スーパーマーケットの売場づくりの考え方や工夫、テクニックなどを紹介

2024.07.24

お客の目を引き付けて購買意欲を促進し、店の売上向上に寄与する売場づくりとはどのようなものだろうか。あらかじめ、買う物を決めずに来店するお客も多い中では、最適化した売場で商品の魅力を訴求することが重要である。

ここではスーパーマーケット(SM)に特化し、売場づくりに重要なインストアマーチャンダイジングの概念、売場づくりの前提、売場づくりのテクニックまで網羅的に解説していく。

スーパーマーケット 売場づくりのためにインストアマーチャンダイジングを知る

SMの売場づくりをする際、知っておきたいのがインストアマーチャンダイジング(ISM)の概念だ。マーチャンダイジングは「商品化計画」「商品政策」といった意味を持つ用語で、価格、時期、数量などを適切に設定し、お客へ商品を提供する活動のことを指す。

一方、ISMは、商品の品揃えや陳列方法を統計的に検討し、収益の最大化につなげていく戦略を意味する用語。広義の意味を持つマーチャンダイジングに対し、店内の品揃え、商品陳列における活動に着目したのが、ISMといえる。

ISMには大きく分けると、「インストアプロモーション」と「スペースマネジメント」の2種類の手法が存在するとされる。

インストアプロモーション

インストアプロモーションとは、店頭における販売促進活動を指す用語で、価格主導型と非価格主導型の2種類が存在する。

タイムセール、バーゲンによる特売や、商品の内容量を増やして購買意欲を促進する増量パックなどは価格主導型に該当する。対して、商品の実演販売やデジタルサイネージの設置による販促などは非価格主導型に該当する。

昨今ではEC(電子商取引)市場の成長などによって、リアル店舗の意義が改めて問われているが、実際に商品の品質を目で確かめて購入したいというお客が多いのも事実であろう。インストアプロモーションでは、ECサイトでは実現できない買物体験を消費者へ提供することができるといえるだろう。

スペースマネジメント

スペースマネジメントとは、売場のレイアウトやゴンドラの棚割りを指す用語である。「見やすい」「選びやすい」「取りやすい」を実現できるよう、店頭商品を用途、デザイン、価格などでグルーピングして並べる。

また、関連商品同士を近くに陳列するなど、お客をスムーズに誘導して購買意欲を喚起することが目的となっている。店側の視点でも、店頭商品を整理することで商品管理が容易となり、品切れや過剰在庫の抑制につながるのもメリットと考えられるだろう。

次に、このスペースマネジメントを最適化する方法を主に紹介していく。

SMの売場をつくる上での前提

SMの売場をつくる上では、商品配置のテクニックを知ることも必要だが、来店者の動線設計や売場レイアウトの変更頻度など、知っておきたい基本も存在する。まずは、売場づくりの前提から見ていこう。

来店者目線、動線を意識する

売れる売場づくりの大前提となるのが、来店者目線でレイアウトを設計することである。お客が来店した際、どのような商品が売られているか認識してもらうことは非常に重要になる。一見して取扱商品が不明瞭な店舗では、たとえ適切な商品を販売していても、客足が遠のく可能性もある。

商品の視認性を高めるためには、①独立した什器で商品を目立たせる、②価格やカテゴリーごとに商品群を並べる、③来店者が見やすく手に取りやすい高さに商品を配置するなど、さまざまなテクニックが存在する。

作業のしやすさなど生産性に配慮しつつも、店の都合を優先するあまり来店者から見て不便な売場にならないよう、あくまで来店者の目線で売場を構築することを意識したい。

来店者の動線も考慮しておきたいポイントだ。例えば、SMでは入口付近に青果の野菜、果物を配置しているのが定番になっている。これは料理用途が広く、購買頻度が高い野菜から買ってもらうという意図もあるが、一方で季節感や彩りのある商品で来店者の購買意欲を刺激することも目的の1つとなっている。

続けて、精肉、鮮魚売場へ誘導し、動線の最後を惣菜で締める店も多い。その他、回遊を促す通路設計や狭さを感じない通路幅の確保など、最適化した動線設計で、来店者がより多くの商品に触れられるようにすべきといえるだろう。

定期的に売場を変更する

売場レイアウトは一度設計、構築してゴールではなく、定期的に見直すことも重要である。時代によって求められる売場は変化する可能性がある。常により良い売場、より便利な売場を追求することが重要だ。

また、季節性のある商品を販売する際は、売場にも季節感を持たせることで来店者の興味関心を引き、視認率の向上が期待できるといった細かい点にも注意すべきといえる。

ディスプレー、POPなどツールの活用

SMの売場を作る際は、展開方法も考慮したい。例えば、商品の脇に設置されているPOP。

パッケージに記載のない情報や従業員が実際に使用した感想などをPOPに記載すれば、商品の魅力、価値をより多く伝えることが可能。その他、商品の割引価格をPOPに大きく記載することで購買意欲を促進する店も少なくない。

売場づくりに必要な什器だけでなく、ディスプレーやPOPといったことにも注力することで、商品の視認性がさらに高まる効果が期待できる。

SMの売場づくりで使えるテクニック

SMの売場は、店内の広さや取り扱う商品、什器の種類などにより、さまざまな見せ方が存在する。ここでは、商品が魅力的に見える売場づくりのテクニックを紹介していく。

島(アイランド)陳列

島陳列(アイランド陳列)とは、通常の陳列棚とは別に、通路の中央などに什器を設置して商品を訴求する手法である。視認性の非常に高い陳列方法で、特売品や季節品など店として強く売り込みたい商品を来店者に訴求したい場合に用いられる。

また、360°全方向から商品を見渡せる什器を利用するケースが多いのも特徴的。来店者から注目されやすいことに加え、商品を手に取りやすいのもこの陳列方法を活用するメリットといえる。

一方で、通路に設置した什器が来店者の歩行の妨げとなる可能性も指摘される他、客動線の複雑化を招く点などはデメリットといえそうだ。また、過度に商品を積み上げると、店内の見通しが悪化してしまう。回遊性の低下を引き起こさないためにも、島陳列の多用は避けつつ、活用する際は来店者の動線を意識することが重要となるだろう。

エンド陳列

エンド陳列とは、人目に付きやすい主通路面に商品が配置されるよう陳列棚の両端を活用し、商品を並べる手法である。通常の陳列棚に比べ、約2倍の販売量を期待できるともいわれており、季節性の高い商品や広告の品などが並べられるケースも多い。

また、ゴンドラの商品と相関性のある商品を陳列すれば、来店者をゴンドラへ誘導することも可能。ただし、エンド陳列はスペースが限られている他、多くが単品大量陳列に用いられるため、売り込みたい商品を厳選することが求められる。また、ゴンドラの商品と相関性の高い商品を選定することもポイントとなるだろう。

一方で、エンド陳列内で関連する商品を組み合わせた形の「提案型」のエンド陳列という考え方もある。

ジャンブル陳列(投げ込み陳列)

ジャンブル陳列とは、商品をワゴンやかごなどの什器に無造作に陳列する手法で、投げ込み陳列とも呼ばれる。「乱雑にする」「ごちゃ混ぜにする」といった意味を持つ「ジャンブル」が由来となっている。

商品を大量に陳列する手法で、視認性に優れており、高い訴求力を持つのが大きな特徴。規則正しく並べられた陳列棚より気軽に商品を手に取りやすく、また大雑把に商品を配置することで買い得感も演出可能なため、購買意欲の促進も大いに期待できる。

従業員視点では、商品を投げ込むだけで陳列作業は完了。業務負担の軽減にもつながる陳列手法と言える。

ただし、無造作に配置するジャンブル陳列は商品が傷つきやすいことに加え、お客から処分品のように捉えられる可能性もある。高級品や高品質な商品の訴求には不向きと考えられる。

また、基本的に賞味期限が比較的長い商品で展開されるが、日付管理が難しい点も特徴として挙げられるため、消費期限の商品や賞味期限が短い商品には適していないといえる。

縦(バーチカル)陳列

縦陳列(バーチカル陳列)とは、カテゴライズした商品群を縦方向に並べる手法である。

来店者の目線は横に動いていくため、商品を横方向にカテゴライズすると、目線の高さによっては見過ごされる商品群が出てくる。

一方で縦陳列は、同一カテゴリーの商品が縦方向に並んでいるため、来店者の目線の高さに関係なく、多くの商品群を視認してもらうことが可能。各カテゴリーの商品を視認してもらうためには必須の考え方といえるだろう。

横(ホリゾンタル)陳列

横陳列(ホリゾンタル陳列)とは、カテゴライズした商品群を横方向に並べる手法である。横方向への移動を誘発できるため、陳列棚全体を見渡されやすいのがメリットといえる。店内の回遊性を高める施策としても有効だ。

ただし、縦方向への視線誘導が難しくなるので、後述する「ゴールデンライン」や「Zの法則」などを意識した商品陳列も重要となる。

スロット陳列

スロット陳列とは、陳列棚の中段、下段の棚板を取り外し、縦の空間を確保して商品を並べる手法である。主に大型、中型商品を並べたり、商品を大量に並べる際にスロット陳列は利用される。

商品を目立たせることが可能であり、来店者の購買意欲を促進することが可能。また、定番の陳列棚に変化を持たせ、注意を喚起できるのもメリットと考えられる。

飛び出し陳列、突き出し陳列

飛び出し陳列とは、什器の棚板を伸ばして商品を並べる手法である。高い視認性で商品を訴求できるので、特売品や季節品など売り込みたい商品がある場合に活用したい。

突き出し陳列は、通路上に飛び出すように商品を陳列する手法。訴求力は高いが、客動線が乱れるため、これを実施するか、しないかは企業の考え方による。

ウイング陳列

ウイング陳列とは、ワゴンやかごを陳列棚の横に突き出して置き、商品を並べていく手法である。通常の陳列棚とは別に商品を並べることで、高い視認性を実現でき、ついで買いなども促進可能。

ただし、突き出し陳列同様、ウイング陳列は通路の幅を圧迫してしまうので、十分な広さを確保した上で利用を検討してほしい。

SMの売場づくりで役立つ知識

SMの売場づくりには、お客の視線を意識した陳列テクニックも存在する。次に、売場づくりをする際に役立つ知識を解説していく。

フェーシング

フェーシングとは、陳列棚に並べる商品と、その商品の最前面数を決定するプロセスを指す。カテゴライズ済みの商品群を、陳列棚のどこに配置するか決めるゾーニングを行った後、フェーシングを実施して商品位置を決定する。

売れ筋商品は視認性を高めるためにフェーシング数(表面に出ている商品数、売場の広さと同じ)を多くし、そうでない商品はフェーシング数を少なくするのが基本。目指すべきは、売れ数に比例したフェーシング数となる。これが実現すると商品の補充の頻度をそろえられ、店舗運営の効率化を図ることができる。

適切にフェーシングを行えば、死に筋商品による陳列棚の圧迫を防止できることに加え、過剰在庫の抑制につながり、商品の管理コスト削減も見込める。

ゴールデンライン

ゴールデンラインとは、最も見やすい高さで、商品を手に取りやすい陳列棚の範囲を指す。男性なら地上から約70~160cm、女性なら地上から約60~150cmの高さがゴールデンラインといわれている。

このゴールデンラインの高さはあくまで目安となる。例えば、通路が狭ければ来店者と陳列棚の距離は近くなるので、ゴールデンラインの範囲も狭まる。また、ターゲット層が高齢者の陳列棚であれば、ゴールデンラインの高さも低くなる。

通路幅やターゲット層などを考慮した上で、自店に最適なゴールデンラインを見定めることが重要と考えられる。

左回りの法則

左回りの法則とは、無意識のうちに反時計回りに動いてしまうという人間の行動パターンを指す心理用語である。前述の動線設計でも触れた通り、SMの場合、野菜、果物、精肉、鮮魚、惣菜のような順番で売場の動線を組む店が多い。

それに加えて、左回りの法則にならい、はじめの野菜、果物エリアは入口の右側に配置し、来店者を店内奥へ誘導する店も存在する。人間の行動心理を落とし込んだ売場づくりを意識することも、売上げを最大化するための重要な要素といえるだろう。

Zの法則

Zの法則とは、チラシ、広告、ポスター、自動販売機などにおいて、人間の視線が「左上→右上→左下→右下」とZ字を描くように流れていく法則を指す。商品の陳列棚に関しても、Zの法則は活用されている。

まず、来店者の視線のスタートとなる陳列棚の左上には、売れ筋商品や季節性の高い商品を配置。その陳列棚に興味関心を持ってもらい、次の右上の商品へ視線を誘導できる。

陳列棚の右上には、定番の商品を並べるのが好ましい。定番商品で陳列棚からの離脱を防止しつつ、聞き手である人が多い右手で商品を取りやすい位置でもあるため、客単価の向上も見込める。

次に視線が移る陳列棚の左下には、売り込みたい商品を陳列すると良いとされる。購買意欲を促進したまま、売りたい商品を訴求できる。

最後の陳列棚の右下に設置したいのが、付加価値の高い商品。陳列棚をひと通りチェックすると、「より良い商品を探したい」という心理が生まれやすく、高単価の商品であっても購買意欲を促しやすい。

左回りの法則と同様、来店客の心理を理解することも売場づくりには重要といえるだろう。

SMの売場づくりまとめ

昨今の小売業界では、食品中心のSMだけでなく、生活に必要な衣食住のフルラインを取りそろえる総合スーパー(GMS)、あるいは商品を低価格で販売するディスカウントストアなど、多様な業態が展開されている。加えて、ECも競合として存在感を急激に増している。お客としては、食品や生活用品をそろえられる店の選択肢の幅が広がっているが、店側としては競争が激化する一方になっている。

来店したお客の購買意欲をかき立てることで買上点数を上げ、客単価、売上げの向上を目指すだけでなく、魅力的な売場レイアウトで、「また来店したい」と思ってもらえるような店へ昇華させていくことも重要になってくる。競合他店やECサイトへのお客の流出が懸念される時代だからこそ、継続的な売上げにつながる売場レイアウトを検討してほしい。

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