レジが不要に?スマートショッピングカートとは?最新の開発・導入事例を交えて解説

2020.11.19

更新:2020.11.20

リアル店舗において、IT・AIの最新技術を活用して、デジタル化・スマート化が進んでいる。その一環として注目されているのがレジ精算不要の「スマートショッピングカート」。省人・省力化をもたらし、顧客の利便性向上にもつながることから国内外で導入する企業も出始めた。

レジ精算の無人化が進む

ショッピングで一番の関門はレジで精算すること。欲しいものや必要なものを手に入れた満足感と比べて、商品の代金を支払うことは逆にテンションが下がる行為。順番待ちの行列や支払いに手間取る場面を見てイライラすることもある。

支払うことは仕方がないが、できるだけサクっと済ませたいという思いに応えて導入されたのが、客が自ら精算を行うセルフレジ。しかし、スーパーマーケットで実際に導入してみると意外と時間がかかり、店員が商品のバーコードを読み取って、客が専用の精算機で支払うセミセルフレジの普及が進んだ。

イオンリテールでは2003年にセルフレジを導入し、15年からはセミセルフレジも導入を開始した。セミセルフレジはセルフレジと比較し精算時間が4分の1で、店員がすべてを行う有人レジに比べても3分の2で済む。

レジ精算の無人化は深刻な人手不足の対応策で、業務効率化によるコスト削減にもつながるもので、さらにキャッシュスレス専用も登場し、現金管理の煩わしさからも解放されることになった。

スマートショッピングカートとは?

そして、レジが不要のスマートショッピングカートが新たに登場した。ショッピングカートにタブレット端末とバーコードリーダーが装着され、バーコードリーダーでプリペイドカードを読み込ませたうえで、客が自分で商品のバーコードをスキャンしながらキャッシュレス決済することができる。

レジの設備やチェッカーも不要でスペースも確保する必要がなく、大幅なコスト減となり、客もレジ待ちしなくて済むなどストレスが低減、買い上げ額の合計を確認しながら買い物ができ、子ども連れにはバーコードをスキャンする楽しさも提供できるという副次的効果ももたらしている。

さらに、タブレット端末に商品情報やレシピなどを掲載、クーポンなども付加し販促プロモーション機能としても活用できる。

コロナ禍においてもレジ待ちの行列に並ばずに済む「密集回避」、店員や現金と接触せずに済む「非接触」で、ニューノーマルにも適応し、安心して買い物をできる環境づくりにもつながるとして、注目が高まっている。

スマートショッピングカート最新の開発・導入事例

●国内スマートショッピングカート開発の先進企業『トライアルカンパニー』

トライアル長沼店

国内で先駆的取り組みを進めてきたのがディスカウントストアのトライアルカンパニー

グループ企業のRetail AI(リテールエイアイ)が開発した、「トライアルレジカート」は、同社の専用プリペイドカードをスキャンすることでカートが使用できるようになり、客は商品のバーコードをスキャンしながら買い物を進めていく。

そして専用ゲートを通過する際にプリペイドカードのチャージ額から買い上げ額が引かれ、レジ待ちをすることなくキャッシュレス決済が完了する。

プリペイドカードに登録された客の属性や購買履歴等のデータに基づき、クーポン・レシピの配信やレコメンドを行うショッパーマーケティングのツールでもある。

2018年2月に出店した「スーパーセンタートライアルアイランドシティ店」(福岡市東区)を導入したのを皮切りに、関東初となる今年9月リニューアルオープンした「スーパーセンタートライアル長沼店」(千葉市稲毛区)まで、22店舗で展開している。

現在、2500台が稼働しており、通常レジの4分の1で精算ができ、マイかごやマイバッグを使えば詰め替える手間もなく、利用率は41.4%にのぼり、導入後は来店頻度が13.8%アップしたという。

また、トライアルホールディングス傘下のリテールエイアイがスマートショッピングカートをリテールパートナーズの事業会社丸久が運営するスーパーマーケット「アルク到津店」(北九州市小倉区)に納入し、今年7月9日から運用実証実験が始まった。

当初40台導入し、3カ月間の実証実験期間を設け、その後もトライアルグループと丸久運用改善を行っていく。

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「レジゴー」を展開する『イオンリテール』

イオンリテールでも、客自身が貸出用の専用スマホで商品のバーコードをスキャンし、専用レジで会計する「どこでもレジゴー(以下レジゴー)」の展開に取り組んでいる。

昨年5月、スーパーマーケットの「イオンスタイル幕張新都心フードストア」(千葉市美浜区)で、実証実験をスタートさせ、今年3月から本格展開を開始、現在14店舗に導入している。

20年度中には、東京・千葉・神奈川の「イオン」「イオンスタイル」を中心に、約20店舗へ拡大する計画だ。

導入店舗ではレジでの行列が激減し、店舗スタッフは利用方法の説明をはじめ、売り場案内など会話をする機会が増え、顧客とのコミュニケーションが深まり、レジゴーの画面から購入商品を確認でき買い忘れも防止できることから、購入点数も増加し、客単価が2割程度アップしたという。

また、スキャンしないといった不正や、店外では使用できないようにしているのでスマホの盗難もほとんどない。

ただ、スキャンや決済が完了しているか分からないという声も寄せられ、購入点数、決済したかどうかを確認できるゲートを「イオンスタイル有明ガーデン」で導入し、検証を行っている。

決済ができていなかったり、購入品と金額に大きな差異があったりすると警告音が鳴り、ランプが付く仕組みになっている。

今後は、年内までに利用者のスマホでもスキャンができるように、決済まで利用者のスマホで完了できるように開発を進めている。客自身でスキャンすることで自分のペースで買物ができ、スマホ画面で購入商品の確認ができるため、買い忘れ防止にもつながるという。

さらに、レコメンド機能を追加することで、買物中の客へのメニュー提案や買得商品の案内のほか、専用アプリの開発により、さらなる買い物の楽しさと利便性向上につなげていく考えだ。

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海外スマートショッピングカート開発で注目の「Caper」

一方、海外に目を向けるとさらに進化したスマートショッピングカートの開発が進んでいる。

2017年設立されたスタートアップ企業のCaperは、客にもっともなじみがあるショッピングカートで簡単にレジの行列をなくすことを目指し、低コストのスマートショッピングカートを開発している。

3つのカメラと5つのセンサーを装備し、商品をカートに入れると商品を特定し、青果物の重さも自動的に計測、カートに入れたものの価格も分かり、カートについた決済システムで精算するシステム。

デジタルスクリーン上にプロモーションの情報なども表示可能で、今後レシピや、そのために必要な食材がどこで買えるかの案内もできるよう改良していく。

グロサリーチェーンに採用されており、導入した店舗では顧客が利用すると18%購入金額が増えたという。

●アマゾンの『Amazon Dash Cart(アマゾンダッシュカート』

アマゾンでは、今年7月、顧客の時間の節約を主な目的として、「Amazon Dash Cart(アマゾンダッシュカート」をリリースした。

アマゾンアプリに表示されるQRコードをカートにかざしてサインインし、客がカートに商品を入れると、搭載されたカメラと重量センサーがスキャンし、専用レーンを通ることで決済が完了する。

カートには買い物袋を2つセットでき、クレジットカードによる決済でレシートは電子メールで発行する。カートにはクーポンの読み取り機能もあり、対象商品のクーポンを読み取らせると割引価格で購入できる。

年内にカリフォルニア州ウッドランドヒルズに、アマゾンダッシュカートを導入したアマゾングローサリーストアを出店する。

同社はこれに先立ち、2016年にスマートストア「Amazon Go(アマゾンゴー)」の1号店をワシントン州シアトルにオープンした。

店内にカメラやセンサーを設け、商品の状態や利用者の行動を正確に把握し、商品を持って出口を通ると自動的に精算が行われ、アマゾンアカウントに料金が請求される仕組み。コンビニの小型店舗で、シアトルやニューヨークなど4都市で20数店舗を展開している。

2020年2月には生鮮食料品も扱うより大型のフォーマット「Amazon Go Grocery(アマゾンゴーグロサリー)」も出店した。

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海外大手チェーンの「セルフ・スキャニング・システム」導入の加速

こうしてアマゾンが店舗のスマート化を進めていくなかで、大手チェーンも客がスマホアプリでスキャンしていく「セルフ・スキャニング・システム」を導入する流れが加速している

ウォルマート傘下の会員制ホールセールクラブ「サムズクラブ」は、2016年10月に「Scan & Go(スキャン&ゴー)」を全店に導入している。ただ、本体のウォルマートのスーパーセンターでは一部の店舗で試験的に展開していたが、18年5月に、万引きを誘発すると取りやめた。

コンビニエンスストア大手の米国のセブン-イレブンは、客がレジに並ばなくても自分で商品をスキャンして支払いができる「Mobile Checkout(モバイルチェックアウト)」の展開を開始している。

 約1万.6000店の「1ドルショップ」を擁するダラーゼネラルもストアアプリの「DGゴー」の導入店舗を拡大している。

●中国スマートショッピングカート開発の先進企業「Chaoyi Network Technology」

米国以上に店舗のスマート化・デジタル化が進む中国では、Chaoyi Network Technologyが、スマートショッピングカートの開発に取り組み、製品の販売のほかに、広告掲載やデータサービスも行っている。

現在は中国国内で「WUMART(物美)」などをはじめ、数十社の小売企業と提携し、北京、深圳、広州、成都などでサービスを提供している。

日本ではセブン&アイ・ホールディングス傘下のスーパーマーケットのヨークベニマルが同社の製品を採用し実証実験を進めている。

スマートショッピングカートの今後

こうして、スマートショッピングカートは、人手不足を背景に、省力化・省人化が進行する流れに乗り、業務効率の改善やコスト削減につながり、精算だけではなく販促プロモーションやデータ活用も使え、顧客の利便性向上にも役立つことから、今後も導入が進んでいくは確実だ。

伸長著しいEC(電子商取引)の攻勢に対し、実店舗は守勢に立たされているというネットとリアルの構図のなかで、店舗小売は存在理由も問われており、イノベーションが求められている。

そうしたなかで、IT・AIなど最新技術を活用した店舗のデジタル化・スマート化は欠かせざる取り組みとなり、無人店舗と並んでスマートショッピングカートは、今すぐ可能な選択肢の一つとなっている。

現在はスーパーマーケットがメインだが、今後はホームセンターやドラッグストアなど他業種にも広がっていくだろう。

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