拡大するXRとは? VR、AR、MRとの違い、最新の活用事例等を交えて解説

2022.10.27

2022.01.20

IT技術やデバイスの進化に伴い、近年注目が集まっている「XR(クロスリアリティ)」。

XR技術を活用した取り組みを行う企業は増えており、今後も増えることが予測されている。

XRと似た意味を持つ言葉として、VR、AR、MRなどがあるが、これらの違いを理解して説明できる人は、意外に少ないのではないだろうか。

本記事では、XRの概要から、VR、AR、MRなどの違いを解説すると共に、XR技術の活用に積極的な姿勢を見せている企業の活用事例について紹介する。

XR(クロスリアリティ)とは?

XRとは、一体どのようなものなのか。XRと混同されがちな、VR、AR、MRなどの違いを踏まえながら解説する。

XRとは何か?

XRとは、現実世界と仮想世界を融合させることにより、現実にはないものや情報を体験できる技術の総称のことをいう。後ほど解説する、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などといった技術は、すべてXRに含まれる。

XRは「​​Cross Reality」または「Extended reality」の略。また「x」はVRやARなど、さまざまな技術を表わす変数としての意味を持っており「xR」と表記されることもある

近年は、VRやARなどを単体ではなく、複合した技術が多く登場しており、その技術がVRを示すのか、ARを示すのか、境界線を引くのは困難である。そうした背景から、XRという言葉が生まれた。

VR、AR、MRとの違いとは?

VR、AR、MRは、意味が混同されがちだ。各用語でどのような違いがあるのか、用語の意味をそれぞれ解説する。

まず、VR(仮想現実)は「Virtual Reality」の略で、仮想世界をあたかも現実世界のように錯覚させる技術のことをいう。専用のヘッドマウントディスプレーを装着して体験でき、仮想世界を360°体感できるのが特徴だ。

VRは近年、ゲームのみならず、アバターを表示させる技術を活用した取り組みが広がりを見せている。仕事の現場を再現したVR研修や、VRミーティング、VRキャンパス、VRオフィスなどがその代表例だ。

次に、AR(拡張現実)は「Augmented Reality」の略で、現実世界の一部に仮想世界を重ね合わせて体験できる技術のことをいう。スマホやヘッドマウントディスプレーを介して現実世界を見た際に、仮想のデータや画像が表示される仕組みだ。

近年は、買物の利便性を高めるために導入されているケースが目立つ。家具店のオンラインストアが、その代表例である。自分の部屋にスマホかざし、家具の画像を重ねることで、利用者は商品のイメージを確認することができる。

最後に、MR(複合現実)は「Mixed Reality」の略で、現実世界と仮想世界を融合させる技術のことをいう。ARと定義が似ているが、ARはあくまで現実世界を拡張するのに対して、MRはVRとARを組み合わせることにより、現実世界と仮想世界を同時に体験できるのが特徴だ。

MRが発展することにより、建設業や製造業、医療業をはじめ、多くのビジネスシーンで良い影響を与えることが期待されている。

XRの市場規模

XRは今後も、さまざまな領域での活用が期待されていることから、市場規模はさらに拡大していくだろう。

事実、2021年9月に「REPORTOCEAN」が発行したレポートによると、2026年までにXRの世界市場は、62%以上の成長率で成長すると予想されている。

なお、XR市場の地域分析は、アジア太平洋、北米、欧州、ラテンアメリカなどの主要地域が対象で、北米において技術革新が急速に進んでいる。

一方、アジア太平洋地域も、これからの発展が予想されており、26年までに最も高い成長率(CAGA:年平均成長率)を記録する見とおしだ。

XRの活用事例

ここからは、XRの活用事例として、VR、AR、MRの3つについて、それぞれの技術を活用している最新の事例を紹介する。

VRの活用事例

VRの活用事例として、以下3つの事例を紹介する。

  1. 大丸松坂屋百貨店
  2. 京王電鉄
  3. イーオン

1.大丸松坂屋百貨店の事例

株式会社大丸松坂屋百貨店は、21年12月、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット6」に、次世代店舗「バーチャル大丸・松坂屋」を出展した。

大丸松坂屋百貨店は、これまでに2度バーチャルマーケットに出展しており、3度目の出展となった今回から新たな取り組みの一つとして「食品3Dモデルの販売」を実施。

来場者は、食品3Dモデルを手に取って商品の形状を確認することができ、さらにはバーチャルカタログで詳細の確認をしたり、実際に商品を購入したりすることもできる。

バーチャル空間では、ビールやスイーツの3Dモデルを使用してのコミュニケーションが盛んである。このような「V呑み」を応援するべく「食品3Dモデルの販売」の実施に至ったという。

2.京王電鉄の事例

京王電鉄株式会社は、21年9月、株式会社ハシラスと共に、京王線新宿駅のイベントスペースにて「VRでキャンプ体験!in 京王新宿」を開催した。

新型コロナウイルスの影響による外出自粛が続く中、近年ブームとなっている「キャンプ」をより身近に感じてもらうことが目的だ。

当イベントのVR内では、アウトドアブランド「DOD」のグッズを使ったキャンプの疑似体験に加え、高尾山のそばにあるホテル「タカオネ」の360°映像を視聴することができる。

タカオネは「タカオネで過ごす時間そのものが、アクティビティのような一つの体験として楽しめること」を目的に、21年7月にオープンした活動ホテルである。

イーオン

株式会社イーオンは、21年12月、米カリフォルニア州のImmerse Inc.が開発した、VR英語学習プラットフォーム「immerse」を使用した新レッスン「AEON VR」のパイロットレッスンの提供を開始した。

イーオンはこの取り組みについて、VRの特徴を活かした実際の場面に近い実践練習の効果に最も期待を見せている。また、学習者にとっても、さまざまな英語使用シーンを意識した練習をすることにより効率的な上達が期待される。

イーオンは、今回の「AEON VR」のパイロットレッスンを通して、今後の事業展開等の可能性を探る予定を示している。

ARの活用事例

ARの活用事例として、以下2つの事例を紹介する。

  1. 小田急百貨店
  2. 小田急電鉄×docomo

1.小田急百貨店の事例

株式会社小田急百貨店は、22年1月、株式会社NTTデータNJK、株式会社CinemaLeap、小田急電鉄株式会社と合同で「TSUKUMO-KAMI: soul of folk toys」を開催。

TSUKUMO-KAMI: soul of folk toysは、日本の伝統工芸文化がテーマだ。展示された玩具をARグラスを利用して見ると、各玩具に宿る「神」が浮かび上がり、玩具とのコラボレーションを楽しむことができる。

なお、この展示会は、最新のデジタル技術等を活用したイベント産業の高度化推進を一つの目的に、経済産業省の委託事業として取り組んだものだ。

2.小田急電鉄×docomoの事例

小田急電鉄株式会社と株式会社NTTドコモは、21年12月、株式会社小田急百貨店、株式会社MESONと共に、ARイベント「SAINT RAY|聖なる光『サン・レイ』は僕らをデジタルヒーリングの世界へイザナう」を開催。

このイベントでは、スマホを用いることにより、ハルクスポーツで実際に売られているシューズを手軽かつ瞬時にデジタル上で試着でき、いやしのひとときを楽しむことができる。

小田急電鉄は、新宿のまちづくり活動の一環として、デジタルと現実世界を融合させた新しい感動やワクワクにあふれる街の実現に貢献。

一方、ドコモは、MESONと共にXRコンテンツの企画開発を行い、店舗への送客、購買の支援および購買支援の効果検証を行った。

MRの活用事例

MRの活用事例として、以下2つの事例を紹介する。

  1. LGディスプレイ
  2. ニトリ×ドコモ

1.LGディスプレイの事例

LGディスプレイジャパン株式会社は、20年11月、株式会社博報堂プロダクツと、ニューノーマルなブランド体験を実現する「次世代デジタルサイネージプログラム」の提供を開始。

提供を開始するにあたり、メルセデス・ベンツ日本株式会社が展開するブランド発信拠点「Mercedes me Tokyo(六本木)」を利用した。当拠点は「気軽にメルセデス・ベンツの世界観に触れてほしい」というコンセプトのもと、カフェやレストラン等が併設されたライフスタイル提案型ショールームである。

当サイネージプログラムは、実際の商品とスクリーン上の商品コンテンツが融合し、あたかも車体に触れながら、人から説明を受けているような体験をできるのが特徴だ。

2.ニトリ×ドコモの事例

株式会社ニトリと株式会社NTTドコモは、2021年2月、XRサービスの検討に関する協業契約を締結した。

契約締結から1カ月後の同年3月には、XR体験の実証実験を開始。専用の装置を装着することにより、システムキッチンが実際の空間に現れ、あたかも実在しているかのような体験ができる。

MRの活用により、システムキッチンの設置スペースのサイズにとらわれることなく、利用者は膨大なバリエーションの中から、3Dモデルを見ることが可能となった。

また、この体験は複数名で利用できるため、利用者同士での感想の共有や、従業員のスムーズな対応が可能になるという。

XR(クロスリアリティ)のまとめ

今回は「XR」について、その概要から、VR、AR、MRとの違い、XR技術の活用に積極的な姿勢を見せている企業の活用事例について紹介してきた。

現状、XR技術を活用している企業は限られているが、年を重ねるごとにXR技術を活用する企業は増えていくだろう。

XR技術の活用が、私達の生活にどのような影響を与え、どう生活が変化していくのか、XR市場には注目しておきたい。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…