商圏とは?意味や調査方法、分析で得られるメリットを解説

2023.01.04

2022.09.30

商品やサービスを提供する業界で、よく使われる言葉に「商圏」がある。

商圏とは自社の店舗を利用する可能性の高い顧客が居住する地理的な範囲のこと。商圏を理解して正しく調査・分析できるかが、店舗経営の明暗をわける重要なカギと言われている。

ここでは、商圏の意味や種類、商圏分析を行ううえで必要なデータと調査方法、調査・分析で得られるメリットについて解説する。

商圏とは?意味や概要を解説

商品やサービスを提供する企業にとって、新規店舗の出店時や既存店舗の運営を軌道に乗せるためには、正しい商圏の調査・分析が必要になってくる。

商圏はエリアマーケティングでは重要な概念であり、自社の商圏をきちんと把握することが、ビジネスの成否を決めるといっても過言ではない。エリア内の競合に勝ち勝つうえで知っておくべき商圏の意味や概念、距離で分類できる商圏の種類について紹介する。

商圏とは?エリアマーケティングとの関係

商圏とは、自社の店舗に来店が見込める顧客が住むエリア、集客ができる範囲を意味する。エリアマーケティングにおける商圏の把握は、店舗ビジネスの基本でもあるため、自店舗の商圏を正確に見定めることが重要になってくる。

商圏とエリアマーケティングは密接に繋がっている。商圏を正しく設定することで、特定地域で無理なく出店地を選び、そのエリアに特化した効果的な地域戦略が打ち出せるようになるだろう。

商圏範囲の目安

商圏の範囲は出店する地域の特性によって変わってくるが、都心に近いほど狭くなり、郊外や地方では広くなる傾向にある。店舗の種類ごとの一般的な商圏範囲の目安を見ていこう。

・コンビニエンスストア:徒歩で半径500m程度
・飲食店(中華料理店や定食屋など):徒歩で半径500m程度
・ファミリーレストラン:車で半径1~3km程度
・大型小売店(総合スーパー):車で10~20 km程度
・ドラッグストア:車で2~5km程度

距離で分類される商圏の種類

商圏には、店舗から近い距離順に、一次商圏、二次商圏、三次商圏と大きく分けて3種類の範囲がある。

店舗出店を検討する地域の人口動態や特性などについて調べる商圏分析では、調査・分析を行う際に、目安となるいくつかの設定商圏があり、拠点から半径距離で指定された一~三次商圏のことを「距離商圏」と呼び、重要な指標のひとつとされている。

一次商圏は、店舗から半径1km程度の距離、徒歩で10~15分程度かかる範囲の商圏を指す。ほぼ毎日利用することもある食料品スーパーなどの出店・移転時に重要視される。

二次商圏は、店舗から半径3~10kmの距離、自転車や車で10~15分程度の範囲を指し、週1~2回の来店を目安としたドラッグストアなど、生活用品を扱う業種で設定される場合が多い。

三次商圏は、車や交通機関で30~40分程度でアクセスできる範囲のことをいい、購入や買い替えが多くなく、1~3か月に1回ほどの利用が多い衣料品店や家電量販店で用いられる。

商圏分析で必要なデータと調査方法

商圏分析には、統計データをもとにした分析とフィールドワークで得たデータをもとに行う調査・分析がある。

リサーチを行う際には、自社で収集したデータのほかに、国税調査や市場調査で集められたデータも、積極的に活用していくことが大切だ。

集めたデータをうまく活用するためにも、データの比較がしやすく、視覚的に把握できるツールやレポート、グラフなどを利用するとよいだろう。

人口動態や世帯数の分析

商圏分析では、対象地域の人口動態を調査することで、店舗周辺に住む層の特徴が把握できる

人口の流出入や結婚、離婚、出生といった人口動態の統計調査をもとに、年齢別人口や性別別人口、世帯数、世帯人数、昼夜間比率などが割り出せれば、自社が提供する商品やサービスとその地域に移住する顧客のニーズがマッチしているかが判断できるだろう。

また、今後の人口予測もできるようになるため、現在だけではなく、未来を予測したマーケティング戦略も可能となる。

顧客のライフスタイルを調査・分析

その地域に住む顧客の世帯年収や移動手段、消費動向、家族構成、職業といったライフスタイルを調査・分析すれば、消費者の特性や行動様式、価値観に見合った消費者の潜在ニーズが把握できるようになる。対象地域の顧客が求めていることが予測できると、核心をついた商品開発やニーズにマッチした店舗の品揃えがしやすくなるだろう。

競合店舗の品揃えやサービスなど状況を把握

競合店舗の状況により、自店の売上が左右されるため、出店予定地周辺にある店舗の調査を行う必要がある。

競合店舗の商品やサービスのラインナップ、規模、立地、客層、時間帯など現状を調査・分析して、その地域に住む顧客がどういった基準で店を選ぶのかが把握できる。

また、競合店の状況を調べることで、ライバルに対抗しうる商品やサービス、価格帯、営業時間などがわかってくるので、効果的な対抗策が打ち出せるだろう。

フィールドワークで商圏バリアや人流調査

統計データや店舗を中心とした円で示される商圏範囲だけでは、来店を妨げる可能性のある自然や人口の造形物、道路状況といった商圏バリアの有無、実際の人の動きや流れはつかめないことがある。

周辺に競合店がなく希少性や専門性が高い店舗の場合は、まれに商圏バリアがあっても影響を受けないこともあるが、地図上だけではわかりにくい商圏バリアは、現地に足を運びフィールドワークで調査することが大切である。現地で調査が難しいときは、商圏バリアが反映された分析ツールを活用するとよいだろう。

商圏の調査・分析で得られるメリットと活用方法

商圏分析は、主に新規出店や既存店舗の開発、売上や販促効果の予測、企画や戦略の立案などを行う際に役立つ施策である。実店舗の運営だけではなく、オンラインショップ運営やBtoB営業に有効なデータも集められるだろう。

ただ、人口の増減や商業施設の出店などで商圏は常に変化していくため、商圏調査・分析は出店時だけで終わらせず、定期的に情報をブラッシュアップしなければならない。商圏を調査・分析することで得られるメリットと、調査・分析結果の活用方法を紹介する。

出店を検討する地域の特性が把握できる

商圏の調査・分析を行うことで、出店を検討する地域の特性や競合店の現状がわかるため、店舗の位置や規模といった詳細な計画を立てられるメリットがある。自店のターゲット層がどのあたりに住んでいるか把握できれば、効率的に顧客が多く住むエリアに新店舗を出店できる。

出店後には効率よくニーズに合ったポスティングや折込チラシの配布ができるだろう。競合店についても詳細な分析を行えば、手薄な地域への集中的な販促活動も行えるようになる。

ニーズに合わせた商品開発や売り場づくりができる

商圏を正しく調査・分析できれば、その地域の消費者ニーズに合わせた商品開発や品揃えで売り場づくりができるので、来店客の購買意欲を促進し、売上や顧客満足度の向上につながる。地域特性を活かした商品・サービスを提供できれば、競合に対して優位な地位を確保できるようになり、他社との差別化を図ることも可能だ。

将来の売上予測や経営戦略が立てられる

エリア内の売上データや消費者動向、競合店などを調査・分析すれば、ターゲットの消費傾向やニーズが明確になるため、売上予測や需要予測の精度が向上するだろう。

また、新規出店時の候補地として妥当かどうかの判断がしやすくなり、店舗運営に役立つ緻密な経営戦略が構築できるメリットもある。

商圏を理解して正しく調査・分析を行おう

どの業界においても、商圏分析は重要なマーケティング施策であり、商圏という概念は欠かすことはできない。商圏は刻々と変化していくため、商圏の調査・分析は定期的に行う必要がある。商圏の意味や概念を理解し、正しく商圏の調査・分析を行って、自社の販促活動や店舗運営に活かしていこう。

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