GMSに加えてSMを磨き込み、「地域に必要とされる」存在に イズミ 町田繁樹社長

2025.12.01

ランサムウェア感染からの1年半

 広島県を地盤に中四国、そして九州を深耕し、西日本の一大小売勢力として長年に渡って存在感を高めてきたイズミ。日本の小売業界の成長をけん引した総合スーパー(GMS)を手がけながら、主力フォーマットの「ゆめタウン」を次第に大型のリージョナルショッピングセンター(RSC)へと進化させ、多数の繁盛店を誕生させてきた。21世紀に入り、衣住の売上不振によって収益力が低下してきたGMSの中にあっても、テナント収入を含めた形の高収益のビジネスモデルを築き、高い営業利益率の水準を維持してきたことも大きな特徴となっている。

 業界再編の中にあっても、商品力強化の側面でセブン&アイグループと業務提携をする一方で、資本については独立を維持。むしろ、各エリアの他社をM&A(企業の合併、買収)することによってドミナントを強化するなど、展開地域での存在感を高めている。直近では2024年に西友から九州事業を譲渡された。

 一方で前期、25年2月期は24年2月15日のランサムウェア感染によるシステム障害が大きく影響、店の運営を始め、経営に大きな打撃を受けた。昨年はまさにその対応に追われた1年間であったが、そうした中、今年4月1日に創業家の山西泰明会長から社長を引き継いだ町田繁樹(まちだ・しげき)社長に目下の状況と今後について聞いた。

 ランサムウェア感染の被害から1年半を経る中でシステムの刷新を始め立て直しを進めてきたが、高度にネットワーク化が進んだ現代においては、あらゆる企業にとってまさに対岸の火事ではないことを再認識させられる出来事である。

 「サイバーインシデント自体、初めての経験でした。昨年2月15日からシステムが2カ月、止まってしまいました。ようやく5月から復旧という状況でした。止まっている間に売上、仕入れも分からないという未曽有の事態でして、経営が2カ月間、完全に止まった状態でした。

 その中での一番の問題は、何十年も蓄積した、販売に関するデータが全部消失したことです。メールの中にあった各自のデータが全て消失しました。例えば、盆はこういう展開で、こういった結果だったといった販売に関する積み上げのデータが全部消えました。ほんの一部だけが再構築できましたが、ほとんどが暗号化されてしまって、復旧が困難であったということです。

 単体のPL(損益計算書)では29億円の影響があったということを対外的には公表していますが、実際にはどの店が、幾ら売ったという部門別のデータなど一部は残っていたものの、言語データが全て消失しまして、経営にはかなりダメージを被りました。

サイバーインシデント自体は、具体的に『物が入らない』『チラシが打てない』という以前の、過去の歴史が消えたということで、そこも経営には大きなダメージでした。積み上げた個別、個別のデータがなくなりましたが、どうしてもイズミの場合、展開エリアが広く、社員は2年から3年に1回転勤する中、何もかも引き継ぐわけではないため、そのこと(過去のデータが失われたこと)自体、かなり大きなマイナスでした。

 ただ、データが消失して、メールシステム自体、全て新しくしたことで働き方もずいぶん変わりました。旧態依然の『何でも本社に連絡せよ』とか『報告せよ』といった仕組みをデジタルに一部、移行したりしたため、店舗サイドの労働環境、生産性はずいぶん改善できてきています。いろいろな仕組みを変えざるを得なかったです」

 ランサムウェア感染の影響を受けての2025年2月期決算は、連結営業収益が5241億4200万円で前期比11.2%の増収、同営業利益は254億2500万円で同19.1%の減益となった。

 「増収部分はほぼ(西友から事業譲渡された)サニー(西友の九州で展開する店舗)の連結の影響です。連結は24年8月~25年2月までの半期分です。

 昨年3月、4月のインシデントの間はシステムが止まっていたので、値上げができず、同じ値段で売っていたのですが、その後、6月ぐらいから徐々に値上げをしていく中で、1品単価が上昇し、客数もセールなどをして上げたこともあったのですが、買上点数が97%~99%を推移しながら、売上自体は食品を中心に上がってきたという状況でした。

 やはり昨年の一番の問題は、粗利の『率』でした。当然ながら売価対応をしていくので、若干下がっていくことがありました。値上げをする過程において、同時に売価対応で値下げをしなければいけないということで、そこの率がかなり厳しくなったということです。

人件費は生産性管理をしたことで、1人当たりの単価は賃上げで当然上がったのですが、総MH(マンアワー)自体は前期比でほぼ100%だったので、管理会計上は大きな跳ね上がりはありませんでした」

 ここのところ、必需品である食品の値上げということで、食品小売業は売上が増加する傾向が強く出ている。経費は増加傾向だが、コントロールがうまくできれば増収増益、そうでなくても増収が当たり前といった外的環境がある。その意味では、イズミはそのトレンドとは異なる道を歩まざるを得なかったことになる。

 「インシデントが起きたため、商品開発も、改廃も全て止まりました。イズミの食品は、惣菜を中心に、どちらかというと値段よりも味や品質を重視してやってきましたので、その開発が丸々3カ月ぐらい止まってしまいました。その時期に米と油の値段が上がったことで、惣菜にとっては非常に影響が大きかったです。

 徐々に戻していったのですが、正常に戻ったのが(24年)7月ぐらい。3カ月間何もできないのは非常に堪えたという形です」

衣料、住居関連のマーケットに起こる変化

 惣菜を含め、業界として好調な食品をいかに通常どおりの商売に戻していくかが問われたが、一方で、いわゆる衣料、住居関連はGMS企業の中でも課題を抱えるところが少なくない。イズミは21年に従来の衣料品部と住居関連品部をライフスタイル本部に統合している。衣料と住居関連のライフスタイル分野の状況はどうか。

 「大きな課題です。特にアパレルですが、いろんなことをやって努力はしているのですが、現実問題、60歳以上のお客さまの購買が、(新型)コロナ(ウイルス)前といまでは丸きり変わっています。シニアの、特にミセスのラインはGMSの中では最も強く、売上構成比で60%ほどあったのですが、それがどんどん落ちています。1品単価もしかり、買上頻度もしかりですが、カードデータなどの分析でも下がっていることが分かっています。

 以前は食品を買いに来て、何カ月かに1回、服もご購入いただいていたのですが、その頻度が大きく下がりました。年金が減っているわけではなく、どうやら食料品の物価高騰が原因で、徐々に支出に関してかなり厳しくなっているものと分析しています。

 われわれとしても、この世代を主力の顧客として成長してきたわけですが、そこから脱却しなければいけないわけで、40代、50代の顧客を増やしていかなければなりません。ただし、それも言うほど簡単なことではなく、それでアダストリアと協業で新たなブランド『SHUCA(シュカ)』をやったり、直営売場ではないですが、直営の売場とリンクできるように3COINS(スリーコインズ)、あるいはハンズをフランチャイズで入れたりすることで、その世代のお客さまを売場に呼び込もうと努力しています。

 ただ、フランチャイズ自体は好調ですが、やはり環境だけでなく、(直営売場の)単品の商品の開発が進まないと、幾らそのエリアにお客さまが増えて若い人が来ても、なかなか購買につながらない。これがいまのわれわれのライフスタイルの最大の課題ですね。

 アダストリアと協業しているシュカについては、アダストリアとは年代として『40代、50代をターゲットとしてやろう』ということで、最初から攻めていますが、商品的には完成度が高いのですが、場所というか、環境というか、やはり単純にGMSの売場にそのブランディングされた商品を並べ、コーナー化してもそんなに簡単にうまくいくものでもありません。

 特に接客が重要だと思っています。例えばアダストリアの売場では、『グローバルワーク』も『スタディオクリップ』もそうですが、お声がけがあり、狭い売場の中で目が行き届きますが、イズミの売場の場合は例えば300坪の中の30坪だけでアダストリアとの商品を展開し、あとの270坪をセルフ(サービス)で買っていただくことを前提に、4人で見ているといった環境です。その辺りの問題があると思っています」

 一方で、直営で良く売れている商品の傾向はどのようなものか。

 「やはり、いま一番売れている商品は、今年のSS(春夏)においても日本流通産業(ニチリウグループ、共同仕入機構で『くらしモア』が主力ブランド)で共同開発している単品の、品質の良い商品でした。どちらかというと、オーガニックなどこだわった品質の商品が全く値を崩さず売れています。

 奇抜な商品ではなくて、品質がある程度担保されていて、プライスが安く、バリエーションがあってSKUがそろっている商品ですね。その辺りのものを一所懸命にやって、ある程度効果が出ています」

 イズミはセブン&アイグループとの提携、同グループのプライベートブランド(PB)の取扱開始に伴って、いったんニチリウを脱退したが、24年2月に再加盟している。ニチリウは積極的に活用しているのか。

 「しています。特にライフスタイルですね。われわれとしても、ニチリウの商品決定にかかるプロセスにはかかわっています。ライフスタイルは特に年間のニチリウ経由の取引額の目標を掲げていますので、それに沿う、もしくはそれ以上にできるようにしています。ニチリウの中では、単体の衣料品の売上はイズミが一番大きいですから、共同調達に関しては高い意識を持っています」

 住居関連の状況はどうか。

 「寝具系が非常に厳しくなっています。本来はシーズン物が売れなければいけないのですが、まず、冬が短くなっています。寝具系の売上と利益の構成は冬場の構成が非常に高く、冬で利益を出すような性格が強いのですが、それが暖冬傾向で、だんだんその冬場自体の売上が落ちてきています。

 それを(単価の高い)高機能マットレスでずっと補ってきたのですが、非常に性能が良く、長持ちするので、買い替えの頻度が極端に下がってしまった。1回売って(売上の)山ができて、すごく売れるのですが、その後は大物が売れなくなっています。

 一方で夏は長いのですが、シーズンの敷パットも1枚、2枚あれば十分で、しかもいまは下限の売価が980円ぐらい。Tシャツより安い時代になってしまっています。だから寝装品に関しては非常に厳しい。

 ドラッグやビューティについては、コロナが明けてから特にビューティの『En Fleur(ア・フルール)』は非常に堅調です。単独ショップの『En Fleur Petit(ア・フルール プティ)』を(広島)駅にも出しましたが好調です。値上げもしているのですが、ここは値上げの影響もあまりない。やはり『美』に関してはお金をかけるものなのかもしれません。

 ドラッグはインバウンドもあったりして、他力的なところも含めて、こちらも堅調です。商品は(フランチャイズチェーン契約する)マツモトキヨシから供給していただいています。PBを含めて販売させていただいているので利幅も確保できています。

 ただ、小さな店は無理に直営で展開しないということで、250坪ぐらいでサンドラッグにテナントで入っていただいたりしています。特に過疎化していて、人口が減るところに関しては直営の人件費が非常に重く、採用も厳しいので、すでに何店舗か250坪ぐらいでサンドラッグに出店していただいています。家賃収入もありますし、集客にも貢献していただいていまして、非常に古いGMSには効果的(な手法)になっています」

 大型のゆめタウンはテナント専門店の比率も高い。テナントの売上状況はどうか。

 「堅調です。ただし、アパレルは上下動が激しくなっています。先ほど直営の話でもあったミセス系のテナントは厳しい流れにあります。これはGMSの平場もいっしょで、レディスの顧客で、バッグを含めて60歳以上をターゲットにしているテナントは厳しい状況です。

 一方で、飲食は値上げも相当しているので、ずっと数字が良いです。これはいつまで続くのだろうと思いますが、客数のデータを社ごと、店ごとに全て取っているのですが、客数も意外に落ちていません。客数が落ち出して1品単価の上昇でカバーすることになると、来館客数が減ってしまうことになりますが、そうではなく、いまのところ飲食、フードコート共にずっと好調ですね。それもあって、全体的には既存店(売上高)前年比もテナントは安定しています。

 テナントでは食の強化は大事な課題ですので、いまは集客力が高く、お客さまに喜んでいただける人気の食物販、喫茶系を増やしています」

コロナや気候の影響で衣料、住居関連はマーケット自体が大きく変化してしまった。変化対応に加えて若年の顧客層の掘り起こしも図っていく

 「館」としてのゆめタウンの現状はどうか。

 「全体ではコロナ前(の売上水準)には至っていません。コロナ前が10だとすると、まだ9ぐらいのイメージです。ただ、(年商)200億円を超えてくるような超大型店は全て戻っています。100億円前後ぐらいのところがなかなか戻り切れていない。この1つの要因が先ほどの直営のライフスタイルです。20億円ぐらいあったライフスタイルの売上が15億円ぐらいにしか戻っていない、『残りの5億円はどうするのか』といった課題が残っています。

 ただ、中型の店でも建てた時期によって、坪当たりコストが非常に低いお店があります。イズミではバブル期に店を建てず、バブルが終わってから出店の攻勢をかけていまして、九州の主力の店なども非常にコストが低いお店が多いです。だから売上が落ちても収益性は担保できるんです。

 それでは、成長はしないので、昨年から築年数が25年を超えた店に大規模投資をかけています。その際、良品計画といっしょにやっていまして、1階に無印良品を配置しながら改装しています。

 今年6月末に、自動車産業の街、大分県中津市の築年が28年のお店(ゆめタウン中津)を8億円ぐらいかけて全面改装したのですが、無印良品の他に、当社初のテナントなどいろいろ出店していただきました。そうすると、無印良品を除いても売上が1.2倍ぐらいに伸びました。特に食品の売上が伸びています。

 マーケットが増えるわけではなく、われわれ自体のやり方、方法を変えることで、昨年改装した店は既存店ベースの売上でも110%を下回ることはない状況です。やはり、投資をしないといけないということです。トイレも新店同様に全面改装、といったように何もかも全面改装するので、非常にお金がかかるのですが。

 さらに、ゆめタウン中津に関しては従業員が増える改装だったため、後方も改装したところ、従業員のエンゲージメントも非常に上がりました。お金はかかるのですが、20年、30年使うものですし、従業員が喜んでくれます。だから最近は後方も全部、従業員用のトイレもピカピカにしています」

 イズミは創業以来、「地域一番店」を目指している。

 「そうです。生き残るGMSにおいては、『街の核』を目指し、その周りに衛星的にSM(スーパーマーケット)を配置するという方針に変わりはなく、その政策を続けていきます。古くなって街の核と言えなくなった店は、お金をかけて刷新します。その中に、市の施設などを、行政の皆さんとお話をしながら入れていっています。社会福祉施設や社会福祉協議会、遊び場など市が運営するものです。創業者を含めて、企業として地域貢献を重視していますので。

 特に大型店については、(売上歩合で賃貸収入が増える)テナントを入れた方が儲かるのではないかといった発想も昔は多かったのですが、いまはやはり子どもの預かり施設や高齢者用の施設などは、店舗側の理解も深まって『あった方がいい』となっています。すごく良い場所でなくても良いですし、一定の家賃は払っていただけます」

掲げ続けている「地域一番店」戦略は、これからますます重要性を増す

GMSとSMの運営は、やはり違う

 イズミでは大型の旗艦店フォーマットであり、GMS、あるいはそれを含む大型のRSCの「ゆめタウン」がメインとなっているが、立地が限られてきたこともあって、中期経営計画でもSMの「ゆめマート」を核店としたネイバーフッドショッピングセンター(NSC)の「ゆめモール」を年間5、6店出店していくとしている。ただし、ゆめモールは思ったより増えていない。

 「いま7店舗。今後の計画は基本的にはゆめモールを増やしていきたいという形です。ただ、わが社の(手配した)土地でわが社が運営する完全なゆめモールでなくても、他社のモールからお声がけも良くいただいていますので、他社のモールの出店も増やしていこうと考えています。

 完全なゆめモールとしては、来年春のゆめモール那珂川(福岡県那珂川市)もそうですが、当社内でも計画はしていますが、いかんせん、場所としてそれなりのスペースがないとできません。優先順位はモールが高いですが、次に(他社のモール出店を含む)単体のSMということで、今後はそこに投資を向けていきます。

 また、GMSがいま61店ありますが、6月に(ゆめタウン山陽跡地を)ゆめモール山陽に切り替えたように、『GMSとして戦えない』というマーケットであれば大半の店舗をNSCに切り替えていく計画です」

 ゆめモールのボトルネックが用地ということになると、フリースタンディングでゆめマート単体の出店も想定しているのか。

 「もちろん、あります。ただ、単体でやるにはやはり、フォーマットを確立する必要があると考えています。(西友から)サニーを買収したこともあって、いま、運営方法を含めていろいろな実験をしています。

 もともとイズミのSMは、多い店では2万アイテムぐらいを取り扱っていますが、いろんな先進のSMの会社を勉強していると、どちらかというと価格傾注型ではなく、アイテム型でやろうとすると人手がすごくかかるということが分かります。

 さらにインストアで100%加工ということになると地代も上がって、建築費も上がっている中においては、新しい契約にはなかなか不適合な面も出てきます。そこで、単体で出るときには、ある程度システマチックなモデルをはめ込んでいくイメージになると思います」

 西友から譲渡されたサニーについては、「サニー」の屋号を維持している。西友の屋号だった長崎店の2店についても「サニー」転換した。サニーの店舗についてはどう評価しているのか。

 「PBを磨いて、どう育てていくかということと、生産性をどう高めていくかというこの2項は間違いなく学ぶべき点です。特に従業員の生産性の意識が高く、非常に素晴らしい。マルチタスクということで、いろんな部門の仕事をやられるということで、知識もあれば行動もできるということで、そこを非常に高く評価しています」

 サニーについては今後、どうなっていくのか。

 「来年にかけて改装していきます。また、PBの『みなさまのお墨付き』の販売を今年5月ぐらいに停止しながら、5月に入った段階で(ニチリウの)『くらしモア』を入れ始めています。ただ、アイテム数が違いますので、『みなさまのお墨付き』の完全なカバーは難しいと思います。

 一方で、品揃えしていなかったナショナルブランド(NB)、日配系など地場の商品を入れて品揃えを増やしているところではあります」

 15年には、同じく広島県を地盤とする同業のユアーズを子会社化。標準フォーマットの「ユアーズ」の他に高級SMの「アバンセ」を抱える。

 「ユアーズ事業については、一般のSM事業(ユアーズ)については、だいぶ回復はしてきていますが、苦戦をしています。ゆめマートに近い業態ですが、ゆめマート熊本、ゆめマート北九州と比べますと、2~3ポイントくらいは苦戦しているといった状況です。

 要因はいろいろあるかと思いますが、やはり商品調達をユアーズは自社で行っているので、そこにギャップがあります。そこで、イズミ本体の仕入れに一部、切り替えた方が良いのではないかということで、青果など中心に切り替えを進めています。青果の市場にそれぞれのバイヤーが別々に行ってもメリットがないのではないかということで、それを一部、解消して、変えていこうとしています。

 駅等に出店しているアバンセの業態は、安定しているのですが、いま広島駅で時間とお金をかけていろいろな実験をしているところです」

 ユアーズも含め、グループではSM事業としてイズミ直営、ゆめマート熊本、ゆめマート北九州(旧丸和、スーパー大栄)、デイリーマートといった形で複数会社での運営となっている。今後、「ゆめマート」として統合することは考えているのか。

 「来年度発表の中期経営計画にも入れる予定ですが、SMはやはり組織的には将来、統合していかなければいけないですね。5つの会社を、バックオフィスを含めて、後ろで抱えながらやっていますから。バックオフィスを統一して、当然ながら商品調達も統一しなければいけない。

 商品調達に関してはさらに、例えば熊本県の市場にゆめマートのバイヤーとゆめタウンのバイヤーが別々に行くのも変な話ですので、特に鮮魚と青果の2つに関してはSMとGMSでも統合していく方向で考えています。いま無駄な経費がかかっていますから。

 また、加工食品やデイリーも、別に商品部を分ける必要もなく、地区バイヤーがいればそれで良いわけです。練り物など地域商品がきちっと入り、売価も地域で決めていただければいいということです」

 一方で、大きな客数、売上を背景とするGMSと、相対的に客数、売上が低く、よりきめ細かな対応が必要なSMではマーチャンダイジングから店舗の組織運営の考え方まで、異なる点が多いと指摘する向きもある。結果としてGMS企業がSMを運営するのは難しいといわれることも多い。

 「PLを見ると分かるように、SMは(営業)利益率が1%とか2%しかない。一方でイズミ本体のGMSは6%、7%。これが事実でして、まずSMは収益性が低いということがあります。

 2つ目に、競争力といったときに、地場のSM企業で、本当のドミナントで『1kmの円の中に2店あっても良い』という発想でやられている会社と、イズミのように本体をGMSにして、その周りにSMを3km離れてもいいから出店するという発想では異なります。この発想ではSM自体をドミナントで拡充していくのは難しいと思っています。

 さらに先ほどのように、(イズミのSMでは)2万アイテムをそろえているわけで、価格を出せれば良いのですが、アイテムが広がっていくと価格を出す原資となる各メーカーとの交渉に対しての原価の訴求力が低下することもあります。

 いまは、SM事業において最低でも3%ぐらいの(営業)利益を出さないと、イズミとして『SMがうまくいっています』とは言われないだろうと思っています。私は、『GMS企業がSMをうまく経営できない』といわれる理由は、『仕組みが全てGMSありきでできていること』にあると思います。人事組織などもそうですが、一番大きいのは基幹システムがSM用に作られていないことではないかと思います。

 サニーを統合してわが社のシステムを入れるために、全ての基幹システムを交換する必要がありましたが、やはり先方から新しくわが社の社員になったバイヤーなどからは『使いにくい』という声が上がっています。それは西友の仕組みが優れていたという単純な理由ではなく、『SMを運営するには使いにくい』ということです。

 例えば、SM企業の多くは、店舗発注を強力にやるということではなく、やはり本社からの配荷が非常に多くなっています。一方でわが社の場合は、SMも『店の発注力によって売上も変わってくる』という『個店経営』の考え方です。ただし、個店経営では(人材育成に時間がかかるため)店舗の拡充(出店)が少し難しい。だから、基幹システムを含めたシステムのSM適合化をしないといけません。

 併せて人事システムです。わが社に入社した社員に『GMSとSMのどちらに行きたいか』を聞くと、100人いたら95人ぐらいがGMSと答えます。『目指すはGMSの支配人です』と。それはそうですよね。SMにずっと携わって、『SMのプロになるんだ』という人は、GMSを併用している会社では育ちにくい。社内的な仕組みを変えていかなければいけないという人事的な問題もあります。

 さらに、プロセスセンターを含めたセントラルキッチン、物流センターがGMS的発想の配置図になっているといった周辺環境の問題もあります」

 そうすると、基幹システムについて、GMS用とSM用の2つが必要になるということか。

 「いまいろんな会社に教えを乞うていて、基幹システム自体はメインがGMSとしてあって、その下で(SM用の)枝分かれが可能ということになっています。SM、特に食品用の商品マスターや管理、発注の仕組みを作ろうとしています」

 GMS、SM共通して商品では特に業界のトレンドとして伸びている惣菜が重要になるが、加えてイズミとしては歴史的に注力してきた主力分野となる。

 「(オリジナルブランドの)『zehi(ぜひ)』を中心に数字も伸びています。いま30代、40代の若い女性向けのアイテムを、ベーカリーを含めて増やしています。価格を安くしていくというよりも、『もう1品』ということで寿司2カンなど『小(量目)対応』を進めています。小対応によって(販売)点数が増えています。こうしたことをしながら同時に味を追求しています。

 供給態勢にしても、西友からプロセスセンター、セントラルキッチン、物流センターを譲渡され、九州では一気に増えましたし、それでも足りないので(既存工場の)増築もしていきます」

 出来たての商品が機動的に提供できる店内加工は大きな強みとなるが、多くの人時がかかる。売上の高いGMSではできても、相対的に売上の低いSMではアウトからの供給が鍵になってくる。また、それによって得られる効果は、SMだけでなくGMSでも享受できるものといえる。

 「SMをやる上では、アウトにすべきものは、自社管理のアウトに切り替えていこうとしています。いま惣菜のアウトパックの売上が120%ぐらいに伸びています。米飯を増やしていることもありますが、インストアだと需要に対して作り切れないこともありますし、やはり開店時に商品が並んでいると違いますね」

下限の売価を強化するイズミグループのPBを開発

 GMSとSM両にらみの経営が続くが、改めて町田社長に経営に置いて最も重視している数値を聞いてみた。

 「客数ですね。やはり、これが1本。(客)単価の上下動はあれども、客数を増やさないと人口が減る日本において生き残れないですから。GMS企業は、どちらかというと客単価で何とかなっていたのですが、SMをやるんだったらお客さまの数は非常に重要になります。

 いままで価格にあまりこだわってこなかったので、安く売ることを重視したフォーマットもほとんど持っていません。惣菜中心に味とか、品揃えを重視しながらやってきましたが、考え方としては今度、価格も重視していきます。9月に新たに自社のPBをデビューさせましたが、これはやはり『梅』型の価格重視型になります。zehiは『松』の構成が高いのですが、今回はメインを『梅』にしています。デイリー、加工食品です」

 9月11日、イズミグループのPBとなる「ゆめイチ」の販売を開始した。「最後発のPBだから、最高のPBを目指します。」とのメッセージと共に発売当初は50アイテムを用意。「ゆめイチプライス」「ゆめイチレギュラー」「ゆめイチプレミアム」の3ラインでの開発とするなど、当初から多層構造になっていることが特徴だ。

 ただし、「3つのラインナップ、まずは、ゆめイチプライスから。」とあるように、当初50アイテムのうちレギュラーの2アイテムを除いてプライスが48アイテムを占めるなど「価格重視」の状態でスタートした。イズミグループでの開発となると、取扱企業の売上規模としてはニチリウよりは小さくなるが、価格面でニチリウよりも下を目指すのか。

 「そのつもりです。われわれは『くらしモア』、(セブン&アイの低価格ラインの)『セブン・ザ・プライス』を取り扱ってきましたし、M&A(企業の合併、買収)をした会社でCGC商品や『みなさまのお墨付き』を取り扱っていました。いろんなPBを社内で勉強できました。

 その中で、やはり下限の商品について、何で違いを打ち出さないといけないか、何がPI(Purchase Index、購買指数)上一番必要なのかをそこから割り出し、また、価格についても当然ながら勉強して、量的な問題をクリアできることを前提に取り組んでいます」

 大型のGMSからSMまで展開し、価格面でも松から梅までを網羅する。今後、イズミは地域にとって、どのような存在になっていくのか。

 「人口が減っていくのが避けられない中にありますが、小売業自体は生活密着産業で、人口が減ろうが、増えようが『お客さまに一番近い存在である』ということを良く社内では言っています。やはり、人口が減っていく中にあっても、その店が地域に必要とされるかどうかが重要ではないでしょうか。

 イズミは大型店を持っていますので、防災関連も含めて各地域で地域協定を結んでいます。避難所指定をしたり、食料物資支援協定を結んだりしています。西日本豪雨(18年7月)のときには、陸路で届けられなかったので船をチャーターして、船にトラックを載せて物資を運んだこともありました。

 小売業というのはお客さまがあってこそ。さらにお客さまに近い。お客さまに信頼されることが一番重要で、特にSMだと1kmぐらいの円の中のお客さま(が対象)です。だから、われわれはお客さまの期待に応えると同時に、当然ながら、何かあったときに地域に必ず役立てる存在でなくてはいけない。

 何かあったときに、いち早く店舗が開けられるのか。例えば、トイレが足りなくなったときにトイレを供給できるのか。そういったときの対応ができる企業になって、本当の意味で地域に役立っている、『もし何かあったら、うちががんばります』ということを示せる会社でありたいということで、万が一のときに向けた投資を惜しまないようにしようとしています。

 マンホールトイレ(災害時などに、下水道管路にあるマンホールの上に簡易なトイレを設ける)やかまどベンチ(普段はベンチとして活用し、災害時などには座板を外してかまどにできる)など、いろんなものを勉強して、SMでも入れられるものはないかとか、そういったものにきちっとお金をかけながら、やっていきたいと思います。

 日本は地震も多いと言われているわけですし、今後は地域密着の商売に加え、万が一のときに少しでもお役に立てる企業であるべきだと。それが小売業の役割でもあると思います。

 GMSをうまく使いながら、その周辺のSMの密度を高めて、何かあったときにも地域で連携できるように、『その店になかったら、この店から持っていきますよ』といったように、物流網を含めて対応できるようにしていきます。

 熊本地震(16年4月)のときも、国に高速道路の利用許可をいただいて、福岡から直接支援物資の食料を運ばせていただきました。八女(福岡県八女市)にセントラルキッチンがありますので、そこで作ったものを値段も付けずにとりあえず持っていくといったことも当時でき、お客さまに喜んでいただきました。

 収益性も大事ですし、利益率を求めなければならないのですが、ある程度の規模感になっていますから、こうしたことも絶対に忘れてはいけないと思っています」

店舗を通じて、地域ごとのお客の期待に応えると同時に、「何かあったときに地域に必ず役立てる存在でなくてはいけない」と強調する

 人口が減少傾向を示す中において将来に渡ってリアル店舗を経営していくには、新たな戦略を追加する、あるいはいままでとは異なる戦略に切り替えるといったことが求められる。イズミはそのいずれも採用しながら、「地域に必要とされる存在」になることを追求している。

お役立ち資料データ

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