PoCとは?意味やメリット、実証実験やMVPとの違いなどを交えて解説

2024.03.28

2022.12.05

PoCとは、新たなアイデアや概念・理念が生まれたとき、開発段階に移す前に実現可能か、効果があるのかを検証する工程である。

実際の運用と同じ条件でPoCを行うことで、リスク軽減や成果の予測などさまざまなメリットが得られる。PoCとは何か、PoCを行うメリットや注意点、具体的な手順などを詳しく解説する。

PoCとは?意味や概要について

PoCはProof of Concept(プルーフ・オブ・コンセプト)の略で、「ポック」「ピーオーシー」などと呼ばれる。日本語の意味は、概念実証である。PoCは新たな概念やアイデア、理論などが浮かんだときに、製品やサービスを開発する前の段階でそれらの仮説が実現可能かどうかを検証する作業を指す。

PoCを行うときは、開発する製品やサービスの簡易版をまず作成し、実際に運用するときと同じ環境下で検証をする。

最初にPoCを行うことで目指す効果が得られるか、ビジネスとして成立するかを判断し、問題点や改善が必要な点についても洗い出しができる。

PoCと実証実験の違い

PoCは実証実験と呼ばれることもある。実証実験は新しく開発された製品やサービスを実際に使用する環境と同じ状態で使用し、実用するときの問題点や課題を検証することをいう。

PoCが技術や概念、アイデア自体の実現可能性を検証する作業であるのに対し、実証実験は製品やサービスの問題点を洗い出す目的がある。

しかし、PoCの段階で課題や問題点が発見されることも多いため、PoCと実証実験はほぼ同じ意味で使われることが多い。

PoCとMVPの違い

PoCに似たものでMVPもある。MVPはMinimum Viable Productの略で、必要最低限の機能を持つ製品という意味である。

PoCで用いられるのは簡易版の製品やサービスで、アイデアや技術が実現可能かを検証するために最低限の機能を備えてある。

一方MVPは、顧客が製品やサービスに価値を感じるために必要とされる最低限の機能を備えた製品を指す。製品やサービスを市場に出したときの顧客の反応を見ることを目的に作られる。

ビジネスでPoCを行う目的・メリットとは?

開発前の段階でPoCを行うことは、製品やサービスの実現性を見極めながら改善点や問題点を探るだけではなく、新しい製品やサービスを発売して目標の売り上げを達成できるかどうかなども検討する。

そのほかにもPoCは、ビジネス上さまざまなメリットがある。

リスクの軽減

PoCで使うのは製品の簡易版である。また、一般的にPoCは小規模で行われる。実現可能かわからない段階で、製品やサービスの開発に取りかかるのは、膨大な費用と時間を無駄にするリスクを伴う。

PoCを行えば少額の予算で仮説の検証や問題点の洗い出しができるため、開発前に実現可能かどうかを判断できる。PoCを行うことは、開発にかけるさまざまなリスクを最小限に抑えられる大きなメリットがあるのだ。

成果の予測

PoCを行えば、成果を予測できる。仮想を実証する段階で問題点や改善点を見出し、よりマーケットに適した製品やサービスを作れば、実際に発売したときに顧客にどのくらい受け入れられるのかある程度の予測ができるようになる。

製品やサービスをどのくらい作成してもいいか、在庫をどのくらいストックできるかなども試算できるので、無駄なく新製品やサービスを売り出せるだろう。

工数の削減

PoCを実施すれば、早期に概念や技術、アイデアの実現の可能性を判断できる。実現可能性を探りながら製品やサービスを改良していけるので、必要のない機能を開発するリスクを減らせる。またやり直しの工数も抑えられるだろう。

製品やサービスを作成するときに本当に必要な工数だけに削れるため、コストの削減になるのはもちろん、スピーディーな開発や製造が行えるようになる。”

周囲からの理解を得る

PoCを行って新製品や新サービスが実現可能かどうかを判断し、それらを数値化したり可視化したりできれば、客観的なエビデンスになる。

新しいビジネスを始めるときにはさまざまな課題があるが、周囲の理解が得られずに開発に取りかかるまで時間がかかってしまうケースも少なくない。あらかじめPoCを行ってその結果を数値的な根拠を持って提示できれば、関係する事業部門や関係者を納得させられる。PoCによって周囲の理解を得やすくなり、開発や商品化がスムーズに進むだろう。”

PoCを実施する場合の注意点

PoCを実施する際の注意点もある。

PoCを行ってもなかなか実現可能性が見出せなかったり、問題点が解決できなかったりするとPoCのコストばかりかかってしまう。たとえ小規模で簡易的な製品を使ってPoCを行っても、前に進まないのでは意味がない。

このような状態をPoC疲れやPoC貧乏と呼ぶこともある。システム開発者と製品化の判断をする経営層や関係者の認識が一致していないと、PoCを行っている間にプロジェクトの着地点が明確ではなくなってしまう。その結果、本格的な開発がいつまでもスタートせず、時間とコストだけがかかってしまうことがある。

PoCの手順

PoC、Proof of Concept(プルーフ・オブ・コンセプト)とは?

PoCを行うときの実際の手順について詳しく説明する。

目的やゴールを設定する

PoCをなぜ行うのか、ブレずに作業を進めるためにPoC実施の目的やゴールを設定しよう。PoCを実施して得たいデータや結果について明確にしておくといいだろう。

ゴールが決まっていないと、PoCを行っていく間に指針がずれてしまう場合がある。PoCは仮説を検証する作業である。PoC疲れやPoC貧乏にならないよう、目的やゴールは具体的な数値を設定しよう。また目標を達成した後の流れも明確に決めておくとなおいいだろう。

検証方法を決める

ゴールが定まったら、PoCを行うための検証方法を決める。実際に作成する製品やサービスに付随させる簡易的な機能を絞りこむ

販売するときと同様の機能を付ける必要はない。あくまでもPoCのための製品やサービス作りのため、目的に合わせて最低限の機能を選別しよう。装着する機能が決まったら製品やサービスを作成する。

製品やサービスを作る前には、実際に使うと想定される現場の意見をしっかりと聞いておく必要がある。現場における課題を把握することで、解決策が明確になり、検証方法もより具体的に決められる。

検証する

完成した製品やサービスを、実際にユーザーに利用してもらい検証する。検証のときは、可能な限り運用状態に近い環境を作るようにする

なるべく対象者全員に試してもらうといいだろう。販売した商品を使うときと同じ環境に近い状況でテストをすることで、さらに精度の高いデータが得られる。また具体的な課題や改善点も見えてくるだろう。

一部の関係者だけの検証では、結果に偏りが出てくる可能性がある。多くの関係者に広く使ってもらうことで、客観的で精度の高いデータを得られるようになる。

評価する

検証が終わったら、PoCで得たデータをもとに評価する。実現可能かどうかの評価はもちろん、PoCを実施することで見えてきた課題や問題点の洗い出しもできる。評価する際には、製品やサービスにとって一番大切な価値は何かを意識しよう。

付加価値やさまざまな機能が付いていると、評価するべき対象が不明瞭になってしまうこともある。PoCの評価結果によっては、PoC実施前に立てた仮説が崩れる場合もある。また評価をもとに改善を重ねてPDCAを回すことも重要である。

有益なPoCを行うポイント

ここでは、PoCを効果的に行うためのポイントについて解説する。手順通りにPoCを行っても有益な結果が得られないこともある。成功させるためのポイントを把握し、意識してPoCを実施することが重要だ。

規模は小さくスピーディーに

PoCは、小規模かつスピーディーに始めよう。大規模なPoCを行うとコストや時間がかかるのはもちろん、製品やサービスの本当の価値の検証ができなくなってしまう場合がある。

PoCの目的が明確でなくなってしまうと、無駄にPoCの実施ばかりを行い検証の成果が得られなくなる可能性もある。またPoCの評価が不明瞭では、周囲の理解も得にくくなってしまう。

時間やコストは最低限に抑えて、その製品やサービスで検証したいもっとも重要かつ本質的な価値の仮説を立てて始めるべきだろう。

ゴールは明確にする

PoCを成功させるためにゴールを具体的に決めておこう。検証した後の開発段階も含めた全体像をイメージしておかないと、PoC実施の段階のまま足踏みしてしまい、プロジェクトが前に進まなくなってしまうこともある。

PoCを繰り返しても開発や製品のリリースまでこぎつけられなければ、PoCを行うことの意味がなくなってしまう。

実際と同じ条件で行う

PoCは簡易版の製品やサービスを用いて行うが、検証は可能な限り実際の運用時と同じ、もしくは近い条件を整えておこう

本番と同じ環境で検証することで、精度の高いデータを得られる。

また、ユーザーからのフィードバックも具体的になるため、課題や問題点の洗い出しに役立つ。ユーザーはなるべく多く集めることも大切である。モニターを募集するのも効果的だ。

実際と同じ条件で行ったPoCの現実的な検証データが得られれば、周囲への説得力も高まり、開発やその後の流れもスムーズに進むだろう。

失敗を活かす

PoCを行っても、期待していた結果が得られなかったり、仮説通りに進まなかったりすることも少なくない。しかしこれは失敗ではない。PoCに失敗という考え方はなく、PoC前に立てた仮説が検証によって覆った場合、PoCの結果をもとになぜ仮説通りにいかなかったのかを考えられる。

今回のPoCがうまくいかなかったとしても、次の方策を考えるための重要なデータになる。すべてのPoCの結果が次のPoCに繋がるのである。

PoCとは現代の企業には欠かせない工程

ITテクノロジーの発達や顧客のニーズの多様化などで、企業はスピード感を持って新たな製品やサービスの開発に取り組む必要がある。現代のビジネスにおいては、アイデアや仮説が実現可能かどうかを素早く見極めるためにPoCは欠かせない工程といえるだろう。

PoCを実施するときは、ゴールを明確に設定し小規模でスピーディーに行おう。実際の運用時と同じ条件を整えることで精度の高いデータが得られ、スムーズに開発へと進められるだろう。”

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