在庫ロスとは?種類やロス率の計算方法、在庫ロスを防ぐ方法など紹介
2024.07.25
在庫ロスとは、企業が在庫として抱えている商品や材料がさまざまな原因によって、売れ残ったり、使用されなくなったりして経済的に損失を被ることを指す。このロスは商品の品質低下や劣化、期限切れなどによる価値の減少や、マーケットの変動による需要の減少などが主な原因となる。
また、在庫管理が適切に行われていない場合や過剰な在庫を持ち過ぎている場合も、在庫ロスが発生しやすくなる。このような在庫ロスは企業の収益や経営効率に悪影響を及ぼすため、在庫管理の適正化が重要となる。
在庫ロスの種類
値引きロス、廃棄ロス
値引きロス、あるいは廃棄ロスとは、在庫として保有している商品や材料が何らかの理由で使用されることなく廃棄されたり、値引き販売を行うことで、結果として経済的損失が発生すること。
値引きロス、廃棄ロスが発生するケースとして、消費期限や賞味期限に基づく販売期限が迫っている、あるいは過ぎてしまう場合が挙げられる。特に食品、医薬品、化粧品といった期限が設定されている商品は、期限を過ぎると安全性や品質が保証されなくなるため、法的にも販売が禁止され、廃棄せざるを得なくなる。
あるいは、販売が見込める量を大きく超える量の商品を仕入れてしまった場合も、商品を値引きして販売せざるを得ない状況を作り出す。さらに最悪の場合は廃棄せざるを得ない状況になってしまう。
廃棄は、商品の仕入れに関する原価、コストなどがすべてむだになってしまうことから特に避けたいものである。商品が売れ残りそうになったら、できるだけ低い値引率で売れるように、早めに値引き販売を行うことが好ましい。
機会ロス(機会損失)
機会ロスは、在庫管理の不備や予測の誤りによって実際に商品があれば売上げが立ったであろう状況において、販売の機会を逸してしまうことでビジネスチャンスを逃してしまうことを指す。
例えば、キャンペーンなどが成功して需要が急増した際に、販売可能な在庫が不足している場合などに起こり得る。結果として、追加の販売機会が失われ、企業の収益に悪影響を及ぼすことになる。
また、売れ残りを恐れ、商品を仕入れる数を抑えることで、結果として早い段階で商品が売り切れてしまう状況なども、機会ロスが発生している状況といえる。「売り切れたから良し」とするのではなく、「もし商品があればさらに売上げが上がったのではないか」と常に適正な販売量を模索する姿勢が重要である。
また、POSデータを見る際にも、機会ロスは重要な要素となる。実際には売れる商品であるにもかかわらず、売場に少数しか並んでいなかったとすると、その商品は売り切れた後に売上げが立たないことになる。つまり、売り切れた後は機会ロスが発生しているということになる。
データ上は「売上げが低い商品」「あまり売れない商品」と見なされてしまう恐れがあるのだ。そのため、「売り切れた時間」に着目する必要がある。こうした視点は売場づくりにおいて非常に重要である。
棚卸しロス
棚卸しロスとは、実際の在庫数量が帳簿やシステム上の在庫数量と一致しないことで発生する損失を指す。棚卸しロスは、在庫管理の不備や人為的なミス、商品の損失や万引きなど外部要因が原因で発生することがある。
実際の在庫と帳簿やシステム上の在庫量が異なることは、お客に対する商品の提供が適切に行えないことにもつながり、顧客満足度の低下や販売機会の逸失につながる。
また在庫量の把握が適切に行われていないために、発注のタイミングを逃すなどの発注ミスも起こる。
在庫ロスにおけるロス率の計算方法
在庫ロスに対する対策を講じるためには、ロス率を把握することが重要だ。ロス率を把握することによって、在庫管理が適正に行われているか、重要予測の精度に問題がないかを見直すことが重要だ。
ロス率の計算式は以下の通り。
ロス率 = ロスの合計金額 ÷ 売上高 × 100
ロスの合計金額を計算する方法は、
ロスの合計金額 = 廃棄個数 × 売価 + 値引き個数 × 値引き金額(値引き金額が複数発生した場合は、金額別に足す)
例えば、5000円で販売している商品100個のうち、70個を定価で販売し、20個を2000円引きで販売し、10個が売れ残り廃棄した場合のロス率は以下の通りとなる。
例)ロスの合計金額
廃棄:10個 × 5000円 + 値引き:20個 × 2000円 = 9万円
例)売上高
5000 × 70個 + 3000 × 20個 = 41万円
例)ロス率
ロスの合計金額:9万円 ÷ 売上高:41万円 × 100 = 25.7%
在庫ロスを防ぐ方法
在庫の廃棄や販売機会の損失を防ぐためには、適正在庫の維持が欠かせない。
適正在庫とは在庫量が欠品にもならず、過剰にもならず、企業が利益を出せる在庫量のことを指す。在庫数が少ないと欠品になり、需要があったときに出荷や販売ができず、利益を出せない。また、多すぎても管理コストがかかり、値引きや廃棄するケースも出てきてしまう。欠品と過剰在庫を防ぎ、企業の利益を最大限出せる在庫数が、適正在庫である。
適正在庫を維持する方法として、需要予測の精度向上や発注方法の見直し、製造リードタイムの短縮などが挙げられる。適正在庫やその維持については次の記事で詳しく解説している。
適正在庫の維持と関連して、在庫管理システムの導入も在庫ロスを防ぐ上で検討すべき内容だ。在庫ロスの発生は在庫数の把握や帳簿への記入漏れ、発注ミスなど人為的なミスも原因となり得る。
在庫管理システムを導入することで、システムによって在庫データを管理できるようになるため、在庫の数え間違いや記入漏れなど人為的なミスが発生しにくくなる。また、在庫数の変動がリアルタイムで可視化できるようになるため、商機を逃さない適切な発注にもつなげることもしやすくなる。