Eコマースとは?市場規模や種類、最新の傾向、メリット・デメリットなどを解説

2022.09.27

コロナ禍で多様化する消費者行動だが、1つにネットショッピングの利用者の増加が挙げられる。これを契機として、オンラインでの商品・サービス提供を検討する事業者も多いだろう。

その際に知っておきたいEコマースについて、本記事では市場規模や種類、新しい形態、メリット・デメリットまで網羅的に解説していく。

Eコマースとは?

Eコマースとは、「Electronic Commerce」の略称であり、日本語では「電子商取引」を意味する。同義の用語としては、EC・ネットショッピング・ネット通販などさまざま。消費者目線ではネット通販、ビジネス領域ではEコマースといった使われ方もするが、基本的には同義であることを理解しておきたい。

Eコマースと言えば、企業が消費者向けに商品販売を行う「BtoC-EC」のイメージも持たれやすい。しかし、近年では企業間の電子商取引である「BtoB-EC」や、個人間で取引する「CtoC-EC」も活発化。さらに、越境EC・ライブコマース・VRコマースといった新しいEコマース形態にも注目が集まっている。

Eコマースの市場規模

Eコマースの市場規模は、近年総じて拡大傾向にある。ここでは、経済産業省がまとめた「電子商取引に関する市場調査」を基に、ビジネス形態ごとの市場規模を解説していく。

BtoC-ECの市場規模

企業が消費者に対して販売を行うBtoC-ECにおける、分野別の市場規模としては下記の通り。

分野2019年2020年伸長率
物販系10兆515億円12兆2,333 億円21.71%
サービス系7兆1,672億円4兆5,832億円▲36.05%
デジタル系2兆1,422億円2兆4,614億円14.90%
全分野19兆3,609億円19兆2,779億円▲0.004%

大きく市場が拡大しているのが、物販系分野。2020年の伸長率は前年比21.71%となっているが、主な要因は新型コロナウイルス感染拡大に伴う、消費者の巣ごもり需要の増加である。

ここ数年、物販系分野の市場規模は2018年の9兆2,992億円、2019年の10兆515億円と、伸長率は1桁台後半だった。同傾向で推移すると、2020年は最大でも11兆円であったが、巣ごもり消費により、12兆2,333億円まで底上げされた。

全商取引のうち、EC市場で取引される割合のEC化率も、2019年の6.76%に対して2020年は8.08%まで伸長。近年は0.5%程度の伸長率だったEC化率も、2019年から2020年にかけては1.32%の伸びを見せ、多くの事業者がEC化を進める形となった。

物販系分野と同様、デジタル系分野も14.90%伸長したが、衰退したのがサービス系分野で▲36.05%の伸長率。最も市場規模の大きい旅行サービス業が、新型コロナウイルスの感染拡大により、約6割減となったことが影響した。

飲食サービスやチケット販売も落ち込みを見せたが、フードデリバリーサービスの市場規模は3,487億円と拡大。巣ごもり需要にも対応できる、サービス系分野の業態に注目が集まっている。

物販系分野の伸長は著しいが、3分野合計のBtoC-ECの市場規模としては、対前年比で830億円の減少。サービス系分野の衰退分で、物販系分野の上昇分は相殺される結果となった。

BtoB-ECの市場規模

企業が企業に対して販売を行うBtoB-ECの市場規模は下記の通り。

2018年2019年2020年
EC市場規模344兆2,300億円352兆9,620億円334兆9,106億円
EC化率30.2%31.7%33.5%

2020年のEC化率は33.5%で前年比1.8%増となったが、市場規模は334兆9,106億円で同比5.1%減となった。財務省が公表した法人企業統計によると、2020年の食料品製造業の総売上高は前年比6.7%減、運輸業は同比7.4%減、卸売業は同比10.3%減という結果に。

BtoB-ECの領域では、多くの業種で市場規模が減少したが、建設・不動産業で前年比7.3%増、情報通信業で同比4.0%増と拡大した業種も存在する。

CtoC-ECの市場規模

消費者が消費者に対して販売を行うCtoC-ECの市場規模は下記の通り。

2019年2020年伸び率
EC市場規模1兆7,407億円1兆9,586億円12.5%

調査対象となったのは、フリマアプリおよびネットオークション。CtoC-EC市場の拡大に大きく貢献したのが、フリマアプリ市場だ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により、家の中を整理する機会ができ、リユース関連サービスを初めて利用する人が増加した。

また、旅行・レジャーといった娯楽が制限され、日々の楽しみが減ってしまったことも1つの要因。普段使用するものをブランド品に買い替えるなど、より良いものを購入して生活を充実させるという動きも見られたようだ。

越境ECの市場規模

国際的な電子商取引である越境ECの市場規模は下記の通り。

消費国/販売国日本米国中国計(購買額)
日本3,076億円(2,863億円)340億円(312億円)3,416億円(3,175億円)
米国9,727億円
(9,034億円)
7,382億円(6,535億円)1兆7,108億円(1兆5,570億円)
中国1兆9,499億円(1兆6,558億円)2兆3,119億円(2兆94億円)4兆2,617億円(3兆6,652億円)

※()は前年市場規模

自国に取り扱いのない商品を購入できる、自国よりも安価に商品を入手できるといった消費者ニーズに対応する事業者が増加したことや、物流レベルの向上も、越境EC市場の拡大に一役買っているようだ。

2019年の世界の越境EC市場規模は推計7,800億USドルとなっているが、2026年には4兆8,200USドルまで伸長すると予測されている。国内だけでなく、海外への販路拡大も重要と言えるだろう。

Eコマースの種類

Eコマースの種類は大別すると、自社サイト型とショッピングモール型の2種類が存在する。それぞれのサイトの特徴を見ていこう。

自社サイト型

独自ドメインを取得し、自社でECサイトを運営していくタイプが、自社サイト型だ。自社のコンセプトに沿ってECサイトを設計しやすく、ブランドイメージの形成にもつなげられる。

自社サイト型のECサイトと言っても、ゼロからコーディングを行い、構築するわけではなく、昨今ではECサイト構築サービスやプラットフォームも充実している。代表的な構築方法としては、下記の通り。

  • ASP
  • ECパッケージ
  • オープンソース
  • フルスクラッチ

ASP

クラウド上でECサイトの構築サービスを提供する形態が、ASPだ。ASPの大きな特徴としては、価格の安さと簡単にECサイトを構築できる点が挙げられる。

月額数千円でECサイトを構築可能なサービスも存在し、個人であっても開設のハードルは非常に低い。後述のパッケージ・オープンソース・フルスクラッチでは、数百万以上の費用が発生するため、初めてECサイトを展開するという事業者におすすめできる。

クラウド上のシステムを利用するので、サーバー調達・ソフトウェアインストールといった準備は不要。また、稼働後のシステムアップデートなども、サービス提供事業者が行う。保守作業の負担を軽減し、コア事業に専念したい場合にも最適な形態と言えるだろう。

ECパッケージ

ECサイトの運営に必要な機能を集約し、製品として提供される形態が、ECパッケージだ。独自性およびカスタマイズ性の高さが、多く選ばれる理由の1つ。自社の方針に沿ってオムニチャネルを実現したり、基幹システムと連携して業務負担を軽減するといったことも、機能を追加すれば可能となる。

ただし、ECパッケージは自社サーバーにインストールする必要がある。ASPに比べてコストが高い、導入期間が長いといった点は留意しておきたい。

オープンソース

EC-CUBE・Magento・WordPressなど、外部公開されているソースコードを利用してECサイトを構築するのが、オープンソースだ。専門的なスキルや知識は必要となるが、無料で利用できるオープンソースが多いのは大きな魅力。

エンジニアのリソースを十分に確保できる事業者は、初期費用を抑えられるオープンソースを検討してみて欲しい。

フルスクラッチ

ゼロからECサイトを作り上げる手法が、フルスクラッチだ。制作には多額のコスト・期間を要し、専門知識も必要になるが、独自のECサイトを構築できるのが最大のメリット。

前述のASP・パッケージ・オープンソースでは実装できないECサイトを作り上げたい場合に、おすすめの手法と言える。

ショッピングモール型

Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・PayPayモールといったECサイトに構築するタイプが、ショッピングモール型だ。ショッピングモール型でECサイトを構築するメリットとしては、集客力の高さが挙げられる。

前述の自社サイト型の場合、SEO・SNS・Web広告などを利用し、集客を図るのが基本。それに対してショッピングモール型は、すでにユーザーの多いプラットフォームを利用するため、集客の負担を軽減可能。また、Amazon・楽天市場など信頼性の高いプラットフォームに出品・出店できるので、自社サイト型に比べて、セキュリティ面が不安な消費者の集客も図れる。

ショッピングモール型の種類としては、下記が挙げられる。

  • テナント型
  • マーケットプレイス型

テナント型

プラットフォーム上に、事業者が店舗を「出店」する形態を取るのがテナント型で、代表的なサービスとしては楽天市場・Yahoo!ショッピングが挙げられる。現実のテナントと同様、事業者は出店料を支払い、商品登録・管理・受注・配送などを行う。

各ショップが専用のサイトを利用できるのが大きな特徴で、ある程度デザインの型は決まっているものの、比較的自由度の高いECサイトを構築可能となっている。

マーケットプレイス型

プラットフォーム上に店舗を「出店」するテナント型に対し、商品を「出品」する形態を取るのがマーケットプレイス型だ。代表的なサービスとしては、Amazonが挙げられる。

商品の出品が比較的簡単で、出品者アカウントを作成していれば、個人であっても簡単に商品を売り出せる。ただし、テナント型に比べてサイトデザインの自由度が低いため、ブランディングにつなげにくい点は要注意と言える。

Eコマースの新しい形態

近年のEコマース市場の拡大に伴い、さまざまな販売形態が登場している。ここでは、新しいEコマースの形態を紹介していく。

越境EC

日本国内から海外に向けて、ネットショップを展開するのが越境ECだ。品質・安全性がともに高い日本製品は、海外でも人気が非常に高いが、現地で店舗を出店すると高額なコストが発生する。

その点、越境ECを利用すれば、コスト削減かつ事業が失敗した場合のリスク低減にもつながる。また、商圏の拡大を図れるのはもちろんのこと、日本から帰国したインバウンド客のリピート化を期待できるといったメリットも。

越境ECは、現地のECモールへの出店や、越境ECサイトパッケージの利用などで構築可能。日本と同様、闇雲に出店しても利益向上は見込めないので、現地の消費トレンドやターゲット選定など、市場調査を念入りに行った上で出店することが重要だ。

ライブコマース

ライブコマースとは、商品紹介に関するライブ動画を配信し、消費者に購買を促す新しい販売形態である。リアルタイムで動画配信を行うため、コメント機能で視聴者の質問に答えることが可能。ECサイト上のテキストや写真だけではわからない情報も、視聴者は質問を通じて知れるので、購買意欲の向上につながると考えられる。

ライブコマースのサービスが日本で登場したのは2018年だが、普及率としては未だ低く、大きく成功を収めた事業者は少ない。しかし、InstagramやFacebookといった主要SNSにもライブ機能は追加され、ライブ配信自体は世の中に浸透しつつある。

また、消費者とコミュニケーションを取りづらいというEコマースのデメリットを解消できる点からも、ライブコマースは今後注目の販売形態と言えるだろう。

VRコマース

VRコマースとは、仮想空間にバーチャルな店舗を出店することで、現実世界と同じような購買体験を実現させる販売形態である。人間の五感全てにアプローチをかけられるので、消費者はEコマースにはないショッピングの楽しさを感じながらも、リアルに近い形で商品を確認し、購買行動を行える。

また、VRコマースの利用にVRゴーグルは不要。まだまだ認知度が低いため、サービスの周知は必要であるものの、消費者の来店ハードルは低い販売形態となっている。

CtoC-EC

個人間取引を意味するのが、CtoC-ECだ。長年ネットオークションが主流であったCtoC-ECだが、最近ではメルカリ・ラクマ・PayPayフリマといったフリマアプリが人気を集めている。

購入者側としては、BtoC-ECを利用するよりトラブルに巻き込まれやすいリスクはあるものの、安価に商品を入手可能。出品者側も、スマホで手軽に不用品を売り出し、お金に換えられるのが大きなメリットである。

コロナ禍も影響し、消費者のマネタイズ意識が高まる昨今において、CtoC-ECサービスは非常に重要なプラットフォームとなっている。

Eコマースのメリット・デメリット

ここでは、事業者がEコマースを開設するメリット・デメリットを解説していく。

Eコマースのメリット

実店舗では立地条件により、商品・サービスをアプローチ可能な消費者に限界があるが、Eコマースであれば、日本全国・世界に向けて販路を拡大できる。

当然、商品の仕入れ・保管・梱包・配送・管理といったEC物流の業務は増えるため、自社のリソース状況の把握は必須。しかし、店舗を全国に展開するより、はるかに効率的な販路の拡大手法と言える。

実店舗の営業時間に関係なく、消費者がECサイトから商品を購入できるのもメリット。自身のタイミングでサイト周回・カート入れ・購入を行えるので、機会損失の防止にもつながる。

Eコマースのデメリット

Eコマースの大きなデメリットとしては、価格競争が激化する点が挙げられる。参入しやすくなったEコマースだが、同時に競合他社も増加しているのが実情。

特に、ショッピングモール型のECサイトは集客を図りやすい一方で、同様の商品が同一ページに並び、安さ重視で商品を購入されるケースも多い。結果的に、事業者間の値引き合戦に陥ってしまい、利益を確保できないという事態も。自社のブランド力強化や、顧客満足度を高めて店舗評価を上げるといった施策も必要になるだろう。

また、実店舗のように、商品の実物を見れない点もEコマースのデメリット。導入ハードルの高さには注意したいが、ライブコマースやVRコマースを検討し、Eコマースのデメリットを補うのも1つと考えられる。

Eコマースのまとめ

スマホの普及により大きく拡大したEコマース市場だが、2020年以降は新型コロナウイルスが契機となり、一層注目が集まった。特に、物販系分野のEコマース市場は伸び率は高く、実店舗を経営する事業者も無視できない規模となっている。

開設自体難しいと捉えられがちなEコマースだが、個人でも簡単に始められるほど、安価でユーザビリティの優れたサービスは多い。Eコマースで実店舗以外の販路も確保し、売上向上につなげてみて欲しい。

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