続・ツルヤ前橋南店の強さの秘密、青果の商品力と品揃え、売り方に学ぶ
2022.04.21
2020.12.15
アズライト代表 榎本博之
ツルヤ前橋店のレイアウトは長野県内の店舗と同様、標準化されたものが導入されている。入口トップは特設で、果物の箱売りと野菜のスポット商品、バナナなどが並ぶ。そこから、主通路を挟むように対面で冷ケースが直線で配置されている。平台はない。壁面は店奥角までが青果コーナーであり、反対側は店奥までの半分が青果で、その後は鮮魚となっている。
青果コーナーの品揃えは素材系が中心で、幅は広いが、奥深さであるラインロビングはほとんどなされていない。トマトでも10SKU以下である。自分たちの目利きでしっかりと絞り込んでいるという印象がある。
加えて、コーナー化がアクセントとして差し込まれている。「大地を守る会」と組んで展開している「オーガニック」をはじめ、京野菜、カット野菜は、くくりを明確にして訴求ができていた。
集客的には、カット野菜が注目される。「国産五種のサラダ野菜」(100g)が39円(本体価格、以下同)をはじめ、2桁売価を中心とした割安感の強いラインアップとなっている。訪店時の11月末は、相場安であり、そこまで立ち寄りが強くはなかったが、他社と比べても価格競争力が強く、今後もこのクオリティと価格を維持できるのであれば、かなりの脅威となるだろう。
群馬県産アイテムのローカライズ対応であるが、青果コーナーにおいては、ケールや果物など一部のアイテムで導入がみられるものの、目立つほどはなかった。むしろ、青果で目立つのは信州産アイテムである。
キノコ類の充実や、6年物の生高麗ニンジンなど、「ツルヤ」らしさを意識した訴求がされており、来店客の目を引いていた。
しかしながら、冷蔵ケース上部でのショーカードでは、信州産に加え、群馬県産を積極的に取り扱い展開する旨の案内がされており、今後は群馬県産のアイテム充実が図られるのであろう。日配やドライでは、すでに群馬県内のメーカーと組んだプライベートブランド(PB)商品が幾つか展開され、生鮮にもその流れに乗ると考えられる。
冷凍を含む加工品の有効活用で品揃えを補完
ミールソリューションの観点で見ると、「冷凍食品」の品揃えが縦糸と横糸を紡ぐ、競争力の原動力となっている。青果には、前述したカット野菜はあるものの、ミールキットや関連販売の展開はされていない。あくまでも、素材を中心とした商品構成に徹している。
冷凍食品は第3主通路の1本内側の通路全てを使用し、対面でリーチインの冷凍ケースを挟み込むように配置し、その間に平型のケースが並ぶ、圧巻の売場づくりとなっている。メニューの多彩さもさることながら、個食にも対応する量目、手の伸ばしやすい価格設定など、バランスが取れているだけなく、魅力的な売場づくりとして機能している。
素材的な冷凍野菜やフルーツをはじめ、和洋を問わないメニュー提案、メインディッシュからサイド、スープ類までの展開など、いろいろなシーンでの使いやすさが想定される。また、取り扱いアイテムについても、自社PBに固執することなく、ナショナルブランド(NB)商品も織り交ぜながら構成されている。
競合店舗でも、一部アイテムについて同様の取り扱いがあったが、それも「点」での訴求であり、品揃え程度にとどまっていた。新たな需要喚起を図るには、単品での訴求では限界があり、どのように組み合わせを構成し、展開することが問われている。
その意味では、ツルヤ前橋南店の冷凍食品売場は価格競争一辺倒から脱却するための1つのベンチマークといえる。また、冷凍食品は食品ロスの問題からもメリットが大きい。店内加工や生ものを活用したミールソリューションは確かに店の魅力創出に有効である。しかし、ツルヤではそこに温度帯管理の要素も加えることで、さらに顧客ニーズ合った対応を行っていると言えよう。
その他、ツルヤでは農産物を使ったPBが豊富だ。代表的商品であるジャムは、リンゴバターをはじめ、特徴的な商品が幅広く用意されており、主通路最終コーナーの先頭に展開され、マグネットとして客だまりができていた。
さらに、ジャムを起点として、蜂蜜→ドーナツ(卵パン)→カステラ→ラスクと、PB商品を中心としたゾーニングがしっかりしているので、洋日配、惣菜コーナーと併せてこの一帯が大混雑していた。競争力のあるPB商品を、視認性、立寄率の高い場所に配置することで、ツルヤのイメージを形成する役割を果たしている。
また、ドレッシングは常温、冷蔵と2タイプを展開。冷蔵タイプは副通路であるが洋日配のエンドを挟むように2面で展開されており、存在感を高めていた。惣菜コーナーでは、長野県千曲市のSANCHのサンドイッチ類が見た目も鮮やかに並んでいた。
ドライでは、化学調味料不使用の野菜ふりかけが100円以下で販売されているなど、コスパが良いPB商品を随所に展開している。
鮮度をはじめ「質」を高めるベイシアとの高レベル競合
ベイシア本部そばにある前橋みなみモール店は、ツルヤとは車で10分離れていない場所に立地している。ミカンの箱売りや大型野菜の価格訴求はあるものの、質で対応する姿勢をしっかり取っていた。
特に意識しているのが鮮度である。アイテムを表記し、それらについては陳列当日のみの販売している点をアピールしていた。鮮度チェックの腕章を付けた従業員がこまめに売場を回るなど行動面でもその対応が確認できた。ミカンの箱売りについてもチェック日を記載したシールが貼付されていた。
また、平台でのコーナー化はくくりが明確で、訴求力があった。ばら売りコーナーを奥に配置し、ツルヤでも力を入れているキノコは種類も豊富であり、さらに、地場産の力を発揮するための産直コーナーなどは売場の顔となっていた。カット野菜のコーナーでは、ミールキットを10SKUほど展開。中心価格も298~398円と値頃感を出ている。
ツルヤは生鮮を中心に鮮度を売りにしているところが顧客の評価であるが、加えて、品揃えについてはかなり割り切っている点に注目したい。売上げの作れるものについては、積極的に売り込むが、絞り込みはされている。
冷凍食品をはじめ、ロングライフアイテムを組み合わせることで、売上げだけでなく利益管理もコントロールできやすい仕組みとなっている。そのため、青果においても、メインは売れ筋商品に絞った展開となっている。オペレーションとしては、冷蔵ケースにしっかり商品を陳列することで、補充回数を減らし、日曜日においても2人の従業員で売場を回していることは見逃せない。