EDI取引とは?メリット電子帳簿保存法との関係、Web-EDIなどについて解説

2023.03.07

2023.01.25

EDIとは電子データ交換を意味する言葉である。ビジネス上の取引に関する文書を電子データでやり取りする。

EDI取引は経費削減や業務の効率化を図れる一方で、通信回線サービスの終了や電子帳簿保存法など導入するにあたって課題もある。EDIの仕組みや種類、メリットや現在抱える課題についても解説する。

EDIとは

EDIとは、Electronic Data Interchangeの略で、電子データ交換という意味である。企業間の取引において必要な契約書や受発注に関する文書を、専用の回線や通信回線を利用して電子的にやり取りする仕組みを指す。

従来のように書類を郵送やFAX、メールなどで送る必要がないため、双方の取引先にとってデータを管理する際の手間やミス、経費を削減できる。日本国内のBtoBの取引では電子化が進んでいて、多くのケースでEDI取引も行われている。今後もさらにEDI取引は拡大する傾向にあるだろう。

企業間の取引を電子化

企業間が取引を行うとき、契約書や発注書、受注書、請求書、納品書などさまざまな文書が必要になる。

従来の取引では、これらのさまざまな帳票を郵送やメール、FAXでやり取りしていた。EDIを使わない場合、取引先によって用紙の送り方を変える必要があり、入力するときのミスが発生しやすい、手間がかかって管理が煩雑になるなどの課題があった。

しかしEDIを導入すれば、専用回線やインターネット経由で情報のやり取りを標準化できる。帳票を紙で作成する必要がなくなるため、手間やコストを削減でき、データの管理も簡単にできるようになる。

データを変換し取り込む

EDIでは、取引の際に他社から送られてきたデータを自社のシステムで取り込めるように変換できる仕組みになっている。変換できるデータは、文字コードやレイアウト、データコードなどがある。

・文字コードの変換
シフトJISやUnicodeなどの文字コードは、企業によって扱えるかどうかが異なるため自社での取り込みの際に変換する
・レイアウトの変換
CSV形式や固定長形式、XML形式などのデータ形式を、自社のシステムで理解できるレイアウトに変換する
・データコードの変換
同じ商品でも企業によって商品コードが異なる場合は、自社のコードに置き換える

EOSとEDIの違い

EOSは、Electronic Ordering Systemの略で、電子発注システムを意味する。EOSはEDIの仕組みを一部使用したもので、発注に関する業務を自動化できる。EOSはスーパーマーケットの発注や請求、仕入れ、支払いなどの一連の業務を管理する。そのほかにも店舗内の端末を使って、ネットワーク経由で本社のコンピューターから発注することも可能だ。

従来のような発注業務や伝票のやり取りと比べて、発注から納品までの時間が短くて済むため業務の効率化を図れる。また倉庫やメーカーと繋がれるため在庫管理がしやすくなり、コストを削減できる。

BtoB-ECとEDIの違い

BtoB-ECは、企業間の取引をECサイト上で完結させるものである。企業間のネット通販ともいわれる。取引先ごとに表示価格を変えたり商品の閲覧表示の制限を設定したりすることも可能だ。BtoB-ECは、インターネットが利用できる環境とパソコンやタブレットスマートフォンなどの端末があれば取引できるため、ビジネスチャンスを大きく広げられる。

EDI取引は取引をデジタル化し効率化を図るものであるが、BtoB-ECは商品売買に関するCRMの視点や取引先とのコミュニケーションにも使えるため、BtoB-ECの一部がEDI取引ともいえる。一般のECサイトと異なる点は、商取引をEC化することが目的のため誰でも買い物ができるわけではない点である。

EDI取引の種類

EDI取引を導入して取引データを電子でやり取りし、相互に業務を自動化するためには、両者が異なる販売管理システムを使用していても問題なく取引ができなければいけない。そのため相手先と事前にルールを取り決めておく必要がある。EDI取引では、コードやフォーマットなどを設定するルールが3種類ある。

標準EDI

標準EDIとは、中立的な機関によってEDI取引規約や運用ルール、フォーマット、データ交換形式、識別コードなどを標準化したEDIを指す。標準EDIは標準規格のため、取引先ごとに条件を変更する必要がある個別EDIよりも受注者の負担を減らせるメリットがある。

代表的な標準EDIとしては、中小企業間取引向けに標準化された中小企業共通EDI、流通業者の取引向けに標準化された流通BMS、商取引情報を振込などに添付して送信する全銀EDIなどがある。

標準EDIを用いることで、企業間の力関係に左右されず対等にやり取りができ、取引先拡大の対応もしやすくなるだろう。標準EDIは、標準規格であることから多くの企業で利用されている。

個別EDI

個別EDIは、通信形式や識別コードを取引先ごとに決めるやり方である。それぞれの取引先の要件にあわせて細かなルール設定ができるが、取引先のEDIごとに対応した変換システムを用意しなければいけない。個別EDIの場合、複数の取引先での利用はできない。取引のある2社同士で形式やコードを決めるが、発注者が主導して行うケースが多いため受注者が形式やコード変換に対応する必要が出てくる。

個別EDIは取引先が少ない場合は問題ないが、多くの取引先を持つ企業の場合はEDIの利便性を活かしきれないこともあるだろう。

業界VAN(標準EDI)

業界VANは標準EDIの一種で、特定の業界に特化したネットワークサービスである。標準EDIにはコードの標準化が含まれていない。そのため商品コードの取り決めや変換作業を行う必要がある。しかし、業界VANは業界共通の商品コードや取引先コードが標準化されているので、同じVANを利用する企業間ではよりスムーズに接続ができる。

業界VANには医薬品業界、酒類、加工食品業界や日用雑貨業界などがある。業界VAN特定の業界でしか使えないので、利用できる取引先は限られるが、同じ業界の企業と多くの取引が行えるメリットがある。

EDI取引のメリット

EDI取引を導入するとさまざまなメリットがある。1つずつ詳しく解説する。

業務の効率化

EDIを使うと請求書や納品書、受領書などの帳票類のやり取りを自動化できるため、スピーディーな取引が行えるようになる。近年主流となっているWeb-EDIならば、さらに高速な通信の利用が可能だ。

EDI取引でタイムラグがなくなれば、在庫が減った時点で発注すればいいので、過剰な在庫を抱えるリスクも減らせる。同じく急な欠品が生じた場合なども、素早い対応ができるだろう。EDIの導入によって、需要の予測、生産計画、販売計画、さらに在庫計画の策定まで一貫して管理ができ、業務の効率化を図れる。

人件費の削減

EDI取引を利用すると、自動で伝票や帳票のデータをシステムに取り込めるようになる。そのため、従来の業務に必要だった入力作業のための人件費や手間を省ける。また入力ミスやメモでの情報伝達時のミスなどの人的ミスを防げる

さらに紙の帳票類を用いた取引では、書類をプリントする印刷代や紙、トナー、郵送やFAXするときの発送コストなどが必要だが、EDIならこれらの経費を削減できる。データ保存になれば、書類を保管するスペースを確保しておく必要もなくなるため、オフィスを省スペース化できる。

競争力の強化

EDIを導入すると、取引を行う2社間の需要の予測や生産、販売計画、在庫管理などのすべての工程を最適化できるようになる。また、EDIを使って企業間の情報を共有することもできるので、ニーズを迅速に察知してビジネスチャンスに活かせる。EDI取引で競争力の強化も期待できるだろう。

内部統制をサポート

EDIはデータを取り込んでそのまま自動送信できるため、伝票の情報を手入力する必要がない。人的ミスが減るため、帳票発行するときも精度が増してデータの信頼度が向上するだろう。

また相互に標準化されたルールのもと、EDI取引で電子データのやり取りをすることは、内部統制にも役立つ。内部統制は、財務報告の信頼性を確保することでもある。そのため取引情報が適正であることが重要だ。

EDI取引なら、標準化されたルールに基づいて外部の取引先からのデータを相互に送受信できるので、取引情報の信頼性を確保できる。EDIは内部統制をスムーズに遂行するためのツールともいえるだろう。

EDI取引の課題

EDI取引にはメリットだけではなく課題もある。まず、取引を行う企業間で同じEDIを導入しなければいけない。取引企業が互換性のないEDIを使用している場合は、EDIを導入してもメリットがない。

また企業間の取引が少ない企業の場合は、導入コストに見合う費用対効果が得られない可能性もある。コストとEDIのメリットを企業間で検討してから、導入するかどうかを決めるべきだろう。ほかにもいくつかの課題があるので、詳しく説明する。

ISDNサービス提供の終了

従来型EDIで使っていた通信インフラは、ISDN(固定電話回線)である。しかしこのISDNサービスは2024年1月で終了する。従来型EDIの使用にあたってISDNは、高速で安くデータ伝送できる方式であった。デジタル通信モードの利用者に対しては、ISDNの代わりにメタルIP電話技術の一部を使った補完策が提供されるが、従来よりも伝送遅延が発生することは避けられない。これがEDIの2024年問題である。

ISDNサービスの終了によって、今後のEDI取引への影響が懸念されている。そのため近年では、従来のEDIシステムではなくインターネット経由で利用できるWeb-EDIが主流になってきている。

電子帳簿保存法への対応

2022年1月1日に施行された電子帳簿保存法にもEDI取引は関係する。EDI取引は、電子帳簿保存法における電子取引にあたる。2022年1月の電子帳簿保存法の改正によって、電子取引における紙保存は禁止され、電子取引を行うすべての企業はデータ保存が義務化となった。

EDI取引のデータ自体は、基本的に電子帳簿保存法上の問題はないが、連携する販売管理システムや会計システムも電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要がある。電子帳簿保存法に完全対応しているシステムを使っているなら安心だろう。しかし対応していないシステムを利用している場合は、システムの改修や買い替えなどが必要になることもある。

今後注目されるWeb EDI

これからさらに導入が進んでいくであろうWeb EDIについて見ていこう。メリットも多くあるが、デメリットや注意点もあるため、導入前にはよく精査し検討する必要がある。

Web EDIの特徴

Web EDIはインターネット回線とWebブラウザを介して取引が行えるものだ。インターネット回線と端末だけで導入できるため導入コストが低い。

またインターネットがつながる場所であればどこでも利用でき、データの通信速度が速く、従来型よりもスムーズに業務を遂行できる点もメリットである。さらに従来型EDIシステムでは取り扱えないことが多かった画像や漢字データも送受信できる。

EDIプロバイダーによる最新セキュリティが適用されているから安全性が高い点も、普及を推し進める理由の1つだろう。

Web EDIを導入する際の注意点

Web-EDIを導入する際には、自社の販売管理システムに連携できるかどうかを確認しなければいけない。すでに導入しているシステムによっては、改修や買い替えが必要になることもあるだろう。

また、取引先とのデータの互換性や使用の了承を得る必要もある。Web-EDIには複数の通信プロトコルがあるため、取引先がどの通信プロトコルに対応しているのかを確認しておこう。

また、Web EDIの操作にはある程度の習熟が必要な点もデメリットといえる。Web EDIを操作できる人が限られて属人化する可能性もある。Web EDIを導入する前にはこれらの点を確認し、利便性を活かせるかどうか検討する必要があるだろう。

EDI導入は費用対効果を考えて

EDIは取引を電子化して交換するするツールで、人件費を抑えたり業務を効率化したり競争力を強化したりできるメリットがある。

近年はISDNサービスの終了が決まっていることもあり、Web EDIの導入が主流になっている。Web EDIは導入コストが低く、従来型のEDIよりも利便性が高いが取引先が同じシステムを使っているか、自社内の販売管理システムとの連携が可能かなどを確認する必要がある。EDIを導入して本当に費用対効果があるのか、慎重に見極める必要があるだろう。”

お役立ち資料データ

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