DXフレームワークとは?経済産業省の「DXレポート2」を参考に解説
2022.10.27
2021.12.16
AIやIotなど、最先端のデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織を変革し、ビジネスにおける競争力の維持・向上を図るDX(デジタルトランスフォーメーション)。
デジタル技術の進歩によって、市場環境の変化が激しくなっている現代において、DXは必要不可欠なものになりつつある。
本記事では、企業が DX の具体的なアクションを組織の成熟度ごとに設計できるよう、経済産業が 2020 年 12 月に公開した「DXレポート2」にて提案している、DXフレームワークについて解説していく。
DXレポート2とは?
経済産業省では、DXを推進するべく、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、日本企業がDXを実現していく上での現状の課題の整理と課題の検討を行った。
その報告書として同年9月に『DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』を発表している。
その中で、既存システムの老朽化・ブラックボックス化で今後起こる「2025年の崖」による経済的損失のリスクや、DX推進に向けた日本の現状・課題や、DX実現に向けたシナリオがまとめられ、それを踏まえて同年12月に「DX推進ガイドライン」が策定され、DXを推進するために必要な、経営戦略やビジョン、全社的な体制構築のポイントが具体的に提示された。
「DXレポート2」は、「DX推進ガイドライン」が提示されてから2年後の2020年12月に発表され、本格化した新型コロナウィルスの蔓延によって、リモートワークや業務プロセスの電子化が押し進められた状況を踏まえた上で、改めて、日本のDXの現状と対策がまとめられた。
経済産業省は「DXレポート2」の中で、DX の具体的な取組領域や、成功事例をパターン化して、企業の具体的なアクションを検討する際の手がかりとなる「DX 成功パターン」策定の必要性について言及し、その中で、DXをデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3つの領域に分解するDXフレームワークを提示した。
DX成功パターン・DXフレームワークとは?
DX 成功パターン策定の必要性
前述のとおり「DXレポート2」において、経営者は、経営とITが表裏一体のものであるという認識を持ったうえで、下記の2つの視点が必要としている。
① ビジョンや事業目的といった上位の目標の達成に向けて、デジタルを使いこなすことで経営の課題を解決するという視点
② デジタルだからこそ可能になる新たなビジネスモデルを模索するという視点
出所:経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ」
上述のような視点が必要とされる一方で、DX について「具体的に何をすればよいのかわからない」といった意見があることを「DXレポート2」では指摘している。
その対応策として、経済産業省は、企業が具体的なアクションを検討する際の手がかりとなるような、DXの成功事例をまとめた「DX成功パターン」の策定の必要性を挙げている。企業は、自社に沿った成功パターンを選択することで、より具体的なアクションに移行していけるとしている。
「組織戦略」「事業戦略」「推進戦略」の3つのパターン
DX 成功パターンでは、主に戦略の立案・展開の前提となる「組織戦略」「事業戦略」「推進戦略」の3つの領域が含まれる。
①「組織戦略」では、経営者・IT 部門・業務部門が協調し、三位一体の対話によって推進するパターンを成功例としてあげている。
②「事業戦略」では、「顧客や社会の問題の発見と解決による新たな価値の創出」と、「組織内の業務生産性向上や働き方の変革」という2つを両輪で、同時並行で進めていくことを重要としている。
③「推進戦略」では、重点部門を見極め、小さく始めて、段階的に全社的な取組みに広げる、アジャイル的な DX 推進を成功の鍵としている。
上記のように領域ごとの成功パターンの必要性を、「DXレポート2」では指摘している。
DXを三つの異なる領域に分解する
さらに、 DX の具体的なアクションを組織の成熟度ごとに設計できるよう、DXを「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」という 3 つの段階に分解して、把握することも提案している。
「DXレポート2」で提示されている、それぞれの段階の定義は下記の通りである。
①「デジタイゼーション」・・・アナログ・物理データの単純なデジタルデータ化
②「デジタライゼーション」・・・個別業務・プロセスのデジタル化
③「デジタルトランスフォーメーション」・・・全社的な業務・プロセスのデジタル化、顧客起点の価値創造のために事業やビジネスモデルの変革
それぞれの定義を参考にすることで、自社の取り組み状況が、どの段階にあるかをある程度把握することができる。
DX の取組領域を明らかにするDXフレームワーク
上記のデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階の指標を利用して、より具体的なアクションにつなげるために、DX の各アクションを取組領域と DX の段階に分けて整理したものが、下記のDX フレームワークとなる。
それぞれの取り組み領域ごとに、現状の段階がDXの3段階のうちどこにあるのかを把握することができる。
経済産業省は、目指すDXをゴールに設定した上で、それぞれの段階ごと逆算して取組アクションを検討する際に参照されることを想定し、また、このDXフレームワークを用いて、DX成功パターンの形式化を行っていくとしている。
DX 成功パターンの一例として、製造業における業務のデジタル化を、DXフレームワークに当てはめたものが下記になる。
DXフレームワークのまとめ
経済産業省が提案しているDXフレームワークは、昨年に提示された比較的新しいものであるが、取り組み領域ごとDXを3段階に分けるフレームワークは、自社の取り組み状況を把握したり、具体的なアクションを逆算して策定する上で、一定程度参考になる指標といえるだろう。
また、DXフレームワークによって形式化された、DX成功パターンが蓄積されていくことは、DXに悩む企業にとっては有益な情報になり得る。