O2Oとは?オムニチャネルとの違い等を事例を交えて解説

2024.03.27

2021.12.17

デジタルデバイスの所有が当たり前になった現代。店舗販促を成功させるためには、いかにオンラインからオフラインの店舗へ誘導するかという視点が重要になってきている。

このオンラインからオフラインへ行動を促すことを「O2O」といい、特に2010年代前半頃から広まってきた概念であり、最近では「O2O」をさらに押し進めた、「オンラインとオフラインの統合」を意味する「OMO」という概念も登場してきている。

本記事では、O2Oの基本的な概要から、近年注目が集まっている「OMO」との違いや、オムニチャネルとの違いなどを解説していく。

O2Oとは?

O2Oとは、「Online to Offline」の略称で、オンラインで情報を発信し、実店舗への来店を促すマーケティング戦略のことを言う。例えば、食べログやホットペッパーグルメなど、ポータルサイトのクーポンを見て、実店舗へ来店した経験はないだろうか。これも、O2Oマーケティングの一つだ。

O2Oが注目されるようになった背景には、モバイルデバイスの多様化が第一に挙げられる。スマホの登場で、消費者は手軽に情報収集を行えるようになり、Web上のメディアに触れる機会も増えた。昨今の消費者行動としては、事前にWeb上で店舗や商品のリサーチを行い、実店舗へ来店するという流れが一般的になっているため、オンライン上で集客を図ることは重要と言える。

SNS上での情報共有が常態化しているのも、O2Oマーケティングが重要視される要因だ。個人に限らず、企業がアカウントを作成し、販促を行うケースも少なくない。消費者の利用率が高いSNSプラットフォームを活用することで、商品・サービス・ブランドの拡散を見込め、実店舗への来店にも繋げられる。

また、口コミサイトの有効性が高まっているのも、押さえておきたいポイント。オンライン上で店舗の口コミを調べた後、オフラインの実店舗へ来店する流れも習慣化している。

SNSや口コミサイトでは、第三者の意見を聞けるため、参考にする消費者が多い。O2Oは近年の消費者の動向にマッチしており、今や欠かせないマーケティング戦略と考えられるだろう。

O2Oとオムニチャネルの違いとは?

オムニチャネルとは、顧客とのタッチポイントとなるチャネルを統合し、どの販売経路であっても同様の購買体験を得られるようにしたマーケティング戦略である。O2Oと意味が混同されるケースもあるが、O2Oはオンラインからオフラインへ誘導するという、実店舗の来客を増やすことに重心を置いた概念。

オムニチャネルはさまざまなチャネルを連携させ、顧客を囲い込むことを目的としている。オンライン・オフラインの垣根がない購買体験を目指すのが、O2Oとの違いだ。

O2OとOMOとの違いとは?

OMOは「Online Merges with Offline」を略した言葉で、「オンラインとオフラインの融合」を意味する。OMOという言葉を最初に提唱したのは、中国のベンチャーキャピタル・シノベーションベンチャーズの創業者・李開復(リ・カイフ)と言われている。

O2Oはあくまで実店舗を中心とした施策であるのに対して、OMOは、オンラインとオフラインの垣根をなくして、購買からその後のアフターフォローも含めて、トータルの顧客体験向上を図ることを指す。

OMOとオムニチャネル は似ている概念ではあるが、オムニチャネル は主に購買に焦点を当てているのに対して、OMOは、購買を含めた一連の顧客体験向上を目指すため、より包括的な概念といえる。

O2Oのメリットとは?

多種多様な店舗販促手法が展開されている中、O2Oを採用することにはどのようなメリットがあるのか、解説していく。

新規顧客へのリーチ

O2Oマーケティングでは、オンライン上で時と場所を選ばずにPRできるため、新規顧客にリーチできる可能性が高い。オフライン集客では、新聞折込チラシやポスティング、DMなどの販促手法が挙げられるが、立地や時間的制約なども影響し、アプローチできる範囲は限定される。また、昨今においては、紙媒体離れでリーチできるユーザーも減少傾向にある。

一方、O2Oであれば、消費者の絶対数が多いオンライン上で、情報を発信可能。店舗やサービスの魅力を潜在顧客へアプローチしやすく、特にオンライン施策をしてこなかった場合では、特に新規顧客の獲得できる可能性が高い。

施策を始めるハードルは低い

施策内容にもよるが、オンラインの集客はミニマムでスタートをしやすい領域でといえる。例えば、SNSであれば、運用の手間は継続的にかかるが、アカウント作成は無料であり、投稿自体はすぐにでも始めることができる。GoogleやFacebookなどのWEB広告も、広告バナーさえ用意すれば、すぐにでも何万人といったユーザーにアプローチすることも可能だ。

効果測定を行いやすい

O2Oはマス広告など比べれば比較的、効果測定を行いやすい施策と言える。例えば、アプリ上でデジタルクーポンを配布した場合、「利用件数 ÷ クーポン配布数」を計算することで、利用率を算出可能。クーポンを配布していない月と、クーポン利用率が高い月の売上・利益などを比較すれば、O2Oの効果を容易に把握できる。

O2OはWeb上で手軽に始めやすいマーケティング戦略であるが、闇雲に施策を実施し、販促費を投入し続けるのは避けたい。得られた結果を分析し、施策を改善しながら、費用対効果を高めていくとよいだろう。

O2Oの代表的な施策

次に、O2Oの代表的な施策を解説していく。

クーポン型

O2Oに限らず、販促手法としてオフラインでも広く活用されているのが、クーポンの配布だ。実店舗で利用できるお得なデジタルクーポンを配布すれば、来店を促進可能。有効期限を短くすることで、即効性の高い販促にも繋げられる。

また、クーポンは潜在顧客や見込み客の獲得に有効だが、顧客ロイヤリティを高め、リピーターの創出も大いに期待できる。採算を考慮するなど気を付けるべき点も多いが、効果を実感しやすく、おすすめのO2O施策と言えるだろう。

ゲーミフィケーション型

ゲーム要素を盛り込み、消費者の来店意欲を高める施策が、ゲーミフィケーション型だ。例えば、くら寿司の「びっくらポン!」も、5皿食べることで1回抽選に挑戦できるゲーミフィケーション型のサービス。子ども連れの家族をメインターゲットとし、「びっくらポン!」で来店する消費者も少なくない。

提供されるインセンティブとしては、来店を機に貯まるスタンプラリーやランクアップ制度など、金銭以外のものが多い。マーケティング要素を大きく感じさせず、消費者のモチベーションを上げ、来店を促せる施策だ。

ECサイト連動型

実店舗とオンラインショップを連携させ、消費者の利便性向上を目指す施策が、ECサイト連動型だ。ECサイト連動型の例としては、下記のような施策が挙げられる。

  • ECサイトで注文し、実店舗で商品を受け取る
  • 実店舗とECサイトのポイントを共通化する
  • 実店舗の在庫状況をECサイトから確認できるようにする

在庫状況の連携機能は、ショールーミング対策にも繋がる。ショールーミングとは、実店舗で商品の確認や試着などを行い、ECサイトで安く購入する行為。O2Oはショールーミング対策として、始まったとも言われている。

チャンスロスを防ぐ目的でも、ECサイト連動型は有効と考えられる。

位置情報活用型

スマホの位置情報サービスを利用し、販促する施策が位置情報活用型だ。消費者の位置情報を取得し、近くにいるときはプッシュ通知を送るなど、来店のきっかけを与えられる。

ただし、位置情報の取得許可が必要となる。

SNS型

TwitterやInstagram、FacebookなどSNSの活用も、O2Oマーケティングでは実践したい施策の一つ。ユーザー数の多さや拡散力の高さも魅力だが、双方向性でコミュニケーションを取れるのがポイントだ。

これまで紹介した施策は、主に一方向性で消費者に有益な情報を届ける。しかし、SNSは消費者の思考やニーズを把握しながら運用可能。顧客ロイヤリティを高め、店舗集客にも繋げられる。

O2Oの事例

以下では、O2Oの事例を紹介する。

無印良品

無印良品はO2O戦略として、「MUJI passport」のスマホアプリを展開している。本アプリの特徴は、MUJIマイルを貯めることでマイルステージが上がっていき、お得に買い物を行える点だ。

MUJIマイルは通常のポイントカードと同様、実店舗やネットストアでの買い物で貯まるが、下記のような方法でも付与される。

  • 意見投稿
  • チェックイン

無印良品では、顧客とのコミュニケーションを大切にしていく取り組みとして、「IDEA PARK」という仕組み導入している。「IDEA PARK」上では、無印良品の商品に対してリクエストを投稿でき、同時にMUJIマイルも貯まる。消費者はポイントを取得でき、一方で無印良品は消費者の声を聞けるため、双方にメリットがある施策だ。

また、店舗内もしくは店舗近くを通りかかった際、アプリからチェックイン処理を行うだけでも、MUJIマイルを貯められる。ポイント機能で来店を促進できることに加え、他の店舗では見られないO2O手法により、無印良品のサービスを楽しめる仕掛けを用意している。

ユニクロ

ユニクロ・GUのブランドを代表とするファーストリテイリングは、店舗・EC連動型のサービス構築を強化している。O2Oサービスの一つとして挙げられるのが、2021年10月から開始した「ORDER&PICK」だ。

「ORDER&PICK」とは、店舗の在庫状況を事前に確認し、オンラインストアで注文を行った後、購入した商品を店頭で受け取れるサービス。レジに並ばずピックアップでき、最短2時間で商品を受け取ることも可能だ。

ファーストリテイリングはもともと、ECサイトでの購入品を実店舗で受け取る「店舗受け取りサービス」を展開しており、利用率はEC売上の40%以上に達していた。さらに、「ORDER&PICK」の導入で、顧客はより早く商品を受け取り可能。新しい買い物体験の提供で、O2O型店舗の開発を進める。

ノジマ

家電量販店のノジマは折込チラシに加え、Googleディスプレイ広告と動画広告「YouTube TrueViewインストリーム広告」を販促手法として導入した。動画広告には、毎週配布している折込チラシの内容を反映し、最新情報を配信できるよう体制を強化。

来店コンバージョンを分析した結果、広告に接触した消費者に関して、来店に要した一人あたりの広告費は、目標値の33%を下回った。また、ディスプレイ広告と動画広告でリーチした消費者の重複率は約10%に抑えられ、Web広告を併用しても効率的にリーチできた。

現在オフライン集客を主とする店舗は、ノジマの事例を参考に、オンライン集客の並行運用も検討したい。

高島屋

老舗百貨店の高島屋はGoogle広告を出稿し、オンラインストアの売上向上に繋げていたものの、店舗集客に広告を活用していなかった。しかし、オンラインストアを訴求する広告で、来店コンバージョンを計測したところ、オンライン広告に接触した消費者の15.6%が来店していると判明。また、60代以上をメインターゲットとする店舗において、若年層がオンライン広告経由で来店していることも分かった。

オンライン広告の成果を可視化できたことで、店舗集客目的の出稿も開始。宣伝部が実施する全店舗向けのプロモーションに加え、各店舗ごとのプロモーションに関しても、オンライン広告の導入が進んだ。

データを可視化できるO2Oマーケティングにより、プロモーションの幅が広がった事例と言えるだろう。

O2Oのまとめ

日常的にスマホを利用する消費者が多い現代において、O2Oは店舗販促を考えるうえで欠かせないものになっている。一方、近年では、O2Oの概念をさらに広げたOMOという概念が主流になりつつある。

今後は、O2Oだけではなく、オンラインとオフラインを統合し、顧客体験をトタールで改善するOMOの考え方を併せ持って、店舗の集客・販促施策を考えていく必要性があるだろう。

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