長野県外に初出店したツルヤ前橋南店、「信州」を全面に打ち出した商品力に学ぶ
2022.04.12
2020.11.25
長野県小諸市に営業本部を置くツルヤは、店舗数36店、年商1000億円弱の規模だが、プライベートブランド(PB)商品などオリジナル商品などの商品力、そしてそれを販売する店舗運営力などに定評のある有力スーパーマーケット(SM)企業だ。そのツルヤが、11月12日、初の長野県外、群馬県前橋市に前橋南店を出店した。
前橋駅からツルヤに向かうタクシーの中で、ツルヤの店の話題になった。そのドライバーによると、前橋からツルヤ軽井沢店に行く人は少なくないという。軽井沢までは高速道路を使えば1時間、下道でも1時間30分だ。「佐久や小諸は長野県だが、軽井沢は軽井沢という隣町に行くようなもの」という。
それだけツルヤの名前は前橋にも浸透していることが伺える。近くに出店したことを歓迎しているようだ。お客の反応を見ていると、県外からのスーパーマーケットの新規出店にもかかわらずあまり迷いがなく買物を楽しんでいる。
訪店したのはオープンから10日ほど経った11月の3連休の最終日23日、14時ごろだったが、店内は年末商戦のように多くのお客が訪れている。軽井沢店での買物に慣れているせいか買上点数も多いように見受けられる。レジは15台フル稼働であった。
レイアウトは標準+酒、冷凍食品の拡大
前橋南店はツルヤの既存の600坪スタイルに比べて少し広くなっているように見える。歩測したところレジインのスペースは約700坪程度か。レジアウトを含めれば約800坪ほどである。
ゾーニング、レイアウト、棚割りは、酒売場、冷凍食品売場の2カ所を除けば既存店とほとんど変わらない。「標準化」されているため軽井沢で買物をしていたお客も違和感なく買物ができる。また、ツルヤは鮮魚売場、冷凍食品売場、パン横の平台以外は、平ケースを使用しない。その分十分な品揃えと通路幅が十分確保できる。
酒売場は従来のゴンドラの間に新たに平台を設置し、品揃えを拡大している。オリジナルワインの品揃えは圧巻である。冷凍食品はコンビネーションタイプと平ケースが標準であったが、コンビネーションケースをもう1レーンプラスし「川型」の最大の売場をつくった。ツルヤオリジナル冷凍食品の他に冷凍ミールキット、冷凍スナック、冷凍パン、冷凍フルーツ、フローズンミートなどを充実させている。
オリジナル商品を売り込みながら低価格戦略
品揃えはまるで「生鮮食品のある信州物産展」だ。長野県産、信州産ブランドの商品など目新しい商品が品揃えされている。青果のキノコ売場などは圧巻だ。
また、国産の原材料、信州産の原材料を使った飲料やワイン、ジャム、ナッツ、野菜加工品など一般食品にPB商品が多い。これが人気を集めている。
新型コロナウイルスの登場で、時代は「ハイ&ロー」から「エブリデーロープライス(EDLP)」の時代へと移りつつあるように思う。その点、ツルヤはずいぶん前から、ハイ&ローからEDLPに変わっていた。EDLP戦略はハイ&ローに比べて即効性は少ないが、ジワジワとお客が増えてゆく特徴がある。
お客もいつも安いためゆっくり買物ができる。発注やオペレーションも日替わりなどの波が少ないため平準化できる。もちろん、EDLPを支えるにはウォルマートがそうであるように、EDLC(エブリデーローコスト)が必要であるが、もう1つ、重要なポイントがある。それがPB商品である。NB商品だけをディスカウントし続けるのは簡単なことではない。
SMの原則である「良い商品をより安く」という考え方は変わらない。その点、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるITあるいはAI(人工知能)、ビッグデータなどの活用によってSMではローコストオペレーションが進む。
そうなると、次に来る波は「ディスカウント」と「商品の差別化」になる。NB商品の価格競争は激化し、PB商品が利益をカバーする。ツルヤはずいぶん前からそれを見越した商品開発を行ってきた。
売場で気になった商品を幾つか購入した。PB商品を中心に、その商品力のポイントを紹介したい。
ベイシアとコストコはどう対じしているのか?
ツルヤ前橋南店から車で約5分走ればベイシアとコストコが出店しているパワーセンターがある。どちらもよくお客が入っている。ベイシアの青果売場では野菜のばら販売を実施。また、鮮魚や精肉、惣菜の品揃えが充実している。精肉売場では「信州牛」も販売していた。惣菜売場では「上州名物」を前面に打ち出している。
一方のコストコは、アメリカの店の雰囲気そのままに、独自のメニューを販売している。ツルヤは「信州物産展」、ベイシアは「上州物産展」、コストコは「アメリカンフェア」といったところか。独自化が進み食品小売業がおもしろくなってきている。