そよら成田ニュータウンがオープン、百貨店ボンベルタをNSCに転換、既存顧客に加えて若年層ファミリー集客図る
2024.07.22
イオンリテールは7月19日、そよら成田ニュータウンをオープンした。1992年に開業した百貨店のボンベルタ成田を全館リニューアルし、近隣商圏を対象としたネイバーフッドショッピングセンター(NSC)の「そよら」フォーマットに転換した。
「そよら」はイオンリテールが開発する都市型のNSCとして2020年から展開が開始されたが、昨今では都市部に限らず、郊外立地、特に既存の商業施設のリニューアルのフォーマットとしてオープンを重ねている。今回、そよら成田ニュータウンは初めての百貨店から転換、千葉県には初出店となった。
百貨店からの転換ということで本館5層に別館3層の構成で、売場面積は約3万5730㎡、専門店の数はそよらとしては最大規模の約80に上る。そよらとしても旗艦店の位置づけとなる。

JR成田駅から2km強とやや離れているが、立地する赤坂地区は2029年に予定されている成田空港の拡張に向けた新たな「まちづくり計画」が進行中で、空港の従業員の居住も含めた将来的な発展が見込まれる地区だという。
もともと百貨店であったこともあって、施設のハード面では広域のリージョナルショッピングセンター(RSC)クラスだが、宇治知英・執行役員南関東カンパニー支社長は「毎日の暮らしを支える形に変えるのが今回の狙い」とあえてNSCに転換した理由を語る。
ボンベルタ時代の商圏設定は車で30分ほどだったというが、そよらの商圏設定は半径2km圏、車で5分ほどにまで小商圏化した。
「街のお客さまのニーズにしっかり応えるのが正解かなと思った。地域に密着した形で、毎日来ていただく。食料品であれば2日に1回、3日に1回、冷蔵庫代わりに使っていただくようなイメージを持っている。決してボンベルタを否定しているわけではなく、成田ニュータウンという商圏の人口動態が変わってきて、やはり若い世代もたくさん住まわれるような形になっている。そのニーズにしっかり合わせた形で変更した。昔から住まわれている方を大事にしながら、新しいファミリーも取り込むという形で今回、業態変更をした」(宇治支社長)
移動距離で3.8km離れた北西方面にはRSCのイオンモール成田、およびその核店の総合スーパー(GMS)タイプのイオンスタイル成田があり、イオンリテールの2店が比較的近い距離に共存することになるが、イオンスタイル成田は広域エリアから月に数回程度の買物の用途に対応するスーツやキッズ用品、家電など幅広く取り扱う一方で、イオンスタイル成田ニュータウンは日々必要になる買物のニーズに特化した売場を展開、それぞれ、テナントと合わせた2つのSCで成田エリアのくらしのニーズに応えるとしている。
「アパレル、ホームコーディやキッズはイオンモール成田のイオンスタイル成田で稼働していている。イオンリテールとしては、イオンスタイル成田とイオンスタイル成田ニュータウンとで、商圏のカニバリが起こらない形で網羅できる形で考えている」(宇治支社長)
SC設計でもイオンモール成田は広域商圏のRSCで週末型、今回の成田ニュータウンは普段使いの店として、頻度高く来店してもらうという設計となっている。
宇治支社長は、昨年6月にオープンしたそよら湘南茅ヶ崎(神奈川県茅ヶ崎市)が1km以内の距離で既存RSCのイオン茅ヶ崎中央店(同)と共存し、しかも両店とも好調という事例を挙げ、今回の2店についてもすみ分け可能と説明する。
そよら湘南茅ヶ崎は、もともとは茅ヶ崎サティだった旧イオンスタイル店の物件ということで、今回のパターンと似ている。
同様に、昨年9月にオープンしたそよら武蔵狭山(埼玉県狭山市)についても、もともと狭山サティだった旧イオン店をリニュールしてオープン、こちらも1km以内に立地するイオンスタイル狭山(同)とのすみ分けが意識された。
いずれも、そよらについてはRSCを含む比較的広域商圏の近隣の施設とのすみ分けを図るものとして、イオンリテールの直営に関してはフード&ドラッグ、プラス一部衣料品に特化した上で、近隣商圏をターゲットとするNSCの位置づけを持たせている。
ただし、そよら成田の場合、立地する交差点の反対側にはグループのカスミが運営するフードスクエア成田赤坂店があることから、食品に関しては直接的にはこちらとの競合が大きな要素となるだろう。
既存の50代~60代に加え、30代~40代の子育てファミリーを呼ぶ
核店のイオンスタイル成田ニュータウンとしても、前述のとおり近隣の30代~40代の子育てファミリーに向けた商品、サービスを拡充することで、この層の集客を強化する。食品、日用品、化粧品、医薬品、文具、肌着など購入頻度の高い商品を充実させつつ、商品構成上も、これらの分野に特化。
一方で、50代~60代がメインとなっていたボンベルタで支持されていた銘店ギフトやカウンセリング化粧品は継承し、ボンベルタ時代の客層もしっかり押さえる。
商圏内の「ターゲットを全て取り込む」(宇治支社長)ということで、客層の拡大を図った。
もともと、そよらのコンセプトは「通う 集う つながる場をキーワードに、都市生活に必要なモノが揃い、日々の暮らしをもっと楽しく便利にする毎日のように自然と通う生活拠点」。周辺の全ての人がターゲットとなることが分かる。
特に子育てファミリーについては、「お子さまを連れて一番快適に過ごせる身近な施設」を目指し、「時間消費」と「タイパ(タイムパフォーマンス)」の2つの価値を提供することを狙いとしている。
「時間消費」では、カフェ・レストランや習い事、美容室などのメンテナンス系サービス、イベントを充実、「タイパ」の観点では、利用頻度の高いアイテムに絞った店ぞろえとして、直営の食品や日用品など日常の買い回り品に特化した上で、短時間で買いそろえられる「コンパクトさ」を提供するとしている。
具体的には日常生活に必要な10機能を想定し、直営売場と専門店を各地域のニーズに応じて組み合わせて展開する。
10の機能は、①スーパーマーケット、②生活サポート(EC〈電子商取引〉、ネットスーパー、デリバリー)、③ファーマシー、④ベーカリー、⑤ランドリー、⑥クリニック、⑦シェアスペース(カフェ、イベントスペース、広場)、⑧習い事、⑨メンテナンス系サービス(理美容、サイクル、リペア)、⑩雑貨・日用品。
直営食品では水産、デリカを特に強化
イオンスタイル成田ニュータウンの場合、ボンベルタ時代はマルエツが出店していたが、今回、食品売場をイオンリテールが運営するに当たって売場を一新。同社の最新の食品マーチャンダイジングが展開されている。
特に水産やデリカの強化を意識し、水産では鮮魚の対面販売、デリカでは店内製造のクレープなどのスイーツやピッツァ、インストアベーカリーなどを展開。
鮮魚では基本的に毎週土曜日、銚子漁港から生マグロ、カジキの他、旬の鮮魚を直送し、13時ごろから対面鮮魚コーナーで販売。銚子漁港を中心に千葉県の漁港で水揚げされた生メカジキを使用した刺身なども展開。さらに対面鮮魚の魚は店内でフライや焼き魚、唐揚げなどに調理してデリカ売場で販売もする。




デリカでは対面量り売り「リワードキッチン」を展開。サラダやメインディッシュを想定した惣菜を対面方式で、量り売りで提供。看板商品として、希少部位のトモサンカクを使用したローストビーフや店内で焼き上げるハンバーグ、フレッシュモッツアレラのカプレーゼなど食事の他、酒のつまみにもなる約30種類のメニューをラインアップ。


また、デリカの新提案として、毎日店内で製造するクレープ、スイーツを新規展開。Z世代(1990年代後半から2000年代に生まれた世代)など若年層をターゲットに、クレープやプリン、杏仁豆腐など人気のスイーツを厳選して展開。
クレープは、バナナチョコやイチゴチョコ、アップルシナモン、ホイップなどバラエティ豊かに提供する。他、「手作りバニラプリン」「ぷるるん杏仁豆腐」「ブラック珈琲ゼリー(コーヒーホイップ添え)」といった商品をラインアップ。

また、イオンリテールの食品売場で定番となっている「ピッツァソリデラ」もしっかり展開。店舗で生地の発酵から行い、1枚ずつ手伸ばしして高温、短時間で焼き上げるなど製法にこだわっているピッツァで、もちもち食感と香ばしい小麦の風味も併せ持つ商品として大々的に売り込む。

イタリア産モッツアレラチーズを使用した看板商品の「マルゲリータ」の他、4種類の味が楽しめる「クアトロ・グラッツィエ」などバラエティ豊かなメニューを提供する。
また、千葉県の郷土料理として「房総太巻き寿司」を展開。伝統行事や祭りには欠かせないごちそうとして親しまれている太巻きだという。他、銚子産のブランドのマサバである「銚大吉さば」を使用した押し寿司なども品揃え。


さらにタイパの意味も込め、共働き世帯などに向けて調理に手間がかかる唐揚げやフライなど揚げ物の提案を強化する。イオンのプライベートブランド商品であるタスマニアビーフを使用したメンチカツの他、鉄板で焼いた「だし巻玉子とおつまみチキン」など焼き物も夕食の一品や酒のつまみメニューとして提案する。


ボンベルタ時代から支持が高かったインストアベーカリーではハンバーガーや惣菜パンや食パン、メロンパンなど約40品目のパンを展開。

ハンバーガーは、2層仕立ての牛豚100g超の厚みが特徴の「肉を味わうチーズバーガー」、柔らかい鶏モモ肉を使用した「照焼きチキンとマヨソースのハンバーガー」など、食べ応えのある商品を取りそろえる。

畜産売場では焼肉用を拡充し、黒毛和牛やタスマニアビーフ、牛タン、ホルモンの他、火が通りやすい薄切り肉を取りそろえる。また、フライパンで簡単に調理できる豚肉、鶏肉の味付け肉や保存にも便利な冷凍の味付け焼肉、ジンギスカンも品揃え。



農産では、JA富里市の野菜を中心に近郊産地の野菜を地場野菜コーナーとして通年展開。ニンジン、小松菜、トマト、ミニトマトなど、収穫時期に合わせて野菜をリレー。オーガニック野菜もコーナー展開し、強化。葉物を中心にベビーリーフやネギ類など千葉県産のオーガニック野菜や「トップバリュグリーンアイ」オーガニック商品を取りそろえる。

冷凍食品は、「提案型」として展開。専門店のメニューや全国各地のアイスクリーム、スイーツ、ソフトクリームを充実させた。日常使いから外食グルメ、スイーツまで、約1100品目を取りそろえた。特に若年層に人気となっている韓国グルメでは、ギョーザやキンパ、チーズボールなどを品揃え。


酒の地酒コーナーでは地元成田で1689年に創業した鍋店の「仁勇」、藤屋の「長命泉」といった地元産を差し込む他、全国からの銘酒を品揃え。ワインでも20年から近隣の多古町でワインの醸造を開始した船越ワイナリーのワインを提供する他、ハレの日対応の商品まで品揃えする。


一方で、缶酎ハイや缶ハイボールなど、日常使いのレディトゥドリンクの需要にも対応、冷蔵と常温合わせて330品目を取りそろえる、
一方で、もともと百貨店であったことから、ボンベルタ時代の商品、サービスも継承した上で、充実も図った。「銀座あけぼの」や「RUYSDAEL(ロイスダール)」「浅草今半」などの銘店ギフトの他、成田で人気のケーキ店「ラ・クレマンティーヌ」が新たに出店する。

銘菓ギフトは新たに8ブランド新規展開し、39ブランドに充実させた。特に銘菓ギフトはボンベルタ時代、茨城県など広域からの集客に寄与していたということで、NSCになった後も、機能として維持、強化した。
直営で食品とHBCを展開する力、加えてテナントリーシング力が強み
また、「直営で食品とHBC(ヘルス&ビューティケア)を両方展開し、(テナント)リーシングもできるのはわれわれの強み」(宇治支社長)ということで、そよらの場合、直営はフード&ドラッグが基本。
このドラッグの部分、食品と日用品をワンフロアで、ワンストップで買いそろえられる利便性の実現が一般的なスーパーマーケット企業にはできない部分として強みとしていく。
HBCは「グラムビューティーク」のコーナー名で展開し、土日、祝日も9時~19時まで処方せんを受け付ける念中無休の調剤薬局も併設したイオン薬局と併せ一大ゾーンを形成する。


さらに日用品では、例えば文房具は近隣には8校の小学校があることから、文房具売場の6割をスクール用品の展開としている他、赤白帽や上履きなども用意。HBCにプラスした形で必需品が便利に買い回りできる売場づくりを目指す。
もともと百貨店であったことから、カウンセリング化粧品の売場はしっかりと維持。専門の従業員を付け、新規ブランドを導入した他、訪日外国人にも対応する。

今回、新たにコーセーのハイプレステージスキンケアブランド「インフィニティ」や花王のカウンセリングブランド「アルブラン」を展開。これまでも支持が高かったグローバルブランド「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーボーテ」なども引き続き展開する。
また、Z世代をはじめ幅広い年代に人気の「ETUDE」や「TIRTIR」などのアジアンコスメや「CANMAKE」や「CEZANNE」などのプチプラコスメ、さらに、仕事や学校で忙しく限りある時間の中で、コストパフォーマンスの高いトレンドのコスメ「Sokko beauty」も展開するなど、カウンセリング化粧品から手頃な価格のプチプラブランドまで充実したコスメ売場としている。

テナントについては、本館1階部分については、核店のイオンスタイル成田ニュータウンと親和性の高い食物販をメインとした構成とし、さらにボンベルタ時代から親しまれてきた専門店を維持。
成田山表参道に本店がある羊かん、和菓子の「なごみの米屋」、千葉県産の落花生を使用したせんべいや菓子の「こば屋本店」、薄皮たい焼きの「うすかわ五右衛門」、コーヒー豆の「マメココロ」などが出店。
インストアベーカリーの「ドンク」とチョコレートの「GODIVA(ゴディバ)」については装い新たに出店する。


本館2階には、30代~40代の子育て世帯を意識した形でグループのイオンファンタジーのプレイグラウンド「ちきゅうのにわ“ほっぷ”」が出店する他、今秋オープン予定でホームセンターのコーナンが出店する。
本館3階も、30代~40代の子育て世帯に利用頻度が高く、日常使いの買物が楽しくなる雑貨などの専門店として、ダイソーの3ブランド、「ダイソー」「Standard Products」「THREEPPY」がそろい踏みする他、リユースショップ「セカンドストリート」「ABCマート」、寝具の「nishikawa」、タオルやバスローブの「ウチノバス&リラクゼーション」、鞄の「グランサックス」が出店する。

本館4階には、成田市初の「BOOK&Cafe」を展開する「TSUTAYA BOOK STORE」と「スターバックス」のコンビネーションの他、レストランが5店連なるレストランゾーンを展開。

また、眼鏡の「JINS」に加え、ボンベルタ時代から引き続く形でミセス向けのアパレルブランド6店が「ボンベルタストリート」としてリニューアル出店。
ブリティッシュ・トラディショナルブランドの「キース」や「スキャパ」、大人の女性に提案するセレクトショップ「クールカレアン」「セレクションセンソユニコ」「エコー」「アヴェニュー」などのレディスファッションブランドなどが出店した。

そよらは成田ニュータウンで13カ所目となるが、既存店の評判やイメージも良く、出店面、特にテナントの誘致においては、イオンリテールにとって大きな武器となっているようだ。
今後の出店予定もあり、GMS、あるいは大型SCの出店立地が限られる日本の中にあって、その出店形態の柔軟性と併せ、非常に有用なフォーマットになっている。
また、かつてのサティの店舗の転換のように、M&A(合併、買収)の結果、至近で競合するようになった既存店同士のすみ分けのための選択肢としても有効であることが証明され始めたことは注目だ。
そよら成田ニュータウン概要
所在地/千葉県成田市赤坂2-1-10(本館)
オープン日/2024年7月19日
営業時間/直営食品8時~22時(銘店は9時~21時)、直営日用品9時~22時(薬は9時
敷地面積/約2万2451㎡(うちアネックス館5676㎡)
売場面積/約3万5730㎡(直営4150㎡、専門店3万1580㎡、専門店面積は総賃貸面積〈GLA〉で算出)
駐車台数/約800台
駐輪台数/349台
SC構造/地上5階建て(本館)、地上3階建て(アネックス館)
~21時)、イオン薬局(調剤薬局)9時~19時、専門店9時~21時(一部営業時間が異なる売場あり、専門店の営業時間は店舗により異なる)
責任者/佐藤健太