シンギュラリティの意味とは?到来はいつ?根拠や世界はどうなるかなど紹介

2023.01.04

2022.09.30

昨今、「シンギュラリティ」という単語を耳にする機会が増えてきた。シンギュラリティとはAIの知能が人間を超えることを指し、シンギュラリティの到来により我々の生活は激変するといわれている。

この記事ではシンギュラリティの意味をわかりやすく解説し、AIのこれまでの歩みとシンギュラリティが起こるとされる根拠や、いつ起こるのか、シンギュラリティによって世界がどうなるのかなど、事例も交えつつ、来るべきAI時代にビジネスパーソンはどう備えるべきかを考察する。

シンギュラリティに至るAIの歩み

人間の脳に近い機能をもつコンピュータープログラムが人工知能( Artificial Intelligence)と定義されたのは、1956年に米ダートマス大学で開催された学術会議(通称:ダートマス会議)においてである。その後1960年代に第一次AIブームがおこり、人工知能にゲームなどをさせていた。

1980年代には第二次AIブームが到来し、コンピューターに知識を与えて問題を解決させることが可能となった。

2000年代に入ると第三次AIブームが始まり、2010年以降は人工知能が自ら学習して成長する「ディープラーニング」によって、AIの可能性は大きく広がりをみせている。

シンギュラリティの意味と定義

昨今「シンギュラリティ」という言葉は、人工知能関連のニュースやトピックにおいて話題となる機会が増えている。

では、シンギュラリティとは具体的にどのような事象をさすのか?テクノロジーの観点から研究者の唱える説をもとに、その意味と定義、いつ到来すると言われているかなどを紹介していく。

シンギュラリティとは

シンギュラリティとは英語で「特異点」を意味する言葉である。本来は数学や物理の領域で用いられることの多い単語だったが、近年では人工知能やテクノロジーの分野においても使用される機会が増えた。

テクノロジーにおけるシンギュラリティとは、人工知能(AI)が人間の知能を超える技術的な特異点を意味する。シンギュラリティの到来によって、世界は大きく変化するといわれている。

ヴァーナー・ヴィンジの説

「シンギュラリティ」という言葉を広めたとして有名なのが、アメリカの数学者・SF作家のヴァーナー・ヴィンジである。ヴァーナー・ヴィンジは1993年に発表したエッセイ「The Coming Technological Singularity: How to Survive in the Post-Human Era(来たるべき技術的特異点:ポスト人類時代をどのように生き延びるか)」において、1993年から30年以内にはシンギュラリティが到来すると説いている。

ヴァーナー・ヴィンジの説はやや悲観的な内容で、人類には理解できない領域にまでAIが進化し、人間の時代の終焉までも予想されている。

レイ・カーツワイルの説

アメリカの未来学者レイ・カーツワイルも、シンギュラリティを提唱している研究者のひとりである。カーツワイル博士は、AIの進化によって新しい複数の技術が開発され続けると、次世代技術の革新が起こるまでの間隔は短縮されていくと主張

彼の著書「The Singularity is Near(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)」によると、AIがこのまま進化を続けた結果として、2045年頃シンギュラリティに到達すると予測されている。

この2045年のシンギュラリティ到達によってもたらされるであろう社会変化は「2045年問題」と呼ばれ、さまざまな未来予測がなされている。

プレ・シンギュラリティについて

シンギュラリティが到来する前段階で「プレ・シンギュラリティ(前特異点)」が起こるとする説もある。

人工知能研究者の齊藤元章氏によれば、プレ・シンギュラリティは2030年頃に起こるといわれており、進化したAI技術によって多くの社会問題が解決に向かうと予想されている。

シンギュラリティの到来から予測される未来、世界はどうなる?

シンギュラリティが到来すれば、人間の能力を超越したAIによってさまざまな技術革新が起こるといわれている。

また、それにともなう社会構造の変化も予測できる。ここからは、シンギュラリティの影響が私たちの未来にどのような影響を与えるのかを検証してみたい。

職業の置換と労働からの解放

シンギュラリティが到来すると、人間の仕事の多くがAIで代替できるようになる。単純作業や事務仕事などはAIの得意分野なので、あえて人間がやる必要はなくなると予測される。

そのほかにもレジ係や審判員、簡単な接客業などの職業もAIに置換されることが予想できる。逆に医師や教師、アーティストなど人間による判断が必要な職業やクリエイティブな仕事は残るといわれている。

ベーシックインカムの導入

シンギュラリティ到来により、AIが人間の仕事の多くを代行するようになると、我々の雇用機会は大幅に減少することになる。その場合には、政府による「ベーシックインカム」の導入が必要との考え方がある

ベーシックインカムとは生活に必要な一定の金額が政府によって支給される制度のことで、賃金格差や貧困問題を解決できるといわれている。

ベーシックインカムの導入にはさまざまな課題を克服する必要があり実現は困難ともいわれているが、AIによって人間の仕事がなくなった世界ではベーシックインカムの導入が現実味を帯びてくる。

人体改造が可能に

シンギュラリティの影響は多方面にわたって我々の生活を変化させ、医療技術をも大きく発展させると予測されている。

AIによって人間の脳や臓器などの解明が進めば、これまでは代替不可能だった体の部位をコンピューター制御された人工のものに置き換えることも可能となる

その結果として、人類は身体の不調な部位を人工物で改良したり、それらを定期的に交換したりすることで、老化を防ぎ不死さえも手に入れる可能性があるといわれている。

シンギュラリティ到来の根拠とは

レイ・カーツワイル博士の説では、人工知能の技術的特異点であるシンギュラリティは、2045年頃に到来すると予測されている

ここからは、2045年シンギュラリティ到来説はどのような根拠にもとづいているのかを、技術進歩の法則から考察してみたい。また、シンギュラリティの到来を否定する意見もあわせて紹介する。

ムーアの法則

米インテル社を創業したゴードン・ムーアによって1965年に提唱された指標が「ムーアの法則」である。ムーアの法則とは、半導体集積率が18か月で2倍になり、これによりコンピューターの性能が向上していくことを示している。

現在のIT技術は、ムーアの法則が基礎となって発展してきたといえる。そしてコンピューターの発展の先には、AIの進化とシンギュラリティの到来があると考えられる。

収穫加速の法則

前述のムーアの法則の思考範囲を広げたものが「収穫加速の法則」である。収穫加速の法則とは、技術の進歩による性能向上は直線的なものではなく指数関数的に向上すると説いたものである。

収穫加速の法則においては新しい技術の発明があり、それが複数集まれば次の段階の技術革新へのスピードが加速度的に上昇していくとされる。レイ・カーツワイルは、収穫加速の法則をもとにシンギュラリティの到来を予見している。

シンギュラリティ否定派の意見、シンギュラリティは来ない?

シンギュラリティの到来を予測する説があるなかで、シンギュラリティに対する否定的な意見も存在する。コンピューター関連の科学者の中では、シンギュラリティはすぐには起こらないと唱える動きもある。

この説では人工知能が人間ではないことに着眼し、AIは人間と同じように思考することはなく、独立した目標や欲求を持たないとの立場からシンギュラリティが否定されている。

また、哲学の領域においてもシンギュラリティを否定する意見がある。こちらは知性が感覚的な部分であることに着目し、人工知能と知性は異なるものであるとの捉え方が、シンギュラリティ否定の根拠となっている。

シンギュラリティを予見させる世界の事例

2022年現在の世界では、いくつかの分野において、すでにシンギュラリティが起こりつつある。まだ限られた分野内での出来事に過ぎないが、今後は新たなケースが増えていくことも予測できる。現状ですでに起こっていると考えられるシンギュラリティの事例を以下に紹介する。

AIがボードゲームの王者を破る

1997年、IBM社のスーパーコンピューター「Deep Blue(ディープブルー)」が、チェスの世界王者のガルリ・カスパロフと対戦し、Deep Blueが勝利した。

カスパロフ氏は15年間世界王者として君臨し続け、最強と謳われていた。対するDeep Blueの計算スピードは当時世界最速とされ、1秒間に2億通りの差し手の予測が可能。この対戦の決着はわずか19手、時間にして1時間程度であった。

さらに、囲碁の世界でもAIが人間を凌駕した。囲碁はそのルールの複雑さから、人工知能が人間に勝利するのは難しいと言われていた。

しかし、イギリスのDeepMind社が開発した囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」が、2017年に中国でトップレベルの棋士と対局し、棋士に勝利している。

AIがクイズのチャンピオンを負かす

2011年、米IBM社開発のスーパーコンピューター「Watson(ワトソン)」がテレビのクイズ番組に出演。人間のクイズチャンピオンと対戦して勝利した。

ワトソンは書籍にして100万冊以上の情報を蓄積保存し、人の話す自然な言語を理解できる。実際の対戦では珍回答もあったが、総合的には人間の対戦相手を上回り、その性能の高さを見せつける結果となった。

日本でAIが人間を超えた事例

日本でもシンギュラリティの到来を予見させる出来事が起こっている。プログラマーによって将棋AIとして開発された「ponanza(ポナンザ)」は、2013年現役のプロ棋士と対局し勝利した。

敵から奪った駒が使え、敵陣に侵入すると駒の性質を変化できる将棋は複雑な思考を必要とし、AIが実際に人間に勝つのは難しいと考えられてきた。

しかしディープラーニングや機械学習の成果によりponanzaの人工知能は飛躍的に成長し、プロを破るまでの実力をつけるに至ったのである。

シンギュラリティまとめ

ここまでシンギュラリティの意味や定義、予測される未来について解説してきた。昨今、人工知能技術の進化スピードにはめざましいものがあり、AIが搭載されたさまざまな機器やシステムが次々に誕生している。ビジネスの領域においてもAIの活用が進んでおり、多くの業界で新たなサービスの導入が進んでいる。

人工知能の活用は、これからのビジネスにおいて必要不可欠といえる。今後起こるであろうシンギュラリティを見据えてビジネスモデルを構築し、AIと共に歩むことが新時代を生き抜く指針となるだろう。”

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