トライアルが購買データを九州大学に提供、民間企業の購買データと医療データを連携した研究開発実施へ

2021.04.22

トライアルホールディングスと九州大学の共同記者会見の様子

トライアルホールディングス(HD)は、九州大学のオープンサイエンスプラットフォーム(OSP)に参画し、ヘルステック分野での産学連携の取り組みを開始する。傘下のトライアルカンパニーが運営するディスカウントストア「トライアル」の購買データと九州大学病院のビッグデータを活用し、病気の「超早期発見や予防」などを含む包括的ヘルスケア分野のイノベーション創出に挑むという。

トライアルHDが九州大学に提供するのは、 「トライアル」で購入された商品データと、 購入者の性別、年代のデータ(個人を特定し得ないデータ)。これらのデータを医学的視点から分析し、属性ごとの生活習慣の推測や、健康上のリスク測定などを行うことで、病気の「超早期発見」や「健康寿命延伸」など新たな価値創造を目指す。これまで民間企業の購買データをヘルステック開発に活用した事例はなく、今回の取り組みが世界初と言えるという。

トライアルグループと九州大学は2018年から連携。トライアルHD取締役兼Retail AI代表の永田洋幸氏らが小売りのリアルデータを用いた分析に関する授業を同大工学部で行っている。

また、福岡県宮若市でのリモートワークタウンムスブ宮若プロジェクト(産官学による“新しいまちづくり”)でも両者は協働している。

ヘルスケア分野でのイノベーション創出目指す

OSPは、「ふくおか産学共創コンソーシアム」に参画するトライアルHD含む9企業と自治体など、および九州大学の研究者や学生が、オープンな場で九州大学病院のビックデータや各企業が保有するデータを共有し、データに基づいたアイデアからイノベーションを創出する仕組み。

今後、さらに重要性が増すヘルステック市場においてさまざまな企業の技術を価値に転換することを目的として20年に開始され、トライアルHDは21年4月に新規参画。イノベーション創出手法として認知されている「デザイン思考法」を用いながら、その問題点とされているアイデアの確実性をデジタルトランスフォーメーション(DX)によって担保する初めての試みであるという。

Retail AIは、 スマートショッピングカート(セルフレジ機能付きタブレットを搭載したショッピングカート)やリテールAI(人工知能)カメラ(小売業に特化したAIエンジン搭載カメラ)など小売店舗向けIoT(モノのインターネット)機器を開発し、それらを「トライアル」のみならず他企業が運営する複数のスーパーマーケットにも納入している。

また、 メーカーや卸などと業種を越えて連携し、 流通業界全体のDX推進の旗振り役も務めている。顧客の購買データや店舗オペレーションで生じる各種データの収集・分析・活用において経験値と知見を蓄積していることもあって、今回のOSP参画を通してこれらの経験値や知見をヘルスケア分野での新たな価値創造につなげたいとしている。

「ITのちからで流通を変える」というスローガンを掲げ、他企業や他業界とのデータの共有・活用によるオープンイノベーションを行ってきたトライアルグループにとっても、大学および大学病院が持つメディカルデータとの連携や、ヘルスケア分野でのイノベーション創出は初めての試みとなる。九州大学との積極的な協働により自社の持つ無形資産を社会への貢献に生かしていきたいという。

トライアルホールディングス取締役兼Retail AIの永田社長は次のようにコメント。「弊社は創業以来、ITを駆使してリテールを変革することを企業理念としています。そのためには多様なデータが不可欠であり、データを集め、また生かすために多くのトライを行ってきました。今回九州大学さまと連携し、弊社の購買データを活用することで、ヘルステックにイノベーションを起こすことができるかも知れない——データ活用の新たなステップを踏み出すことに、 高揚感を覚えております」

また、九州大学大学院システム生命科学府長の片山佳樹氏も次のようにコメントした。「ヘルステックの社会価値創造には、医療データ解析だけでは不十分で、人の健康や疾患の原因を生活環境、生活スタイルの中で包括的に解析することが必須です。そのためには、医療データと生活スタイルの生きたデータを掛け合わせることが重要ですが、これまでそのような取り組みは存在しませんでした。今回、トライアルさまの顧客購買データを活用させていただけることで、これまで発想すらできなかった健康に関わる新しい因子が見つかることを期待しています。また、それにより健康長寿のための新しい流通システムのご提案にもつなげていただけると期待しております」

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