経常利益とは?意味や計算方法、営業利益や純利益などとの違いと併せてを解説

2022.12.28

会社の利益のひとつである経常利益は、会社の毎月の利益や経営状況を把握するうえで重要な指標となる。ところが、利益の種類は営業利益や売上総利益など多岐にわたり、意味も混同しやすい。今回の記事では、経常利益の意味や計算方法、ほかの似ている概念との違いや比較を解説する。

経常利益の意味や概念、計算方法

まず経常利益の意味や概念、計算方法について解説する。

経常利益とは

経常利益とは、会社の事業、経営活動にて通常行っている業務で得る利益のことだ。損益計算書(P/L)では、3番目に記載されている。経常利益にはおもな事業、つまり本業における利益はもちろん副業で行っている収入、投資の利益なども含まれる。

おもな経常利益に該当する利益は以下の通り。

・本業による利益

・副業による利益(保有する不動産からの家賃収入など)

・投資による利益

・利息などによる利益

・配当金による利益 など

「経常」とは、「つねに一定して変わらない、つね、普段、平常」という意味がある。そのため、以下のような臨時かつ突発的な収入や利益は、経常利益には含まれない。

・災害や事故による保険金

・所有している不動産を売却して得た収入 など

経常利益の計算方法

経常利益は以下の計算式で算出できる。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

・営業利益…会社がおもに行っている事業(本業)で得た利益

・営業外収益…本業以外の活動で企業が経常的に得ている収益

・営業外費用…本業以外の活動で経常的に発生する費用

営業利益が2千万円、営業外収益が400万円、営業外費用が200万円の会社の場合は、2千万+400万-200万円=経常利益は2千200万円となる。

経常利益とほかの利益との違いや比較

損益計算書(P/L)には、経常利益以外のほかの利益も記載されている。ほかの利益の概要や、経常利益との比較や違いを解説する。

売上総利益

売上総利益とは、損益計算書の最初に記載される利益。粗利とも呼ばれる。売上高-売上原価で求められ、会社のベースとなる利益と言える。

営業利益

営業利益とは、売上総利益-販売費および一般管理費(販売管理費)で求められる利益だ。販売管理費とは、営業活動で発生する人件費や家賃、広告宣伝費が含まれる。よって、営業利益は会社が本業で儲けた利益となる。損益計算表の2番目に記載されている。

営業利益が高くても、経常利益は低くなることがある。たとえば本業での売り上げが高ければ営業利益は高くなるが、借入金や利息の返済額が多い場合は、営業利益から差し引かれる営業外利益が高くなるため、経常利益も低くなるだろう。そのため、会社の経営状況は経常利益からがもっとも把握しやすいと言われている。

逆に営業利益が赤字で経常利益が黒字だった場合、本業の業績が悪化している一方、不動産の家賃収入や受取利息など本業以外の収益が高いため企業としては黒字を出せている状態であると分かる。経常利益が上げられていることで、本業の課題改善へ経営方針を転換することも可能だ。

税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、経常利益+特別利益-特別損失で算出できる利益だ。損益計算書の中では4番目に記載されている。

特別利益および特別損失の「特別」とは経常と反対の意味を持ち、臨時の収入や損失を指す。たとえば経常利益に含まれない。災害や事故での保険金の収入や損失、不動産の売却などが該当する。

当期純利益

当期純利益とは、企業が年度内に得た全ての収益から全ての出費を差し引いて算出される利益だ。純利益とも呼ばれ、損益計算書の中では5番目に記載されている。税引前当期純利益-法人税などの税支払い分で算出でき、年度内に最終的に企業に残るお金の額が分かる。

企業の経営状況を見るのは、最終的に残る「当期純利益」の方がふさわしいと考える人も多いだろう。当期純利益には、特別利益と特別損失も含まれるため、企業の経常的な経営状況を見るのには経常利益の方が適していると言える。

たとえば当期純利益が黒字でも経常利益が赤字の場合は、経常的な経営状況は悪化しているのにも関わらず、臨時収入を得ることで当期純利益は黒字になった、という可能性が高い。企業の経営状況が赤字体質になっているため、早急な改善が必要となる。

逆に当期純利益が赤字で経常利益が黒字の場合は、災害や事故などの一次的な損失によって赤字となった可能性が高い。経常的な経営状況は健全で、継続的な利益を出せている状態ということが分かるだろう。

経常利益の活用方法

経常利益の数値を読み取ることで、さまざまな指標や企業の経営状況の把握につながるだろう。経常利益の活用方法を解説する。

現在の企業としての実力が分かる

経常利益は平常時に企業が得られる利益を指している。特別な損益を加味していないため、現在企業はどの程度の儲けを出しているか、企業としての実力が把握できる。

営業利益・当期純利益とともに経営状態を把握できる

前述通り、営業利益および当期純利益は黒字または赤字でも経常利益は逆、という場合がある。経常利益とほかの利益を組み合わせて見ることで、企業の経営状況を正確に把握できるだろう。経営方針に活かしたり、事業の悪化に早期に対処したりすることで、健全な経営につなげられる。

経常利益成長率と売上高成長率で将来の予測をする

成長率とは、過去の数値から見て企業年て能力にどの程度の伸び率があるかを表した数値だ。増加率や伸び率とも呼ばれている。当期と前期の経常利益の伸び率を比較した「経常利益成長率(増益率)」は、以下の計算式で求められる。

経常利益成長率(%) = (当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益 × 100

各数値の状態別に、以下のような予測が立てられるだろう。

・経常利益成長率と売上高成長率ともに高い…売上も利益も順調に伸ばせる見込み

・経常利益成長率と売上高成長率ともに高く、経常利益成長率の方が高い…利益向上とコストカット両方に努めているため優良企業と言える状態

・経常利益成長率が高く売上高成長率が低い…売上が落ち込んでいるものの、広告費などのコストを見直し利益が伸ばせる見込み

経常利益成長率と売上高成長率を算出することで、企業の将来の成長予測に役立つ。課題や利益に対する改善措置や、新しい事業への挑戦など、適切な事業の方向性決定も実現できるだろう。

売上高経常利益率から収益力を把握する

売上高に対して利益を何%得られたかを指すのが売上高利益率。さらに売上高と経常利益から「売上高経常利益率」が算出できる。売上高経常利益率を算出する計算式は以下の通り。

売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100

売上高経常利益率は、企業全体の収益力を見る指標として活用できる。

経常利益の意味や概要を知り経営判断に活用しよう

経常利益の意味や概要、ほかの利益との違い、計算方法、活用方法を解説した。経常利益からは、自社の通常活動で得ている利益が把握できる。売上総利益や営業利益などのほかの利益と併用することで、自社の経営状況の適切な把握にもつながるだろう。経常利益をぜひ自社の経営判断や利益の最大化に活用してほしい。

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