スーパーのセルフレジ導入の意義とは?|メリット・デメリットを事例と併せて解説

2020.12.04

更新:2020.12.05

コロナ禍で導入が加速「セルフレジ」とは?

SMのレジでは最近、買い物客が買った商品の代金を、自動精算機で支払っている光景をよく目にするようになった。「セルフレジ」が、普及しているからだ。

ひと昔前までは、POS(販売時点情報管理)システムつきのレジ(POSレジ)が、SMのレジの主流だった。POSシステムは、バーコードの読み取りシステムなどを使って、顧客と金銭のやり取りをした時点での販売情報を把握するITシステム。POSレジは、「キャッシャー」と呼ばれるレジ係が、売価などの商品情報をPOSシステムで読み取って代金を請求し、顧客が支払う仕組みだ。多くの人が、POSレジでの精算を経験しているだろう。

それに対して、セルフレジとは、基本的にキャッシャーがおらず、文字通り顧客が自分で精算を行うレジのことだ。「無人レジ」と言うこともある。

POSレジでは、商品についているバーコードの読み取りや精算、袋詰めといった作業をキャッシャーが行ってくれるが、セルフレジでは、そうした作業を顧客がすべて自分で行う。バーコードシステムのセルフレジなら、顧客が購入する商品を一つずつスキャナーにかざして、バーコードを読み取るわけだ。

ただし、「バーコードのスキャンを忘れた」「バーコードの読み取りがうまくいかない」といったトラブルに備えて、店舗のスタッフが待機しているので、レジ回りが完全に無人になるわけではない。

セルフレジでも、現金だけでなく、キャッシュレス決済などのさまざまな支払い方法に対応できるようになっている。バーコードシステムだけでなく、RFタグ(RFIDの記事参照)を活用したセルフレジも登場している。

セルフレジにはもう一つ、「セミセルフレジ」がある。商品をスキャンする作業は店舗のスタッフが行うが、支払いのみを別の自動精算機で顧客自身が行う仕組みだ。セルフレジよりも小売業界で広まっている(セルフレジをセミセルフレジと区別するため、フルセルフレジと呼ぶケースもある)。なぜなら、顧客にとっては、セミセルフレジのほうが、セルフレジよりも受け入れやすいからだ。

セルフレジは、顧客にとってスキャンなどの作業が面倒なうえ、顧客がレジ操作に不慣れなため、さまざまなトラブルが起こりやすい。会計作業が滞って、レジ待ちの時間が長くなり、顧客満足度が下がってしまいがちだ。その点、セミセルフレジなら、顧客は精算だけ自分で行えばいいので負担が軽く、レジ操作上のトラブルも少ない。会計作業もスムーズで、レジ待ちの混雑を緩和できるのだ。

セルフレジは1997年、米国で初めて登場し、2003年に日本にも初めて導入されたと言われる。しかし、セルフレジに慣れていない顧客から不評でなかなか普及せず、代わりにセミセルフレジがお目見えしたという経緯がある。

SMがセルフレジの導入を進めている背景には、小売業界の深刻な人手不足がある。セルフレジによって少しでも生産性を高め、人手不足をカバーしたいのだ。

全国スーパーマーケット協会によれば、SM275社の調査データに基づいた19年の推計値では、SMの11・4%がセルフレジをすでに設置しており、13・9%が「新たに設置したい」、11・6%が「設置台数を増やしたい」と考えているという。

セルフレジの導入メリット・デメリットとは?

●セルフレジの導入メリット

SMにとって、セルフレジを導入するメリットとは何か? フルセルフレジとセミセルフレジについて、分けて考えてみよう。

フルセルフレジのメリットとしては、一つ目に大幅な人件費の圧縮が考えられる。基本的にレジ係が不要になるからだ。導入直後は、レジの操作方法がわからない買い物客をナビゲートするスタッフも必要だが、導入してしばらく経てば、操作に慣れた買い物客も増えてくるので、スタッフの数を減らすことも可能だ。

二つ目に考えられるのが、顧客に対して有料レジ袋を購入するかどうかを確認する作業がなくせること。レジ袋が欲しい顧客は別途、購入すればいいわけだ。

三つ目に考えられるのが会計作業の際、顧客とスタッフの接触機会をなくせること。とりわけ、コロナ禍では注目されるメリットだろう。スタッフの感染リスクが大幅に減らせるだけでなく、顧客にとっても感染リスクが減らせるので、満足度アップが期待できる。

セミセルフレジのメリットとしては、一つ目にレジの待ち時間を短縮できることが挙げられる。商品のスキャンは手慣れた店舗のスタッフが行うので、フルセルフレジのように、会計作業が滞る心配はない一方で、代金の受け渡しの手間が省けるからだ。

商品をスキャンする機械とは別に自動精算機を設置して、空いている自動精算機に買い物客を誘導すれば、精算までの流れもスムーズになる。顧客満足度が高まるうえに、会計作業が効率化されることで、レジのスタッフの削減といったコストダウンも期待できる。

二つ目としては、フルセルフレジほどではないにせよ、現金のやり取りといった顧客とスタッフの接触機会が減るため、衛生を保ちやすくなる点が挙げられる。新型コロナウイルスなどへの感染リスクも減るだろう。

●セルフレジ導入のデメリット

セルフレジには、メリットだけでなく、デメリットもある。

フルセルフレジのデメリットとしては、レジ操作に慣れていない顧客が多いという前提条件がある場合、一つ目として顧客満足度の低下が大きいだろう。顧客は、会計作業を全部自分で行わなければならないため、手間がかかり、ストレスが増えてしまう。さらに、トラブルが起これば、クレームにつながることもある。会計作業のスピードが下がり、レジの待ち時間が長くなることもある。とりわけ、セルフレジに順応しにくい高齢の顧客が多いSMの場合、客足が遠のくリスクもある。

二つ目としては、臨機応変の対応ができない点。例えば、酒類のように年齢確認が必要な商品は、レジのスタッフがその場でチェックできないフルセルフレジには、不向きだといえる。

三つ目としては、セキュリティ上のリスクが高まる点。精算を買い物客に任せるため、支払いに漏れや不正がないよう対策を講じる必要がある。

例えば、セルフレジには、センサーが購入前と購入後の総重量を比べて、スキャンされていない商品があれば自動的に感知し、漏れや不正がないかどうかを確認できるシステムもあるという。また、監視カメラを設置したり、セルフレジに搭載した指紋認証機能で個人を特定したり、カード払いといった個人を特定できる決済方法を指定したりする方法もある。しかし、そうした方法には、監視カメラや指紋認証システムを導入するための新たな費用がかかったり、指定された決済方法を利用していない顧客を逃したりする難点もある。

セミセルフレジには、フルセルフレジで挙げたようなデメリットはほとんどないが、フルセルフレジのように、ドラスチックにスタッフを減らし、人件費を圧縮することは望めない。また、高齢者などの場合、機械での精算も自分では難しいケースがあるので、セミセルフレジでも、顧客満足度が下がってしまうことがある。

さらに、フルセルフレジとセミセルフレジに共通のデメリットがある。それは、セルフレジシステムを導入するには、多額の初期投資と運用コストがかかるという点だ。

人件費が削減できたとしても、セルフレジの導入コストで、“いってこい”になってしまうケースもあるので要注意だ。とりわけ、セミセルフレジの場合、人件費の削減効果があまり見込めない。レジの更新時期などに、コストと利益のバランスをよく考えてから、導入を決めたほうがいいだろう。

スーパーにおけるセルフレジ導入事例

ここで、セルフレジを活用しているSMやCVSの事例を、いくつか見てみよう。

●セルフレジの導入事例①:西鉄ストア

店舗が駅近の好立地にあるため、顧客のレジ待ち問題に慢性的に悩まされていた。そこで、セミセルフレジを導入したところ、レジ待ちの行列が解消。さらに、レジ台数や人員の最適化にも成功した。

●セルフレジ導入事例②:せんどう

「茂原緑ヶ丘店」でセミセルフレジを導入したところ、ストレスの大きい顧客との金銭授受業務がないことから、40人のスタッフ募集に対して約150人もの応募があり、人手不足の課題をクリアできた。

●セルフレジ導入事例③:マミーマート

セミセルフレジを導入したことで、店内労働時間の約3割を占めるレジ業務を効率化。人手不足の解消やレジの待ち時間の短縮、スタッフの負担の軽減といった効果につながった。

●セルフレジの導入事例④:ローソン

顧客の「人との接触を少しでも減らしたい」という要望を踏まえ、店舗従業員との接触時間を減らせるセルフレジの活用を進めている。店舗のPOSレジは、簡単な操作によってキャッシュレス専用のセルフレジに切り替えることができる。20年2月末には約1800店舗で運用し、4月末には約4500店舗に増やした。

●セルフレジの導入事例⑤:イオンリテール

お客自身が店頭に設置された専用のスマートフォンで商品のバーコードをスキャン、専用端末機で会計をする仕組み「レジゴー」を展開している。5月15日にオープンしたイオンスタイル有明ガーデン(東京・江東)では、東京都内初展開となるレジゴーを導入。オープン約1カ月後の6月17日の段階で使用率は30%近くにまで高まっている。

●セルフレジの導入事例⑥:ライフコーポレーション

11月11日大阪市北区にオープンしたライフ中崎町駅前店では、駅前立地ということもあってショートタイムショッピングを意識。レジの面では、セミセルフレジやセルフレジを導入することで買物時間の短縮を狙う。そのうち3台はキャッシュレスのフルセルフレジとするなど、非接触に関心が高まっている「新しい社会環境」に対応している。

セルフレジの将来的な展望

SMでのセルフレジ、とりわけ、顧客にとって受け入れやすいセミセルフレジの導入は、拡大すると見込まれる。コストが高いことは、セルフレジの普及にとって、大きな足かせになるが今後、量産化や技術革新によってコストが下がれば、導入に弾みがつくだろう。

フルセルフレジは今のところ、さまざまなデメリットがあって普及を妨げているが、技術革新によって顧客の利便性が高まれば、普及が加速する可能性もある。そこで、フルセルフレジの新しいタイプとして、注目されているのがRFIDを活用したセルフレジだ。

RFIDは、商品に商品名や価格、製造年月日といった電子情報を入力した「RFタグ」をつけ、「リーダライタ」でRFタグの電子情報をやり取りすることで商品情報を管理するシステムだ。

RFIDのセルフレジは、買い物客が商品の入ったカゴを専用の機械に入れると、RFタグのデータを一括で読み取り、精算金額を算出する仕組み。バーコードシステムを使ったセルフレジのように商品を一つずつスキャンする必要がなく、会計作業が格段にスピードアップする。買い物客の負担が極めて少なく、レジの待ち時間も短縮が見込めることから、顧客満足度の向上も期待できる。

少子高齢化が進み、労働人口が減る中、小売業界の人手不足も、簡単には解消できそうもない。SMには、今後もさらなる業務効率化と生産性アップが求められ、その武器の一つとして、セルフレジが活躍する余地は広がっていくと考えられる。

関連記事

お役立ち資料データ集

セミナー