ヤオコートナリエ宇都宮店、「北関東エリアのモデル店」目指す大型店は新規取り組み多数
2023.02.21
ヤオコーは2月9日、栃木県宇都宮市、JR宇都宮駅前にヤオコートナリエ宇都宮店をオープンした。
もともと1990年にロビンソン百貨店としてオープンし、その後ララスクエア宇都宮、そして2020年にトナリエに変わった商業施設「トナリエ宇都宮」内への出店で、地下1階への出店。JR宇都宮駅西口から約100m、徒歩約1分に立地する。
栃木県6店目で、宇都宮市には初出店。全社では182店体制となる。栃木県には2004年の足利大前店(足利市)以来の約19年ぶりの出店となる。ヤオコーとしては飛び地への出店で、栃木県で最も近い野木店(野木町)からも40km以上離れている。
出店目的は「北関東最大都市である宇都宮市への出店エリア拡大」と「地方の大都市出店モデル」の構築となる。
駅前の商業施設、しかも地下1階ということで、スーパーマーケット(SM)としては決して集客に有利な点ばかりではない。それもあって、ヤオコーとしてもマーチャンダイジングを強化し、駅乗降客を含めた広域からの集客を狙う。
宇都宮市にはヨークベニマルが複数店出店している他、昨年8月には駅の反対側の複合施設「ウツノミヤテラス」開業に際し、ヨークベニマル宇都宮テラス店をオープンしている。駅を挟んだ競合にも注目となる。
近隣はオフィス街やビジネスホテル、高校、大学、専門学校などがあり通勤、通学の多い地域。出店1km圏内の人口、世帯数共に増加傾向で、駅東口だけでなく、西口にも都市開発計画があるなど人口増が見込まれる地域となっている。
出店1km圏内の人口は30代、40代のヤングファミリー層がボリュームゾーンで、3km圏になると50代、60代のシニア層の割合が増加、世帯数は単身、次いで2人世帯の割合が高くなっている。
ヤングファミリー層が多い上、地方大都市、乗降客も多い新幹線使用駅の駅前ということもあって周辺の所得は高いという。
そうした中にあって、ヤオコーとしては「SMとして」主力の日常、普段の品揃え、かつ価格コンシャスを意識しながらも、ハイグレード、セミアップの品揃えを強化することで、展開の幅を拡張する。
広域商圏からの集客図る新商品満載のマーチャンダイジング
ストアコンセプトは『宇都宮に新たな「美味しさ」「豊かさ」「楽しさ」を提供するお店~北関東エリアのモデル店を構築する~』という意欲的なものだ。ヤオコーとしてなじみのないエリアへの飛び地的な出店のため、確実に存在感を発揮するという意気込みが伝わってくる。
「美味しさ」は鮮度、旬の重視を示し、特に「記憶に残る旬」を強化していく。「豊かさ」は品質、グレード感の打ち出しを示す。「楽しさ」はイベントや移動式のクッキングサポートなどを通じて、買物、SMの楽しさを伝えていきたいとの思いがある。
その上で、店長の商品政策の3本柱を設定。1つ目は「おつまみ提案」、特に日本酒とそれに合うつまみを強化している。2つ目は「スイーツ提案」、3つ目が「良い品を圧倒的に安く」、グレードの高い商品を価格コンシャスで提案する。
これらがメインの提案ポイントとなっている。それらには黒色のPOPを付けてアピール。その他、お薦め商品にはデジタルサイネージを設置し、従業員も参加して制作した動画を流している。
初年度の売上高構成比計画では、生鮮3品が41%の計画で、特に精肉を強化するという。他、惣菜、寿司、ベーカリーのデリカが20%、日配、加工食品などのグロッサリーが39%となっている。
SKU数は全体で1万3060、内訳は生鮮が1120、デリカ340、グロッサリーが1万1600。
生鮮でも特に強化された精肉は大きく売場を取り、高価格帯の和牛を値ごろで提供するなど、グレード感を訴求。ハイグレードから下限までの商品展開とし、埼玉県産の尾熊牛を中心に和牛を強化。また、国産のしほろ牛を使ったローストビーフをランチやおかず、つまみとして、さらに那須高原で育った大田原ポークを地産地消の取り組みとして提供。
鮮魚は、地域一番の商品として本マグロを主力とし、寿司部門と共有して小量目から大量目パックまで豊富な品揃えで提供。刺身の少量パックを強化すると共に惣菜売場付近の平ケースで展開。これも「つまみMD」の一環だ。
また、季節ごとに変化のある近海魚売場をメインに旬や鮮度感を打ち出す他、店舗全体で強化するつまみ対応として瓶入りの珍味をコーナー展開する他、先述の刺身少量パックの個食盛りを単身者やホテル利用者向けに、専門店にも負けない品揃えで提供する。
野菜は、季節ごとの産地リレーでトマトを中心に旬を打ち出す。果物は旬の果物を値ごろで販売する他、旬の商品を使ったアソートギフト、カットフルーツを充実させ、量目や贈答まで選べる楽しい売場を提案。
オープン時には栃木県産のイチゴの「とちあいか」を平台前面で展開する他、カットフルーツやベーカリーのスイーツにも使用。「スイーツMD」はヤングに向けたもので、ベーカリー部門と「スイーツステーション」を共同開発し、タルトやデニッシュ生地と果物を合わせたスイーツを展開する。
花は地元生産者限定のピンポンマムやバラを中心に、マンスリーフラワーやミニブーケ、季節の鉢物をさまざまな生活シーンに彩りを添える品揃えで提案する。
デリカの惣菜は、「フィッシュデリカ」を強化し、最大規模で新ブランドとなる「漁火GRAND」を展開。店内で下処理からパン粉付けを行う特大サイズのエビフライやスルメイカリングといった食べ応えある商品や提供。
また、店内でカットしたスルメイカを唐揚げや南蛮酢など、メニューのバリエーションを増やし、おいしさを追求する。
週末には尾熊牛を使った牛めしを限定販売するなど、時間帯に合わせた出来たて、あるいは平日と週末で商品や量目を変化させ、広告商品や新商品の楽しさが伝わる売場を実現する。
寿司は、いなりの皮を店内で炊き上げ、だしたっぷりの滑らかな食感のいなり寿司を提案する。
また、ウニやイクラなど高付加価値の食材を使用したおむすびや、こだわりの詰まった茶わん蒸しを提供したり、夕食のもう一品や晩酌に合うつまみ商材を「お寿司屋さんおつまみ」として各種、豊富な品揃えで提案したりしている。
インストアベーカリーは、2日間ラム酒に漬けたレーズンをシナモンシュガーと合わせたこだわりのレーズン食パンや、モチモチした食感が特徴の北海道産小麦を使ったフォカッチャを提供。
また、青果部門と共有した「とちあいか」を使った自社製プリンなど華やかなスイーツをスイーツステーションで展開する。
グロッサリーでは、まず、日配食品は、ワインに合うミモレットや青カビの洋風だけでなく日本酒にも合う和風チーズにも力を入れ、練り物と合わせたつまみを提案。また、こだわりのキムチなども提供する。生菓子では那須牛乳を使ったスイーツや和風スイーツを品揃え豊富に展開。
ドライ食品では、日本酒の清酒ラインを強化し、さらに飲み切りサイズを多めに品揃している。それに伴い、地酒に合う珍味や日本酒に合うつまみを種類豊富に提案。また、ナッツやドライフルーツ売場を最大化し、つまみから健康志向まで食のシーンを広げて提案する。
また、スパイスなどの調味料と乾物も売場を拡大して展開。
ヤオコーが差別化商品として注力する直輸入ワインも低価格から中高価格帯のワインを生活シーンに合わせて選べるラインアップで提案する。
駅前ということもあって、朝から集客という感じでもなく、昼から午後にかけて客数が増える傾向にあるという。
SMとしての立地条件は決して良いとは言えない条件下、その分、商品力の強化で多くの集客を図ることができるか。初年度年商は19億円の予定だが、売場面積としても当然、20億円を大きく超えるレベルが期待されているはずだ。ヤオコーの商品力が試される店と言えそうだ。
ネットスーパーも開業予定で、2023年8月から展開する予定。
ヤオコートナリエ宇都宮店概要
所在地/栃木県宇都宮市駅前通り1-4-6
オープン日/2023年2月9日
営業時間/9時~21時45分
駐車台数/440台(駐輪場361台、商業施設全体、駐車場は30分ごとに200円加算、買上金額1000円以上で2時間無料)
延べ床面積/3778㎡(1142坪、ヤオコー床面積)
店舗面積/2341㎡(708坪、ヤオコー売場面積)
店長/渡邉幸弘
従業員/正社員21人、パートナー・ヘルパー・アルバイト130人(延べ人数)
年間売上げ(初年度予定)/19億円
イートインコーナー/なし
レジ/16台
商圏人口/1km圏内2万1000人(1万1000世帯)、3km 圏内14万2000人(7万1000世帯)