ベイシアが新フォーマット都市型対応1号店「Foods Park津田沼ビート店」をオープン、その狙いと全貌
2023.10.30
ベイシアが10月25日、JR津田沼駅前の商業施設「Viit(ビート)」にテナントとして出店、「Foods Park津田沼ビート店」としてオープンした。首都圏の乗降客の多い駅前商業施設への初出店ということで、ベイシアとしては新たな成長エンジン構築への挑戦として大きな位置づけを担う。
Foods Park(フーズパーク)はベイシアが昨年11月から大田原店(栃木県大田原市)を改装する形で展開する新フォーマットで、コンセプトは「“毎日のおいしい”が揃うお店」。食品の新鮮さとおいしさにこだわり抜いた食品強化の店となった。目指したのはその名前のとおり、「食のテーマパーク」。
その上で、品揃えを広げるというよりは、特に売り込み商品についてあえて1アイテムに絞ることで作業性を向上させたり、しっかり名物商品として育成したりすることを意図した展開を志向していた。
これまで、10月12日に新店としてオープンした阿見店(茨城県阿見町)まで、1年弱をかけて8店まで拡大をしていきた。今回、9号店として初の都市型店を出店した形となる。
同社としては、今後、スーパーマーケット(SM)の出店は基本的にフーズパークでの出店としていく意向。新店と改装の両にらみで多店化していく。
新フォーマット自体、もともとショートタイムショッピングや簡便化志向に対応したマーチャンダイジング(MD)を強化していたが、今回の津田沼店の商圏も若年層、単身世帯の多い地域特性を持っていることから、簡便、即食、個食ニーズへの対応を強化している。
出店する駅前商業施設のビートは、もともと今年2月に閉店した津田沼パルコの跡地で、津田沼七番館が3月にビートとしてリニューアルし、順次テナントがオープンしてきた。
ベイシアは、かつては西友、その後2017年に食品テナントの集合体の「つだぬマルシェ」として「食」を担っていた地下1階への出店。これまで郊外の平屋への出店を基本とし、ファミリー層向けの商品、売場を中心に展開してきたベイシアにとって地下への出店も大きな挑戦となる。
創業来、「For the Customers(すべてはお客様のために)」の理念の下、「より良いものをより安く」をモットーとしてきた同社が、さらにそこに「より新鮮でより楽しく」を加えた形で「食のテーマパーク」として地域のお客の憩いの空間づくりを目指すとしている。
ベイシアとしてはかねてから「都市型」対応の店の出店を模索していたところ、開発部隊に今回のビートの情報が入り、実験の場としても適切と判断、出店が決まったという。当然、郊外に比べて売場の自由度が小さく、不動産費も高いが、プライベートブランド(PB)商品を含むオリジナル商品を育てながら、その比率を高めることで、収益力を高めていく方針だ。
津田沼駅は千葉県のターミナル駅の1つで、駅1km圏内は20年以降、人口が増加している他、今後も増加が見込まれている地域となっている。千葉県全体と比較して20代~40代の若年層の比率が高く、特に30代の比率が高いエリアだという。また、その約半数が単身世帯で、特に駅から500m圏内は千葉県全体の比率を大きく上回る。
そうした状況を受け、津田沼駅周辺は若年層をターゲットにした再開発が行われ、「若者の街」となりつつあるという。
目次
482坪とベイシアとしては異例の小型店、SKUも1万弱に絞り込み
売場では、コンセプトや商圏特性に沿った形で、簡便、個食、即食ニーズに応えつつ、新鮮さやおいしさをアピール。ただし、エスカレーターで地下1階に下りたところには青果売場を配置し、SMとしての鮮度を訴求。
一方で、左手には旬のフルーツを使ったパフェや大福などのスイーツやカットパイナップルといった即食商材を展開。また、香りが訴求力を発揮する焼き芋も名物商品として展開を強化している。
素材としてもカット野菜の品揃えを充実させたり、大型野菜のカット物を強化したりするなど、簡便ニーズに応えた商品展開としている。旬を打ち出す果物については展開や陳列の表現を工夫し、季節感の演出を強化。
壁面にかけては鮮魚売場が広がるが、今回は直営での展開はせず、テナントとして吉川水産を誘致。鮮魚専門店としての強みを生かすと共に単身者向けに刺身など簡便商品を展開する他、バラエティ豊かな寿司、丼ぶりの強化などを行う。
精肉売場では牛肉を強化し、銘柄和牛の「黒樺牛」を定番として展開。また、ベイシアとして目利きし、交雑種ながら厳選した肉質4等級以上の牛を一頭買いするオリジナルブランド牛「ベイシアとろ牛」をコーナー展開。
簡便商品への対応では、「Me To(ミート)デリカ」としてコーナー展開。単身世帯に向け、電子レンジで簡単に調理可能な商品を強化した。
また、フォーマットの特性や商圏特性もあって、惣菜には注力。ベイシアの営業面積は482坪と同社としては小型店のベイシアマートを除いて最小に部類に入るが、惣菜の売場は大型のスーパーセンターフォーマット並に確保。
食品と日用品を併せた全体のSKU数は1万弱といったレベルで、大型店と比べて小分けの商品を中心に約半数ほどに絞り込まれているが、惣菜については品揃えを一定程度確保している。
惣菜売場では、ばら売りの揚げ物20SKUを大々的に展開する「フライバイキング」や、セルフサービスで盛り付けるタイプで、以前から人気コーナーだった「カレーバイキング」、本場フランス産生地を使用した「クロワッサン」の品揃えの追求など、既存フーズパークで磨き上げてきた名物商品をラインアップ。
また、今回、クレープ生地自動焼成機を初導入し、店内で製造するクレープや都市型店ならではのエリア特性に沿ったサラダの販売も強化を図った。
その他、新たな中華ブランドとして「金味楼(きんみろう)」を導入。アウト供給ながら本格的な中華惣菜の展開を図っている。
既存店で存在感を発揮するケース販売は限定的
加工食品売場でも簡便商品を強化し、普段使いとして、短時間に買物ができる環境を目指した売場展開を意識。
インスタントラーメン、レトルトカレーなどのレトルト食品を強化した他、飲料売場でも学生やビジネス立地であり、かつ単身世帯が多い商圏であることを考慮し、既存店ではケース販売も多いところ、酒や飲料についても多くの商品をばら売りで販売している。
日配品売場では、レンジアップ商品やチルドピザなどの洋惣菜の展開を強化。また、米や卵、牛乳、パンなどさまざまな商品で地域ニーズに即した少量サイズや食べ切りサイズなどの商品展開を強化した。
冷凍食品売場では、ワンプレート商品やパスタなど即食系の商品を充実させると共に健康系商品の導入や韓国系商品の拡充など若年層のトレンドやニーズに合わせた品揃えを図った。
また、酒売場では輸入ワインをショップ形式で展開し、品揃えを充実させるなど、これまでのベイシアとは一線を画した売場が随所にみられる。ワインなどはオリジナル商品も多く、経費の高い都市部で収益性を確保するための武器としたい意向だ。
サービスでは、ネットで注文を受け、店舗の商品を配送する「ベイシアネットスーパー」を展開する他、店舗受け取りサービスも実施する。
店舗受け取りサービスは、買物やレジに並ぶ時間を節約できることから通勤帰りの利用なども想定する。ネットスーパーの注文受付開始は11月11日、配送開始は11月14日を予定している。
ベイシアFoods Park津田沼ビート店概要
所在地/千葉県船橋市前原西2-19-1津田沼ビート地下1階
営業時間/10時~22時
営業面積/482坪