小売業を変革する『スマートストア』とは?最新事例を交えて徹底解説

2020.12.11

小売業界の変革する『スマートストア』とは?

DXの進展に伴い、AIやIoTといったITによって、人間がいなくても自動で高度な機能を果たせる「スマートハウス」や「スマート工場」、「スマート家電」などが、続々と生まれている。そうした中、ITを活用して無人化や省力化、売場の最適化などを実現した実店舗「スマートストア」も、小売業界に登場するようになった。

スマートストアの運営システムは、実験中のものも含めてさまざまだが、「RFID」や「セルフレジ」を組み合わせた自動決済システムが、ベースになると考えていいだろう。

RFIDとは、商品に商品名や価格、製造年月日といった電子情報を入力し「RFタグ」をつけ、「リーダライタ」でRFタグの電子情報をやり取りする通信システムの一種。RFIDを搭載したセルフレジは、買い物客が商品の入ったカゴを専用の機械に入れると、RFタグのデータを一括で読み取り、自動的に精算金額を算出できるといった仕組みになっている。

ほかにも、ショッピングカートに決済機能をつけた「スマートレジカート」、スマートフォンにアプリをインストールしておけば、店舗のゲートで自動決済できるスマートストアなどもあるという。

会計業務が無人化されれば、店舗は生産性が飛躍的に上がり、人件費の大幅な削減も可能になる。会計業務から接客担当にスタッフをシフトさせることで、サービスレベルが向上すれば、顧客満足度のアップも期待できる。

一方で、顧客のほうも、セルフレジやスムーズなキャッシュレス決済によって、レジの待ち時間や精算のストレスが減り、利便性が向上するといったメリットがある。

ただし、スマートストアの機能は、自動決済ばかりではない。機械化された単なる“無人店舗”ではないのだ。

例えば、誰がいつ、どこの店舗で、どんな商品を購入したといった、顧客一人ひとりの情報も逐一把握できる。高精度の商品受発注といったサプライチェーンの効率化だけでなく、きめ細かい顧客情報を生かして、お勧め商品のリコメンドといったワンツーワンの販促、顧客のリアルなニーズに基づいた商品開発・リニューアル、サービス体制の見直しなどにも役立つと期待されている。

さらに、セキュリティ機能も兼ねた店内監視モニターのデータを活用して、商品を購入しなかったケースも含めて、顧客の性別や年齢、購買行動といった、さまざまなデータを集積・分析できるとも考えられている。

本格的なスマートストアは、世界各国で普及しつつある。米国では2018年1月、インターネット通販などITサービス大手のアマゾンが、リアルのスマートストア「Amazon Go」の第一号店をオープンし、世界中から注目されている。また、日本でも、福岡県を本拠とするディスカウントストアのトライアルカンパニーが、スマートストアを2018年2月に開業し、話題となった。

小売業が相次いでスマートストアをオープンしている背景には、流通業界を取り巻く経営環境の急激な変化がある。

日本では少子高齢化によって、とりわけ、若年層の労働人口の減少が進み、人手不足が深刻化している。スマートストアは、その有力な解決策になると考えられているわけだ。それに加えて、働き方改革が進められ、小売業には労働時間の短縮も求められている。さらなる生産性の向上が不可欠なのだ。

また、スマートストアなら、顧客データを活用して、ニーズに最適な品揃えや価格、サービスを実現でき、店舗の運営を効率化したり、競争力を高めたりできる。

さらに、ITの発達に伴ったECの台頭もある。店舗をスマート化することで、セルフでのキャッシュレス決済といったITサービスに対応しやすくなるほか、OMOにもつなげることができるのだ。

OMOとは、「Online Merges with Offline」の略で、オンライン(EC)とオフライン(実店舗)を融合し、顧客の利便性やマーケティング、マーチャンダイジングの効果などを最大化すること。アマゾンがスマートストアの展開に乗り出したのも、リアルの顧客情報を集積・分析することによって、OMOを進めるのが狙いの一つだろう。

先進的なスマートストアの事例を紹介

 日本でも、スマートストア事業に取り組む小売業が増えている。そこで、最新事例をいくつか見てみることにしよう。

●スマートストア事例①:ダイエー 

ダイエーは19年7月、東京都の昭和女子大学と連携し、レジを通すことなくキャッシュレス決済が可能な「ウォークスルー決済」の実証実験をスタートした。

急速に進むデジタル化や少子高齢化などを踏まえ、デジタルを活用した買い物支援と健康支援を実現するとともに、実店舗における利便性を向上させる。

同大学内に菓子を中心とした売場を設置し、クラスメソッドが開発したITシステム「ウォークスルー決済」を導入した。このシステムは、売場内に設置されたセンサーとカメラで人の動きを管理し、デジタル陳列棚の重量センサーで手に取った商品を認識する。商品を持って売場から出ると、自動的にクレジットカードで決済される仕組みだ。

そのため、顧客は、スマートフォン専用アプリをかざして入店し、商品を手に取って退店するだけで、買い物ができる。レジでの精算やバーコードのセルフスキャンといった作業が一切不要だ。

実験店は 7月22~31日の期間限定(土・日は除く)オープンで、営業時間は10~17時。売場面積は 約2坪、 菓子類 約50品目を揃えた。

●スマートストア事例②:ミニストップ

イオングループのCVSであるミニストップは20年10月、オフィスや工場といった職場内マイクロマーケットを開拓するため、極小CVSユニット「MINISTOP POCKET(ミニストップ・ポケット)」を事業展開すると発表した。 

ミニストップ・ポケットは、マイクロマーケット専用に開発したセルフレジを投入。ミニストップが開発した売場オペレーションなどのシステムを活用して、パートナー企業が運営する。職場内にCVSの売場を提供することで、労働者の利便性や快適性を高める。

セルフレジを使用するため、24時間利用できる。1坪でも設置が可能なので、小さな場所でも簡単に設置できる。電子マネーのSuicaやPASMO、WAONなどを使用、現金を使わないキャッシュレス決済が特徴だ。

主な対象はオフィスや工場、配送センター、病院、コールセンターといった事業所。事業所向けの品揃えとして、100~120SKUを常時ラインアップする予定だ。イオンやミニストップのPBのほか、NBなどの商品を、立地・商圏に合せて提供する。パートナー企業との協業で事業を進める考えで、今回はユニマットライフと提携した。なお、売場の設置先となる事業所は、初期費用をかけずにサービスが利用できるという。

●スマート事例③:NTT東日

東日本電信電話は、労働力不足を解消し、コロナ禍における非接触へのニーズに対応するため、入店から商品選択、決済までをスマートフォンで完結する「スマートストア」の実験店を20年11月、NTT東日本本社ビルでオープンした。

レジの待ち時間をなくし、買い物中の密接・密集を避けられるようにする。店内カメラ映像を自社施設に伝送し、顧客の購買行動を分析することにより、仕入れの効率化や利用者に応じたラインナップの充実を図るとともに、地域の商材を取扱うなど、地元に根差した新しい無人ストアの展開を目指す。自社通信施設を活用し、マイクロマーケットでも成り立ちうる、軽量のスマートストアモデルを検証する。

店内のカメラ映像を解析し、利用者属性にマッチした店舗作りを実現し、商品の仕入れ、棚割りを効率化する。利用者や事業運営者のサポートでは、当社のロボットやコールセンターを活用し、非接触による接客を行う。定番の飲料や菓子類、文具、書籍のほか、地域店舗と連携した焼きたてパンなども販売する。通信ビルの空きスペースを物流拠点とし、車両によって社内実験店への配送を行うことで、保管や配送の効率性、費用低減の検証も行う。

商品販売や店舗運営は、共同実験契約を締結した事業者が担当。実証実験の結果を踏まえ、自社の旧窓口などで社員や地域の顧客が利用できる店舗を開くほか、人手不足などに悩む事業者とも共同で店舗を展開する。カメラ映像の解析と重量センサーを組み合わせることで、誰がどんな商品を手に取ったかを認識し、自動的に決済が完了する店舗モデルも検討する。

スマートストアの将来的な展望

スマートストアには、さまざまなメリットがある一方で、デメリットもある。その代表が、ITシステムの導入や運用にかかる多額のコストだ。

例えば、店舗スタッフの人件費が削減できたとしても、ITの初期投資やランニングコストがそれを大きく上回るようなケースもあるだろう。集積した顧客情報を活用して、品揃えや売場づくりの最適化といった効果を上げ、先行投資を回収できるようになるには、長時間かかると見たほうがいいだろう。

また、先進的なITシステムを使いこなすには、高度なデジタル技術を身につけた人材も必要だ。ただでさえ小売業は人手不足なのに、人件費の高いIT人材を確保できるのかといった点も、スマートストアの展開では課題となりうる。

そうしたデメリットがネックになるため、スマートストアの普及には、しばらく時間がかかると見られる。とはいえ、スマートストアが、今後も増えていくことは間違いないだろう。

スマートストア向けのITシステムが量産化されれば、ITに関わるコストがドラスチックに下がる可能性もある。また、「デジタル・ネイティブ」を中心に今後、IT人材も育っていくと予測されている。そうなれば、スマートストアの普及にも弾みがつくだろう。

スマートストアが普及すれば、スマートフォンやキャッシュレスでの決済に慣れた消費者も利便性を認識し、スマートストアの利用が加速度的に進むとも考えられる。

とりわけ、アマゾンといった巨大IT企業が、スマートストア事業を進めている点には、注意を払う必要があるだろう。

巨大IT企業は、豊富な資金力と最先端のITを保有しているため、スマートストアのネットワークを一挙に拡大し、前述のようなOMOといったスマートストアの成果を、先行者利益として総取りしてしまう可能性があるからだ。

そうなれば、巨大IT企業の競争力は、ますます強大になり、既存の小売業には大いなる脅威となる。そうした流れに乗り遅れないためにも、スマートストアに関連するRFIDといったITを店舗運営に積極的に取り入れ、できればスマートストアの実験にも、着手してみることがお勧めだ。

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