ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い|メリット・デメリットと併せて解説

2022.10.05

2022.07.29

システム開発の手法であるウォーターフォール開発とアジャイル開発は、それぞれ特徴が違う。近年ITでは、スピード感のあるアジャイル開発がよく使われるようになっている。ウォーターフォール開発とアジャイル開発の開発手順の違いやメリットデメリット、さらに適した業務やそれぞれを行うときのポイントについても解説する。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い

アジャイル開発とウォーターフォール 開発違い

以前から使われているウォーターフォール開発と、最近普及が進んでいるアジャイル開発は開発の進め方に大きな違いがある。ウォーターフォール開発は、企画から設計、実装、テストの順にそれぞれの工程で技術者が担当して開発を進めていく。アジャイル開発は、機能ごとに分割してあるため必要な部分だけを素早く開発できる。

今までは最初にシステムやソフトウェアなど、作るものの全体像を決めて設計し、工程ごとに開発を進めていくウォーターフォール開発が主流であった。しかし近年はシステムやソフトウェアの開発も変化がとても早いため、最初に設計したシステムの開発途中でもシステムの仕様を変えたり必要な機能を付け加えたりと開発方法にも柔軟性が求められている。

そのため、アジャイル開発を行う企業が増えているのだ。

ウォーターフォール開発とは

従前から行われているウォーターフォール開発について詳しく解説する。ウォーターフォール開発は、1968年に作られたものである。NATO後援の国際会議で、ソフトウェア開発を職人のような作成方法ではなく工業製品を作成する方法とやり方に変えようという流れが起き、ウォーターフォール型開発が生まれた。

当時は、まだウォーターフォール開発の原型である。ウォーターフォール開発では、ひとつひとつの工程を完了させてから次の工程に進む。この開発の流れを、水が上流から下流へと流れ落ちる様子になぞらえて「ウォーターフォール」開発と呼ばれている。

ウォーターフォールのリリースまでの流れ

ウォーターフォール開発の企画からリリースまでの流れについて、具体的に見ていこう。システム開発の場合、企画の段階でシステムの全体像を定義する。クライアントの要望や仕様の変更希望などは開発に取りかかる前に聞いて対応する。

システムの設計書ができあがったら、次の工程で製造する。ウォーターフォール開発では、変更や要望などを製造の途中で取り入れることはできない。システムが完成したあとはテストを行い、問題がなければリリースする。

ウォーターフォール開発は、一つひとつの工程がすべて完了してから次の工程に進む。テストは各工程で行うのではなく、テスト段階でのみ行う。システムを利用できるのは、すべての工程が終わってからとなる。

ウォーターフォールのメリット

ウォーターフォール開発は、どんなものを作るのか最初にすべてを決定してから製造に入るため、ゴールが明確である。ゴールに到達するために、必要なエンジニアの数や作業時間、量などを把握できるので、スケジュール管理がしやすい。また見積もりした開発資金と完成したあとに実際にかかった費用に大きな差が出にくい点もメリットといえる。

案件を定義して企画するところからリリースまでにやるべきことが決定しているため、完成品の品質を維持できる。ウォーターフォール開発は、各工程に専門的な知識や技術を持った担当者がいる。そのため経験の浅いエンジニアも開発に加わりやすく、人材育成しやすい環境という点もメリットである。

ウォーターフォールのデメリット

ウォーターフォール開発は、システムやソフトウェアの品質を重視した手法である。そのため完成するまでの期間が長くかかるものが多い

製造する前の段階でクライアントの要求を実現するために実装する機能や性能を定めていくので、もしリリースまでの途中段階で仕様の見直しをすることになった場合、完成まで時間が大きく遅れるだけではなくコストも膨らんでしまう。

テストを経てリリースしてから初期の段階でトラブルや不具合が発生した場合も、開発をやり直す工程が多くなり、大幅な時間とコストがかかってしまう。また、ウォーターフォール開発では、工程ごとにドキュメントを作成する。完了するとドキュメントを用いて次の工程に繋ぐ。リリースしたあとも、ドキュメントはエビデンスとして残しておく必要がある。

ウォーターフォール開発は、時間をかけて完成度の高いシステムを作る方法なので、市場や状況の変化に合わせて常に新しい機能の追加が必要なシステム開発には適していない。

アジャイル開発とは

アジャイル開発は、2001年にウォーターフォール開発のデメリットを解消するために作られた手法である。当時、米国ユタ州に今後は軽量のソフトウェア開発を進める方がいいと考えている17名の技術者やプログラマーが集まり、システムやソフトウェアの開発手法について話し合った。

開発の重要な部分は統合するべきという議論があり、 ウォーターフォール開発のデメリットである不具合が見つかった際に戻る工数が多くなってしまう点を克服するべく、アジャイル開発が生まれたのである。アジャイル(Agile)は、素早くという意味である。

アジャイルのリリースまでの流れ

アジャイル開発ではチームを組んで、要件定義や設計、製造、テスト、リリースといった開発の工程をひとつずつ分けて小さな機能単位で反復させながら完成させていく。クライアントの要望や変更などは開発期間中ならいつでも取り入れられる。アジャイルの言葉通り、素早くニーズに合わせて機能を変更ブラッシュアップしながら完成させる方法である。

アジャイル開発にたずさわるそれぞれの技術者が、特定の専門分野を持たずにすべての開発・製造を行い、テストも各工程でそれぞれ行う。完成までの工程をひとつひとつ完了させていくウォーターフォール開発とは異なり、リリースまで軽量でスピーディーに行える。

アジャイルのメリット

アジャイル開発では、システムやソフトウェア開発を小さな単位で計画、設計し、製造してテストを繰り返しながら開発を進める。そのため、全工程が完了していなくても反復(イテレーション)ごとに機能をリリースできる。 スピード感のある開発や新機能の提供ができる点は、大きなメリットといえるだろう。

また計画の段階では詳細な仕様を決めずに、開発しながらクライアントと話し合いフィードバックをもらって、随時仕様の変更や機能の追加などが行える。顧客のニーズや時代を反映したシステム開発が可能だ。 不具合が発生した場合も、ウォーターフォール開発のように戻る工程が増えることなく、1つの反復の中を見直しするだけでいいので時間もコストも抑えられる。

アジャイルのデメリット

アジャイル開発のメリットは、柔軟性にある。しかしアジャイル開発では、最初の方針を定期的に確認して開発を進めていかないと方向性がブレてしまう場合がある。結果的にプロジェクトの完了までの時間が長引いたり、コストが増加したりする可能性がある。最悪の場合は、プロジェクトが中止になることも考えられる。

またアジャイル開発では、反復ごとの担当者がすべての開発を行う。方針の変更があればスケジュールや進捗を見直しする必要もある。そのため技術だけではなく高い管理能力のある技術者が求められる。人材育成を行うには、アジャイル開発はあまり適していないといえるだろう。

ウォーターフォールとアジャイルに適した開発業務

ウォーターフォール開発とアジャイル開発には、それぞれメリットデメリットがある。そのため、ウォーターフォール開発に適した業務とアジャイル開発に適した業務は異なる。両者のメリットをよく理解して、案件ごとに開発手法を選ぶといいだろう。

ウォーターフォール開発が向いている業務は、基幹のシステムの構築である。ウォーターフォール開発は、最初に実装する仕様や機能をすべて決定し開発を行う。質が高く完成度の高い開発を目指した手法なので、最初に細かい仕様を決めたら変更はまず起こらない基幹システムに適している。

アジャイル開発に適した開発は、顧客のニーズに適したシステムやソフトウェアなどを素早くリリースしたり、ブラッシュアップしたりする開発である。仕様の変化が早いものや定期的に機能の強化を行いたい、改善をサービスに反映させたいものにはアジャイル開発が最適だ。

ウォーターフォールとアジャイルが向いていない開発業務

ウォーターフォール開発とアジャイル開発に向いていない業務についても見ていこう。

システムやソフトウェアのリリース後に仕様変更が起きる可能性があるシステムは、ウォーターフォール開発には向いていない。仕様変更がたびたびある業務の場合、ウォーターフォール開発では戻りの工程が増えて、開発の期間が長期化してしまう。

またアジャイル開発に向いていない業務は、正確性や安全性を重視するシステムである。情報を正しく記録する必要がある業務などは、開発に取りかかる前に明確な方向性と仕様を決めておく方がいい。柔軟性のあるアジャイル開発よりもウォーターフォール開発が適しているといえるだろう。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発を行うときのポイント

ウォーターフォール開発とアジャイル開発にはそれぞれ相反するメリットデメリットがある。使用する業務内容によって、適した開発を行うといいだろう。また、両者のそれぞれのメリットを取り入れたハイブリッド開発の手法もある。

要件の定義や設計、総合テストなどの工程は、ウォーターフォール開発で行う。詳細な設計や製造、反復ごとの単体テストなどはアジャイル開発を使うなどすれば、それぞれのデメリットをカバーした開発が行える。

ウォーターフォールとアジャイル開発は目的に合わせて選択

アジャイル開発は、ウォーターフォール開発のデメリットを克服するために作られた手法で、近年はアジャイル開発を取り入れる場面も増えてきた。しかし、それぞれにメリットはある。ウォーターフォール開発はシステムやソフトウェアが完成したときの完成度が高く、アジャイル開発は適宜システムの変更や機能の追加などを行い顧客のニーズに合わせた開発ができる。

また、両者のメリットをどちらも取り入れたハイブリッド開発を行うこともできる。業務内容によってどちらの開発手法が適しているか見極め、最適な手法を選択するといいだろう。”

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