倉庫管理システムの選び方とは?3タイプ別にWMSを比較
2022.10.26
2021.11.09
倉庫管理システム(WMS)は入出荷と在庫管理、棚卸しなどを一括して管理でき、物流現場の業務効率化に役立てられる。アナログでの管理に比べると工数と時間を大幅に削減、人的なミスも防げるのがメリットだ。倉庫管理システムの選び方のポイントを解説する。
倉庫管理システム(WMS)とは?
「倉庫管理システム(WMS)」とは、倉庫や物流センターでの入出荷と在庫管理、棚卸業務などを行えるシステムをいう。管理者は複数箇所の倉庫業務をデータで一括管理でき、物流現場は作業スピードと精度を高められるのがメリット。
一方で「基幹システム」は会社全体での在庫管理のためのもので、生産と仕入、売上処理と連動して在庫数を更新する。倉庫など作業現場ごとに作業内容や流れは違うため、入出庫に必要なサポートデータは基幹システムでの全社管理ができない。そのため倉庫作業に「倉庫管理システム」を導入し、基幹システムと併用することでスムーズな在庫管理が実現可能になる。
(1)入庫管理
倉庫管理システムの入庫管理メニューに入庫スケジュールを入力しておくと、入庫日の入荷数を管理可能。入荷予定情報の検索や、進捗状況をすぐに確認できるようにもできる。入庫と入荷の情報をリスト化することにより、入荷数の変動の様子を把握しやすくなるメリットも。加えて入荷実績の登録や、次の入荷予定のリストを作成する機能も有している。
入荷・入庫の事前準備段階で、入庫管理メニューから入荷予定リストを発行。倉庫では発行したリスト、またはハンディターミナル(HT)を使い、作業者が検品を行う。そして入庫品目と数を入力すると、入庫が確定するしくみだ。
(2)出庫管理
倉庫管理システムの出庫管理メニューには、商品の出庫作業の内容を指示、商品のピッキングリスト作成やピックした商品の検品ができる機能がある。
ピッキングは商品単位で集品してから出荷先ごとに仕分ける「トータルピッキング」と、出荷先ごとに集品する「シングルピッキング」の両方に対応可能。トータルピッキングの二次ピック方法も「摘み取り仕分」と「種まき仕分」を問わず利用できる。
出庫作業時も入庫と同様。事前に出荷情報を入力しておくと、出荷指示情報から出庫指示書と作業帳票を発行。作業者が参照するためのピッキングリストも出力する。ハンディターミナルなどを使って出庫検品を行い、出荷確定データも入力すれば出庫についての一連の作業は完了だ。
(3)在庫管理
倉庫管理システムの在庫管理メニューでは、倉庫内に保管している商品在庫の数と配置場所とを管理できる。飲食物など消費期限や使用期限がある商品は、前の日付のものから出荷する必要がある。倉庫管理システムを使えば商品を製造年月日や消費期限と紐づけて管理できるため、アナログ管理と異なり管理の手間を大幅に削減可能だ。
在庫管理メニューには在庫検索、在庫の充填率のチェック、商品補充リストの作成と補充指示などの機能も。複数の倉庫拠点の在庫を一覧表示させられ、倉庫間の在庫移動もスムーズに行える。商品の荷動きの履歴は受払問合せからチェックできる。
(4)棚卸管理
倉庫管理システムの棚卸管理メニューは棚卸の際に使うデータを作成し、棚卸の指示を出力できる。棚卸作業リストは紙だけでなく、ハンディターミナルによる検品にも対応。棚卸の結果を管理メニューに入力するとデータと実在庫数との差異をリスト化してくれ、簡単に把握できる。
棚卸関連のリストは棚卸作業と実績、差異、履歴のすべてを出力可能。棚卸実績をまとめて確定し、在庫を更新させられる。
これまでの手作業の棚卸では、棚卸以外の作業を止める「一斉棚卸」が一般的である。一斉棚卸はスケジュールが大掛かりになり、大きな倉庫などでは棚卸作業が数日から数週間に及ぶことも。一方で倉庫管理システムを導入すれば、ほかの作業を止めずに棚卸を行える「循環棚卸」が可能に。作業と棚卸が同時でも正確な在庫数をカウントできるため、現場の作業負担を大幅に軽減可能だ。
(5)マスタ管理
倉庫管理システムのマスタ管理とは各種マスタを入力し、情報を管理するためのメニューである。商品と倉庫、取引先や運送業者などについて、名称や住所などの基本情報を入力しておける。
管理画面の表示についても、基本機能から設定することが可能だ。担当者とユーザー単位での使用権限の設定などシステムの基本機能についてや、汎用マスタからは物流センター管理システムで利用するコード体系の情報管理も行える。
倉庫管理システムのメリットとデメリット
倉庫管理システムを導入し、作業をアナログからデジタル化することで作業の標準化と工程削減が可能に。扱う商品数が多く管理が大変、入出荷件数が多い倉庫の場合には大きなメリットを得られる。見た目に似た商品を扱っている場合や、作業員の人数が多く繁忙期にヘルプをもらうことが多い場合なども、倉庫管理システムの導入に向いているケースだ。
一方でそう大きくはない倉庫や、ベテラン作業員が多い場合などは倉庫管理システム導入費に対して削減できる費用がそう多くなく、導入に向いていないケースといえる。
倉庫管理システム導入で得られるメリット
倉庫管理システムを導入すると、出荷作業の精度を高められる。事前にシステムに出荷指示を登録しておくと、倉庫の作業者はハンディターミナルに表示される指示を見ながら作業をする。そして指示と異なる作業をすればエラーが表示されるため、誤出荷が起こりにくい。倉庫管理システムを使えば新人でもベテラン同様に作業ができるため、繁忙期だけのヘルプを雇った場合でも全員が同じ質で作業できるメリットもある。
入出庫作業でもっとも大変なのはもの探しだが、倉庫管理システムを使うとその手間と時間を大幅に削減可能。ロットごとや使用期限ごとの管理にも対応しているため、常に一定水準を保った品質管理も自動で行えるようになる。
入出庫の際にハンディターミナルでバーコード読み取りをすると、どこからでも商品在庫をリアルタイムで把握できるように。企業にとっては正確な在庫情報は、利益の最大化に大きく寄与する。商品在庫のデータから倉庫作業の進捗状況も把握できるようになるため、管理者が作業管理をしやすくなるメリットもある。
人の手だけのアナログ作業での在庫管理はまず入出庫状況を帳簿に記入、管理のためのパソコンに帳簿の数を入力と工程が多く、時間もかかっていた。人力ではミスが生じることもあるため、ミスがないかを確認、修正する時間も必要だ。
一方で倉庫管理システムを使えば倉庫からダイレクトに在庫データを更新、作業時間を削減して適正な人員配置が可能に。作業員の人数と人件費も削減できる。
倉庫管理システムに不向きなケースは?
倉庫がそう大きくなく、商品数も少なめな場合や、入出荷の件数も多くはない場合は倉庫管理システムによる恩恵を得られにくい。倉庫作業が少数精鋭の作業員のみで構成されている場合も、倉庫管理システムによるメリットは感じにくいだろう。
倉庫管理システムの導入から稼働までは準備期間が必要だ。資料を準備し、社内の決済をもらう。現場での作業のやり方は大きく変わるため、マニュアル作成や教育期間も要る。
倉庫管理システムの導入費用分の効果が見込めるか、かかる費用と削減できる人件費などが釣り合うかは入念にシミュレーションを。具体的な数字で示すことで、自社に倉庫管理システムが向いているか、そうでないかを判断しやすくなる。
倉庫管理システム選定の流れ
倉庫管理システムを選定する際は、まずは自社に何が必要かを確認する。自社の課題を解決できるか、自社の業務にも対応可能なシステムかどうかを選定基準に。導入済みのほかのシステムがある場合は、連携できるかもチェックしよう。
システムの扱いに不慣れな社員ばかりの場合は、操作に手間取ることが考えられる。メニュー画面は誰でも操作しやすいか、何か問題があったときに遠隔での操作対応や、技術者を派遣してくれるなどもサポートがあるかなども確認しておくとよいだろう。
自社に必要な機能とスペックをはっきりさせる
倉庫管理システムを選ぶ際は導入により解決したいことをまとめ、自社に必要な機能とスペックをはっきりさせる。自社が抱える課題をはっきりさせることで、どんな機能が必要なのかも見えてくるだろう。
たとえば倉庫内の商品回収の効率を上げたいのであれば「ピッキング機能」、商品の位置情報をデータ化したい場合は「ロケーション管理機能」が便利。「データ共有機能」があれば倉庫の情報を本社でもリアルタイムで把握できるし、「グローバル活用機能」は海外拠点の倉庫でも国内同様のシステムを使いたいときに役立ってくれる。
希望する倉庫管理システムが自社の業種・規模に合うかを確認
倉庫管理システムによっては、特定の業種向きのものや、対象の規模の大きさが決まっているものも。選定の際には自社にふさわしい製品かどうかは確認する必要があるだろう。
汎用的なシステムならどの業種でも対応できそうに思えるが、業種ならではの業務には対応しきれないこともある。自社の業種に対応可能、導入実績のある製品を選ぶとよいだろう。
倉庫管理システムのデータを社内で活用したいのなら、導入済みのほかのシステムとの連携性も考慮する。販売管理や在庫管理システムと連携できると、倉庫だけでなく会社の業務全体の効率化も実現可能だ。倉庫業務のデータは日々蓄積されていくが、それを自在に抽出、解析して可視化できれば、業務改善に大きく貢献してくれるだろう。
3つの倉庫管理システムを比較
倉庫管理システムには「パッケージ型」と「クラウド型」、「オンプレミス型」の3つがある。それぞれの違いを知り、自社に合ったタイプを選択しよう。
(1)パッケージ型
「パッケージ型」とは、カスタマイズをほぼせずに、パソコンにインストールするだけで導入できるタイプをいう。とにかく早く導入したい、機能や仕様に特別なこだわりがいらない場合に向いている。
機能はさまざまで選択肢が多く、価格も数千円から数百万まである。すでにシステムが完成されているため、現場に合ったカスタマイズができないのがデメリット。多くの製品版は体験版を提供しているので、まずは試してみるとよいだろう。
たとえば「W-KEEPER(三谷コンピュータ株式会社)」は50〜5,000名規模の事業所に対応、売上規模を選ばずに使えるパッケージ型の倉庫管理システムだ。小売業のほか、製造業や卸、物流業などを問わずに利用できる。複数拠点や多種多様な商品対応も十分で、基幹システムとの連携も簡単にできる。
(2)クラウド型
「クラウド型」とは、インターネット上にあるクラウドに接続して利用するシステムをいう。利用するためのサーバーやソフトウェアが不要で、パッケージ型よりも初期コストは安く済む。
常に最新のシステムを利用可能、状況に合わせてスペックの増減も可能なのがメリット。一方で年額や月額で利用料を支払い続けることになるため、ランニングコストがかかるデメリットがある。ベンダー(システムの提供者)が設定しているものから自社に合った機能を選択する方式が多いため、拡張性もやや乏しい。
「LIFE-Vision(株式会社東計電算)」は従業員・売上ともに全ての規模に対応。情報セキュリティと災害対策済みの自社データセンターから提供する、クラウド型の倉庫管理システムだ。ネット環境さえあれば利用できるため、倉庫の移転や分散などにもすぐに対応できる。
ロット管理機能により出荷期限を設定して商品管理可能、カテゴリーや部門別の納品、フリーロケーションでの管理もしやすい。そのため日用品や雑貨を多く扱うホームセンターやディスカウントストア、ドラッグストアに特に向いているといえる。
(3)オンプレミス型
「オンプレミス型」とは、まず自社でサーバーを持ち、ソフトウェアを導入して管理と運用をするものをいう。購入またはリースで用意するサーバー費用がソフトウェアとは別に必要なため、3タイプの中では導入コストと導入までの時間がもっともかかる。
オンプレミス型の最大のメリットはカスタマイズ性の高さ。自社に不要な機能を最初から省き、最適化したシステムを扱えるのが魅力だ。既存システムとの連携も、オンプレミス型ならスムーズにできる場合が多いだろう。
「ONEsLOGI(日立物流ソフトウェア株式会社)」は、従業員100名以上、売上規模50億円以上の企業向けのオンプレミス型倉庫管理システム。長年培ってきた物流業務のノウハウにより、現場目線で開発されている。
BtoBとBtoCの両方、幅広い業種や業態に対応。ピッキングカートやタブレット端末だけでなく、棚移動ロボットなど最新の機器との連動性も高い。倉庫業務で蓄積したデータは在庫分析ツールなどと連携させ、業務の最適化や生産性アップに役立てられる。
倉庫管理システムを導入して業務の効率化を
倉庫管理システムは自社に合ったものを導入できれば、作業の精度アップと効率化、コスト削減が実現する。倉庫業務をデータ化してほかのシステムと連携させることにより会社全体の業務改善、生産性アップも可能に。倉庫管理システムにはさまざまなタイプがあるので、比較検討をおすすめする。