先入れ先出しとは?メリット、デメリット、注意点などわかりやすく解説
2023.01.27
小売業や製造業では商品・製品の在庫管理は重要な業務だ。「先入れ先出し」は入出庫の際に用いられる商品の管理方法の一つ。先入れ先出しをすることで、商品の使用期限が切れてしまうなどのミスを防ぐことができる。
本記事では、先入れ先出しとはどのような管理方法なのか、メリットやデメリット、先入れ先出しを取り入れる際の注意点をまとめている。
先入れ先出しとは?
先入れ先出しの手順
「先入れ先出し」とは、入庫した日付が古い順番で出庫をする管理方法で、英語では、「FIFO(First-In First-Out)」と呼ばれる。製造業や小売業でよく取り入れられている方法だ。主な手順としては、以下の通り。
1.新しい商品が入荷する
2.棚から今置いてある商品を一度取り出す
3.新しく入荷した商品を棚の奥に入れる
4.商品を出庫するときは、手前にある一番古い商品から出庫する
商品に使用期限や、賞味期限がある場合、先入れ先出しを行わないと、一番古い商品が棚の奥に置かれたままになってしまい、期限が切れてしまう恐れがある。商品に期限が定められていなくても、古い商品から出庫することで商品の品質を保つことができる。
先入れ後出しとは?
「先入れ先出し」と似た管理方法で「先入れ後出し」がある。先入れ先出しは、入庫時期が古い順で出庫するが、先入れ後出しは、新しく入ってきたものから順に出庫する方法だ。商品を奥に入れる作業が必要になる先入れ先出しに比べ、先入れ後出しは入庫した商品を手前に置いていくため、作業スピードがかからない。しかし、倉庫の滞在時間が長くなることで商品の品質が落ちる可能性がある。そのため使用期限や消費期限が設けられている商品の場合は先入れ先出しで管理するケースが多い。
先入れ先出しのメリット・デメリット
先入れ先出しの管理は商品の品質を保つと述べたが、他にはどのようなメリットやデメリットがあるのか。詳しく見ていこう。
先入れ先出しのメリット
期限切れを防げる
医薬品や食料品などには消費期限や使用期限が設定されており、期限が切れた場合、在庫は破棄しなければならない。また、万が一、期限が切れた状態で販売をしてしまっては大きな問題になる。先入れ先出しをすることで、一番期限の短い商品から順に出庫できるため期限切れを防ぐことができる。
商品の品質を保てる
期限が設定されていない商品も、先入れ先出しをしないと古い商品が棚の奥に残されたままになる可能性がある。ずっと倉庫に残ったままの製品は、劣化に繋がる恐れもあり、結果的に使えない、販売できない状態になることも。使用期限が設定されていなくても、先入れ先出しをすることで品質を保つことに繋がる。
倉庫が整理整頓され、管理がしやすくなる
本来あるべき棚に商品を置かず、どこに何があるか分からない倉庫では、先入れ先出しは不可能だ。先入れ先出しができるよう、商品が奥から入荷した順に並べられ、整理整頓されていると、「この商品は残りが少ないな」、「これはまだ在庫が残っていて、販売期限が近くなっているな」と在庫ロスや欠品を防ぐことにも繋がる。もちろんデータ上でも管理できるが、倉庫を一目見ただけで把握がしやすくなり、効率の良い在庫管理ができるというのがメリットだ。また、倉庫が整理されることで棚卸作業も効率的になる。
商品が取り出しやすく作業時間短縮に
先入れ先出しは手前にある商品から出庫するため、倉庫の奥にある商品を取り出す、という手間がかからない。手前から商品を取り出せばいいので、特に小売業では倉庫に商品を取りに行ったとき、お客さまを待たせずに販売ができる。出庫に時間がかからないというのもメリットの一つである。
先入れ先出しのデメリット
データの管理負担が増える
管理する商品が多い場合、商品の入荷日や消費期限、製造日、商品番号などのデータ管理に手間がかかってしまう。データ管理ができていないと、出荷する際にどれを出荷すればいいか分からなくなる。データ管理専任の人員を確保したり、在庫管理システムを導入したりと、どういった管理方法が良いのかの検討が必要だ。
作業側への負担が増える
データ管理だけでなく、作業する側にも負担が生じる。特に、一度に大量に仕入れた商品で、賞味期限が違っている場合は確認しながら順番に並べていかなければならない。また、アルバイトや派遣スタッフなど、一時的にスタッフが増員されるときなど、先入れ先出しの管理方法を徹底しないとミスに繋がる可能性もある。
スペースの確保や什器の必要性
先入れ先出しには、専用の什器やパレット、台車などのマテハン機器が必要になる場合がある。マテハンや什器の導入費用がかかり、さらにそれらを保管しておくスペースも確保しなければならない。
先入れ先出しの注意点
どのようなことに注意すればスムーズな先入れ先出しでの管理ができるのだろうか。
商品の区別がつくように表示をつける
商品がいつ入荷したもので、どれと同じ商品なのか、箱を見ただけで分かるようにしておくことで作業効率が上がる。ロット番号や商品番号、入庫日、製造日、使用期限などが記載されたシールやラベルを箱に貼り、見ただけで判別がつくようにしよう。
3Sを意識する
3Sとは「整理・整頓・清掃」のことだ。倉庫内が乱雑な状態で見えないところに商品が残っていたり、期限が切れてしまったりすると、正確に在庫管理ができない。まずはスムーズな作業と正確な管理のために3Sを保てるようにしておくことが大切だ。倉庫内で不要なものはないか、すぐに商品を取り出せるような動線が確保されているか、清潔な状態かを意識して倉庫環境を整えておこう。
置き方を工夫する
倉庫内での商品の置き方によって作業にかかる時間が変わる。3Sにも通じるが、すぐに出庫できるような動線ができているかを確認し、倉庫内のレイアウトを考えるようにしよう。また、天井までの高さが余っていないか、棚のスペースが無駄になっていないかを見て、商品の入れ方を工夫すると、スペースロスの解消にも繋がる。
スタッフへのルールの周知
スタッフごとに作業の順番が違っていてはスムーズな入出庫はできない。倉庫内のレイアウトに基づき作業のルールを決めて、そのルールをスタッフに周知しよう。臨時で作業するスタッフの方にも実施してもらうことで効率良く作業ができる。
先入れ先出しで使用期限切れを防ぐ
先入れ先出しは、効率的に入庫日が古いものから出庫できるため消費期限や使用期限がある商品を保管する際に適した管理方法だ。しかし、使用期限がなく劣化の可能性が低い商品では入庫に時間がかかり非効率になることも。その場合は先入れ後出しを取り入れるなど、取り扱う商品の性質によって管理方法を変えてほしい。