ワンストップショッピングとは?意味や概要、メリット・デメリットを解説

2022.10.27

2021.12.08

1か所で複数の買物を済ませる「ワンストップショッピング」。本記事では、ワンストップショッピングの導入事例やワンストップショッピングのメリット・デメリットを紹介。ワンストップショッピングの課題と小売市場における展望を考察する。

ワンストップショッピングとは

「ワンストップショッピング」とは、さまざまな種類の商品を1か所で購入できる買物のしかたをさす。ワンストップショッピングを導入している店舗や商業施設は、「ワンストップショップ」とよばれる。近年では生活環境や時間価値の変化により、利便性の高いワンストップショッピングのニーズが上昇している。

ワンストップショッピングの事例

2021年現在、国内外にはさまざまな小売業の店舗があり、生活必需品から娯楽のための品物まで幅広い商品が売られている。店舗の業態によっては、ワンストップショッピングを実現しているものもあり、多くの消費者に利用されている。どのような業態の店舗がワンストップショップとなっているのか、事例を以下に紹介する。

百貨店

大型デパートに代表される百貨店は、長い歴史をもつワンストップショッピングの業態の1つである。衣料や食料品のほかに家電製品や生活雑貨、書籍など幅広いジャンルの店舗が出店しており、ひとつのデパートで必要な買物を済ませられる。デパートは鉄道駅に直結している場合が多く、都市型ワンストップショッピングの代表的な存在といえる。

ショッピングモール

多様なショップが集まるショッピングモールは、施設全体ですべての買物を終えられるワンストップショッピングを実現している。とくに、郊外型のショッピングモールは空いた土地を利用して大型化する傾向にあり、小売店以外に娯楽施設やクリニックなども併設され、生活全般をカバーできる巨大なワンストップショップとなっている。

スーパーマーケット

かつてスーパーマーケットは、生鮮食品をはじめとする食料品全般をメインに扱う業態であった。部分的に小規模な生活雑貨を売るコーナーはあったが、近年では生活用品全般もあわせて販売する店舗が増えている。店舗によっては衣料品や家電製品なども扱う場合があり、このような店舗では、スーパーマーケット1店舗で生活必需品のほぼすべてをそろえることも可能となる。

コンビニエンスストア

コンビニエンスストアは、まさにワンストップショッピングを体現した業務形態といえる。食料品や飲料にはじまり、日用品、文房具、新聞雑誌など消費者の生活に必要なものが、1店舗ですべて網羅されている。店舗の規模は決して大きくないが、とりあえずコンビニに行けばなんでもそろう利便性は、他の業種の追随を許さない。

ドラッグストア

近年では、ドラッグストアにおいてもワンストップショッピング化が進んでいる。これは、従来のドラッグストアに食料品をラインナップさせた業態で、「フード&ドラッグ」と呼ばれている。ドラッグストアのフード&ドラッグ店舗はとくに地方部に多く、生活必需品がすべて1か所で買え利便性がよいため人気だ。大きく売り上げを伸ばしている店舗も存在する。

ホームセンター

全国各地にあるホームセンターでは、資材や工具類以外にもさまざまな生活用品が販売されている。近年では、これらに加えて医薬品や食料品の販売をおこなう店舗も増えており、ホームセンターのワンストップショップ化が進んでいる。とくに郊外の店舗では大型店が多く、それに伴いホームセンターは、ワンストップショッピングの場としてのニーズが上昇している。

そのほかのワンストップショッピング

買物のワンストップ化は、さまざまな業界で進行している。現在では小売り店舗のみならず、住宅の販売からリフォームまでオールインワンで提供している「住まいのワンストップショップ」や、オフィス用品全般から来客用のお茶まですべて揃う「オフィスのワンストップショップ」「金融商品のワンストップショップ」「通信サービスのワンストップショップ」など多様なワンストップショップが存在する。

ワンストップショッピングのメリット

ワンストップショッピングの導入は消費者と店舗、双方にさまざまなメリットがある。以下に、店舗のワンストップショップ化がもたらす効果を、消費者、店舗それぞれの側から紹介する。

消費者の利便性と時間価値の創出

BtoCビジネスでもっとも大事なことは、消費者が享受するメリットにあるといえる。ワンストップショッピングにおける消費者のメリットとは、1店舗で買物を済ませられることによって、自由に使える時間が増えることにある。ワンストップショッピングによって増えた時間を有効に使い消費者自身と家族の暮らしが充実すること、それこそがワンストップショッピング最大のメリットと考えられる。

店舗側は集客力の強化が見込める

ワンストップショッピングから得られる店舗側のメリットとは何か。それは、多様な商品や多店舗が1か所に集まることによって発生する「集客効果」にある。複数のジャンルの商品1か所で販売されていれば、当然そこには多くの消費者がやってくることになる。また、消費者の購買意欲も高くなり、売り上げ増加の相乗効果が見込める。

ネームバリューなどの付加価値

ワンストップショッピングを考えるうえで、商業施設への出店は外せない要素だ。ネームバリューのある商業施設であれば、出店するだけでも付加価値がつく。この付加価値には当然店舗の宣伝効果もあるが、それ以上に有名な商業施設に認められた店舗であることにより、社会的な信頼性を得ることの効果を認知するべきである。

ワンストップショッピングのデメリット

ワンストップショッピングにはさまざまなメリットがあるが、実際にはいくつかのデメリットも存在する。ここでは、店舗のワンストップショップ化にともなって発生するデメリットや注意点も紹介しておきたい。

消費者は商品を探す手間が増える

ワンストップショッピングの店舗では、広めのスペースに所狭しと商品が陳列されたケースが多くみられる。一見すると効率よく買物ができそうだが、必ずしもそうとは限らない。消費者の視点からみれば、欲しいものを見つけるのに時間がかかってしまう場合があるからだ。とくにはじめから買うものが決まっているときには、商品探しで時間をロスする可能性もあり、消費者にはストレスとなるので注意が必要だ。

店舗側は営業自由度が低くなる

一方、店舗側のデメリットとして、商業施設に出店した場合には営業日や営業時間を施設に合わせなくてはならない。定休日や営業時間の伸縮については大きく制限されるだろう。また、施設の販促イベントなどに協力せざるを得ないこともあり、商品の割引や抽選などで思うように売り上げを伸ばせないケースも考えられる。商業施設でのワンストップショッピングには、営業自由度の低下の側面があることを認識する必要がある。

ワンストップショッピングからみえる未来

買物のワンストップ化は、消費者の買物行動に大きな変化をもたらしたといえる。日々テクノロジーが進化し、人々の意識が大きく変わろうとする今、ワンストップショッピングと買物における未来の姿を予測・展望も可能になりつつある。

ワンストップショッピングの経済効果

ワンストップショッピングにおいて消費者は、買物の時間と労力を大幅に減らせ、空いた時間や労力を次の消費活動に向けられる。また、店舗側では、ショップや商品の買い回りに消費者を誘導し、販促イベントなども開催がしやすい。ワンストップショッピングは買物市場においてさまざまな可能性をもち、経済効果も期待できる。

店舗の一極集中化

近年では大型ショッピングセンター以外にも、1か所に複数の店舗が集中し、ショッピングモールを形作る傾向が強くなっている。さらに企業のドミナント戦略により、同一ブランドの店舗がひとつのエリアに集中するケースも増加している。店舗を運営する企業の統廃合やM&Aもさかんに行われており、今後はよりいっそう一極集中化した買物シーンの出現も予想される。

これからの買物のかたち

インターネットの普及や新型コロナウイルスの影響などもあり、ネットショッピングの利用率は増加傾向にある。また、実店舗でも、レジ機能付きカートや顔認証システムの導入によって、これまで以上にスムーズな買物システムが普及しつつある。これからはレジでの会計や、人との対面のないショッピングが主流となるだろう。そしてショップの一極集中化やワンストップ化も合いまって、新しい買物の形態がまさに今生まれつつある。

ワンストップショッピングのまとめ

近年、日本では店舗の大型化と郊外化、そしてワンストップ化が進んでいる。巨大資本と集客力をもつ大型店舗に対して中小店舗は負けてしまいそうだが、一概にそうともいえない。店舗のもつ個性や魅力を伸ばし、消費者一人ひとりのニーズに応えていく。そんな店舗が寄り集まれば、そこもひとつのワンストップショッピングの場となりうる。小売市場ワンストップ化の波は避けられなくても、それを柔軟に乗りこなすことは可能である。

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