植物由来代替肉のスタートアップ「ビヨンドミート」とは?

2021.05.07

写真/ビヨンドミート

昨今、欧米を中心に代替肉の需要が高まっている。代替肉を手がける企業は数多く存在し、中でも「ビヨンドミート」などは代表的な企業といえるだろう。本記事ではビヨンドミートの企業情報や提供商品を紹介すると共に、現在の動向も解説する。また、アメリカや世界で代替肉の需要が高まった背景も説明していく。

ビヨンドミートの企業情報と提供商品

まずはビヨンドミートの企業情報と提供商品を紹介する。

●ビヨンドミートは米国の食品メーカー

ビヨンドミートとは米国のカリフォルニア州に本部を置く企業である。事業内容は植物由来の代替肉の開発や製造だ。2009年に設立されてからさまざまな企業から資金調達をしながら、19年には米国株式市場のNASDAQに上場を果たした。

ビヨンドミートが製造する植物由来の肉は年々注目を集め、多くのスーパーマーケット(SM)で販売されるようになってきたこともあって、18年には生産力を3倍に増強したという。現在では米国内の50以上のSMやファストフード店に製品を提供するほどである。

昨年1⽉に⽶国ニューヨークで開催されたNRF(全⽶⼩売業協会)主催のカンファレンスに出席したビヨンドミート社のセス・ゴールドマン⽒(左、当時エグゼクティブチェア、現ボードメンバー)。「カテゴリーは急成⻑している。この動きはすぐ主流になる。われわれは植物性の⾁が最低でも精⾁ケースの30%を占めると信じている」と語った

●ビヨンドミートがつくる植物由来の代替肉とは?

ビヨンドミートの植物由来の代替肉は、エンドウ豆が主成分だ。さらに、ココナッツオイルで肉の感覚や感触を再現している。肉の赤みがかった色はビーツを用いることで、再現している。

見た目は牛肉や豚肉などとそれほど変わらないように見えるが、よく見ると肉ではないことが分かるかもしれない。しかし、調理して食べると肉汁なども再現されており、食感も本来の肉に近づけている。

ひき⾁状の「ビヨンドビーフ」のパッケージを開けたところ。⾒た⽬はひき⾁によく似ている
ハンバーガーパティの「ビヨンドバーガー」。エンドウ⾖のタンパク質を主原料とする
ビヨンドビーフをフライパンで焼くと⾁汁が染み出しきた。ただし、香りは肉とは異なり、独特の豆のような香りがする
焼き上がったビヨンドビーフ。切り⼝も含め、⾒た⽬には⾁とほとんど変わらないように⾒える

●ビヨンドミートの提供商品

ビヨンドミートはさまざまな商品を提供している。主力商品であるビヨンドバーガーをはじめとして、ビヨンドミートボール、ビヨンドソーセージ、ビヨンドチキン、ビヨンドビーフなど幅広く展開中だ。

ビヨンドバーガーはピンク色の生肉のような状態から、加熱することで肉汁によるジューシーさと褐色への変化が特徴的だ。

さらに、ビヨンドバーガーは20年に2つの新バージョンを発表。低脂肪のパティと高脂肪のパティの2種類である。また、日本の航空会社では初めてとなる機内食でのビヨンドバーガーの提供を日本航空が行うなど、さまざまな動きが出てきている。ビヨンドバーガーの注目度の高さが伺える。

一方、比較的新しい商品がビヨンドミートボールだ。20年9月に発売され、アメリカ国内ではコストコやホールフーズなどが取り扱っている。ドバイ(中東)ではスターバックスコーヒーがサンドイッチの具材として採用しており、国や地域によって活用方法が異なる。

ビヨンドミートボール(写真/ビヨンドミート)

このように、ビヨンドミートの製品はさまざまな場面で活用されていることが分かる。

なぜ植物由来の代替肉の需要が増えたのか?

ここからは、なぜ植物由来の代替肉の需要が増えたのかをみていく。植物由来の代替肉の需要が増えた主な要因としては、以下の3つが挙げられる。

●肥満軽減や生活習慣病の抑制などの健康志向

植物由来の代替肉の需要が高まったの背景には、欧米人を中心とした健康志向の高まりもあるとみられる。日本人にとっては、豆腐や納豆など伝統的に植物性タンパク質になじみがあるが、植物性のタンパク質のイメージの良さとして、「比較的低脂質、低カロリーでヘルシー」というイメージを持っている。

ビヨンドミートはメインに大豆を活用していないものの、例えば大豆のタンパク質は脂質の腸管吸収を抑制するという研究結果も報告されており、抗肥満、メタボリックシンドローム予防、生活習慣病の抑制として代替肉を好むといったことも考えられる。

また、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)の調査によると、ハムやソーセージなどの加工肉を毎日継続して1日当たり50グラム摂取するごとに大腸がんのリスクが18%増加するといったことも報告されている。

牛や豚などの哺乳類の肉に関しても毎日摂取すると大腸がんのリスクが高まるとされている。このような調査結果から検討しても植物由来の代替肉の需要が納得できるだろう。

●人口増加と環境意識の高まり

肉の摂取は地球環境に悪影響を与えるとの認識が高まっている。畜産業では家畜生産により大量の水の確保が必要だ。また、家畜の排泄物による水質汚染も問題になっている。家畜の消化器管内酵素、糞尿から放出される温室効果ガスなども問題として認識されるようになってきた。

一方で、食肉の需要は今後増えることが予測されている。世界の人口は2050年に97億人に達すると推計され、世界の食肉消費は2030年から2050年の間に20%拡大すると見込まれている。

しかし、家畜が地球環境に与える影響を考えれば、際限なく食肉を提供できるわけではない。農耕地の面積の伸び率も鈍化しているため、人口増加による食料需給のひっ迫を促進させる可能性もある。

そこで注目されているのが植物由来の原料で、本物の肉と見た目や味も遜色ない代替肉ということだ。

●動物愛護の視点

代替肉は動物愛護の視点でも注目度が高い。各国の政策や宗教上の理由から、食肉の取引を制限していることもある。17年に犠牲になった動物の数は世界の人口の10倍以上に上っているとの見方もある。数字をみると動物性タンパク質の消費は莫大な数の動物によってもたらされていることが分かるだろう。

ビヨンドミートの最近の動向とこれから

ここではビヨンドミートの最近の動向とこれからの展望をみていく。

●ペプシやマクドナルドなどとパートナーシップを結ぶ

20年は世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が起きた。このパンデミックはフード業界全体に影響を与え、ビヨンドミートでもコスト上昇がみられた。しかし、コスト上昇は短絡的なものであり、今後に関しては明るいとみる向きが多い。

20年1月、ビヨンドミートはペプシと新商品開発で協力を発表した。スナック製品だけではなく飲料開発の検討もしている。さらに、マクドナルドとは3年間のパートナーシップを結んでいる。

ヤム!ブランズとの契約も行ったことで、KFCやピザハットなどのチェーン店向けの製品開発も発表した。このような明るい材料が売上げの上昇を期待させている。

●ウォルマートの取り扱い増加で株価急騰

米国時間の21年3月10日にビヨンドミートの株価が急騰した。これはウォルマートによるビヨンドミート製品の取り扱い強化が要因とみられている。ウォルマートの900店舗がビヨンドミートのホットイタリアンソーセージとビーフレスバーガーパーティーパックを取り扱うことになったのだ。

ビヨンドミートがウォルマートでの流通を増加させたのは、20年以降、2度目のことだ。生産増大から植物由来の代替肉市場をより深耕することを目指す施策の一環とみられる。

●今後は代替肉市場の激化か?

ビヨンドミートは各企業との提携や協力により、市場規模の拡大を図っている。しかし、代替肉分野の競合も存在しており、競争の激化が予想される。植物由来の代替肉で競合となるのはインポッシブルフーズだ。

インポッシブルフーズは植物由来の代替肉を専門としており、レストランやSMに製品を卸すほか、通販により一般の消費者への販売も強化している。さらに、20年2月にはウォルト・ディズニー・カンパニーのクルーズ船やテーマパークでもインポッシブルフーズの製品が食べられるようになった。

他にも、メンフィスミーツやミータブルなどのスタートアップ企業も植物由来の代替肉の市場に参入を狙っている。今後も参入企業が増える可能性が高く、ビヨンドミートが市場のリーダーカンパニーとして君臨し続けられるかは不透明だ。

今後も、ビヨンドミートの動向には注目が集まる

ビヨンドミートはアメリカのカリフォルニア州に拠点を構える代替肉の製造や販売を手がける企業だ。世界各国に製品を流通させており、植物由来の代替肉の市場では確固たる地位を築いている。

しかしながら、競合も参入しているため5年後や10年後に現在の地位を保てるかは不透明だ。今後、ビヨンドミートがどのような展開をするかは、植物由来の代替肉のマーケットにも大きな影響を与えそうだ。

また、ここに来て一気に「大豆ミート」の取り扱いが増えた日本において、今後、大豆とは異なる原材料を活用したビヨンドミートのような代替肉がどのように取り扱われ、消費されるかは大きな注目点といえる。

前述したように、日本では豆腐や納豆など、伝統的に植物由来、特に大豆のタンパク質に親しんできた。いわゆる「畑の肉」との関係性についても、注目したい。

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