SPA構築、まずは「店舗」の課題解決から トップバリュコレクション㈱ 大迫博文社長

2025.08.01

イオンの衣料の中で、TVCはベーシックを担う

 トップバリュコレクション㈱(TVC)はイオンリテール㈱100%子会社の衣料品の製造小売業(SPA)として、2010年に設立された。その後、社名のブランドの衣料品専門店としてイオンリテール㈱店舗を中心に展開をしてきた。その意味では「トップバリュ」を冠するものの、イオンのプライベートブランド(PB)商品のトップバリュとは一線を画した存在として、商品開発から売場運営まで、一気通貫で手がけてきた。

 2024年3月にはイオンリテール㈱のカジュアル部門が移管されるなど、グループの衣料品の再編も行われている。移管に伴って店舗数は移管前の82店から289店に拡大。業容が大きく拡大し、各店のマネジメントや人材確保などの面では難易度が上がる一方、規模拡大の面ではSPAにとってはメリットが大きくなった。

 そして今年2025年3月には大迫博文(おおさこ・ひろふみ)氏が社長に就任。同氏は1996年にユニクロなどを擁するファーストリテイリングに入社、ユニクロのきょうだいブランドであるジーユーの韓国事業責任者を務めるなどSPAの豊富な経験を積んだ後、2023年にイオンリテール㈱に入社している。新社長はトップレベルのSPAでの経験を踏まえ、TVCをどのように導くのか。

 店舗数が一挙に拡大したが、現状の店舗規模はどのような状況か。

 「標準で70坪ぐらいですが、まちまちです。もともとの(移管前の)イオンリテール㈱のカジュアル部門から変わっていないところもあるので、20坪の店もあれば、120坪の店もあるという感じです。

 ただ、いったん70坪できちっと商売をできるようにするのが一番良いかなと考え、標準坪数を70坪にしています。(2023年4月からイオン船橋店〈千葉県船橋市〉などで実験・検証を重ねている)『専門店モデル』を作る段階で70坪の標準設定をしたのがその経緯です」

 会社として、イオングループの衣料全体の中のカジュアルの部分を担う位置づけで良いのか。

 「そうです。カジュアルのところではありますが、もともとは新しいベーシックを作っていこうという位置づけで考えていました。(衣料品の自社開発進めていく中で)周りの仕入れの領域と商品のバッティングがあったり、逆にベーシックゾーンが欠落してしまったりといったことがあって、改めてベーシックをきちっと作りましょうというのがTVCのメインの役割です。

 だから、ベーシックカジュアルのゾーンが、基本的にTVCの領域かなと思っています」

 展開アイテム数はどのぐらいか。

 「大体70坪で200品番弱です。本来はもう少し絞るべきかなと思っています。150品番以下にしたいですね。1坪で最大で2品番ぐらいが良いのではないかなと思います。結局、店頭でのSKU欠品がまだ多い。あとは、SPAなのでロットをある程度増やさないとスケールメリットも出てこないこともあります。

 やはり、無駄な品番を特定するとか、SPAではあるものの仕入れも一部残っているので、そういったところの調整もしながらやっている段階です。仕入れについては、もともとSPAの領域とは別にあったのですが、当然のことながらSPA中心のビジネスなので、SPAの割合をどんどん増やしていかないといけないというのがいまのステージです」

 もともとSPAの会社として設立されたが、仕入れの商品も結構あるのは意外だ。

 「まだ仕入れの領域もあります。SPAを増やして拡大してきている段階です」

 やはり、仕入れの場合、臨機応変に対応できることはメリットになるのか。

 「それは事実ありますね。SPAは企画からしなければいけないし、それを最終的に販売にまで持っていかなければならない。当然、その間にはマーケティングという仕事も発生します。自分たちの作りたいものは作れますが、手間が非常にかかるものです。

 当然、仕入れの方が、(仕入れた分以外は)在庫リスクもないですし、自分たちで企画する必要もない。(多くの取引先がある)メーカーなので当然、ロットも多く、その意味でのコストも抑えられる。メリットは結構あります」

 いまの比率はどれぐらいなのだろうか。

 「8割ぐらいはPBになっています。結局、残りの2割は生産背景の問題だったり、デザイン企画の問題だったり、ロットが小さいとか、なかなかわれわれとして作ってもメリットが出にくいところは仕入れで対応しています。

 例えば雑貨は全て仕入れですし、あとはトレンド物など、来期以降、売れてくるんじゃないかといった芽が出そうなものについて、われわれとしてどれだけ売れるのかを実験する意味で、仕入れで対応したりしています。

 ただ、本当はデザインも含めてレベルを上げながら内製化できるようにして、100%自分たちでやるべきだと思います。結局、周り(イオンリテール㈱の衣料本部)に仕入れ商品は多くあるので、われわれの小さい組織の中でPBと仕入れを両方やっていてもあまり意味がないかなと。

 だったら、自分たちの領域でコントロールできるSPAをちゃんと完成させて、足りないものは周りのカテゴリーで補ってもらえばいいかなと思っています。そうしないと、SPAに集中できないですよね。逃げ道がない方がいいものを作れるんじゃないかなと思っています。

 現にいま、売れるPB商品がどんどん出てきているので、そこに集中した方がわれわれの立ち位置としてはいいのかなと思っています」

 トップバリュの衣料とはどのようなすみ分けになっているのか。

 「イオンの衣料の中のTVCなので、その辺りは連携しながらやっています。例えばトップバリュでインナーを作っていますが、TVCではインナーは基本的には作りません。領域のすみ分けはしています」

まずは店で起きている課題を解決する

 衣料品では流行を取り入れた商品を短いサイクルで、低価格で展開するSPAとしてファストファッションが台頭してきた。代表的な存在に衣料業界で売上高世界ナンバーワンのインディテックスのZARAや同ナンバーツーのH&M、また、ファーストリテイリングではジーユーなどもファストファッションに位置づけられるだろう。

 一方で、ベーシックを軸としたユニクロは、ファストファッションとは一線を画した存在として認識される。SPAでも、そのポジショニングには微妙な差があるのだ。実際のところ、TVCはファストファッションなのか。

 「ファストファッションではないですね。基本的には周りの仕入れ商品にはトレンドを反映しているものが結構いっぱい入っています。逆にベーシックなゾーンがないので、われわれの全体の立ち位置からいうと、そこをまずは確立する。一番コンスタントに売れていくのは本来ベーシックですし、そこをまず作り上げることが先であろうという判断の下、いまはそういう方向に向かっています。

 例えば、いまは1年前から企画が始まり、開発から店頭に並ぶまでは半年ぐらいの時間がかかっています。いまの生産背景であったり、素材の備蓄云々であったりという課題があるので、なかなか短くなっていかない。だからわれわれのロットで、素材を選定して、といったことを考えると企画から1年ぐらいはかかるかなというところですね」

 売れ筋の追加生産体制も重要になる。

 「SPAとしては当然、そこの完成度を高めていく必要がありますが、まだ不十分な状態だと認識しています。やはり、素材の備蓄がない限り、短リードでのフォローはできないのですが、仮にそうなっていったときにどういう素材、どういう糸を使ってやるのか。この素材がベストだ、この商品がベストだといった判断がまだできていない部分が多々あります。だからまずはいま素材開発が重要だと思っています。

 どの素材で勝負をするのかといったことをいま、イオンリテール㈱の生産部と一緒にやっているところです。今期、『シルキーコットン』のTシャツなどを投入していますが、これなどは素材も非常に良い。

 優位性のある素材ができてきているので、こういったものを中心に、来年はちゃんと備蓄し、SS(春夏)、AW(秋冬)両方で使う計画を立てると素材リスクも減っていくので、それで短リードでフォローしていく。現にいま売れて欠品しているSKUも出てきているので、そういうところをきちっと組み立てていかないといけないと思っています」

 想定する完成形までの道のりはどのようなものになるのか。

 「まだ、できていないことがいっぱいありますし、まだまだ課題がいろんな領域であります。ただ、課題がはっきりしているので、人材を含めて、そこをどう会社として補うのかをきちっとやっていきたい。(イオングループということで)これだけの体力のある会社なので、決まってしまえば物事は早く進むかなと思っていますので、何とかそこを完成させたいです」

 まずは、どこから手を付けるのか。

 「SPAには企画があって、生産があって、マーケティングがあって、当然、物流もあって、店頭があるのですが、各領域、課題が正直言うとあります。まずは、何だかんだ言っても『店舗』だと思います。お客さまとの接点はそこでしかないので、やはりいまの店で起きている課題を1個1個解決すること。

 われわれは店長のことを『ショップマスター』と呼んでいますが、1店舗1店舗のショップマスターたちが管理、運営するための土台ができていない限り、どれだけ商品が店頭に流れて行っても、結局、最後コミュニケーションをするところでお客さまに伝わらないということになりかねない。

 特に難しいのは、イオンリテール㈱の売場内の店舗です。イオンリテール㈱の衣料売場はやはり大きい。1000坪、1500坪の売場がある中で、その中の70坪のお店で物を伝えるのはものすごく難しいです。モールの1店舗のテナントで出るのとは全然違います。モールに出店しているテナントの店舗の方がよりストレートに伝わりますし、分かりやすい。

 イオンリテール㈱の衣料にはスーツから雑貨、キッズ、ベビーも、全部ある。その中の70坪ですから、やはり普通にやっていると埋もれちゃいますよ。チェーン店としてのオペレーションも含めて、まだまだうまく整備されていないところがあって、やはり、個店独自のルールの中で仕事をしてしまっていることが多い。

 当然ですが、イオンリテール㈱の各店舗の中で商売をさせていただいているので、個店の皆さんと協力しながらやらないといけません。個店の中でもいろんな優先順位があるので、そういった中で全てがわれわれの思うとおりにはなりません。

 なかなかルールが浸透していなかったりとか、什器がばらばらであったりとか、いろんな背景がありますが、全体のルールをきちっと1店舗1店舗に落とし込んでいくことが、優先順位が一番高いかなと思います。

 従業員も、イオンリテール㈱など、いろんなグループ会社から出向いただいているので、ある意味『連合軍』みたいになっている。そこで考え方とかルールを揃えることを当然、やっていかないといけない。いまはいろんな方々と共に会社を作っていくという段階なのかなと思っていますね。

 特に去年(イオンリテール㈱のカジュアル部門と)統合した時点で、いろんな会社から出向されたと聞いています。『TVCとは何ぞや』みたいな方もいらっしゃるはずです。

 それを会社が伝えたとしても1回で理解できるものではないと思いますし、特にアパレルの商売をやったことがない人からすると、どういうアプローチをしたら良いのか分からないでしょう。やはり1人1人のショップマスターへのケアが特に必要です」

 店舗の次にはどのような課題解決に着手するのか。

 「やはり商品でしょうね。実はいまTVCには企画の専門家がいないため、生産のメンバーがデザイン会社と連携しながら企画を上げてもらうという流れになっています。だから、企画の精度をどう上げていくのかということと、物作りの精度を上げていくのかの両方が必要。

 そういった意味でも、いまあるベーシックをきちっと磨き上げて、サイズ、スペックだとかシルエット、素材を含めて一番良いものは何かということで、まずは単品を完成させることの方が、優先順位がいまは高いのかなと思っています」

 企画についても自社化していくのか。

 「当然、やりたいですね。人材については、まずは外部採用を想定しています。やはり、デザイナーは非常に限られているし、優秀なトップデザイナーは当然、すでにいろんな会社で活躍されていますが、われわれTVCと一緒にやってみたいと思ってもらえるような会社にならないといけないと思います。われわれのメッセージを届けて、共感して『やりたい』と思ってくれる人をいかに採用するかということも、これからの大きな課題ですね。

 『イオン』のブランドイメージは当然、あると思いますが、『イオンの衣料』のイメージは、良くも悪くも『ほぼない』と思っています。これはある意味、利点かなと思っていて、『イオン』に対する信頼度は抜群にある一方、『イオンの衣料』にはイメージがあまりない。そうであるならばその中で、『こういうことをやりたいんだ』ということをきちっとわれわれが表現し、伝えることで、それに共感する仲間が1人ずつ増えていくようにしていきたい。

 やはり、企画もそうですし、生産もそうですが、その領域の専門家は必要です。そこを何とか1人ずつでも、採用できたらと思っていて、こつこつやっていこうかなと」

 総合スーパー(GMS)の衣料は、大迫社長がかつて在籍したファーストリテイリングを筆頭に専門店の台頭の影響を大きく受け、長期的に売上げが減少傾向にある。専門店が成長を続ける中、GMSのイオンとして衣料は立て直せるのか。

 「そうですね。大変な作業ですが、(イオンの)岡田(元也)会長を含めて、『イオンは衣料をやっていく』と言っていただいているのは私にとっては非常にありがたいことですし、衣料をやめたら全てがうまくいくのかというと、そうでもないと思っているんですね。GMSのビジネスモデル自体は、ワンストップで買えるなど、良い部分もあります。

 結局、物の良しあしでお客さまの購買行動が決まるだけの話であって、当然、衣料も競争力さえあれば買っていただける領域になります。だから、物をいかに良くするかということを考えたら、SPAしかないんですよね。

 自分たちで熱を入れてやるか、仕入れでやるかでいえば、やはり(仕入れで)同じ物を売っていたらなかなか差別化できない。SPAに勝ち目があると思ってやっています」

最終的なお客との接点である「店舗」はSPAにおいても極めて重要。まずは店の環境を整えることから始めたいという。加えて、やはり商品力の強化が鍵になる

イオンに来ている50代、60代の支持を得る

 ユニクロ、ジーユー、そしてイオンリテール㈱での経験を踏まえ、SPAをどう考えるのか。

 「SPAは単に商品を作ることを指すわけではありません。商品が良くても、それがお客さま伝わらなければ絶対に売れません。だから、商品名、マーケティングでどう伝えるかにまでとことんこだわる必要があると思います。売場であったり、販促物であったり、いろんなプロモーションなどを含めて全部が連動して、世の中に商品を知ってもらうためにひたすら宣伝する。これがSPAなんです。

 SPAは、お客さまが欲しいものを自分たちでコントロールして作るというものです。お客さまのニーズを引き出してマーケティングをすると、お客さまに刺さる。そこがSPAがうまくいく、いかないのポイントだと思います。

 われわれはイオンブランドの中にいるので、イオンが大切にしている『安全・安心』、しかもGMSに求められているのはお手軽な価格、低価格の部分だと思うので、そこがきちっと揃った商品を作ることが、それこそイオンブランドの中で衣料をやる意味だと思っています。

 衣料の専門店と競争しなければいけないのは事実ですが、まずは常にイオンを使っていただいているお客さまたちに、われわれの衣料のこともお伝えすることが一番大事なことだと思っていて、そもそも専門店にしか行かないお客さまにどれだけアプローチしても、なかなかそこには勝ち目はないかなと思います。イオンの施設を利用していただいていて、食品を買っていただいているお客さまへのアプローチ方法は幾らでもあるはずです。

 あとはニュース性。われわれが提供するニュースがお客さまをわくわくさせたりとか、いいなと思ってもらえたりすることがちゃんとできるか。それで実際に買ってもらって、それを実感してもらって、好循環が生まれていくかということが、われわれにとって、一番やらなければいけないことになります」

 ターゲット層はどこに設定するのか。

 「現状、利用されるお客さまの中心は(イオンと共通の)50代、60代です。まずはそこのお客さまに支持をいただくことが最優先だと思っていて、急に30代、40代に振っても多分、そのお客さまがすぐに来てくださることはないでしょうし、逆にいまのお客さまが離反される可能性もあります。いま、お客さまが何を望んでいるのかを優先的に考えて、物作りをしていきたいと思っています」

 既存SPAを含め、競合は多い。どの辺りに需要のポイントがありそうなのか。

 「プライスはあるのではないでしょうか。世の中、どうしても物価がどんどん上がっていて、単価も上がっているので、全てを満たすものは(既存の企業が提供するものに)ないかもしれない。やはり、ベーシックでお手ごろなものをちゃんと出すことは大事なキーワードになると思います。

 素材についても、イオンの品質は非常に高いです。素材はイオンの衣料全体で調達していますが、それを担当するイオンリテール㈱の生産部の力は大きく、他社に負けない素材選定ができていると思います。その素材の良さや物の良さについては、まだまだこれからマーケティングをしっかりやりながら伝えていきたいと思います。

 マーケティングも、物作りの中で、『ここがストロングポイント(強み)だよね』ということがはっきりしていないと、マーケティングを作ろうと思ってもふわふわしたマーケティングになってしまう。そのふわふわしたものは、結局、お客さまが店頭に行って商品を触っても感じ取れず、ある意味、逆効果が起こる可能性がある。

 物を作る段階から、どこがストロングポイントで、他との差別化ポイントで、だからこのように表現してほしいといったところまで連動して動いて行かないと、やはり店頭でも伝わらない。

 売れるカテゴリー、売れる品種が見えてきているので、それをいまの10倍伝えようと努力したら10倍以上に売れるかなと思っています。売ったことのない商品を売るよりは、いまの売れ筋を伸ばした方が良いと思いますね。いまであればシルキーコットンのTシャツですが、他にもいっぱいあります」

 日本は四季がはっきりしているといわれてきたが、昨今は暑い時季の長期化傾向が続き、季節が変わってきているといわれる。その影響にはどう対応するのか。

 「AWの商売が非常に難しくなっているのは間違いないと思います。2月ぐらいから半袖を売っていきますが、3月から10月ぐらいまではほとんど夏みたいな感じで、冬が少しだけ最後に来るような感じです。AWのアウターの商売が非常に難しくなってきているのは事実です。

 アウターは本当に着る時季が短いので、1着良いものを買って、何年も着回す人が多くなっていて、わざわざ毎シーズン買うことはどんどんなくなっていくんだろうなと思います。

 だから、AWとSSのバランスをどう変えていくかが大事です。結局、いままでは全体を伸ばそうと思ったときに同じように伸びていたものを、AWが伸びにくいので、SSでいかに売上を伸ばしにいくかというポイントをちゃんと自分たちで決めて、物作りをしていかないと、勝てないかなと思いますね」

 AWの方が単価も高いため、影響が大きそうだ。

 「いまはトータルで見ると、売上はSSの方が高くなりつつあります。重衣料など単価が高い分、昔はAWの方が高かったのですが、それがだんだん5対5ぐらいになって、いまはSSの方が強くなっています。

 結局、9月、10月が暑くても、夏物は売れないですし、当然、長袖も売れない。だから閑散期というか、難しい時季が増える傾向にあるので、そこにいかに鮮度のあるものを入れていくか、新しいものでお客さまに買っていただけるかということを考えていかないといけません。

 ファッション(流行)で尖っているブランドであれば、当然、多少暑くても先に売れていきますが、われわれみたいに日用品的な服を売っているところは、実売で伸びていく形なので、その意味では閑散期のやり方はまだまだ難しいし、課題が残っているのは事実です。

 もちろん、とにかく(暑くて)売れなくても、新しいもの、鮮度のあるものはやはりお店の中に入れていきます。それで見てもらってもう1回、買いに来てもらう流れは絶対に必要だと思います」

TVCとして素材を始めとして「ストロングポイント」を持つ商品が開発できるようになってきた。シルキーコットンのTシャツもその1つ

「イオンに良い商品がある」と言ってもらう

 TVCとしての具体的な戦略はどのようなものになるのか。

 「『イオンに良い商品があるぞ』と言ってもらえない限りは、なかなかクリアしないと思っています。多分、いまの世の中はわれわれがいくら『良い商品がありますよ』と伝えても、多くの消費者は聞き流すだけです。

 そうではなくて、買ったお客さまがいかに『イオンにも良い商品があるよね』と言ってもらえるか。口コミでもレビューでもそうですが、やはり消費者の言葉が一番いま、お客さまにとって信頼度が高くなっていると思います。だから、そういう流れをちゃんと作れるかどうかだと思います。

 だからこそ、自信のある商品をちゃんと宣伝して、多くのお客さまに買ってもらって、少しでも口コミなどで、『イオンの商品、いいじゃん』と言ってもらえるようになることが必要です。それで、『それなら私も買ってみよう』となると思うので、そういったお客さまも含めたコミュニケーションがうまく回っていくと、当然、売れていくと思っています。

 SPAは本当に地味なことをずっと繰り返しているものだと思います。当たり前のことが徹底できている会社は世の中にほとんどありません。だから、その当たり前のことを全員がきちっとやることが一番大事なことです。

 (ファーストリテイリングで)27年働いてきましたが、それを実感しているので、だからこそ、お店で当たり前のこと、物を作る上での当たり前のこと、マーケティングで当たり前のことを大事にしながら、1個ずつお客さまの信頼を勝ち取ることしかないかなと思います」

 成長戦略上、出店についてはどのような方針を採るのか。

 「基本的には、われわれは、いまはイオンリテール㈱の中での出店がベースなので、イオンリテール㈱の店舗数が増えない限りは当然、出店場所は増えません。現状は、(イオンリテール㈱の新フォーマットで新規出店もしている)『そよら』に出店している形です。

 ただ、(イオンリテール㈱以外のグループの)GMS企業のイオン北海道、イオン東北、イオン九州、イオン琉球を『One衣料でやる』という方針が明確に出ていまして、例えばイオン東北のイオンスタイル八戸沼館(青森県八戸市、2025年4月25日グランドオープン)にもTVC売場を展開していますし、同年6月にはイオンスタイル盛岡南(岩手県盛岡市)にもTVC売場を展開しています。やはり、われわれのベーシック領域がイオングループに貢献できるようにしていきたいと思っています。他に、グループ企業への商品供給もしています。

 一方で、いまのところ外部のショッピングセンターへの出店は予定しておらず、まずは基礎的なことを固めることの優先順位が高いと思っていて、店舗数を拡大していく前にやるべきことがあると思っています」

 SPAとしてマーケティングの重要性を強調する中、販促についてはどのような方針か。

 「主戦場であるイオンとしてのデジタル戦略に乗った方が絶対にうまくいくはずです。iAEONもそうですし、イオンお買物アプリもそうですし、イオンスタイルオンラインもそうです。やはり、『総合』としてプラットフォームがデジタルの中でもできているので、それを生かします。

 お客さまが『イオン』というものを1つの端末の中でいかに経験できるかを追求していった方が良いと思います。

 オンライン販売については、実はイオンスタイルオンラインと、われわれ独自のものと両方あります。2本あることがメリットでもあるし、デメリットでもあると思っているので、EC(電子商取引)はいずれは1本化していきたいと思っています。

 ECが売れるようになるためには、やはりお店で売れるようになるのが先だと思っているので、まずはお店が優先順位の1位です。そこである程度、認知や信頼が勝ち取れたらECでも安心して買えるという領域になっていくと思っているので、まずはお店が最優先です」

イオングループの一員であることから、まずはイオンをベースとした出店をし、イオンのマーケティングに乗り、イオンのメイン顧客の支持獲得を目指す

 経営環境的にはインフレ傾向で、売価の問題、高騰する原価や経費の問題などSPAとしては難しい判断が迫られる。

 「物の値段が上がっていく流れは、これから先も止まらないと思います。(日本では)人は増えないですし、いろんなコストが上がっていく傾向は変わらないだろうと。だから、価値あるものだけが買っていただける。

 昔のファストファッションにあったような『1年着られれば良い』といったものはとうの昔に売れなくなっています。やはり長く着られるもの、安心して着られるものを、皆さん大事に着ていかれると思います。われわれも長く着てもらえるような商品作りをきちっとしないとだめだと思います。

 ただ、値段も時代に合わせて上がる傾向にはあると思いますが、やはりわれわれはイオングループの中にいて、GMSという商売をやっている役割としては、いかにお客さまにリーズナブルなものを提供するかという使命は忘れてはいけないと思います。自分たち都合で値段を上げて勝てるはずもないので、やはり、お客さまにどのぐらいの値段で、どういう価値を感じてもらうのかについて、企業努力を含めてがんばらないといけないと思います」

 今回、SPA企業のトップに就任したわけだが、これまでのSPA企業での豊富な経験を踏まえ、このビジネスをどのように見ているのか。

 「小売りは単純にとにかく楽しいと思うんですよね。人との出会いは山ほどありますし、物を売って、その場で『ありがとう』と言ってもらえるし、『売れた』『売れなかった』など毎日、自分たちのやった成果が手に取るように分かる。基本、感謝されることが多いビジネスですし、自分たちで考えて、いろんなことができるビジネスです。だから、僕はおもしろくてしょうがないです。

 加えて、『お客さま』を常に見ておかないといけないビジネスであることは間違いないと思います。お客さまが何を望んでいるのかというところで、物事の発想ができるようになると、大概通用するような気がします。でも、ビジネスをやっている中で、会社の都合や方針に振り回されて、気付けばお客さまを見ていなかったということが結構あると思っていて、そういうときは100%失敗するんですよね。

 だから小売業は実にシンプルで、『自分のお客さまが何を望んでいるのか』『将来、自分のお客さまにしたい人が何を望んでいるのか』を想像しながら、それを形作ることかなと思っています。だから、私は誰でもできるビジネスだと思っています。なぜなら、みんな(自身が)『お客さま』の要素を持っているので、専門性がなくても想像しやすいからです。

 自分がやってほしいことをやり、自分が嫌だと思うことをやらなければいいわけです。結局、それを『原価の都合』といった会社都合で、1個でもずらしてしまうとやはり売れないものに変わってしまう。お客さまは見抜きますから離反してしまいます。だから、先ほど言ったように『当たり前のこと』をきちっとやれるか。やはり、商売というのはそういうことなのかなと思いますね。

 もともと小売業志望で、実はイオンで初めてアパレルのアルバイトをしました。それで、服を売ること、接客することがおもしろいなと感じました。それがきっかけで、ユニクロ(ファーストリテイリング)に入社したんです」

 大迫氏が入社した96年当時のファーストリテイリングは店舗数で約200店。すでに急成長中の大チェーンではあったが、グローバルで売上高3兆円を大きく超えた現在の業容と比べるとまだまだ小さな存在であった。

 同氏の27年におよぶユニクロ、ジーユーでの経験は、まさに企業の大成長を現場で体験した貴重なものである。この経験を基に、小売業を「楽しい」と語る大迫氏はTVCをどのように成長させていくのか。まさにこれからが楽しみである。

小売業は常に「お客さまが何を望むか」をベースに「当たり前のこと」ができるかが問われるビジネスであると語る大迫社長。加えて、小売業は「楽しい」ものであると強調する

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