「勝てるアプリ」の特徴は? 4つの成功事例を紹介

2023.11.30

小売業において顧客との関係を深化させるためにアプリの活用は不可欠だ。「勝てるアプリ」は「ただのECアプリ」と何が違うのか。4つの成功事例から浮かび上がる特徴とは。

[PR/ITmedia]

顧客接点をいかに増やすかは、小売業にとって重要な課題だ。中でも自社アプリケーション(アプリ)には、顧客との関係を深めて売り上げアップにつなげる役割が期待されている。

「リテールDXカンファレンス2023」(2023年10月26日開催)のセッション「ECのアプリ経由売上50%以上、顧客とつながるアプリ活用」に登壇したヤプリの神田静麻氏(マーケティング部)は、ノーコード開発プラットフォーム「Yappli」を活用して成果を出した事例を交えて、「“勝てる”小売りアプリの特徴」を紹介した。

「商品をただ売るアプリ」から「顧客を『ファン化する』アプリ」に

2023年に設立から10年を迎えたヤプリは、「デジタルを簡単に、社会を便利に」というミッションに基づいてノーコード開発のためのクラウドサービスを提供している。ヤフー(当時。現社名はLINEヤフー)出身の3人が立ち上げた同社は現在、従業員約250人を擁し、東証グロース市場に上場している。

ヤプリの神田静麻氏

神田氏は「エンジニア不足は多くの企業にとって課題となっています。ヤプリはこの課題を解決するためにノーコード開発のサービスを提供して『アプリ開発のDX』を推進しています」と話す(以下、会話文は全て神田氏の発言)。

主力サービスであるYappliは、アプリケーション開発の知識がない非エンジニアでもアプリの開発から運用、分析まで実施できるクラウドサービスだ。テキスト情報はもちろん、動画や電子カタログ、リアルタイムのプッシュ通知などを1つのプラットフォームで開発、運用できる。

Yappliは飲食やアパレル、インテリアなど、さまざまな業種・業態で利用されている。「Yappliで開発されたアプリケーションは累計1億6000万ダウンロードを突破(2023年4月時点)しました」

顧客とのタッチポイントは複数ある。神田氏は「顧客とのタッチポイントは、どれか一つに取り組めば全てクリアできるという万能なものではなく、いかに使い分けるかが重要です」と強調する。同氏によると「Webサイト」「SNS」「自社アプリ」の順で顧客との関わりは深くなる。WebサイトやSNSで獲得した顧客を自社アプリに誘導した後は、情報をリアルタイムに提供することで顧客とより強固なつながりが生まれるという。

経済学者のヴィルフレド・パレートが発見したべき乗則「パレートの法則」によると、売り上げの8割は2割の顧客(コアファン)によって生み出される。つまり顧客を「ファン化」することで、顧客生涯価値(Life Time Value:LTV)が向上するわけだ。

こうした施策によってどのような効果が期待できるのだろうか。神田氏は次の3社の事例を紹介した。

ケイシイシイ:地元愛を発信するアプリへの刷新で購入者数が8倍に

北海道小樽市に拠点を置く洋菓子店LeTAO(ルタオ)を運営するケイシイシイは、独自開発のアプリを運用していた。以前は通信販売のためのアプリという雰囲気が濃厚だったが、「LeTAOの世界観を顧客ともっと共有したい」「北海道の魅力を伝えたい」という思いがあったという。

Yappliを利用してアプリを刷新した後は、1カ月当たりの平均ユニーク購入者数は約8倍、アプリ経由の売り上げは約2倍に増えた。「最大のポイントは商品やサービスをただ紹介するのではなく、情報発信に取り組んだことにあります」と神田氏は指摘する。

アプリでは、自社製品の魅力を伝えるコンテンツの他、旅行で訪れた顧客に北海道への再訪を促すための情報も配信している。コンテンツは同社の従業員が観光名所などを取材して制作している。「北海道愛があふれるコンテンツを配信することで気軽にアプリを開く顧客が増え、それが売り上げ増加につながったと考えています。熱い思いをコンテンツとして提供することで顧客と長く緩くつながることができます」

パレモ:UIとUXに配慮して回遊率が向上

女性服や雑貨のブランド「PALEMO」を全国で展開するパレモは、ブランドごとにYappliで開発したアプリを運用していたが、2022年に「PALEMO STOREアプリ」として1つのアプリに統合した。統合後はECの売り上げは前年比145%、アプリ経由の売り上げが全体の36%を占めるなどの成果が出ている。

「使い勝手を重視してUI(User Interface)を丁寧に作り、UX(User experience)に配慮しています。その結果、回遊率が向上して直帰率は低下しています」。中でも好評なのがスタッフ自身のコーディネートを紹介するコーナーで、顧客が実店舗を訪れるきっかけになっているという。

チュチュアンナ:「勝てる方法」を知る、とにかく試す、勝てる方法を継続する

女性下着の通販サイト「tutuanna」を運営するチュチュアンナの公式アプリは300万ダウンロードを突破した。アプリ経由のEC売り上げは全体の50%を超え、LTVは前年比で1年当たり110%伸張している。チュチュアンナは購入後のコミュニケーションのシナリオを多く用意し、UIの改修にも積極的に取り組んでいるという。「チュチュアンナは『勝てる方法』を知る、失敗を恐れずとにかく試す、勝てる方法を継続するというのが企業文化になっています。それをアプリの運用にも落とし込むことで高い成果が出ています」

図1 アプリ運用を成功させるプロセス(出典:ヤプリの提供資料)

非IT技術者による開発、運用を実現するサポート体制

このように自社アプリには多くの利点があるが、ハードルの高さに導入をちゅうちょする企業も多い。そこでヤプリはITについての深い知識がないアプリ運用担当者やマーケティング担当者がアプリを運用するためのサポート体制を用意している。

具体的な支援策は次の4つだ。

・「スピード導入」:最短1カ月でiOS、Androidアプリが完成

・「カンタン運用」:直感的な操作で更新可能。更新によってUIがどのように変化するかをプレビュー機能でチェックできる

・「アップデートで進化」:年間200回以上の機能改善を実施している。クラウドサービスなので機能拡張やOSのバージョンアップにはYappliが対応する

・「サクセス支援」:800以上のアプリを支援してきた経験から、解決策やナレッジを蓄積。専門チームがレクチャーやセミナーを通じてリリース後の課題やダウンロード施策についてアドバイスする

「Yappli CRM」で顧客管理、ポイント・電子マネー発行をワンストップで実現

2021年10月に提供を開始した「Yappli CRM」は、アプリを中心としたCRM(顧客関係管理)やポイント管理などの施策を実施するクラウドサービスだ。既存のCRMやマーケティングオートメーション(MA)、電子メール配信システムなどともAPIで連携できる。YappliとYappli CRMを組み合わせることで、顧客ごとに異なるアプリの行動データに応じてタイミングよくプッシュ通知したり、クーポンを配布したり、来店スタンプを押したりといった施策を実施できる。

コーヒーチェーンのPRONTO(プロント)は、Yappli CRMを利用することで顧客データに基づいたアプリ起点のコミュニケーションを実現した。2021年10月には、それまでプラスチックのカードだった電子マネーをスマホアプリに変更したり、値引き以外のロイヤルティー(顧客忠誠度)向上施策を実施したり、各顧客に合った特典や情報を配信したりするなど、ファンツールをアプリに一本化することで顧客忠誠度向上を図っている。

「Yappli for Retail App Ads」で自然なPRを提供

ヤプリは2023年5月に「Yappli for Retail App Ads」の提供を開始した。

図2 Yappli for Retail App Adsの概要(出典:ヤプリの提供資料)

「Yappli for Retail App AdsはYappli製アプリのPR枠に広告を出稿するサービスです。Yappliの機能を通じてより自然なPRを実現します。PR枠を提供したい媒体社、新たな広告配信サービスの利用を検討している企業の双方を募集しています。興味があれば、ぜひご連絡ください」

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