カテゴリーキラーとは?企業の例や強み・弱みなどを交えて解説

2022.11.09

小売店には、さまざまな種類があるが、その中で、「カテゴリーキラー」と呼ばれる業態が注目されていることをご存じだろうか? 

カテゴリーキラーとは?

カテゴリーキラーとは、家電や紳士服、スポーツ用品、玩具といった特定の商品分野(カテゴリー)において、豊富な品揃えと圧倒的な低価格を武器とする、大型の“専門店”を指す。大手カテゴリーキラーの多くは、広域でチェーン展開している。

ところで、カテゴリーキラーはなぜ、“キラー(殺し屋)”などと、おどろおどろしいネーミングをされたのだろうか? 

商圏内にカテゴリーキラーが出店すると、競合する小型専門店、総合スーパーなどの総合店は、その商品分野の品揃えで太刀打ちできず、同じ商品なら価格競争でも負けるケースが少なくない。

その結果、既存の競合店は、その商品分野が甚大な打撃を受け、商品の取扱いを縮小したり、中止したりする羽目になるわけだ。小型専門店の場合、撤退に追い込まれることもある。そのため、ライバルの小売業者から恐れられているわけだ。

カテゴリーキラーの企業例

代表的なカテゴリーキラーとしては、ヤマダ電機やヨドバシカメラ、ビックカメラといった家電量販店、青山商事やAOKIホールディングスといった紳士服量販店、西松屋チェーンといった子ども服・子ども用品専門店、エービーシー・マートやチヨダといった靴専門店、ゼビオホールディングスやアルペンといったスポーツ用品店、メガネトップといった眼鏡専門店などが挙げられる。

食品では、鮮魚の魚力、精肉のニュー・クイック、酒類のカクヤスグループややまやなども、カテゴリーキラーと呼んでいいだろう。大型店も展開するマツモトキヨシ、ツルハといったドラッグストアチェーンも、カテゴリーキラーの範疇に入ると言える。外資系では、2017年に経営破たんした米国トイザらスが、玩具のカテゴリーキラーとして有名だ。

なお、インテリアのニトリ、アパレルのファーストリテイリングのようなSPA(製造小売業)も、カテゴリーキラーに分類されることがある。しかし、SPAは、“オリジナル商品”の販売が基本。

カテゴリーキラーは、NB(ナショナルブランド)など比較購買が可能な商品について、競合店に対する競争力を発揮するわけで、厳密には、仕入れ販売がメーンの大型専門店と、考えたほうがいいだろう(カテゴリーキラーも、PBなどのオリジナル商品を強化している)。

カテゴリーキラーの強み・メリット

それでは、カテゴリーキラーは、どうして強い競争力を獲得できるのだろうか?
一つ目がラインアップの広さだ。カテゴリーキラーがその商品分野の品揃えにおいて、種類の多さでも、価格帯の幅でも、商圏内で最も優位に立てば、消費者はカテゴリーキラーを、比較購買のベンチマークとして、必ず売場をチェックする。つまり、最も集客力の高い店舗となるわけだ。スタッフの商品に関するスキルやノウハウも、概して競合店に勝る。

二つ目が低価格を訴求しやすいこと。カテゴリーキラーは、同一商品の価格競争で、「地域最安値」を実現しやすい。なぜなら、商品の大量仕入れによって、メーカーや卸との取引交渉でも有利になり、競合店よりも原価を圧縮しやすいからだ。さらに、チェーン展開している大手カテゴリーキラーなら、商品の集中仕入れによって、メーカーや卸に対して、強大なバイイングパワーを発揮できるようになる。

商品の大量仕入れによって、販売効率がアップするのも大きい。
チェーンの在庫を一元管理すれば、在庫管理の精度も上がる。店舗間の在庫のバラツキがなくなり、受発注のコントロールで、チャンスロスを削減したり、不良在庫の発生を抑えたりしやすくなる。その結果、サプライチェーンが効率的に運営でき、コストダウンも図れるので、それだけ値下げ余力も生まれるというわけだ。

地域最安値を実現できれば、商品の販売数量も飛躍的に伸び、仕入れ数量がさらに増えるという好循環に入る。その商圏の、その商品分野において、圧倒的なシェアを握るようになれば、もはやカテゴリーキラーの独壇場。メーカーや卸は、カテゴリーキラーの顔色をうかがい、消費者も、カテゴリーキラーで買い物をせざるを得なくなる。

カテゴリーキラーは、特定の商品分野を深耕し、「商品はとりあえず何でもあるが、欲しい商品が見つからない」と揶揄された、大型総合店のアンチテーゼとして誕生した。「専門店の時代」と言われる、現在の小売業界の申し子なのかもしれない。

カテゴリーキラーの弱み・デメリット

とはいえ、カテゴリーキラーにも“天敵”はいるし、弱みもある。カテゴリーキラーが苦手なのは、まず同業のカテゴリーキラーであろう。高校野球の都道府県代表になっても、「意気揚々と甲子園に行ってみたら、上には上がいて、惨敗した」ということだってあるわけだ。

競合店が地場の小さな専門店などしかなかったときは、シェアをらくに奪うことができて、「地域一番店」になることができたと言っても、安閑とはしていられない。自社よりも強力なカテゴリーキラーが、いつ商圏に殴り込みをかけてくるかもしれないからだ。

インターネットが普及した最近では、カテゴリーキラーにとって、リアルの競合店のみならず、ネット通販=ECという強敵が出現した。

ECは、基本的に商圏が全国区。「無店舗販売」なので、品揃えを広げやすいし、リアル店舗の人件費や運営コストがかからず、それだけに価格競争でも強みがある。実際に、米国トイザらスが経営破たんに追い込まれたのも、ECとの競合が要因の一つとされている。

カテゴリーキラーが苦手なアイテムもある。例えば、高級ブランドの中には、ブランドイメージを維持するため、百貨店や特定の専門店としか取引しないケースもある。つまり、カテゴリーキラーは、ほかの小売店と同じ土俵で、戦わせてもらえないわけだ。直営店での商品展開が主力のブランドなども、同じである。メーカーの中にも、チャネル戦略を見直し、カテゴリーキラー以外の小売店、あるいは、協業できる特定のカテゴリーキラーとしか取引しないという企業もある。

さらに、“専門店”の宿命として、カテゴリーキラーは、買い回りが不便である。例えば、サッカー用のシューズを買いたいときは、スポーツ用品のカテゴリーキラーに行けばいいが、「アスレジャー」のファッションとしてスポーツウェアを探すときは、カテゴリーキラーだけでは物足りず、百貨店やショッピングモールなどにも、わざわざ足を伸ばさなければならないケースがある。

カテゴリーキラーの弱点克服

そこで、カテゴリーキラーも、そうした自らの弱点の克服に乗り出している。

ECに対抗するため、例えば、直営オンラインショップの立ち上げなどに乗り出しているほか、リアル店舗という経営資源を生かし、店頭で商品の実演、試用といった体験型イベントを開催したり、お悩み相談会のような接客サービスを拡充したりしている。店頭で「タイムセール」のような、ゲリラ的な販促を実施するカテゴリーキラーもある。

品揃えでも、競合店との差別化を図るため、PBなどオリジナル商品の開発にも力を入れている。カテゴリーキラーも、もはや価格競争一辺倒ではないのだ。
買い回りを改善する手も打っている。

その一例が「パワーセンター」、すなわち、カテゴリーキラーを集積した、超大型のショッピングモールだ。郊外型が多いが、都市部でも、例えば、東京・新宿駅前には音楽・映像ソフトのタワーレコード、スポーツ用品のオッシュマンズなどを集めた商業施設「フラッグス」などもある。駅ビルの食品フロアに、複数のカテゴリーキラーを導入するケースも珍しくない。

また、百貨店などの大型総合店が、カテゴリーキラーを大型テナントとして誘致する例も増えている。一方で、専門店とは言っても、食品や化粧品なども取扱う家電量販店のように、大手カテゴリーキラーの多くが、ラインロビングで総合化している。このように、カテゴリーキラーはいまだ進化の途中で、マーケットの変化に対応して、今後もパワーアップしていくと予想される。

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