アバターとは?意味や活用・体験できるサービスの種類や事例を解説
2022.09.29
近年のIT技術の進歩によって、「アバター」がさまざまなシーンで活用されるようになった。アバターは仮想空間でのゲームやコミュニケーションのツールとしてだけでなく、ビジネスの分野でも導入されている。この記事では、アバターの意味や概要、アバターを活用または体験できる業務やサービスの種類、アバターを取り入れた企業の事例を解説する。
アバターとは
アバターの概要やおもなアバターの種類について解説する。
アバターの概要
アバターとは英語”avatar”に由来する「分身」や「化身」を指す言葉だ。語源はサンスクリット語で「神の化身」という意味の「avataara(アヴァターラ)」から来ている。アバターはオンライン上で分身として活動するための「2Dアバター」「3Dアバター」と、現実空間で分身として活動するための「ロボット型アバター」がある。
2Dまたは3Dアバターとは
ITの分野においては、アバターとはインターネット上の仮想空間にてユーザーの分身として作成されるキャラクターを指す。髪型や服装、肌や目の色、性別、身長などこまかく設定ができる。2次元の画像で構成された2Dアバターと、立体で表現された3Dアバターがある。一般的にアバターというと、こちらを指す場合が多い。
ロボット型アバターとは
AIやセンシング、ロボティクスなどの技術を組み合わせることで、ユーザーの分身として遠隔から操作できる現実空間でのロボット型アバターも誕生している。視覚的に動作を伝えるヘッドマウントディスプレー、手先に物の感触を伝えるグローブ、人の動きや感触を認識する動作認識センサーなどを装着した状態で、分身であるロボットを遠隔操作して活用する。
ロボットを介して自分が現地にいるように作業や業務、コミュニケーションができるのが特徴。
アバターが注目されるようになった背景
アバターが注目、活用されるようになった背景を解説する。
インターネット上でのコミュニケーションの拡大
アバターはインターネット上でのコミュニケーションの拡大によって注目されるようになった。インターネットを介せば、時間や距離を気にせず国内はもちろん海外の人ともコミュニケーションが取れる。アバターを活用することで、自分の素性を明かさないままやり取りも可能だ。
労働力不足への対応
アバターはゲームやメタバースなどの仮想空間でのコミュニケーションや活動のほか、ビジネスでも活用されるようになった。背景には、少子高齢化による労働力不足がある。仮想空間のアバターやロボット型アバターを活用することで、実際に現場へ足を運ばなくてもアバターを介して仕事ができるようになる。
ロボット型アバターを介して接客や製造などの各業務を行うこともあれば、危険を伴う作業をロボット型アバターによって行うことも可能だ。
多様性を認める社会の実現
ロボット型アバターを活用することで、現実世界でもアバターを介しての活動が可能となった。たとえば身体に障害があることなどで、外出が困難な人がロボット型アバターを遠隔操作し、就業する取り組みや、また、病気などの理由で通学が困難な児童や学生が、ロボット型アバターを介して通学し、教育を受ける機会を設ける取り組みが行われている。
育児や介護、病気などで就業ができない従業員がロボット型アバターで自宅にいながら就業する、テレワークのツールがWeb会議システムだけでなくロボット型アバターを使うなども将来的に予測されている。
新しい生活様式への対応
アバターはインターネット上、またはロボットを介することで非対面非接触でのコミュニケーションが実現する。新型コロナウイルス感染症に対する新しい生活様式にも対応できるツールとしても注目されている。
アバターを体験できるサービスの種類
おもにインターネット上での仮想空間でアバターを体験できるサービスを解説する。
ゲーム
ゲームの中で自分の分身として活動するキャラクターを作成するために、アバターが活用されている。さまざまな設定の世界で冒険をするRPGをはじめ、ゲーム内での他のキャラクターとの交流や農耕、釣り、家づくりなどの暮らしにおける活動を楽しむコミュニケーションゲーム、アバター作りそのものを楽しめるアバターゲームなどが代表的だ。
特に数千人単位で同時にオンライン上で攻略を進めていくMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイングゲーム)は多くのユーザーとコミュニケーションを取ることが必須となるため、アバターが多く活用されている。
SNS
アバターを取り入れているSNSサービスも多くある。自分のアイコンとしてアバターを制作できるものもあれば、自分のスペースを他のユーザーに公開することでコミュニケーションを取るタイプのSNSは、動くタイプの3Dのアバターが採用されていることが多い。
メタバース
メタバースは、オンライン上に存在する3Dの仮想空間を指す。ゲームやSNSとの違いは、メタバース内での経済活動が可能となったことで、より現実空間と近い体験ができることだ。
メタバースでは自分のアバターを介してさまざまな活動ができる。他のユーザーとコミュニケーションを取るのはもちろん、ゲームをする、自分で作ったゲームを公開する、メタバース内でイベントに参加する、アルバイトをする、デジタル商品の取引をする、土地の売り買いや投資をする、といったことも可能だ。
ロボット型アバターによる疑似体験
ロボット型アバターを介して、まるでその場所にいるような疑似体験ができるサービスも開発が進んでいる。たとえばユーザーは自宅で触覚を得られるグローブや、動作を視覚で認識できるヘッドセットなどを装着した状態で、釣り場にいるロボットを遠隔操作をする。すると自宅に居ながらまるで釣りをしているような疑似体験ができるサービスなどが検討されている。
ビジネスで活用されるアバターの種類
ビジネスシーンでもアバターは多く活用されるようになった。ビジネスで活用されるおもなアバターの種類を解説する。
仮想オフィスやバーチャル会議室
インターネット上で構築された仮想オフィスやバーチャル会議室にて、アバターを介して業務や会議を行える。実際のオフィスに足を運ばなくても自宅で業務ができるため、テレワークの新しい手法としても注目されている。また、生身の人間ではなくアバターを介しているため、実際の人物よりも気軽にコミュニケーションが取れるようになる、というメリットがある。
バーチャル会議室は、Web会議システムやテレビ電話よりもよりリアルに近い状態で会議ができるため、ディスカッションがしやすくイノベーションも生まれやすいといったメリットがある。
現在はおもにインターネット上の仮想オフィスやバーチャル会議室で2Dや3Dのアバターを介した導入事例がほとんどだが、ロボット型アバターの普及が進めば、自宅で自分のアバターとしてロボットを遠隔操作して業務にあたる、ということも可能となるだろう。
バーチャルトレーニングや研修
新入社員へのOJTやロールプレイング、トレーニング、研修などの社内教育でもアバターが活用されている。研修場所などの確保が不要、遠隔地の社員も参加しやすいなどコスト面でのメリットも得られる。
店舗でのアバター接客
インターネット上の仮想空間として店舗を構築し、接客にアバターを活用する事例も多い。既存の企業がバーチャル店舗を出店し、従業員がアバターで接客をする。または既存の店舗でロボット型アバターを介して従業員が接客をすることもできる。
バーチャルイベントの開催
メタバースなどでバーチャルイベントを開催する企業も多くなった。バーチャルイベントへの参加や運営も、アバターを通じて実現できる。
企業や団体のアバター導入、活用事例
実際にアバターを業務やサービスへ導入した企業の事例を解説する。
三越伊勢丹「REV WORLDS」
三越伊勢丹がメタバースのプラットフォームとして「REV WORLDS」をオープンした。新宿伊勢丹をはじめとした、実店舗を忠実に再現した各バーチャル店舗でのショッピングができる。ほかにもアバターのアパレル商品(デジタル商品)が購入できるショップでの買い物や、東京ドームなどの著名なスポットでの散策やイベント参加なども可能だ。
全日空(ANA)「アバター旅行」
旅行先にあるロボット型アバター「newme」にユーザーの意識を伝送し、現地を歩き回る新世代型の旅行パッケージ「アバター旅行」を公開している。全日空によって開発された、世界初の瞬間移動プラットフォーム「avatarin(アバターイン)」からアクセスすると、日本各地にあるnewmeに意思伝達ができ、動き回ったり、会話をしたりが可能だ。専属のガイドが案内するため、スポットで気になったことをその場で聞くこともできる。
オリィ研究所、慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科(KMD)「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」
オリィ研究所は、難病や重度障害などを理由に外出困難な人々が分身ロボット「OriHime、OriHime-D」を遠隔操作し、カフェサービスを提供する「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」をオープンしている。オープンから1年たち、より複雑な接客や配膳などの遠隔操作ができるようになったことを受け、慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科と共同で、研究開発プロジェクトを開始。「ひとりが複数の分身ロボットを操作する」「テーブルで接客しながら配膳する」などを可能とする「複数アバター分身実験」の公開実験およびイベントを開催した。
アバターは多くの体験を可能とする技術
アバターの概要や体験できるサービス、ビジネスでの活用事例、企業や団体のアバター導入や活用事例を解説した。アバターはインターネット上の仮想空間にてユーザーの分身として活動するだけでなく、ロボット型の分身として遠隔操作ができる技術段階まで進歩している。今後アバターの技術がより進むことで、日常生活はもちろん産業面でも多くのことが実現可能となるだろう。