外食と惣菜の垣根を超えるニューノーマル時代を象徴、外食ビジネスウィーク2020で見た「5つの兆候」

2022.04.12

2020.10.15

2020年9月24、25日、東京ビッグサイト青海展示棟で、「外食ビジネスウィーク2020」(主催・外食ビジネスウィーク実行委員会)が開催された。AホールとBホールを使い、食品、飲料で約210社、設備、サービスで約100社が出展。オンライン展示会やオンラインセミナーも開催された。リアルとウェブ両面での展示会であった。

来場者は2日間計で約1万6000人だったが、その様子からは外食関係者が新たな、商品、ビジネスに強く興味を持っていることがうかがえた。「安全」「健康」「効率改善」をテーマに会場を見て回った。幾つかの特徴を紹介したい。

外食産業の食品、飲料、設備、サービスが一堂に集結する商談展示会
マスク、検温、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスを保ちながら会場に入場するなど、ニューノーマル時代の展示会の在り方を模索していた

惣菜関連の資格

外食関係の展示会に日本惣菜協会が出展した。ブースで話を聞いていると参加者の中から「惣菜には興味を持っている」「社長から惣菜を手掛けるように言われた」「資格制度に興味がある」などの声が聞かれた。

今後は、外食企業が、惣菜のテイクアウト、デリバリーの方向に向かうのは確かだが、正しい衛生管理、ラベル表示などを学ばなくてはならない。

日本惣菜協会は外食企業にはなじみが薄いかもしれないが、全国で613社が加盟する団体。外食が中食に参入する際には頼りになる団体といえよう
「惣菜管理士」「デリカアドバイザー」「ホームミールマスター」の資格制度を持ち、人材のスキルアップをサポートしている

テイクアウトロッカー

寺岡外食ソリューションズは、密を避けた注文、支払い、料理の提供をトータルで提案していた。

券売機はカード決済だけのものと、現金+カードの2種類を展示。カード決済であれば閉店後の現金精算は必要なくなる。券売機でお客の注文、支払いが終われば、自動的にバックヤードに発注が入り、料理の製造に取りかかるという仕組み。さらにテイクアウト、デリバリーに関しても密を防ぐために専用ロッカーの提案も行っている。密を防ぐだけでなく、機械化によるコストカットにもつながる。

「テイクアウトロッカー」。注文を受けたテイクアウト料理、デリバリー料理を「接触」なしで受け取ることができるだけでなく、手渡ししないことで省力化にもつながる
現金+カード、カード専用の券売機。カード専用機はコンパクトであるだけでなく、現金精算の必要がなくなるメリットがある。データは瞬時にバックヤードに発注されるため、人が注文を取る必要がなくスピードもアップする

時間短縮

中央化学の展示ブースではテイクアウト、デリバリー用のトレーを展示。スクリーンでは「30%時間短縮」の画像が流れている。トレー本体とふたを改良することで、弁当にふたをする時間が30%削減されるという提案(自社比較)。嵌合性がよいため、テープやゴムを使う必要もない。ちょっとしたことかもしれないが、年間にしてみれば大きなコストの削減になると思われる。

「ガチ弁シリーズ」を使うことで、弁当のふたをする作業時間が30%短縮(自社比較)されるというもの。密封性が高いためゴムやテープを用いる必要もない
持ち帰り用、デリバリー用トレーの提案。移動中の液漏れもないように設計されている

フードデリバリー

TGALは飲食店やフードデリバリー事業他、フランチャイズチェーンなども手掛ける企業。出前館やUBER EATSなどを使用した独自の複合型デリバリーショップの提案。デリバリー専用の厨房、配送用バイクは自前で準備することが特徴。既存の店舗を活用するのではなく、専用の厨房を持つことで、ウェブ上に独自ブランドを複数(寿司、ピザなど)立ち上げが可能で、注文の入った料理の製造、販売(デリバリー)を自社でっも行うのが特徴。

出前館、UBER EATSなどを使用した、複合型デリバリーショップ展開による収益パッケージの紹介。専用厨房での製造(複数ブランドが可能)、デリバリーは加盟店自ら行うのが特徴

プラントベース食品

Green Mondayの「OMN!MEAT(オムニミート)」。話題のプラントベースミート。オムニミートはフードテック企業「OmniFoods」によって誕生。カナダの食品化学チームの研究により、エンドウ豆、大豆、シイタケ、米を独自にブレンドした。ミンチの状態で提供される。日本でも今後プラントベース食品の需要拡大が起こりそうだ。

オムニミート。「MSG(化学調味料)無添加」「ホルモン剤不使用」「抗生物質不使用」「遺伝子組み換え原材料不使用」「保存料無添加」「五葷(くん)(ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、アサツキ)不使用」が特徴
エンドウ豆、大豆、シイタケ、米の植物性タンパク質を独自にブレンドしたプラントベースミートは、ミンチスタイルで提供

しろとり ひろゆき 1976年明治学院大学法学部卒業。留学のため渡米し、帰国後大手外食企業に就職。スーパーマーケットに転じ、バイヤー、店長を経験後、92年に独立。コンサルタントとして日本の惣菜業界指導の先駆者である日本フードサービス専門学院(現日本フードサービス)にてコンサルティングに従事。特に日配食品(チルド食品)の研究、コンサルティングでは先駆的な役割を果たす。最近では惣菜と日配の指導経験を生かした店長教育、各部門のチーフ教育、新入社員教育、メーカーの営業マン教育も手がける。著書に『日配の教科書』『日配売場の教科書』『惣菜で食育』などがある。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…