「昭和の良き時代のイメージの店」を未来の技術で実現する―ボランタリーチェーンの次なる進化 全日本食品 平野 実社長

2026.01.19

設備投資が一巡し、「店舗に還元できる」時代に

 地域のスーパーマーケット(SM)、あるいは個人商店の経営者による小売主宰の共同仕入機構、ボランタリーチェーンである全日本食品株式会社(前身は東京フード株式会社)は1962年に誕生した。実に64年前のことである。当時、次第に勢力を拡大しつつあった大手小売業に対抗するために中小の小売店が結束し、26人の志を持った者が集まったという。

 「加盟店」「協同組合」「全日本食品」が「三者対等な関係」で協力し合いながら地域商業の発展に貢献してきた。現在、北海道から沖縄まで全国を網羅するナショナルチェーン、また、日本最大級のボランタリーチェーンとしておよそ1600店の加盟店が組織化され、創業以来の「以和為貴(和を以って尊しと為す)」の教えを貫きながら全国各地域で活動している。

 本部である東京フードは68年に全日本食品へと社名を変更し、組織を拡大しながら商品供給事業、物流事業、RS(リテールサポート)事業を展開してきた。同社の平野 実(ひらの・みのる)社長に現状と展望を聞いた。

 日本は人口減少局面に入り、また、AI(人工知能)を始めとしたさまざまな技術の進歩、さらに昨今の原価高、経費高を背景とする物価高など、さまざまな背景もあって小売業界では格差の拡大、そして寡占化が進んでいるように見える。生鮮というスケールメリットが利きづらい商材を取り扱うことから各地に有力企業が存在し、寡占化が進んでいなかったSMについても、徐々に寡占化は進んでいる。

 目下、相次ぐ値上げもあって、必需品である食品の売上は高まる傾向にあるが、同時に原価、経費も高騰している。経営環境は同じとはいえ、ボランタリーチェーンとしてどのような戦略を描くのか。

 「全日食の場合、もともとその地で生まれて、その地で育って、それで商いを続けているという加盟店の皆さんが多いので、実際にそれを支える上ではわれわれ本部の商品力、物流力、そして情報という3つが重要です。現状、およそ1600店で、1店当たり大体2億円平均です。ですので、3000億円強がわれわれの年商です。実際には中には40億円、50億円もありますが、一方で1億円に満たない店もあります。

 正直な話、電気料金だとか、人件費は上がっています。やはり、そこにわれわれ(本部)としてもメスを入れていかないといけないと思っています。いま個店別の営業計画という形で、本部がやはり経営の部分に関与しなければいけないということで取り組んでいます。

 基本は(加盟店各社の自主性があるため)『関与はすれど、干渉はせず』ではありますが、本部としていままで一所懸命やっていた商品などだけでなく、もっと経営まで入った方が良いのではないかということで入り始めました。まだ、始まったばかりですが。

 もともと全日食は、共同仕入会社ですが、いまは実際にはいろんなことをやっています。いろんなことをやる目的は、最終的には『お店の存続』です。やはり採算が合わないと店は存続しません。だから、幾ら商品調達力、供給力があったとしても、その個店の経営がしっかりしないとだめだという考え方があります。地域の食のインフラを守るためには、お店の経営を守る必要があります。

 加盟店には、複数店舗(経営)も増えてきてはいますが、大半は1店です。そうなるとそのお店の経営が存続に直接かかわってきます。1店はどちらかというといわゆる『生業』ですが、いまは複数店舗を持って『企業』にならないとだめではないかという考えもあります。

 本部が強くなって、業容を拡大することによって、そこで利潤を生んで、その利潤を店頭に投資する。例えば、(25年)8月から乳価が上がりました。それで成分無調整牛乳1ℓのわれわれの本部推奨売価は229円(本体価格)になりますが、それではお客さまは買ってくれません。そこで本部として販促原資を投じ、店頭の価格競争力を支えています。

 こうした形で、単なる商品供給にとどまらず、加盟店の経営を支えるところまで踏み込む取り組みは、以前はやっていなかったことで、ここ数年で始まったことです」

 前述のように、全日本食品は商品供給事業、物流事業、RS事業の3つを主たる事業としているが、その範囲が広がっているように見える。つまり、本部の役割も変わってきているといえる。

 「全日食の場合、創業当時から『和の経済』という考え方があります。『加盟店は本部から買う』『本部はその事業でもたらした利益を店頭に還元する』。この循環が、われわれ全日食でいう『和の経済』です。『店頭に還元』という意味では、これを実際に具現化したのがちょうど私の代ともいえるかもしれません。

 これまでは、どちらかというとセンターに投資したり、システムに投資したりということで、そこまで手が回らなかった。私たちの時代はそれがある程度一巡したので、実際に余剰の部分を店頭に還しましょうということです。やはり、店頭があって、われわれの存在意義がある。

 創立(62年)から60年以上たちますが、いろいろたどってきて、それ(店頭への還元)がようやく出せるような体質になってきたということです。ただ、いまはセンター再編、システムへの再投資の問題も出てきていますが」

全日食チェーンは創業以来、「以和為貴(和を以って尊しと為す)」の教えを貫きながら加盟店と本部が一体の運営を実践してきた

生鮮センターの活用強化で、人時生産性4000円を目指す

 誕生から約65年、加盟店の経営者の年齢層は現在、どのような状況になっているのか。

 「ばらばらですが、ただ、いまは40歳~50歳ぐらいが中心になってきましたね」

 徐々に創業者の世代から2世などに世代交代が進んでいることが伺える。現代の日本における食品小売業の状況は、創業者の世代が最前線で活躍していたころとはずいぶん異なっている。

 「そうですね。(創業者の世代の)昔の人たちは自分たちでやってきた部分がありますが、2世の人たちはそういう意味では割り切っている部分がありますね。『本部から(商品を)仕入れればいいのではないか』『市場に行く必要はないのではないか』と。それでその中で、やはり本部の機能としても、生鮮も含めて磨かなければいけないと思っています。

 本当に経営的には厳しいと思います。いま、シャドウキャビネット(影の内閣)ということで、加盟店組織の次の世代の人たちを募りながら、この3~4年間取り組みを進めています。やはり、店の持続的な経営の部分について、これからまた、社会保険の問題も出てきますが(2026年4月1日施行の年金制度改正法による被用者保険の適用拡大など)、そのためにどういうことをしなければいけないかといったことを考えています。

 現状、結論の方向性は2つ。1つはデジタル武装。省人化レジとか電子棚札とか、自動発注。こういったものを実際に、装備と導入、活用をすること。もう1つは生鮮センターです。本部の生鮮センターを使うことによって、実際に利益を変えていく。

 これはどういうことかと言うと、いま畜産を第1弾としてやっていますが、値入れを30%にして、日配品と同様に毎日の発注にします。いままで、例えば粗利益が35%あったとしても、それ相応のコストがかかるから、結局(営業利益として)残るのはせいぜい1、2%なんですよ。それで、その(売上高)構成比が例えば10%あるということであれば、(営業利益の)相乗積でいうと0.1、0.2%しかないわけです。粗利(の相乗積)として計算すると3.5%あるけれども、現実的に(コストを)差し引きすると0.1、0.2%しか残らない。

 今回、生鮮センターでは、まず第1弾としては値入れ30%、次のステップとしては35%まで持っていこうと動いています。これをやることによって、実利が増える。仮にロスが10%あったとしても、(簡易的な計算として値入れ35%-〈若干の陳列作業分の経費〉-ロス10%で営業利益25%、売上高構成比10%で相乗積は)2.5%になります。それによって店全体として、(営業利益率が)少なくとも2%ポイント上がることになります。いま、そこをやろうということで、畜産、青果、水産を生鮮センターに傾けることによって、実際にそれを動かしていくと。

 ただし、われわれのような店は、結局、お客さまに来てもらえるには、何か1品でも『光るもの』がないと来てくれないわけです。いまわれわれとしては、どちらかというと惣菜に力を入れています。そういった形で、コア(核)を作ろうという話をしていて、それ以外の部分については本部の生鮮センターを活用することによって省力化を図るということで、いま実験的に動いています。

 生産性の指標として、総労働時間で総(粗)利益を割ると1時間当たりの(粗)利益である人時生産性が出ますが、その計算では全日食の場合、2000円ぐらいしかない。そこを何とか4000円に持っていきたい。まず第1段階として2500円、次に3000円、それで何年かして3500円、4000円という形で、順序立てて持っていこうと思っています。

 そのためには本部の生鮮センターを活用しなければだめです。ただ、実際にはこれまで活用しなかった本部側の理由もあります。特に品質の問題などがありましたが、そこをいま解決しようとしています。加盟店も本部に委ねているわけだから、われわれ(本部)も品質や価格の面についてシビアにならないとだめということで、いま並行して動いています」

 日本では、とりわけ鮮度が重視されることもあって、生鮮の販売は店舗での作業がメインであった。

 「そうです。だから結局、職人が結構いたわけです。八百屋さんがいて、肉屋さんがいて、魚屋さんがいてと、皆さんいるわけです。それが昨今の人手不足の問題と、従業員の高齢化があって、変わってきました。職人が退職することをきっかけに、本部の生鮮センターを活用しようという流れがあります」

 生鮮センターの配置状況はどのようなものなのだろうか。

 「北海道から九州まで、主要エリアごとに生鮮センターを配置しています。現在は全国で6拠点を核に、青果、畜産、水産をカバーできる体制を整えています。だから『本当に助かっている』という声も多いです。ある加盟店は、『いままで使わなかったのが悔やまれる』と言いました。以前は職人を入れて35%の粗利益を取っても、(営業利益として)残るのはせいぜい1、2%。

 その後、実際に職人が辞めたのですが、(生鮮センターを活用することで)いまは職人がいたときよりも売上が上がっていて、利益も確保できるということです。いまそれを、畜産から、今度青果、水産にも広げようという話になっています」

 生鮮センターからのアウト供給で値入率は下がるが、店としては作業負荷が大幅に減ることになる。例えば、他企業でもアウトパックの商品の品質が高まってきていることもあって、意外に売上も上がったりするケースもみられる。

 「そうなんです。ある事例ではやはり実際に、作業時間が(従前比で)41%にまで下がったとのことです。59%の作業時間がなくなったわけです」

 まさに作業時間が半減した形だが、一方で、作業が大幅に減ったとしても、人員については急に削減することはできない。むしろ、その時間に「何をやるのか」という問題が出てくる。

 「それでいま、マルチジョブ(多能工化)の考え方を提唱しています。例えばレジをやりながら、他のこともやるといったものです。いま札幌にある全日本食品の兄弟会社であるスーパーエースがマルチジョブに取り組んでいますが、実際に人時生産性は3000円ぐらいまで高まっています。加盟店は人時生産性で3000円まで行けば元気が出ます。

 『だから、マルチジョブをやれば良い』という話ですが、やはり同じ加盟店でも『もっとやる』というところと、『まぁ、いいか』というところと考え方に温度差があります。ただ、それについては、いま『大衆運動化』してきて、良い兆しが出てきています。本部が動いているわけではなく、加盟店が加盟店を説得するみたいな感じになっていて、非常に良い雰囲気ですね」

継続的に事業を展開していくためには、経費をまかないつつ、しっかりと営業利益を確保しなければならない。そのためには人時生産性を上げることが不可欠。生鮮センターなど支援の仕組みの整備を急ぐ

仕入れをエリア単位から全国単位に

 17年から全国仕入業務の一本化として「ONE-MD体制」を始めている。もともと共同仕入れを目的に始まった全日食チェーンだが、改めて一本化を目指す狙いはどこにあるのか。

 「いままではエリアごとで考えていた面がありますが結局、エリアごとで見ると、ローカルスーパーの年商よりも小さいわけです。それでそのローカル単位の数字で仕入交渉をして、ボリュームが読めるかと言えば、なかなか読めないわけです。

 そうであるならば、われわれは全国に(店舗網が)あるわけですから、(本部年商)1100億円(25年8月期、1082億円)という数字を元にして、広域で仕切るような形で交渉をした方が良いのではないかということです。ただ、例えば和日配などは、はっきり言って実際にはエリア単位ですから、こういったものはエリアのパワーとして生かします。

 いずれにしても、いままでのエリアごとでの運営だったものを、なるべく全国に数字を集めることによって、全国一気通貫で交渉するというような考え方がONE-MDです。やはり、エリアごとだとボリュームが全くないので、そこの部分を補強するために、その方向でやっていかないといけない。意外にも、以前はこの発想はなかったですね。

 ただ、そのときやはり、ナショナルブランド(NB)であっても、全国統一の条件と、その下にエリアの条件があって、そちらの方が良い条件であったりします。そのエリアの条件が取れなくなってしまったという声も正直言ってあるんです。それについてはMD(マーチャンダイザー)も経験を積んでエリアの条件を含めた交渉もできるようになってきています」

 加工食品については全国を視野にした調達をさらに進化させていくことになるが、一方で生鮮の調達についての考え方はどのようなものになるのか。

 「生鮮はまだエリアでやっていますが、課題があると思っています。全日食からは2週間前ぐらいに(加盟店に対して)原価を出しますが、結局、相場によって乱高下するわけで、相場が下がったときには(各企業が買参権を持っているため、全日食からは)買わないですが、逆に相場が上がったときは当然、(全日食から)たくさん買うわけです。

 価格によって、(加盟店が)買う、買わない、仕入れる、仕入れないではなくて、これからやらなければいけないのは、全日食として産地とどうやって取り組んでいくかという方向性だと思っています。

 いま、そういった中で『数の読める体制』を作ろうということで、先ほどのONE-MDの話でもそうですが、やはり、1000なら1000という形でメーカーにうたったら『1000やる』ことが大事です。500なら500、10なら10でも良いんですが、それをやり切ることが大事であって、それが必ず力になると話しています。

 生鮮の話でも、産地と取り組むときは、(相場が)高くなろうが、安くなろうが、1000を取り扱うといったら、1000取り扱わないといけないわけです。いま、実際に加工食品のグロサリー関係のところではONE-MDでトレーニングをしています。それがある程度の形にでき上がったら、今度はやはり生鮮の産地の生産者と直接やり取りしていく。『全日食はこの品目を、毎年1000買います』という形に切り替えていきたいと考えています」

 まさにチェーンストアにおけるバーチカルマーチャンダイジングの実践といえるが、もともと全日食の加盟店は小型店が多く、生鮮の品目数も限られていることから、多数の品目を取り扱う大型店を抱えるSMと比べても、取り組みやすいかもしれない。

 「青果にしても、せいぜい20か30品目です。それを大きなくくりでエリアごと、例えば九州を含む西日本、北海道、東北から関東のラインで1つといった考え方です。それが実際に次のステップになりますが、少しずつ動いてきています。

 あとは水産ですが、これは難しいです。個店でしっかり取り組まれている加盟店もありますが、それはあくまで個店の取り組みです。実際、目利きの部分がすごく重要ですが、それはまだ、本部の人間ではできないですね。そこは、加盟店と本部がいっしょになってやればいいわけですから、そのときに本部だけの知恵ではなくて、加盟店の知恵もそこに入ってくれば、もっとおもしろいものになるかなと思います」

 加盟店が持つノウハウや技術をチェーンとしての強化に生かすことで、新たな展開も視野に入ってくる。

 「実際には九州エリアでもうスタートしています。産地に十数人で赴いたりして、まとめて仕入れるといったことをしています。こうしたエリア単位での取り組みができることが、ボランタリーチェーンとレギュラーチェーン(コーポレートチェーン)の違いだと思います」

 本部による全国を視野に入れた取り組み、さらに地域単位での取り組みといった形で、重層的な協力の枠組みが柔軟にできることは、確かに直営によるコーポレートチェーン、あるいは本部の権限が相対的に強いフランチャイズチェーンにはなかなかできないことだ。

 さらに「本部を超えた」部分では、全日食は04年には協同組合セルコチェーン、14年にはオールジャパンドラッグ(AJD)と業務提携、さらに21年にはオール日本スーパーマーケット協会(AJS)に加盟するなど、外部の共同仕入機構との取り組みも進化させてきた。

 「AJSについては、お陰さまでいろいろわれわれとしてもメリットを享受させていただいていて、例えば、プライベートブランド(PB)は(AJSで開発している)『くらし良好』に切り替えました。たまたま、いまのようにインフレになる前の(加盟した当時の)デフレのときはPBの方が、価格優位性があるといった雰囲気がありました。

 当時、われわれはNBばかり売っていたのですが、加盟したその年(21年)の7月に『くらし良好』を取り扱い始めて一気に広げたのですが、一発でスムーズに入りました。(消費環境的に)加盟店としても、『入れた方が良い』という思いが強かったことが大きかったと思います。

 AJDについては、われわれとして一部加盟企業に食品の商品を提供しています。いま『フード&ドラッグ』の業態を展開している企業が増えていますが、やはりドラッグと食品スーパーはいっしょにしていくべきで、そういった部分での業態開発は絶対に進めるべきだと思います。片方ではドラッグをやりながら、もう片方では食品スーパーをやるというものです」

 SMではここのところ保存性の高さのメリットなどから「冷凍」の支持が拡大している。冷凍に対するスタンスはどのようなものか。

 「5年前から自前での冷凍事業を進めてきました。100坪ぐらいの関東冷凍センターを造って北海道から東日本をカバーしています。商流、物流を全てやっています。さらに加盟店にはこの4年間で低温什器を1000台入れました。貸与の形ですが、これも本部の補償でやっています。事業を進める上で、やはり売場がないとだめということで導入しました」

商品軸では、全国で展開する規模を生かした調達を強化する一方で、エリア単位の取り組みも強化するハイブリッド戦略で臨む

「推奨者」を育成しつつ、来店していないお客を呼び込む

 商品面同様、本部の重要な役割にRSがある。もともとPOSデータを基にした分析などには長年取り組んできたが、加盟店をサポートする販促や売場づくりなどの取り組みの状況は。

 「いまわれわれがやろうとしているのは『アプリ化』です。いままではどちらかというと板カードで会員プログラムをやっていまして、それもやっていきますが、それをアプリにしてそこでプッシュ通知をしていくといったこともしていこうとしています。

 もともと全日食の販促とかマーケティングの考え方は、ワントゥワンで顧客別にサービスを行うことに特化するということで、15年ぐらい前からやり続けています。それをアプリでも表現することを、まずはしっかりやりたいということがあります。

 また、アプリと店頭の違いは、やはり、『家に帰ってもつながれる』というところが大きいと思っています。以前は店頭に来ていただいて、紙(のクーポン)をお渡ししなければいけなかったところ、いまはそれをアプリに移行することを促進しています。

 情報の中身は1人1人違う内容になっていまして、ドライ、チルドをメインに、売れ筋商品の中で、そのお客さまが買っているものがメインに出てくるものが1つ。あとはメーカーにご協力をいただいて、新商品などを紹介させていただくサービスもしていますが、これも顧客別販促をしていまして、その商品を買いそうなお客さまを事前に分類段位で分析をして、メーカーと話し合いながらクーポンにしているものがあります。

 これについてはアプリでも表現することができていて、アプリでは『プラス5品、お客さまが好きな商品を追加できる』機能を付けています。アプリだからこそ、できることが増えているということもあります。

 ただ、このご時世ですので、完全にペーパーレス化をしたいところですが、高齢のお客さまも多く、まだほとんどが板カードのお客さまですので、うまくアプリに移行していくことについて、引き続きやっていきたいと思っています。現状、500万人のカード会員がいますが、アプリの会員は10万人に達していないです。

 また、全日食チェーンはボランタリーチェーン(加盟店の集まり)ですので、一般的なチェーンのイメージとは違うのですが、そうは言っても全日食の加盟店という共通点があるので、『全ちゃん』というマスコットキャラクターを作りました。これが人気になっています。ここ数年間は、こうした部分をしっかりブランディングしていこうとしています。

 (マスコットキャラクターを設けたりする取り組みは)最初のうちは、加盟店にもなかなかご理解をいただけなかったのですが、ここに来てSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で話題になるなど、いままで来てくれていなかったお客さま、来なくなったお客さまに対してもアプローチできる施策になっていて理解が進んだ面もあります。

 いままでは、『来てくれているお客さまにどういう風にサービスをしていくか』ということで上位、中位、下位という形で分析しながらやってきましたが、そこからさらに進んで、『推奨者』という本当のロイヤルカスタマー、上位顧客の中でも、いっしょになってお店を運営してくれているぐらいのお客さまを育てることも視野に入れて、『ブランディング』という大きな視点の中で進めています。

 また、LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)の考え方ももう1回、しっかりと見直してやっていくべきとも考えています。やはり、商圏シェアを見ていくと、地元に密着している加盟店ですらシェア率は決して高くはないのが現実です。

 お店に来ていないお客さまを呼び込むことは、まずやっていかなければいけないことですし、来てくれたお客さまをしっかり上位に上げていくというところと、長い視野で来続けてくれるお客さまをどう増やしていくか。こういったところについて、新たに視野を広げてやっていこうと思っています。

 これまで、店内のIDが付いているPOSデータの分析をずっとやってきたのですが、この先はアプリなどのウェブ上のデータも融合させて、来ていない見込み客、推奨者などの上位顧客なども含めてデータで分析できるようにしていければと思っています。

 ただ、『未来』を前面に出してしまうと全日食の良さがなくなってしまうとも思っています。イメージとしては『昭和の良き時代』の見た目で、その後ろには『未来』の内容がそれを支えているといったものでしょうか。ハイタッチとハイテクの両方ともやっていかないとだめだと思っています」

全ちゃんのさまざまなグッズを制作し、加盟店に提供している。「かわいい」と好評だという。活用方法は加盟店によってさまざまで、上位顧客に配る店もあれば、子どもに配る店、地域の祭りの際に配る店などがあるという。キャラクターは昨今、IP(Intellectual Property、知的財産)のビジネス活用の面で注目度、重要性が高まっている

 まさに未来のイメージの象徴と言えるかもしれないが、多くの企業が取り組むネットスーパーに対するスタンスはどうか。

 「ネットスーパーはやらないですね。やはり、接点(店舗)は大事です。一部、カタログギフトのネット販売をやっている他、こちらはまだ拡充できていないのですが、加盟店の特産物をネット上で売れるようなサービス(全ちゃんオンラインストア)を進めています。

 ネットでご注文をいただいて、加盟店から送るというものですが、これが広がっていくとおもしろくなってくると思います。加盟店のお客さまが全国に広がることにつながりますし、それがリピーターにつながれば、新たな売上の創出にもなります」

 商圏内を超えた販路の拡大にネットを活用しつつ、あくまで日々の商売についてはリアル店舗をベースに、究極的にはワントゥワンを目指すというストーリーが見えてくる。ネットチャネルがシェアを高める中、リアル店舗の意義を議論する向きもあるが、配送インフラの整備、また、ランニングコストの重さなど、ネットチャネルがリアル店舗を代替することには大きなハードルがあることも確かだ。

 人が集まる「拠点」としての機能などと併せ、改めてリアル店舗の重要性が強調される場面も少なくない。その意味では全日食の全国に広がる加盟店網は、まさにリアル店舗の意義を具現化する存在であり、だからこそ、それを維持、強化するためにも全日食本部の役割は、今後ますます拡大し続ける。

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