ロイヤリティの意味とロイヤルティとの違い、種類や高めるメリットを解説

2023.01.05

2022.12.06

似ているビジネス用語に「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」がある。響きは似ているものの意味は全く違うため、正しい意味を理解し適切に使用しよう。ロイヤリティとロイヤルティの意味と違い、種類やロイヤルティを高める方法を解説する。

ロイヤリティの正しい意味とロイヤルティとの違い

ロイヤリティの正しい意味と使い方、似ている言葉であるロイヤルティとの違いを解説する。

ロイヤリティとは

ロイヤリティとは英語の「王族、王位、王権、(王様のような)気品、気高さ」という意味をもつ「Royalty」が語源だ。「ロイヤリティあふれるサービス」と言えば「気品あふれる上質なサービス」という意味で使われる。

さらに「特許権使用料、(著書・作曲などの)印税、著作権使用料」という意味も持つ。ビジネスシーンでの「ロイヤリティ」は、一般的にこちらの権利の使用料を指す意味を持つ言葉として使われる。たとえば「この音楽を使用するとロイヤリティが発生する」「画像の著作者にロイヤリティを支払う」などで使われる。

ロイヤルティとは

ロイヤルティとは「忠義、忠誠、誠実」などを意味する英語の「Loyalty」が語源となっている言葉だ。日本のビジネスシーンでは、おもにマーケティングや人事の分野で帰属心や信頼、愛着心の指標となる「顧客ロイヤルティ」「従業員ロイヤルティ」として用いられている。

近年では前述の「ロイヤリティ」と区別するためにロイヤ「ル」ティと呼ばれることも多いが、「顧客ロイヤリティ」のように、こちらの意味の言葉も同音異句の「ロイヤリティ」として使われてしまうこともあるため、注意が必要だ。

本記事では以下意味ごとに「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」で区別して記述する。

ロイヤリティとロイヤルティの区別方法

本来のロイヤリティは「R」発音、ロイヤルティは「L」発音のため英語の聞き分けができる人なら区別はしやすい。

ところが日本語におけるカタカナ発音になるとRとLの発音が同じになってしまうため、「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」を混同してしまう人も多いだろう。さらに、前述通り同音異句として両方の意味ともに「ロイヤリティ」を使用している人もいる。正しい意味を理解して使い分けるのが重要だ。

万が一ロイヤリティとロイヤルティを混同して使っている人とやりとりをするときには、文脈からどちらを指しているのかを判断する必要がある。

ロイヤリティの種類

ビジネスで使用されているロイヤリティの種類を業界別に解説する。

フランチャイズにおけるロイヤリティ

フランチャイズチェーンでは、ロイヤリティを活用したビジネスモデルを形成している。フランチャイズチェーンに加盟した店舗(フランチャイジー)が、大本の企業(フランチャイザー)へロイヤリティを支払う仕組みだ。

フランチャイザーはロイヤリティを支払う代わりに、フランチャイジーの持つ知名度の高いブランドの看板が出せるほか、商品やサービスの利用や運営のノウハウやサポートなどを受けられるシステムとなっている。店舗や仕入先の準備も不要、経営や運営経験やノウハウのない事業者でも独立開業しやすいのがフランチャイズの特徴だ。

フランチャイズを取り入れているおもな業種は以下の通り。
・コンビニエンスストア
・ファミリーレストラン、居酒屋、ラーメン店などの飲食店チェーン
・学習塾
・美容室、エステサロン
・コインランドリー など

製造業におけるロイヤリティ

製造業では製品の開発段階でデザイナーと契約し、デザインを含めた設計、製造という工程を進めていく。一方で、資金が潤滑でない中小規模のメーカーの場合、デザイン費用が高額になるとデザイナーと契約できないことがあるだろう。そこでデザインの開発費用を低く抑えるために、ロイヤリティを導入することがある

製造業におけるロイヤリティは、製品の売上に応じてデザインのロイヤリティが発生し、デザイナーに支払う仕組みだ。その代わりに開発段階でのデザイン費用を低く抑えられる。製品製造前で資金が十分でないときにも、ロイヤリティを導入することでデザイナーを確保できる。

知的財産権使用時に発生するロイヤリティ

業種を問わず、特許や著作物などの知的財産権を使用する場合には、権利者に対してロイヤリティを支払う必要がある。なお、特許や技術を使用するとき権利者に支払う対価として「ライセンス料」があるが、ロイヤリティとほぼ同義で使用されている。

知的財産権使用時に発生するロイヤリティには、以下の種類がある。
・イニシャルフィー…契約の際にかかる一時金
・ランニングロイヤリティ…売り上げや数量に応じて一定の割合で支払う対価
・ミニマムロイヤリティ…売り上げなどに関係なく支払う最低実施料

ロイヤリティの算出方法

ロイヤリティの支払い方法や取り決めなどは、各企業や業種によって異なる。代表的なロイヤリティの算出方法を解説する。

売上歩合方式

「月々の売上の10%」など、店舗の売上の数%をロイヤリティとして支払う方法で、多くの業種で一般的に採用されている方式だ。ロイヤリティは売上と連動し、売上が低い場合ロイヤリティも低くなるため、支払いを圧迫しない。ただし仕入れ額が増えたことで結果的に利益が減っても、支払うロイヤリティは変化しない点に注意が必要だ。

定額方式

売上金額に関わらず、毎月一定の金額をロイヤリティとして支払う方式だ。売上が上がると手元に残るお金は増えるが、売上が下がると手元に残るお金が減り、ロイヤリティの支払い負担が大きくなる。なお売上歩合方式と併用して採用されることもある。

粗利分配方式

売上高から仕入れにかかった費用を差し引いて算出した売上総利益(粗利)に対し、一定割合の金額をロイヤリティとして支払う方式だ。コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンで多く採用されている。

フランチャイジーは、売上の総利益(総売上高-売上原価)の約30~70%を本部に支払うのが一般的だ。支払われたロイヤリティは、フランチャイザー側で商品開発、広告宣伝システムの改善などに使用される。

ロイヤルティの種類

ビジネスで使用されているロイヤルティの種類を業種別に解説する。

マーケティングでのロイヤルティ

マーケティング分野では「顧客ロイヤルティ」を重要な仕様として用いている。顧客ロイヤルティとは、顧客の企業のブランド、商品、サービスに対する信頼や愛着心のことだ。

顧客ロイヤルティが高い顧客は、自社商品やサービスを継続的に購入、契約する、周囲に情報を拡散するなど企業の大きな利益に寄与する。そのため、顧客ロイヤルティを高めるための施策である「ロイヤルティマーケティング」も実施されている。

人事でのロイヤルティ

人事の分野では従業員の帰属意識や自社への忠誠心の指標として「従業員ロイヤルティ」を用いている。従業員ロイヤルティが高い従業員は仕事に対するモチベーションが高く、生産性の向上や離職率の低下、会社の窮地に心強い味方になるなどなどにつなげられるだろう。そのため、企業では従業員ロイヤルティを高めるための施策を講じるのも重要だ。

従業員ロイヤルティと似た言葉に「従業員エンゲージメント」がある。従業員ロイヤリティが会社と従業員が主従関係にあるときの忠誠心や帰属意識を表すのに対して、従業員エンゲージメントは会社と従業員の立場はあくまで対等な状態で発揮される愛社精神のことだ。会社への愛情や愛着を感じることで能力を発揮し、会社に貢献する従業員は、従業員エンゲージメントが高い状態と言えるだろう。

ロイヤルティを高めるメリット

マーケティングにおける顧客ロイヤルティ、人事における従業員ロイヤルティは「高い・低い」と表現される。各ロイヤルティを高めることで得られるメリットを解説する。

リピーターの確保

顧客ロイヤルティの高い顧客は、自社の商品やサービスを継続して使うリピーターになる。リピーターが増えれば競合への乗り換え防止、サブスクリプションなどの定期契約の解約率の低下につながるだろう。

集客効果が得られる

顧客ロイヤルティの高い顧客は、自分の好きな商品やサービス、ブランドに対するポジティブな意見を周りに拡散する。友人や家族にすすめるのはもちろん、SNSやインターネット上での口コミでもポジティブな意見を拡散してくれる。その結果集客効果も得られるだろう。

利益の向上

顧客ロイヤルティの高い顧客がリピートで購入する、集客による新規顧客からの購入など直接利益につながるほか、自社のほかのサービスや商品を選ぶ可能性も高い。

離職率の低下

従業員ロイヤルティが高ければ離職率が下がり、平均勤続年数が長くなる。給料や待遇面などで好条件を出す競合企業が引き抜きを打診しても自社から離れないので、優秀な従業員の確保も可能だ。

業績の向上

従業員ロイヤルティが高い従業員は、会社に貢献しようという意識が強く努力をおしまないため、生産性や業務成績が高くなりやすい。万が一、会社が窮地に陥っても見捨てないだろう。

長期的な人材育成が可能になる

従業員ロイヤルティが高い従業員が多ければ離職率は低くなるため、企業としても長期的な人材育成が可能となる。人材育成のための戦略や施策が無駄にならないため、長期的な育成計画も立てやすい。昇進昇格など長期的なモニタリングが必要な場合でも、評価判定がしやすくなる。

自社イメージの向上

顧客ロイヤルティが高い顧客が周囲にポジティブな意見を拡散するのと同じく、従業員ロイヤルティが高い従業員は周囲に自社のポジティブなイメージを拡散してくれる。仕事内容はもちろん商品やサービス、事業などをおすすめしてくれるので自社イメージの向上につながり、間接的な集客効果も得られるだろう。知り合いを紹介するリファラル採用につながることもある。

ロイヤリティの意味を知りロイヤルティと区別して使おう

ロイヤリティとロイヤルティの意味の違いや高めるメリットを解説した。似ているビジネス用語だからこそ、正しく使うことで相手との円滑なやりとりや本来の目的達成につなげられる。正しい意味を理解し、適切に使用しよう。

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