、デメリットはどのような点が挙げられるのだろうか。ここからは、キャッシュレス決済導入における注意点についてみていこう。
初期費用や手数料がかかる
キャッシュレス決済の導入には、初期費用、端末導入費用、月額費用、決済手数料など、さまざまな費用が発生する。選択するサービスによって、どの費用がどれだけかかるかが大きく異なるため、導入前にしっかりと確認することを勧める。
現金化までに時間を要する
キャッシュレス決済の場合、現金決済と異なり、売上金がすぐには手に入らない。利用するサービスによっては、現金化までに時間を要することもあるため、資金繰りに影響が出る可能性も考えられる。また、複数のサービスを利用する場合、入金タイミングが異なり、管理が煩雑になるケースがある点はデメリットの一つといえる。
災害やトラブル発生時に使用できなくなることも
災害や停電などにより通信網が遮断されると、キャッシュレス決済の利用ができなくなるケースがある。また、固定のWi-Fi機器を店舗で利用している場合、通信障害などによっても、キャッシュレス決済の利用が不可となってしまうことがある。導入前にトラブル時の対応やサポート体制について確認し、万が一の際にも慌てずに対応できるようにしておくと安心である。
導入するキャッシュレス決済サービスを選ぶポイント
キャッシュレス決済サービスを導入したいが、サービスがありすぎてどれを選んでいいかわからない人も多いだろう。ここからは、サービス選定時に着目してほしいポイントについて解説する。
利用者数の多いサービスを選択する
せっかくキャッシュレス決済を導入しても、利用客が少なければメリットを十分に享受できない。そのため、導入を検討する際には、できるだけ多くの人が利用するサービスを選ぶことが重要である。キャッシュレス決済のうち、最も利用者数が多いのはクレジットカード決済であり、次いで、電子マネー決済、QR・バーコード決済となっている。どのサービスを導入するか迷ったら、利用者数を参考に選択するとよいだろう。
自店の客層や立地、客単価を参考に
店舗の立地や客層、客単価によって、利用頻度の高いキャッシュレスサービスは大きく異なる傾向がある。そのため、自店舗の地域特性や客層などを踏まえて、導入サービスを選定するのも有効である。たとえば、高額商品を扱う店舗であればクレジットカード決済、数百円から数千円程度の客単価の店舗であれば、電子マネーやQR決済など気軽に利用できるサービスを選ぶといった具合である。自店舗に適したサービス導入ができれば、高い利用率が期待できるため、キャッシュレス決済のメリットを大いに実感できるだろう。
キャッシュレス決済の導入方法

キャッシュレス決済導入するには、キャッシュレス決済事業者との直接契約もしくは、決済代行会社を利用した契約を行う必要がある。それぞれの特徴やメリット、デメリットについて確認していこう。
キャッシュレス決済事業者との直接契約
キャッシュレス決済事業者それぞれと、直接契約を結ぶことでサービスの利用が開始できる。導入したいサービスが1つまたは少数の場合や、手数料等を抑えたい場合は、直接契約を選択するとよいだろう。ただし、サービスごとに専用端末を用意しなければならない、
サービスによって締め日や入金日等が異なるなど、契約するサービスの種類や数によっては、管理・運用が煩雑になるケースがある点は注意が必要だ。
決済代行会社を利用した契約
決済代行会社と契約することで、キャッシュレスサービスの利用を始めることもできる。決済代行会社を通す場合、その会社が用意する専用端末1台で、複数のキャッシュレスサービスが同時利用できる。締め日や入金日なども統一されるので、会計管理の面でもメリットが大きい。申し込みから運用開始までワンストップで完了できる手軽さがあるが、直接契約と比較すると決済手数料などの経費が余分に発生する点はデメリットといえるだろう。
自店舗に合ったキャッシュレス決済サービスの導入を
現金支払い以外にクレジットカードや電子マネー、コード決済など、多様な支払いチャネルを設けることは、消費者にも店舗にも多くのメリットをもたらす。キャッシュレス決済のメリットを最大化させるためにも、導入するサービスや契約方法の選択は特に重要なポイントとなる。立地や客層、客単価などを考慮しながら、自店舗に最適なキャッシュレス決済サービスの導入を行ってほしい。