NTTデータがサプライチェーン全体のCO2排出量の見える化を目指し、実証実験に参加
2022.12.09
NTTデータは2022年12月9日、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が事務局を務める「Green x Digital コンソーシアム」の実証実験に参加する。
実証実験にはグリーン関連ソリューションの提供企業やユーザー企業35社※2が参加し、CO2排出量データを異なるアプリケーション間で交換して、交換ルールやデータフォーマットの課題を検討する。
サプライチェーン全体でCO2排出量を見える化するためのルール作りを目指す取り組み。NTTデータは、CO2排出量データを管理するアプリケーションを提供し、ソリューション提供側の立場でデータ交換を検証するほか、ユーザー側の立場でルールの実効性や課題などを検証する。
実証実験の背景
企業は昨今CO2排出量の削減を自社だけでなくサプライチェーン全体で求められているが、サプライチェーン全体にわたるCO2排出量の算定には課題がある。
本来は実際の取引に基づく各社固有のデータ(以下:一次データ)を用いて算定することが望ましいものの、現在は排出量データの交換ルールが定まっていないため、業界平均値を用いて概算することが多くなっている。
業界平均値による概算では、例えば従来製品からグリーン製品・サービスに切り替えたとしても、その削減効果が算定結果に反映されないため、製品・サービスの購入自体を減らすことだけが求められる構造になっているという。
事業成長と脱炭素を両立させるには、各社固有の一次データを用いてCO2排出量を把握することが必要だが、そのためにはCO2排出量の算定ルールからCO2排出量データの交換に関する技術的仕様まで、さまざまな観点で標準化が必要。
上記のような課題がある中で、NTTデータは今回、同コンソーシアムの実証実験に参加し、企業の垣根を越えてサプライチェーン全体でCO2排出量を見える化するためのルール作成や標準化を目指すという。
Green x Digital コンソーシアムについて
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が事務局を務める同コンソーシアムは、環境関連分野のデジタル化や新たなビジネスモデルの創出などを通じて2050年カーボンニュートラルの実現に寄与するべく、2021年に設立。
今回の実証実験は、同コンソーシアム内の「見える化WG(ワーキンググループ)」(以下、同WG)で実施。同WGはNTTデータをはじめとして、IT業界にとどまらず132の企業が参加しており、以下2点を目的としている。
①グローバルでのサプライチェーン全体の脱炭素化を求める取引慣行や、欧州を中心とした新たなルールメイキングに対し、デジタル技術を活用し、サプライチェーン全体のCO2データを見える化(=共有)するプラットフォーム(データ連携基盤)構築に向けた活動を行う
②企業間の協働(エンゲージメント)を促進するよう、削減努力がデータとして適切に反映される仕組みを目指す。
同WGではこれまで、サプライチェーンの企業間でCO2排出量データを交換し、スコープ3を含むサプライチェーンCO2排出量を見える化するための仕組みを検討し、「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」※を策定。
サプライチェーンはグローバルに展開されていることを踏まえ、国際的な枠組みであるWBCSD Partnership for Carbon Transparency(PACT)※と連携して進めている。NTTデータは、同WG配下の「ルール化検討SWG(サブワーキンググループ)」と「データフォーマット・連携検討SWG」の両方にサブリーダーとして参加し、これらの検討を推進してきた。
実証実験について
「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」に基づき、多様な業界の企業が共通的な方法で算定した排出量データを、異なるソリューション間でデータ連携し、サプライチェーン全体のCO2排出量を正確かつ効率的に把握できることを確認する。
データ連携の技術的な検証を行うフェーズ1を2023年1月末までに、ユーザー企業も交えてのCO2算定も含めた実務的な検証を行うフェーズ2を2023年6月末までに、それぞれ完了させる予定だ。
実証実験にはグリーン関連ソリューションの提供企業やユーザー企業35社(2022年12月9日時点)が参加予定。
NTTデータは実証実験のフェーズ1にオブザーバーとして参加し、フェーズ2からは正式メンバとして実証実験に参加する。CO2排出量データを管理するアプリケーションを提供し、ソリューション提供側の立場でデータ交換を検証するほか、ユーザー側の立場でルールの実効性や課題などを検証する。
今後について
NTTデータはこれまで、CO2排出量の見える化、データ主権を保護できるグローバルデータ連携基盤の検討、非営利団体「ESTAINIUM」の設立、EVバッテリーに関する業界横断エコシステムの構築といったさまざまな活動を通して、脱炭素に向けたデータ活用に携わってきた。
本実証実験への参加を通じて国内のルール作成や標準化に一層取り組み、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。
※「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」について
サプライヤー企業の削減努力を反映した一次データに基づくCO2データの流通の実現を目的に、デジタル技術を活用してサプライチェーン内で交換されるCO2データについて、算定ならびに共有方法(データ品質の開示方法)を提示する方法
論文書「CO2可視化フレームワーク」と、共通データフォーマットと連携仕様を提示する技術文書「データ連携のための技術仕様」。双方、国際的な枠組みであるWBCSD PACTによるPathfinder FrameworkならびにPathfinder Networkのアプローチを取り入れながら、参加企業のニーズや国内制度等を踏まえた独自の要素も含む。現在、一般公開に向け準備中。
※WBCSD Partnership for Carbon Transparency(PACT)について
持続可能な開発を目指す企業約200社のCEO連合体。GHGプロトコルの主催団体。Partnership for Carbon Transparency (PACT) は、WBCSDの下、バリューチェーンにおける排出量の透明性を高めて脱炭素化を加速することを目的として活動。2022年12月現在、排出量データ交換に必要な方法論的・技術的基礎を定義し、Pathfinder FrameworkならびにPathfinder Networkとして公表中。Green x Digitalコンソーシアムは、PACTのエコシステムに参加している。