2021年版:世界の食品トップ10トレンド(前編)

2020.12.01

2020.12.11

Innova Market Insights 田中良介

当社では毎年「世界の食品トップ10トレンド」を発表している。つい先日、2021年版の概要が一般公開となった。このトレンドは、世界一精度が高いと言われ、各国の食品関係者から非常に注目されている貴重な情報源だ。

表面的なブームを描いたものではない。Innovaでは、各国の新製品、市場規模、消費者意識の変化・ニーズ、パッケージ、原材料情報、企業の取り組み、特許の動向、サステナブルなど、複雑化した社会を、多面的に深いレベルまで洞察している。

もちろんこれは食ついての分析だが、意味合いは食品業界だけにとどまらない。食文化とは、ライフスタイルを映し出す鏡であり、歴史を紡ぐものだ。今年は新型コロナウイルスの発生に伴い、生活様式、仕事のスタイル、人々の考え方など、世の中が大きくさま変わりした。この時代の変化や根底に流れるものが、当社のトレンド分析には反映されている。

本記事では、前編・後編に分けて「トップ10トレンド2021」の概要を紹介する。食品企業が混沌の時代を乗り越え、未来を積み上げるための羅針盤にして欲しい。2021年に向けて、ますます重要性が増すと考えられるナンバーワントレンドは「Transparency(透明性)」だ。ではさっそく見ていこう。

トレンド1:すべてにおいて透明性

当社の調査によると、世界の6割の消費者が、食品がどこから来たかを詳しく知りたいと回答している。食品企業には、原産地や製法について、消費者にクリアに伝えることが求められる。これは過去10年間以上にわたり伸びてきた「クリーンラベル」の概念とも共通する。

重要なことは、あらゆる事柄について「透明性」を保つ企業姿勢が、消費者から見た企業ブランドや信頼性に直結するということ。地球、人、動物に対するエシカル面のウエートが大きくなってきているのもいまの時代の特徴だ。

たとえば、フェアトレードや動物福祉にも気を遣っているか? 持続可能な農業を支援しているか? また環境破壊につながる原料を使っていないか? パッケージのリサイクル方針は明確か? など、サプライチェーンのすべてにおいて、透明であることが求められる。

これら情報を単にデータとして消費者に伝えるだけでなく、意味のあるストーリーで語ることも欠かせないポイントである。

トレンド2:プラントダイバーシティ

 世界でプラントベース(植物由来)食品の勢いが止まらない。このトレンドは元々、ヴィーガンやヴェジタリアンから始まり、フレキシタリアン(セミベジタリアン)と呼ばれる、いわゆる一般の健康志向の消費者へと普及した。

この先、スナック、ドリンク、ミールキット、チーズ、魚製品など、プラントベースの応用範囲が一段と拡大すると考えられる。細胞を培養して肉や乳製品を作る技術においては、食品革命にもつながるイノベーションだ。

また欧米中心に広がってきたこのトレンドが、アジアを含む幅広い地域に網目のように浸透するのが21年。各地域への広がりが、多様化を加速する。

そこで直面するのが、日本の進むべき道だ。日本には、豆腐、納豆、みそなど、長い歴史に培われた、世界に誇るべきプラントベース食品が数多く存在する。欧米流プラントベースと日本の伝統食との兼ね合いをどうするのか? 欧米流を単に受け入れるのか? もしくは何らかの形で融合を試みるのか? 時代の潮流の中で、私たち日本人が考えなければならない課題でもある。

トレンド3:よりテーラーメイドへ

パーソナライズドニュートリション(個々人に適した栄養素)の分野に注目が集まっている。消費者は、自分たちのライフスタイル、体調、健康状態、感情、信条などに適した、ベストな食を求める。当社で実施した調査でも、64%の世界の消費者が、そのように回答している。

昨今の成長トレンドであるプロテイン1つ取ってみても、動物性タンパクのアミノ酸バランスを重要視する人、植物性タンパクのサステナブル観点に着目する人、または各原料のいいとこ取りハイブリッド型を好む人など、千差万別だ。食品企業には、多様化したニーズを読み取り、細かく対応することが期待されている。

もちろん完璧ともいえるテーラーメイドを実現するには、まだまだコスト面や技術的な課題が存在するのも事実。最近では、スマホアプリを使い、個々人に必要な食事メニューや栄養を提案するサービスも見られる。進歩が著しい。

トレンド4:ニューオムニチャネルの食体験

フードサービスと小売りのサービス領域が重なり合い、消費者は食べたい物を、食べたいときに、食べたい場所で楽しめるようになった。Covid-19がその流れを加速している。消費者は、利便性、豊かな体験、ぜいたく感を欲している。

ステイホームを強いられた結果、自らクッキングを楽しむようになった消費者も多い。しかし皆が皆、一から料理をするわけではなく、良質な原材料やレストランクオリティを気軽に堪能できる、ミールキットやデリバリーに注目が集まる。

当社の調査において、46%の世界の消費者が、「レストランブランドの食品を取ることで、家でも外食気分を味わえると思う」と回答している。

要するに、今まではレストランだからこそ提供できると思われていた特別な食体験を、消費者があらゆるルートで手に入れ、楽しむ手段を見いだし始めたということだ。

トレンド5:免疫力

コロナの拡大に伴い、消費者は改めて健康を意識するようになった。どうすれば免疫機能を維持・向上できるかが関心の的だ。

当社の調査では、世界の60%の消費者が、免疫の健康をサポートする食品を、今まで以上に摂取するようになったと回答している。

それに伴い、ビタミンC、D、亜鉛などのサプリメントが売上げを伸ばしている。また免疫と、腸内環境やメンタルヘルスを組み合わせた商品も見られる。

ナチュラル原料を求めるトレンドと、機能性を求めるニーズが、同居しているのもコロナ時代の1つの特徴である。ボタニカル原料主体のサプリメントへのニーズも高い。上述の「パーソナライズドニュートリション」とも大きく関係するが、個々人に適した免疫機能のサポートも見逃せない動向だ。

次回は後半の5つのトレンドを紹介する。

※記事中の画像・グラフは、当社Innova Database及びInnova Reportsより引用

たなか りょうすけ Innova Market Insightsの日本カントリーマネージャー。世界の食品トレンドを読み解き、日本へその知見・視点を伝え、企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。日本と世界をつなぐ懸け橋となり、クライアント企業と一丸となって食産業の発展に貢献することがミッション。Innovaでは90カ国以上をカバーし、新製品情報、消費者動向、原材料トレンド、市場規模データなど、多様化が進む現代の食品産業を、あらゆる角度から深いレベルまで分析できるデータベースを提供している。

HP: https://www.innovamarketinsights.com/

世界の最新食品トレンド情報: https://55auto.biz/innovami-japan/registp.php?pid=1

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