食分野において最新技術を応用したイノベーションの取り組み「フードテック」とは?

2022.04.21

2020.11.07

ラディック代表 西川立一

フードとテクノロジーをかけ合わせた造語「フードテック」。食分野において最新技術を応用したイノベーションの取り組みが、食糧危機やフードロスなどのグローバルな社会問題が山積する中で、近年注目度が高まっている。

植物由来の代替肉が近々注目。自社生産も加速

その中で、身近なアイテムとして、植物由来の代替肉「大豆ミート」がある。大豆は高たんぱくで低カロリー、食物繊維も豊富で、イソフラボンも含有し、肉に含まれている脂質や不飽和脂肪酸も少ないため、ヘルシーで栄養価が高い。

その大豆からたんぱく質を取り出して加工し、肉の代替品としてさまざまな商品に使われており、米国では大手チェーンがハンバーガーに採用するなど大豆ミートが急速に普及している。

食肉生産は、環境に大きな負荷を与えることが問題視されている状況の中で、環境面からも注目されている。

国内でも食品メーカーが商品開発に取り組み、最近ではスーパーの売場でも目に付くようになり、消費者の目に触れる機会も増えてきた。

大塚食品は、一般向けに2018年11月、「ゼロミート ハンバーグ」を発売、伊藤ハムも今年2月に、ハンバーグや唐揚げ、ソーセージ、豚カツ、ハンバーグ、黒酢団子、コンビーフなどをラインナップし販売を開始、市場に参入した。

これに先立ち、マルコメ味噌は、15年の春夏シーズンから「大豆ラボ」シリーズで、キーマカレー、麻婆豆腐などを展開し、昨年9月には、ヨーグルトにかけて食べる大豆生まれのパフも発売した。

大豆ミートを製造する不二製油本社グループは、昨年9月、「大丸心斎橋店」に大豆ミートを使用した惣菜を販売する直営店「UPGRADE Plant based kitchen」(アップグレードプラントベースドキッチン)を出店した。ハンバーグや唐揚げ、ラザニア、サラダ、デザートなど幅広いメニューを展開している。

イオンやイトーヨーカ堂などのスーパーも、代替肉「大豆ミート」をコーナー化

こうしたメーカーの動きを受けて、イオンやイトーヨーカ堂などのスーパーも大豆ミートやそれを使った商品を集積してコーナー化する取り組みも始まり、惣菜売場においても商品が展開されている。

さらに、飲食店でも大豆ミートを使ったメニューを提供する店も増えてきている。ロート製薬が運営するグランフロント大阪にある「旬穀旬菜」では、昨年10月から、パスタソースに大豆ミートを使用するなどして、ベジタリアンコースの提供を開始、健康意識の高い20~30代の女性の取り込みを図っている、

店舗における植物工場の導入も始まった。西友は、プランツラボラトリーと共同で、西友上福岡店に「店内植物工場」を開設、今年2月から水耕栽培レタスを販売している。

一般的に、植物工場は初期導入コストが高く、それに伴い販売価格も高価になりがちだ。プランツラボラトリーの場合、東京大学との共同研究により開発した植物工場システム「PUTFARM」は従来のものに比べ、導入コストは2分の1~3分の1。そのため1株137円ら(本体価格)と手ごろな価格を実現させた。

さらに、敷地の広さや屋内外を問わずさまざまな場所に設置が可能で、上福岡店では約45坪で展開している。

天候に左右されない安定的な商品供給を可能とし、地産地消ならぬ「店産店消」で野菜売場に直接持ち込むため、ゼロマイレージを実現、無農薬栽培で、安全・安心を担保、サステナビリティにつながる取り組みで、店舗売場スペースの新たな有効活用策の担い手としても期待している。

ユニークな取り組みがクックパッドのスマートキッチン「OiCy Service」。レシピと連動してキッチンデバイスを操作したり、火加減などの調理ログを記録、ユーザーが自分なりのアレンジを加えて自分の「おいしい」を見つけることができる。

その一環として、手始めにクックパッドのレシピを選ぶだけで必要な分量の調味料を自動で計量してくれるレシピ連動調味料サーバーのコンセプトモデル「OiCy Taste」を開発した。

料理の途中で調味料を取り出したり計ったりする煩わしさを解消し、料理を楽しむことに集中できる。さらにレシピどおりに再現するだけでなく、人数変更や好みの味付けのアレンジも簡単に行うことができる。

実用化されて利用が進む技術が「MAP (Modified Atmosphere Packaging、ガス置換)包装」

すでに実用化されて利用が進む技術が「MAP (Modified Atmosphere Packaging、ガス置換)包装」。

パッケージの中の空気を、その食品の保存に適して精製された食品ガスに置換し包装する方法で、消費期限が従来より3、4倍長くなるメリットがある。現在日本では食肉や食肉加工品、チーズ、水産練り物などチルド温度帯の商品に使われている。

店舗や家庭での食品廃棄ロスが減少する他、製造段階で製造効率が上がり、コストが下がる。結果として遠隔地域にも届けられる可能性が広がり、生活者にとっても買い置きがしやすくなるというメリットがある。ダイエーでは、食肉、魚、惣菜の寿司など一部の商品に導入し、成果を上げている。

ベンチャー企業による新しい食の提案も始まっている。「COMP 」は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に基づいて開発されている。性別や年齢、運動量に合わせた摂取量の目安を設け、ドリンク・粉末・グミの3種類で提供されている。

BASE FOODが販売するのは、1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できるパスタやパン。パスタには約30種の栄養素が含まれ、1食に必要な栄養素を、すべてバランス摂取できる。

デイブレイクは品質を落とさない特殊な冷凍技術で、添加物は一切使用せずに味、風味、栄養をそのまま閉じ込めた100%国産の安心・安全な冷凍フルーツを販売している。規格外のサイズや傷物を使用し、フードロスの削減にも取り組んでいる。

大手の日清食品でも、栄養摂取とおいしさを同時にかなえる独自の技術によるビタミン、ミネラル、食物繊維を補う「All-in」シリーズ」を展開。パスタや麺を販売している。

最新テクノロジーを活用して、さまざまな取り組みが行われているフードテック。生活者の食に関する意識の変化に対応しながら、食シーンにおける新たな価値創造につなげて、食マーケットを活性化する可能性も秘めている。

お役立ち資料データ

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