在庫管理とは?目的とポイント、メリットや具体的な方法を徹底解説

2023.01.05

2022.10.31

小売業などを営む場合、自社で販売する商品の効率的な在庫管理が日々欠かせない。この記事では、在庫管理とは?という入門的な内容をはじめ、在庫管理の目的と重要性も紹介する。

実際に自社の商品において在庫管理をする際には、うまく管理するためのポイントと、在庫管理のメリットも知っておきたいものだ。具体的な在庫管理の方法に役立てられる手法と、システムを利用する在庫管理の方法についても解説する。在庫管理を徹底して、自社の利益を最大化させるためにぜひ役立てていただきたい。

在庫管理とは

まずは、在庫管理の定義についてみていこう。前提として、在庫とは、組織や企業、団体が所有する流動的な資産のことを指す。具体的には、原材料や素材、仕掛品、商品や製品などである。

在庫は業種によって種類が異なる。小売業の場合には、販売するために仕入れた商品のうち、倉庫などのバックヤードに保管するものを在庫と呼ぶ。一方で製造業における在庫とは、部品や原材料などの素材、仕掛品、完成品のことである。

これらの在庫は、企業が販売目的で所有するものなので、適切に数値を管理する必要がある。在庫の無駄を削減することは、企業が自社の利益を最大化することに直結する。例えば販売できない在庫が増すと、キャッシュフローが悪化していくというデメリットが発生する。

そのため、過剰な在庫を避け、需要と供給のバランスを常に把握し、適正な在庫を維持することが重要となるのだ。この管理のことを在庫管理と呼ぶ。商品の販売先である顧客に過不足なく商品を提供し、自社が健全な経営をおこなう上で、在庫管理は欠かせない業務といえる。

在庫管理の目的

在庫管理の目的は、大きく2つある。1つめは、在庫の無駄をなくすことによって、自社の利益を最大化することである。2つめは、適正な在庫を持つことで、顧客が求める商品を滞りなく提供することだ。

例えば、在庫を抱えすぎると、購入や保管のために必要なコストが増加する。しかし、在庫を減らしすぎると、顧客への販売の機会損失につながる可能性もある。

さらに、抱えている在庫の数量により、企業の資金は変動する。つまり、在庫管理は、自社が健全な運営をする上で、需要と共有のバランスを見極めつつおこなう必要があるというわけだ。

また、業種によって在庫そのものの性質が異なる場合がある。小売業や卸売業では在庫管理は商品や製品の数量をカウントするだけでよいが、製造業では原料や材料、部品などの在庫管理も必要である。

以上のことからわかるように、在庫管理は日々の自社運営の中でも、特に重要な業務の1つだといえるだろう。

在庫管理の重要性

続いては、在庫管理の重要性について解説する。一例として、自社の経営の伸び悩みが課題である場合についてみていこう。

ある企業では、在庫管理を人力で実施しているためにカウントミスなどが多く発生していた。バックヤードでの在庫の整理やカウントのための人手を確保することが難しく、専任のスタッフを配置できていない。このケースでは、自社が保有する在庫の正確な数量が把握できておらず、リソース不足のためにどこから手をつけはじめればよいのかもわからない状況である。

このような状況に陥ると、余剰在庫や過剰在庫が発生しやすくなり、販売機械の損失や在庫保管のために無駄な費用が発生することは、想像にかたくない。

つまり、自社の経営を安定化させるためには、一見地味な業務にも思える在庫管理は、後回しにすることはできない重要性を持っているのである。

また、在庫管理の重要性は把握しているため、管理システムなどを導入したものの、やはり人手不足などで活用しきれていないケースも同様である。これらの場合には、在庫管理の重要性をあらためて認識し、早急に業務改善の取り組みを推進することを強く勧めたい。

在庫管理のポイント

自社で在庫管理をする際に、在庫管理をスムーズに実施するためのポイントはあるのだろうか。

実は、いくつかの点について意識しながら実施することで、より容易で効果的に在庫管理が可能になる。ここでは、在庫管理を実施する際に注意したいポイントについて解説しよう。

まずは、在庫管理の事前準備である。自社内で在庫管理を徹底するためには、バックヤードの環境を整えることからはじめたい。在庫の保管場所の整理整頓をおこない、清潔な環境を整えるために清掃を実施しよう。

次に、整理整頓の方法について、自社内で共通認識を作成することが必要だ。人によって整理整頓の方法が違うと、在庫を保管する際や出荷作業時に置き場所などがわからず、混乱を招くことにつながるためである。

事前準備が完了したら、最初に現在の在庫の数と、保管されている場所や状態を正確に把握しよう。

次に、在庫管理の計画を立案し、その計画に基づいてスケジュール通りに在庫管理を実施する。また、在庫管理の結果をチェックして、管理方法が適切であるかどうかと、在庫数が適切かどうかについても評価をおこなうことが重要なポイントである。

在庫管理をするメリット

在庫管理をおこなう際、在庫管理が自社の経営にどんなメリットをもたらすのかを把握しないままに管理を実施することは避けたい。

在庫管理のメリットと重要性を確認していない状態で在庫管理をしてしまうと、対応に抜け漏れや不正確な部分が発生する可能性があるからだ。

これは経営者や幹部メンバーだけに限った話ではない。企業の規模が大きいほど、日々の在庫管理業務を担当する人材は一般社員となるだろう。

その際、企業に所属するすべての社員が在庫管理の重要性とメリットを把握していなければ、在庫管理業務の重要性を考慮しつつ取り組むことが難しくなる。では実際に、在庫管理のメリットにはどんなものがあるのだろうか。

まず、在庫管理を適正におこなうことで、適正在庫の確保と在庫保管スペースの確保が可能となる。余剰在庫の削減も可能だ。

さらに、生産性向上と欠品・廃棄ロス減少が実現する。これは、自社製品や自社サービスの品質の安定と需要予測がスムーズになることによる仕入れミスの防止にもつながる。

また、適正な在庫管理をおこなうことは、社員の人件費削減にも直結する。在庫管理において無駄な工数を減らせれば、光熱費や減価償却費などのコスト削減ができる。

さらに時間の短縮もできるので、社員の残業代削減にもつながるだろう。これらのメリットは最終的に自社のキャッシュフローの安定化に帰着する。企業の経営の安定は、従業員のモチベーションアップにもよい影響をもたらすだろう。

在庫管理の方法

ここからは、具体的な在庫管理の方法について紹介していく。在庫管理の方法はいくつもあるので、自社に合う方法を導入することが重要である。

いくら便利な仕組みでも、自社の業態などにマッチしなければ、利用するメリットを最大限に引き出せない可能性があるためだ。そのため、在庫管理の方法を決定する際には、いくつかの方法を比較検討し、試験導入を経てから本導入に踏み切るとよいだろう。

在庫管理の手法には、倉庫内の場所と在庫を紐づけて管理する「ロケーション管理」、製品に優先順位をつけて重要度が高いところから在庫管理をすすめていく「重点分析(ABC分析)」、製品の入庫と出庫を管理する目的で実施する「出入庫管理」がある。自社の業態や在庫管理したい製品の特性に合わせて、これらの手法を適切に用いて在庫管理を実施しよう。

また、それぞれの管理をおこなう際には、目視と手書きで記録する方法、エクセルなどに入力する方法、ハンディターミナルでバーコードを読み取る方法、RFIDを使用する方法、在庫管理システムや在庫管理アプリを使用する方法がある。

管理する製品数や品目が多いほど、在庫管理が煩雑で工数がかかる。そのため近年では、多くの企業がハンディターミナルやRFID、在庫管理システムや在庫管理アプリの導入を積極的にすすめているのが現状である。

エクセルなどを活用する運用方法

まずはOfficeソフトのエクセル(Excel)などを活用する運用方法について紹介しよう。エクセルでの在庫管理は、多くの企業で導入されてきた方法だ。エクセル入力での在庫管理は汎用性が高いため、自社の業態や製品の特性に合わせて、柔軟な運用ができるのが特徴である。

また、エクセル表への入力は比較的容易である。在庫管理を担当する人員が、システムやPCなどの操作に慣れていないケースも想定できる。しかし、そんな場合でも操作方法を覚えてしまえば、誰でも簡単に入力できるのがエクセルでの在庫管理のメリットだといえるであろう。

エクセルでの在庫管理をする場合、インターネット上に多数の在庫管理表テンプレートが公開されているので、無料でエクセルテンプレートをダウンロードできる。これは、エクセルでの在庫管理の導入のしやすさだといえるだろう。

一方、エクセルで在庫管理をおこなう場合には、リアルタイムで在庫数の更新ができないことがデメリットとして考えられる。

また、一日一回など、定期的にエクセル一覧表の更新が必要である。更新を怠ると、在庫数との不一致が発生することがため、注意が必要だ。また、担当者が複雑な関数やマクロを使用すると、トラブル発生時にほかのメンバーでの復旧が困難になるケースが考えられる。

さらに、エクセルには保存できるデータ量の上限がある。そのため、エクセルシートに入力したデータ量が増えると、ファイルが重くなったり、最悪の場合破損したりする可能性も懸念すべきである。

システムやアプリを導入する運用方法

近年、多くの企業において、システムやアプリを導入する運用方法での在庫管理が一般化してきた。大企業であれば自社のサービスに特化したシステム自作を検討することも現実的であるが、中小企業や管理する在庫が比較的少ない場合には費用対効果に鑑みて、既存のシステムやアプリを導入することをおすすめしたい。

在庫管理ツールのうち、海外企業が制作した在庫管理システムやアプリには表記が英語のものもあるので注意が必要である。

一方、海外企業によるサービスでも、日本語版がリリースされている場合や、日本企業が制作した在庫管理システムやアプリも存在する。使用するハードウェアやシステムの使用環境、システムやアプリを使用することによって自動化できるオペレーションは、それぞれ異なるので確認が必要だ。

現在、世界中でもっとも注目を集めているのは、クラウドタイプの在庫管理システムである。インフラ調達が不要でインターネット環境があればすぐに使用できる利便性の高さと、導入コストが低く済む点がポイントである。月々の運用コストなども含めて、自社に最適な在庫管理ツールをしっかりと見極めて導入したいものだ。

自社の業種や業態と似ているほかの企業ですでに導入実績がある場合には、導入へのハードルが下がることが予測される。在庫管理システムやアプリを製造販売しているメーカーの公式サイトをチェックし、導入実績を確認してみよう。

在庫管理を徹底して自社の利益を最大化しよう

幅広い業種において、在庫管理を徹底することは重要である。在庫管理の精度が落ちると、無駄なコストが発生し、商品販売機会の損失が考えられる。人員不足の際などには手薄になってしまいやすい業務のひとつである在庫管理だが、実はさまざまな局面で重要となる業務なのだ。

在庫管理の目的とメリット、重要性をしっかりと理解して、企業の安定経営を目指してほしい。また、在庫管理の重要性は、企業に勤務する社員全員がしっかりと理解しておくべきである。社員教育をする際には、在庫管理を怠った場合に発生しうるリスクなども、全社に対して具体的に伝えることが大切だろう。

以前は人力でカウントするしかなかった在庫は、現在では在庫管理に特化したシステムやアプリを利用して、効率的に管理することが可能となってきた。在庫管理ツールには、テスト導入を無料でおこなえるサービスなどもあるので、ぜひ複数のシステムやアプリを比較検討して、自社の特性にもっともマッチするサービスの導入を検討してみるべきである。

エクセルの活用やシステムの導入など、どの在庫管理方法でもメリットとデメリットが存在する。自社の状況に合ったツールかどうか、機能や使い方などを導入前にしっかりと精査する必要がある点には十分注意したい。便利なシステムやアプリなどを最大限に活用し、在庫管理を徹底して自社の利益を最大化していこう。”

お役立ち資料データ

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