ドロップシッピングとは?通常のECとの違いやメリット・デメリット、市場規模などを解説
2023.01.27
ドロップシッピングとは、商品の在庫を持たずに販売ができるEコマースのことだ。在庫を持たないという点から、商品の仕入れや在庫管理、梱包・発送の作業をする必要がなく、ECサイト上での販売やマーケティング、プロモーションに注力できるという特徴がある。
本記事ではドロップシッピングとはどのような仕組みで、通常のECとは何が違うのか、市場規模やメリット・デメリット、取り組む際の注意点を解説していく。
目次
ドロップシッピングとは?通常のECとの違い
ドロップシッピングとは?
ドロップシッピングは、商品の在庫を持たずに販売するEコマースのこと。ECサイトなどを運営する際、通常であればECサイト上で商品の販売をし、持っている商品の在庫から注文者へ発送をする。しかしドロップシッピングでは、ECサイトの運営者は商品の在庫を抱えずに、メーカー・卸売業者が商品の在庫を持ち、管理を行う。
商品を注文してから届くまでの流れは、ECサイトの運営者がECサイト上で販売をし、メーカー・卸売業者が注文内容に沿って商品を直接発送するという仕組みだ。注文した購入者からすると、ECサイト上で注文をし、待っていれば指定の場所に届くという通常のECと同様の流れのため大きな影響はない。しかしECサイトの運営者にとっては、商品の仕入れをせず、在庫を抱えることもなく商品を販売できるため、通常のECサイトとは違った運用になる。
ドロップシッピングの仕組み・始めるには
ではドロップシッピングは、どのようにして始めるのか。主な方法は2つある。
DSP(ドロップシッピング・サービス・プロバイダー)に登録する
DSP(ドロップシッピング・サービス・プロバイダー)」という、ECサイトの運営者とメーカー・卸売業者を仲介するサービスに登録すれば、ドロップシッピングでの販売が可能になる。ドロップシッピングの初心者も取り掛かりやすい方法だ。DSPは、サービスによって料金形態が様々。ドロップシッピングを検討する場合は、まずDSPをいくつか見てみるといいだろう。
メーカーと直接やり取りをする
メーカーや卸業者に直接連絡をし、交渉をすることでドロップシッピングを行える可能性がある。自分で取り扱いたいと思う商品を探し出し、交渉・契約をすることは難易度が高い。しかしDSPでは、他のECサイトと同じ商品を取り扱う可能性があるため、自分で探した商品を取り扱うことで差別化に繋がるだろう。初心者にはハードルが高い方法と言える。
ECサイトとドロップシッピングの違い
通常のECサイトとは商品の在庫を持たないことが主な違いだが、詳しくどのような違いがあるのか見ていこう。
商品が届けられるまでの過程が違う
商品の購入者からするとECサイトもドロップシッピングもサイト上で注文し、指定の場所に届くという仕組みのため違いは分かりにくい。だが注文を受けてから届くまでの間に大きな違いがある。
ECサイト | ドロップシッピング |
ECサイト上で注文が入る | ECサイト上で注文が入る |
ECサイト運営者が自社の在庫から梱包し、発送する | ECサイト運営者側からメーカー・卸売業者側に商品発送依頼の連絡をする |
商品が購入者に届く | メーカー・卸売業者が商品を包装・梱包し、発送する |
ー | 商品が購入者に届く |
このように商品を梱包し発送するのは、メーカーや卸売業者のため、ECサイト運営者は連絡を取り、発送依頼をする必要がある。自分で発送作業をしないので購入者に対し即日発送の約束はなかなかできないが、うまく業者と連携することで早めの配送に対応できるケースもある。
ドロップシッピングは販売やマーケティング中心
通常のECサイトであれば、商品の販売、発送、在庫管理、マーケティング、ブランディングなどの業務を行う。しかし、ドロップシッピングで行うことは、ECサイトでの販売とマーケティングやブランディングのみ。商品の在庫管理、梱包、発送業務はメーカーや卸売業者側で担う。自分で行う業務が狭まり、集中して販売やマーケティング等を行える。
商品を仕入れない
ECサイトは商品を仕入れて、その在庫を管理していくが、ドロップシッピングでは、そもそも在庫を持たないので商品を仕入れない。在庫を抱えるリスクがないという点はドロップシッピングの大きな特徴である。
ドロップシッピングの市場規模
Panorama Data Insightsは、世界のドロップシッピング市場は2021年から2030年までの間に、年平均成長率(CAGR)28%で成長し、2030年には16551.5億米ドルの売上に到達すると予測している。また、2020年の世界のドロップシッピング市場は1,402億米ドルの売上だった。
オンラインショッピングなどにより電子商取引そのものの大きな成長がドロップシッピング市場の成長に繋がるとしている。小売業者についても在庫・物流への投資を抑えることから、在庫を持たず、物流業務を外部にお願いできるドロップシッピングの利用への依存が高まるとのこと。また、不正取引や詐欺が発生した場合に市場の成長を遅らせる要因となるとも発表している。
出典:「世界のドロップシッピング市場は2030年までに16551.5億米ドルになる|年平均成長率:28%」
ドロップシッピングのメリット・デメリット
メリットが多いように感じるドロップシッピングだがデメリットもある。ドロップシッピングは良い点ばかりでなくデメリットまで理解して取り組むことが大切だ。それぞれ見ていこう。
ドロップシッピングのメリット
1.在庫の管理をしない
ECサイトでは実際の在庫を仕入れ、販売数などを管理していかなければならない。また、棚卸といった作業も必要だ。ドロップシッピングであれば在庫管理の面を全てカットできる。
2.梱包や発送に関する業務をしない
商品の梱包作業が必要なく、資材も不要。発送もメーカーや卸売業者側が行ってくれるため、ECサイトの運営者は物流に関連する業務を行わない。
3.どこでもできる
在庫管理の必要がないことから、倉庫が不要となり、ECサイトを立ち上げられるパソコン等があればドロップシッピングができてしまう。場所を選ばずに作業ができるのもメリットだ。
4.マーケティングに集中できる
在庫管理、梱包・発送業務を行わないことから、マーケティングや販売業務に注力できる。
5.商品の価格を設定できる
ドロップシッピングは自社で販売価格が設定でき、自由に自分で決められる。
ドロップシッピングのデメリット
1.利益が出にくい
ドロップシッピングでは在庫管理や発送業務をしない分、利益が減る。また、仕入れに関しても通常のECであればまとめて仕入れることで安価になるが、ドロップシッピングでは仕入れ値の交渉を自分でできないことあり利益が出にくくなる。
2.競合が多く、差別化も難しい
DSPを利用する場合は、同じ商品が他のECサイトでも販売される可能性が高い。商品が同じという時点で、差別化を図ることが難しいというデメリットがある。販売価格を自由に設定できるが、利益が少ないため価格を下げて競争するのはなかなか難しい。
3.購入者との信頼関係が業者に左右されやすい
商品の在庫管理や発送の業務をメーカーなどの外部業者が行うため、その段階で不備があった場合、購入してくれたお客さまとの信頼関係が損なわれるだろう。また、様々なECサイトに商品が出されている可能性があるため、在庫数が実際の数字と合っているのかが業者側に委ねられる。実際は在庫がないのに、在庫ありと表記されたままだった、といったトラブルが想定できる。
ドロップシッピングの注意点・よくある失敗
一つの商品に頼りがち
自分のECサイトで人気の商品は、他のサイトでも人気の可能性が高いものだ。ついよく売れる商品に売上を頼りたくなってしまうが、他のサイトで売れているためメーカー側で品切れになることもある。一つの商品に頼るのではなく、商品展開の計画をきちんとしないといけない。
商品知識が増えない
自分で在庫を抱えている場合は、商品を見て、触って、質感や重さ、軽さなど特徴を把握できる。商品のプロモーションや問い合わせにも対応できるが、ドロップシッピングでは手元に在庫がないため実際の商品を見ることはできない。正しい商品知識を持ち、商品を理解することに加えて、お客さまに対してはお試しで購入できる商品を用意し、実際に試してもらうなど工夫する必要がある。
外部との連携不足によるトラブル
在庫管理から梱包・発送を外部に任せるため、トラブルへの対応が大切になる。あらかじめどのような商品管理をしているのか、梱包の方法などを確認し、お客さまに実際にどんな状態で商品が届いているのかを把握しておくことがいいだろう。カスタマーセンターの対応など取引する際は確認し、取引後も業者と連携を取ることでトラブルを防ぎ、対応できるようにしたい。
プロモーションや集客の勉強が必要
実店舗を持たないECサイトは、全てweb上で完結するため集客方法が限られる。ECサイトのデザインや商品説明に限らず、SNSやリスティング広告などを使い、宣伝をしていかないとECサイト一つでは厳しいだろう。また、ドロップシッピングは利益が通常のECと比べると低くなるためプロモーションに費用がかかりすぎてしまうとさらに利益を出すことが難しくなる。マーケティングやプロモーションに注力できる分、しっかり勉強をしていきたい。
ドロップシッピングはデメリットを理解して取り組もう
在庫を持たずにEC販売に挑戦できるドロップシッピングは魅力的である。倉庫がいらないため作業場所も限定されず、マーケティングやプロモーションに注力もできる。
しかし利益が出にくいことや、競合が多く差別化が難しいことなどのデメリットもあった。商品の在庫管理や発送を行うメーカー・卸売業者側との連携をスムーズにできるようにしておくことも大切だ。
今後、市場規模が伸びると予測されていることから、さらに取り組む人も増加するだろう。マーケティング等、得意なことを活かせるEコマースでもあるため注意点に気を付けながら取り組んでほしい。