掛け率とは?意味や利益率との違い、計算方法などを解説

2023.06.16

仕入れ管理の業務に携わる際には、専門用語に触れる機会も必然的に多くなる。例えば、仕入れ業者に関わるサプライヤー・バイヤーや、数量に関わるロットなど、さまざまな用語を覚えておかなければならない。

その中の一つとして挙げられるのが、仕入れ時の価格に関する専門用語の掛け率だ。本記事では、掛け率の意味から計算式、相場、他の流通関連用語との違いまで解説していく。

掛け率の意味

掛け率とは、商品の小売価格に対する卸値の割合を指す用語である。しばしば飲食や食品、アパレルといった業界で、卸売業者と小売業者間の流通用語として利用されている。

例えば、小売価格が3,000円の商品を仕入れる際、卸売業者が掛け率60%を取引条件に挙げていれば、卸値は「3,000 × 0.6 = 1,800円」。割合は百分率で表されることもあるが、「6掛(ろくがけ)」という表現で利用されるケースも。

小売業者としては、掛け率を可能な限り抑え、高い利益率を確保することが重要と言えるだろう。

掛け率とあわせて知っておきたい上代・下代

取引先と商談を行う際、掛け率と一緒に使用されることも多い流通用語が上代・下代だ。

上代とは、卸売業者やメーカーが定める価格で、小売価格 ・ 販売価格 ・ 店頭価格などと同義である。一般的には消費税を含んでいない金額で、上代価格と呼ばれることもある。

それに対し下代とは、小売業者が卸売業者やメーカーから商品を仕入れるときの価格を指す用語で、卸値と同義。

さまざまな表現方法が存在するが、意味自体は同じ用語もあるので、自社の業界や取引先に応じて使い分けるべきと考えられるだろう。

掛け率の計算式

ここでは、具体例をもとに掛け率の計算式を解説していく。円滑な取引を進めていくためにも、掛け率の計算式は必ず頭に入れておいてほしい。

掛け率を求める方法

掛け率は下記計算式から算出できる。

「掛け率」=「卸値」÷「小売価格」× 100

例えば、小売価格が1,000円の商品を600円で仕入れた場合、掛け率は「600 ÷ 1,000 × 100 = 60」の「6掛(60%)」となる。

卸値を求める方法

小売価格と掛け率がわかっている場合、卸値は下記計算式から算出できる。

「卸値」=「小売価格」×「掛け率」

例えば、小売価格が1,000円の商品に対して、卸売業者が掛け率「5掛」を提示していた場合、卸値は「1,000 × 0.5 = 500」の「500円」となる。

掛け率と流通関連用語の違い

掛け率と混同しやすい用語として、仕入れ原価率・利益率・値入率が存在する。ここでは、掛け率と各流通関連用語の違いを解説していく。

掛け率と仕入れ原価率の違い

仕入れ原価率とは、商品・サービスを提供するため他社に支払った料金のことを指す。掛け率と仕入れ原価率は同義だが、使用する立場によって呼び方が変わってくる。

まず、卸売業者から見た場合、小売業者へ販売する際の価格は「卸値」、小売価格と卸値の割合は「掛け率」と呼ぶ。一方で、小売業者から見た場合、卸売業者から仕入れる際の価格は「仕入れ価格」、小売価格と仕入れ価格の割合は「仕入れ原価率」と呼ばれる。

意味は同じで、立場によって言い方が異なる点を覚えておこう。

掛け率と利益率の違い

利益率とは、売上高に対する利益の割合を示した値である。同義とも捉えられる掛け率と利益率だが、計算を行うタイミングが異なる。

掛け率は仕入れや商品の値付け、価格交渉時に用いられるが、利益率は売れた商品の合計金額に対する指標のため、売上確定時に計算が行われる。利用用途が少々異なる点に留意しておきたい。

掛け率と値入率の違い

値入率とは、小売価格と仕入れ価格の差額に対する利益の割合を示す値であり、商品の販売価格を決める際にも用いられる。値の算出方法としては下記の通り。

「(小売価格 – 仕入れ価格)」÷「小売価格」× 100

例えば、600円で仕入れた商品を1,000円で販売する場合、値入率は「(1,000 – 600)÷ 1,000 × 100 = 40」の40%となる。

商品販売前の利益の割合は「値入率」の表現を用いる一方で、商品販売後は廃棄や値引き、棚卸のミスにより生じるロス率を差し引いた「粗利率」が使用される。計算に利用する要素は掛け率・値入率ともに同様だが、意味と計算式が異なる点に注意が必要と言えるだろう。

掛け率の相場

掛け率は商品やメーカーによってもさまざまだが、相場がある程度決まっている業界も存在する。業界別に見た掛け率の相場例としては、下記の通り。

  • 食品業界・おもちゃ業界:70%前後
  • アパレル業界:50~60%前後
  • 飲食業界:30~50%前後

商品・メーカー以外に、トレンド性や季節性などの要因によっても、掛け率は変動する。

例えば、12月はクリスマス関連商品の売れ行きが良くなるが、1月になると消費者からのニーズが減少し、掛け率も下がる。その他、訳あり商品が相場以下の掛け率で取引されるというケースも。多様な要因で掛け率は設定されるということを覚えておきたい。

なお、希望小売価格は製造メーカーによって定められるが、掛け率に関しては商品ごとに一律というわけではない。取引先との関係値や仕入れ量などによって、掛け率も変動するのが一つの特徴。

例えば、長年の取引で良好な関係を築けている企業や大量仕入れを行う取引先であれば、掛け率が優遇される可能性もある。掛け率は低いほうが利益につながるため、商談の際は卸値の値下げ交渉に踏み切るのも利益率を向上させる施策と考えられる。

掛け率のまとめ

掛け率は商品の仕入れを行う上で、必ず知っておきたい用語である。取引条件に提示される掛け率だが、卸値に関しては一概に決まっておらず、掛け率も取引先によって変動するのが基本。

取引先との関係値や仕入れ量によっては、掛け率の低下を望めるケースもある。会社の利益を確保し、社員への還元・新規事業の展開・内部保留などに充てたい場合は、掛け率の見直しも実施してみてほしい。

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