イオンリテールが進めるリアル店舗を生かしたDX「レジゴー」利用率3割近くまで上昇
2022.04.12
2020.08.07
イオンリテールが導入店舗を拡大している「レジゴー」の利用率が高まる
お客の利便性向上と楽しい買物体験の実現を目指す取り組みの一環としてイオンリテールが導入店舗を拡大している「レジゴー」の利用率が高まっている。5月15日にオープンしたイオンスタイル有明ガーデン(東京・江東)では、東京都内初展開となるレジゴーを導入、オープン当初からレジゴーが導入された初めての店となったが、オープン約1カ月後の6月17日の段階で使用率は30%近くにまで高まっている。
レジゴーは、お客自身が店頭に設置された専用のスマートフォンで商品のバーコードをスキャン、専用端末機で会計をする仕組みで、「レジに並ばない」「レジ待ち時間なし」の買物スタイルを実現する。
イオンスタイル有明ガーデンの谷本和彦店長は、「レジゴーを使うことで、子どもが商品をスキャンするなど家族で楽しく買物ができるとの声がある。レジに並ぶ時間がほとんどなくなったこともあって、2つの利点から好評に利用されている」と語る。
カートにスマホをセットできる台を設置してから、利用率が高まった
19年春から本社の無人店舗で実証実験を開始し、19年5月にイオンモール幕張新都心(千葉市美浜区)のフードストアにカート式とスマホ式のレジゴーを導入。結果としてカートよりスマホがデバイスの方がよいと判断し、8月にスマホ式をイオンスタイル幕張ベイパーク(同)にも拡大した。また当初、フードストアでは利用率が上がらなかったが10月にカートにスマホをセットできる台を設置してから利用率が高まった。
また、仕組み上、買上点数がスマホに表示されることもあって買上点数が減るかとも思われたが、実際には買物点数が約15%増える結果をもたらした。結果、レジゴー以外の精算レジと比較して売上げが約5%程度増えたという。
有明ガーデンでは、さらに天井に設置する安全カメラを活用し、品揃えの改善や買物しやすい売場づくり、さらなるレジの待ち時間の短縮など、買物環境向上に向けた実証実験も開始するという。なお、これらのお客の行動を推定する可視化データには個人を特定する情報は含めないとしている。
リアルを生かしたさまざまな買物体験を実現
レジゴーは、お客が商品をスキャンすることで、レジの待ち時間を減らすなどお客にとってメリットをもたらすものといえるが、一方で店側にとっても結果的にレジに関与する人時を効率的に運用できるメリットをもたらすものといえ、データの分析と併せ、買物体験の向上に対する期待も高い取り組みといえる。
もちろん、課題もある。一番の課題はセキュリティだ。レジゴーの精算レジには、セルフレジのような重量センサーを付けていないこともあって、不正を見抜く手段に工夫が求められるからだ。
その点、カメラなどベースにした行動分析によってお客が店内を移動した動線を把握し、お客が滞留した箇所で商品を買い上げたと判断、これと実際の販売点数を照らし合わせて自社基準のロス率の許容範囲に収まるかといった点を調査していたが、1号店のフードストアでの実証結果では範囲内に収まる結果となった。
例えばお客が同じ場所に10秒以上滞留すると90数%に近い買上率との連動性が証明されているため、そうしたことを組み合わせることで実際の買物と決済データの差をなくしていく。
また、現在は、店側が用意したスマホを店頭に設置し、デバイスとして使ってもらっているが、今秋にもアプリを開発し、お客自身のスマホでレジゴーが利用できるようにする見込み。それに伴って自社の他のアプリとも連動させた多様な特典やプロモーションを提供したり、自社のネット販売に誘導して店にない商品を届けたり、店頭でのピックアップするといったことも検討している。
「店側が用意するスマホと自分のスマホのどちらでレジゴーを利用したいか」を聞いたお客へのアンケート結果は半々だったため、お客のスマホで利用できるアプリを導入すれば利用率をさらに高められる可能性がある。
レジゴーは基本的に全店に導入できる
また、レジゴーは基本的に全店に導入できると考えており、老朽化が進んだ機種の入れ替えに伴って切り替えていく。一方でイオンリテールとしては、有人レジも引き続き重要と考えている。今後、有人レジを「サポートレジ」という名称に代え、フルサービスを行いながら接客が必要なお客への対応も強化していく。
デジタルシフトという点では、前述のイオンスタイル有明ガーデンでは、同店から約1.5㎞にある近隣のイオン東雲店(東京・江東)のネットスーパーで注文した商品を同施設内にあるミニストップ シティタワーズ東京ベイ店で受け取れるサービスも導入。ネットスーパーは通常、自宅へ直接配送するサービスだが、今回、別の店での受け取りを可能にした。
イオンリテールがリアルの資産を生かした形で、リアルでは会計をより快適に、さらにリアルとネットを便利な形で相互に利用できる形を次第に整えつつあることが分かる。