ヨークベニマル瀬上店が2月9日オープン、踏み込んだローコスト施策を実践するアンダー300坪の小型店

2023.02.10

ヨークベニマルは福島県福島市に2月9日、ヨークベニマル瀬上店をオープンした。旧瀬上店が店舗の老朽化により2022年3月から休業、同じ場所に再オープンとなった。

店舗周辺は1人、2人世帯が6割を占める。また、小中学校や大学、専門学校もあり、子どもからシニア層まで幅広い世代の方が住むエリア。福島県82店目、全社では246店目(実質稼動は244店目)となった。福島市内では13店体制となる。

売場面積は939㎡(約284坪)の小型店で、店内にはクリーニングが同日オープンした。同社では18年11月に仙台市内にヨークマルシェ大和町店をオープンするなど、ここ数年にわたって売場面積300坪クラスの「都市型小型店」のフォーマット構築を模索してきた。

今回もそれに該当する規模であるが、都市型小型店で想定する商圏人口ほどの商圏の厚みはない。

今回は前述のように建て替えによる出店だが、増床が困難である中、実際は近隣に十分な売場面積が取れる物件を探していた。しかしながら、なかなか物件が見つからず、結局、同地で建て替えをすることになった経緯がある。

そのため、同店ではより踏み込んだローコスト施策が求められるといえそうだ。特に加食などは組織の大部屋化などを図っている他、デリカでもインストアベーカリーを設けないなど、一歩踏み込んだ施策を実践している。

初年度年商見込みは9億円となっているが、将来的には少なくとも2桁億円には乗せたいところだろう。

旧店を建て替え。同地では売場面積の増床が難しく、小型店の出店となった

品揃えは、「簡便」「個食」「健康」をテーマに品揃えの充実を図る他、コンパクトな売場を生かし、買物のしやすさを打ち出す。

小型店ということもあり、第1主通路は青果とデリカの一体型。デリカは最近のブランドである「with mom」を掲げる

売上高構成比計画は、鮮魚7.2%、精肉14.8%、青果10.3%、デイリー22.0%、加食28.6%、日用品3.2%。惣菜10.7%、寿司3.2%でデリカ計13.9%。

SKU数は鮮魚、精肉、青果、デイリー、加食の食品5部門で7000、日用品1700。惣菜160、寿司30、ベーカリー47でデリカ計230となっている。店計では8930となる。

鮮魚売場では、小型店刺身バイキングを提案する他、適量サイズの商品の提供にも努める。鮮魚は大型店のようにバックヤードを見せる形ではなく、売場もコンパクトだが、平ケースと壁面で刺身盛り合わせまでSKUを広げた展開。

鮮魚の冷凍の商品については、既存店は平ケースの展開が一般的だったが、瀬上店では壁面で平ケースとリーチインを組み合わせたタイプのケースで展開している。

精肉部門では普段の食卓からごちそうメニューまで品揃えの幅を広げる。和牛を始め、店内加工にこだわった展開。精肉は売上高構成比で見ても鮮魚の2倍以上を計画するなど主力部門といえる。

野菜・果物部門では、さまざまな世帯人数に対応できるように食べ切りサイズのカットフルーツを店内で加工。また、地元農産物コーナーも設ける。

惣菜売場では、「安全」「安心」で体にやさしい商品を中心に取りそろえる他、弁当などの昼食メニューの充実を図り、普段の食卓を彩るおかずを提案する。

寿司売場では、生寿司、巻き物、海鮮丼など、厳選した食材を使った商品を取りそろえる。

デリカでは小量目の商品展開にこだわっている。寿司ではマグロの細巻きをおにぎりの容器に入れた商品などが目を引く

惣菜、寿司、ベーカリーのデリカについては、近隣の店舗で製造した商品を納品するサテライト供給を構築。瀬上店では約1.7kmのところにある福島鎌田店で製造された商品を納品する。

弁当などは福島鎌田店からの商品が多い

時間帯では、午前中の品揃えは福島鎌田店からの納品でまかなう一方、夕方にかけては店内製造の商品を出来たてで提供する態勢としていきたい意向だ。瀬上店では店内製造については温惣菜や生の素材を使った寿司など出来たての価値が高い商品を中心とすることで、強みを発揮していく。

手間をかけて製造する設計の価値を高めた温惣菜のレストランデリ、アジアンデリなどは店内製造
工場製の冷惣菜新規カテゴリーとして「シェフのひと仕事デリ」といったワングレード上のカテゴリーも展開を開始している

また、インストアベーカリーは設けていないが、こちらについても福島鎌田店からの商品供給で、ベーカリー売場を構築している。

一方で、ピザに関しては焼成器を惣菜のバックヤードに設置し、焼きたてを販売。ハイブリッドでベーカリー売場を形成する。

ピザのみ、焼成器を置き、焼きたてを提供。バックヤード内右手の機器が焼成器

サテライト供給ではデリカの小型店のマネジャーとして複数店を管轄することで、1店当たりの人件費負担を軽減。サテライト供給については、売上げの低い小型店の運営についてエリア単位で導入しており、3店で1つの単位が目安となる。

デリカがこれまで子会社のライフフーズとして蓄積してきた製造小売業のノウハウの、ヨークベニマルとの共有の取り組みも進み、生鮮部門が手掛ける惣菜の展開も始まっている。

生鮮惣菜は「おつまみ」シリーズとして展開。こちらは鮮魚と精肉の商品
青果の生鮮惣菜は、カットフルーツやサラダの売場で展開

前述のように、今回の瀬上店は地域の食を支えるために、マーケットが都市型小型店のフォーマット水準からすると少ない立地への出店となったが、逆に言えば今回の取り組みが奏功すれば、より小商圏での小型店のフォーマットの可能性も見えてくる。

小型店ということもあって、グロサリーのゴンドラには中通路を設けていない
青果とデリカの一体型のため、第3主通路最後には冷凍食品を配置。ただし、小型店のためリーチインケースのみでの展開となっている
出入口1つのワンウエーコントロールのレイアアウト。事務所はバックヤードの店舗奥ではなく、前面にフロントオフィスとして設置している。ただし、休憩室や更衣室はバックヤードに設置している

ヨークベニマル瀬上店概要

所在地/福島県福島市宮代字天神前4

オープン日/2023年2月9日

営業時間/9 時30分~21時

駐車台数/147台

構造/鉄骨造平屋建て

売場面積/939㎡

店長/安斉孝二

従業員数/68人(正社員10人、地元採用者58人)

年商見込み(初年度)/9億円

商圏1km圏内/人口1万195人世帯数4674世帯

お役立ち資料データ

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