「無人コンビニ」を最新事例を交えて解説| セブン・ローソン・ファミマが挑む

2020.12.01

無人コンビニのイメージ

無人コンビニって何?

コンビニ業界で、無人コンビニに対する挑戦が進んでいる。昨年、大きな話題となった人手不足に起因する24時間営業問題を解決する施策の一つとして、コンビニ各社が、無人コンビニの取り組みを進めている。11月4日には、ファミリーマートがJR東日本グループで、無人決済店舗の開発を進めるTOUCH TO GOと業務提携し、2021年春頃に1号店を開店する計画を発表した。

オフィス内の無人店舗、自動販売機による販売、顔認証技術を活用した入店やセルフレジによるキャッシュレス決済など活用した店舗など、仕組みはさまざまだが、各社が実用化に向けた取り組みを進めている。

顔認証技術を活用した入店や重量センサーによる購買確認など、大きなシステム投資を行う店舗のほか、置き菓子を展開するオフィスグリコのように、コンビニ商品を専用什器で販売する事例や自動販売機を利用してコンビニ商品を販売する事例もある。

無人コンビニは新しい仕組みで、はっきりとした定義はまだ確立していない。現時点では、商品の納入、陳列は人が行い、通常のコンビニであれば従業員が行う決済業務を無人化していることをもって無人コンビニとする事例が主流となっている。厳密には、無人ではないため公式には省人化コンビニと表現することが多い。ここでは、各社の取り組みを解説する。

セブンはNECと連携、自動販売機活用の実証実験も

最大手のセブン-イレブンは2018年12月17日、NECと共同で港区のNECグループのオフィスが入居する「三田国際ビル」に、省人型実験店として「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」をオープンしている。三田国際ビル20F店は、オフィス、工場、病院などの小規模商圏(マイクロ・マーケット)への本格的な展開を想定した取り組み。

顔認証技術や社員証を活用して入店し、決済も顔認証や社員証を利用して行う。オフィス内の事業所店舗のため、利用できるのは社員のみ。社員の給料明細と決済が連動しており、給与天引きで決済を行う仕組みだ。

セブン-イレブンの標準的な売場面積は約170m2で、約2900アイテムを販売する。一方で、省人型店舗は売場面積約26m2で、約400アイテムを展開する。AIを活用した発注支援システムを導入し、商品陳列は、同じビル1階に出店している「千代田二番町店」の従業員が担当する。

オフィス内の店舗は、不特定多数が利用する通常店舗とは異なり、利用者が社員のみで特定でき、万引きの心配がないといった特徴がある。ただ、三田国際ビル20F店の店内にはカメラを複数台設置した。

主にマーケティングデータを収集するもので、映像解析による客導線の分析やお客が商品を手にとったか、購入したのか、戻したのかなどを分析する。また、バックヤードなど売場以外のエリアに侵入していないかも確認でき、マーケティングデータ収集と防犯の両面でカメラを活用する。

また、2019年10月から、NTTデータが六本木で展開するデザインスタジオ「AQUAIR」内の実験店舗を活用した「デジタル店舗」の研究を開始した。NTTデータが提供する、顔パスで買い物ができ、レジ無しで清算できるデジタル店舗出店サービス「Catch&Go」を活用し、レジ無し店舗の購買体験、店舗運営に関する課題抽出、新たな店舗開発について研究している。

2020年1月現在、Catch&Goは、QRコード認証による入店に加えて、「顔認証入店」と「店頭在庫と連携したダイナミックプライシング」にも対応している。顔認証入店は、顔パスで入店から決済までを可能とし、新たな購買体験を提供。また、店頭在庫と連携した電子プライスカードによって、適正価格での販売が可能になり、売り上げ向上や廃棄ロス削減を検証できるという。

NTTデータは2022年度末までに、小売業界1000店舗にCatch&Goを導入する目標を掲げているが、セブンイレブンは、Catch&Goを導入するかを明らかにしていない。

一方で、不特定多数のお客が利用する路面店での取り組みとして、セブンイレブンは2020年2月27日から「練馬南大泉5丁目店」で、深夜0時から6時まで自動販売機のみで営業する店舗の実証実験を行っている。既存の直営店を改装し、店舗入口の窓側に30m2の自動販売機専用スペースを設置した。

自動販売機を活用することで、大きな投資を行わずに、店頭は無人で店舗を営業できる取り組みとなっている。食品自動販売機「セブン自販機」のほか、冷凍食品専用自販機、ソフトドリンク自販機、タバコ自販機、いれたてコーヒーを展開するセブンカフェ自販機を加えた6台の自動販売機を設置した。

セブン自販機は2017年から展開を開始した。おにぎりは20℃、チョコレート、チルドドリンク、お菓子は12℃~20℃、ペットボトル飲料、サンドイッチ、オリジナルデザートは10℃以下、カップラーメン、カップみそ汁、パンは常温と、それぞれの商品に適した温度帯別に商品を販売できるのが特徴となっている。棚ごとに温度設定を変えることができる自販機(60アイテム)と、常温商品を販売する自販機(15アイテム)の2台を組み合わせて運用する。

自動販売機によるコンビニ商品販売の取り組みは、ファミリーマートに吸収合併されたam/pmが開始した事業で、2005年から本格展開が始まっている。セブンイレブンは、自動販売機による販売について、10年以上後発で参入した。

セブンイレブンは、専用工場で製造するお弁当・おにぎり・サンドイッチを主力商品としているため、自動販売機であっても、通常店舗と同様の環境で商品管理ができ、店頭と同様の商品提供ができる仕組みの構築に時間がかかったという。2020年2月末現在、セブン自販機は500カ所に1000台を設置している。

ファミマは自販機先行、パナソニックと共同実験、TTGと業務提携

ファミリーマートの無人コンビニの取り組みは、自販機コンビニが先行している。吸収合併したam/pmが展開していた食品自販機「オートマチック・スーパー・デリス(ASD)」を発展させた自販機コンビニ(ASD)を、2010年から本格展開し、2020年1月末時点で約1900カ所・約2400台を設置する。

「標準機(最大60アイテム)」と「弁当機(最大41アイテム)」の2種類を展開。標準機は6段構成で、上3段にパン、おむすび、弁当など、下3段にパスタ、サンドイッチ、サラダなどを陳列する。弁当機は7段構成で、上段2段におにぎり・菓子、中段3段に弁当、下段2段にカップラーメン、スープなどを展開する。おむすびなど鮮度の短い商品は、販売期限が切れると自動的に販売を停止する販売停止機能を備えている。

3000品目にのぼるファミリーマート取扱商品の中から、立地と客層に合わせておむすび、サンドイッチ、パン、飲料、日用品など約150アイテムを品ぞろえする。八洋、高原ミネラルといった飲料自販機オペレーターとファミリーマートがフランチャイズ契約を結んで展開し、商品補充は自販機オペレーターが実施する。

オペレーターとは、メーカー直営の自販機と異なり、さまざまなメーカーの飲料自販機を取り扱い、設置場所の開拓や補充、売上回収、自販機のメンテナンスなど一連の業務を行うベンダーで、ファミリーマートの自販機コンビニの開拓も行っている。

自販機コンビニの設置が難しい事業所に向けては、2013年8月下旬から、菓子やカップ麺など約25種類を専用什器で販売する「オフィスファミマ」を提供する。小腹がすいたとき、昼食をとる時間が十分ないとき、また、ちょっとした気分転換をしたい時などの利用を想定する。商品の会計は、硬貨による現金で対応している。

店舗を活用した無人コンビニの仕組みでは、2019年4月2日、横浜市のパナソニック佐江戸事業場の隣に実験店舗「ファミリーマート 佐江戸店」をオープンした。IoT活用による各種デジタルデータによる効率・高収益運営と、地域に愛されるリアル店舗のデザイン構築など、新たなコンセプトの次世代型コンビニエンスストア像の具現化に向けた共同実証実験を行う店舗と位置付けた。

パナソニックが2018年4月に設立したフランチャイズ店舗の経営、実証実験、営業支援を担う100%子会社ストアビジネスソリューションズが、ファミリーマートの加盟店として運営する。パナソニックの企業向け商品の営業担当者社員が店長、ファミリーマートの店舗支援担当の社員が副店長となり、実証実験をした。

佐江戸店には、パナソニックの社員のみが利用できる無人コンビニを設置した。顔認証を登録済みの社員だけが入店でき、レジでの清算も顔認証で決済する。画像処理による商品読み込みと、ディープラーニングを応用した世界最高水準の顔認証技術を活用。顔の向きや経年変化、メガネなどにも影響されにくい顔認証による決済で、新しい買い物体験を提供する。

店内には、性別・年齢を推定するカメラ、品切れを検知するカメラ、人の移動を把握する熱センサー、人の動作を検知する深度センサーなどを設置。店舗内をカメラやセンサーでセンシングすることで、滞留ヒートマップやスマートフォンアプリでのアンケートなどを組み合わせて、データ経営を行うことで、お客にとって便利な店舗レイアウトや棚割り、品ぞろえを実現するという。

2019年8月29日からは、足立区の直営店「ファミリーマート本木東町店」で0時~6時まで、無人コンビニを運営する実験を行っている。佐江戸店と同様に、通常のコンビニに、無人コンビニを併設した取り組みで、会計はセルフレジで対応する。

本木東町店にも佐江戸店で活用した技術を導入し、顔認証で入店する。無人コンビニには、自販機コンビニのほか、オープンケースを設置して商品を販売する。年齢確認が必要な酒・たばこは販売しない。

また、ファミリーマートでは、無人コンビニの新たな取り組みとして2020年11月4日、無人決済店舗の開発を進めるTOUCH TO GO (以下TTG)との業務提携を発表した。

TTGは、JR東日本スタートアップとAIを活用したサービス開発を手掛けるサインポストとの合弁会社。サインポストは2017年11月に大宮駅(さいたま市)と2018年10月に赤羽駅(東京都北区)で、決済を無人化する実証実験を行っていた。実証実験の結果、事業化への目途がついたため、TTGを2019年7月に設立した。

2020年3月14日に開業したJR高輪ゲートウェイ駅に、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」をオープンし、実店舗の1号店を開店した。10月16日には、JR東日本グループの食品スーパー紀ノ國屋が山手線目白駅改札外に出店した「KINOKUNIYA Sutto目白駅店」に無人AI決済システムを導入している。

高輪ゲートウェイの店舗面積は約60m2で、弁当、惣菜、菓子、飲料など約600種類を展開。決済方法は、交通系電子マネーとなっている。

「TOUCH TO GO」は、ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗で、カメラなどの情報から入店したお客と手に取った商品をリアルタイムに認識して、決済エリアにお客が立つとタッチパネルに商品と購入金額を表示する。お客は、商品を持ったら、出口でタッチパネルの表示内容を確認して支払いをするだけで買い物ができる。

ただ、筆者も店舗を利用したが、例えば、子ども連れの家族が複数人で来店し、商品を取ったり、戻したりした場合は、商品認識が不正確になるなど課題もある。現状では、酒類販売に伴う年齢確認と不具合に対応するために1人の従業員を配置しており、完全無人の運営には至っていない。ファミリーマートとの業務提携により、さらに無人AI決済店舗の完成度を高める予定だ。

ローソンは顔認証技術活用の実証実験も本格展開は見送り

ローソンは2019年8月23日から約6カ月、横浜市磯子区のフランチャイズ加盟店「ローソン氷取沢町店」で「スマート店舗(深夜省人化)」の実証実験を行っている。可能な限り、既存の実用化された技術を導入し、深夜の無人運営を目指した店舗で、本部が負担する投資額は約1000万円程度に抑えた。

0時から5時までは、「ローソンアプリ」「お得意様入店カード」を活用したQRコードによる認証と、店頭に設置した「入店管理機器での顔撮影」で入店する。認証による入店方法を導入することで、防犯と不測の事態への対応を図る。

通常店舗を改装した取り組みのため、品ぞろえは通常店舗と同様となる。ただし、店内は無人のため、年齢確認が必要な酒・たばこの販売、対面販売となるカウンターファーストフードは販売できない。

ローソン氷取沢町店は、店舗北側約300mに「セブンイレブン横浜上中里南店」があり、深夜に無人営業をした場合に、来店客がどれだけ競合店舗に流れるのかも検証していた。

氷取沢町店での実験について、竹増貞信社長は、「深夜は酒・たばこを買いにくるお客様が多いが、現状では、規制があり無人では販売できない。深夜の売れ筋の酒・たばこが販売できなければ、最寄りの他社のコンビニに行く人もいる。また、これまでにない無人という店内の買い物環境に慣れない人が多かった」と述べ、現在は、深夜無人営業を中止している。

大手3社以外では、ミニストップは2019年9月2日に東京都江東区に省人化実験店舗「365table東砂店」を出店。店内に従業員はいるものの、完全セルフレジで決済を無人化する取り組みを進めている。コミュニティ・ストアは2019年9月から、1~10坪程度のスペースに商品棚を設置し、交通系電子マネーで清算をする無人コンビニ「スマピット」の展開を東京23区で開始している。

無人コンビニは定着するのか

現状では、日常生活で来店している通常のコンビニ店舗が完全に無人化している事例はない。オフィス、工場、学校、病院といった特定の関係者のみが利用するいわゆる閉鎖商圏での展開が主流となっている。職域内の運営であれば、酒・たばこの販売が無くても大きな問題がなく、関係者が利用するため、万引きの心配がないといった特徴がある。一部のビジネスホテルでは、コンビニ自販機を導入しているが、これまでの自動販売機の延長線状にあり、無人店舗とは異なっている。

ローソンの竹増社長は、「人手不足は今後も続く課題であり、店舗の省人化の選択肢の一つとして、無人化店舗の展開はあり得る。ただ、接客を求める商圏もあり、オフィス街などランチタイムのショートタイムショッピングが必要な場所での展開が適切だろう」と無人コンビニの可能性を予測している。

また、これまでの取り組みは、深夜時間帯を無人とする取り組みが多いが、酒・たばこは従業員による年齢確認が求められており、無人では販売できない規制の問題もある。

TTGの阿久津智紀社長は、「実証実験開始当初は、小売業の同業者が多く来店し、カメラから見えないように商品を取ったり、商品を違う棚に置いてから購入するなど、重量センサーやカメラなどのセンサーでは補足しにくい買い方をする人もいた。そういった事態にも対応することで、無人AI決済店舗のシステムの完成度は高まっている」と述べている。

顔認証やキャッシュレス決済の多様化など、店舗を無人化する技術的な課題は、徐々に解決されつつある。一方で、酒・たばこの年齢確認といった規制は、課題として残っている。無人コンビニが普及するには、技術的な課題だけでなく、規制緩和を含めた世の中の変化、新しい買い物環境への慣れなども必要となる。

新型コロナウイルスの感染拡大の終息に目途が立たない中で、新しい生活様式のひとつとして、セルフレジの活用が推奨されている。人々の生活様式や買い物行動の変化が、無人コンビニの開発・拡大を後押しする可能性もあるのではないだろうか。

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