富士通が生成AIを活用した購買促進AI技術を開発、アルク三田尻店にて実証実験を行う

2023.08.03

富士通が、消費者の店内行動データをもとに、生成AIを活用してデジタルサイネージ上にアバターや販促コンテンツを生成する購買促進AI技術を開発したと発表した。

富士通は本技術を活用した自動接客による商品販売促進を目指し、一般社団法人リテールAI研究会の支援のもと、山口県防府市にある丸久が展開するスーパーマーケット「アルク三田尻店」の実店舗において、本技術を適用した実証実験を8月3日より開始する。

本技術は、カメラ映像から消費者の行動と購買特性を分析し、対象売場での購買体験の向上につながる接客や販促コンテンツの自動作成と継続改善を実現するほか、複数の販促施策の効果計測や状況に応じた施策選択、売上向上などのKPI改善をAIにより自動化することが可能となるという。

実証実験では、デジタルサイネージ上のアバターが接客するシーンにおいて、行動分析AIが分析した個々の来店者の購買行動や購買特性に基づき適切なアバターを用いて商品推奨などの接客を行う。

同時に、来店者の商品購入などの接客結果も分析し、より高い効果が見込めるアバターをAIで自動生成するなど、個々人に合わせた接客内容や商品の魅力を盛り込んだコンテンツの効果を検証し、店舗や商品の売上貢献や豊かな購買体験の提供を目指す。

富士通は本技術を、先端AI技術を素早く試せるAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi (code name) – Fujitsu AI Platform」を通じて、2023年度中に提供開始予定だ。今後も先端AI技術の開発とAIの社会実装の取り組みを通じて人手不足などの社会課題を解決し、サステナブルなスマートストアの実現に貢献する。

背景

近年、人々の価値観の多様化に伴い、自身の趣味や嗜好に沿った商品の購買意識が高まり、従来の画一的なマーケティングから、個々人に寄り添った購買体験の提供が求められている。

近年の技術革新に伴い、カメラ映像を用いた行動分析技術により来店者の行動や購買特性などの分析が可能になりつつある一方で、接客や販促コンテンツの作成に多大なコストや労力を要しており、マーケティング施策の導入や改善における課題となっている。

購買促進AI技術について

富士通は上記の課題を解決するため、学校法人早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所長の恩藏 直人教授の研究グループが保有するマーケティングの学術的支援のもと、当社独自の行動分析AI「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」の分析結果に基づき生成したアバターや販促コンテンツを通じた施策、および施策効果の映像分析によるコンテンツの自動改善を通じて、購買体験を支援する購買促進AI技術を開発。

例えば、マーケティング理論によると、消費者の購買行動の決定には、接客員の人柄と知識、商品のデザインと機能性などによって決まる指標である温かさ(warmth)と有能さ(competence)が影響すると示唆されている。

こうした消費者の購買行動の傾向を踏まえ、行動分析AIから得た来店者の行動や購買特性データをもとに、生成AIに必要なプロンプト(指示文)情報を最適化することで来店者に適したアバターの生成が可能になるほか、事前に生成AIで作成した各商品の推薦内容を、販促コンテンツとして提示する。

これにより、来店者がある商品棚の前に立ち寄ったり、商品を手に取る行動などから来店者の興味や購買意欲を捉え、アバターの口調や表情などを含めて最適な接客を行うとともに、買い忘れの注意喚起や関連商品の提案、商品の魅力を盛り込んだ説明などの販促コンテンツを来店者が受け入れやすい内容とタイミングで提示することで、来店者の興味や関心に合わせて魅力ある情報を提供することができる。

実証実験について

■期間:2023年8月3日(木曜日)から2023年10月15日(日曜日)まで(以降も継続を予定)

■場所:アルク三田尻店(住所:山口県防府市新田111-5)

■内容:
スーパーマーケット内に設置するデジタルサイネージのアバターによる商品自動推薦機能において、開発した購買促進AI技術を適用する実証実験を行う。

具体的には、店内に設置するカメラ映像から、「Actlyzer」によって来店者の行動パターンや購買特性を認識および分析し、それに合わせて適切なアバターが、事前に生成AIをベースに作成した各商品を推薦する文章を読み上げる形で、デジタルサイネージ上で商品を自動で推薦する。

アバターは生成AIで生成され、映像から認識した商品推薦の成否のデータを基に、より適切なアバターへと随時改善され、以降の接客時に活用される。実証実験の期間を通じ、アバターによる商品自動推薦の効果やアバターの改善効果、店舗や商品の売上への貢献などの有効性を検証する。

本実証実験は、顔など個人を特定する情報が映像に映りこんだとしてもそれらの情報は用いず、個人を特定できないデータ形式で処理した上で実施する。

なお、本実証実験は、一般社団法人リテールAI研究会の支援のもと、丸久、ブルボン、True Data、SalesPlus、フクシマガリレイ株、富士通の6社が立ち上げた分科会が実施する。

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